第47話「光の異世界転生勇者様は国王にも騎士団長にも全国民からも愛されてハーレム状態のようです。」
デリトはエライトの弱点を探るため彼の行動を観察する。
ザ・ラノベ主人公といったふうの人気者のエライトにデリトは辟易するが・・・?
エライトは一人ひとりに軽く挨拶しながら歩いていた。
「(召使いにも分け隔てなく挨拶しているとは・・・。)」
デリトは魔法で自分の気配と姿を消しながら観察していて驚いた。
あれだけの強さをもつ異世界転生者でここまで奢りなく接しているのは見たことなかった。
しかし逆にそれが怪しいと直感が告げていた。
城内の会話を盗み聞きした結果、エライトはこの異世界に勇者として召喚されて、既に5年ほど経っているようだった。
一見、平和に見えるが、中世的な見た目と違わず、身分格差はしっかりと残っている異世界のようで、 偉そうに振る舞う貴族や貴族や王族に対する不平不満を言う平民や召使いは王城に向かう途中で良く見かけた気がする。
エライトも国を救う勇者として少し年月も経ち、そういった世界観に慣れている頃なのだろうと思ったが、 観察した感じだと誰にでも分け隔てなく、公平に振る舞っているようで、その甘いマスクも相まって王城の召使いにも非常に人気のようだった。
それはまるで、異世界転生モノのラノベ主人公のように嘘みたいな性格と能力、そして嘘みたいな人気だった。
あの異常な人気はうさん臭くてデリトは嫌いだった。
「ちょっとアンタ!待ちなさいよ!」
エライトを観察していた時、ピンク色の髪をツインテールにした可愛らしい女性が彼を大きな声で呼び止めていた。
「お・・・ついにエライトの化けの皮が剥がれたか?」
既に野次馬根性たくましくなっていたデリトはわくわくしながらその光景を見守った。
さながらラノベの世界に入り込んだ読者の気分だった。
「おお、これはこれは王国騎士団団長のピンクツインテール・・・、いや失敬、メリオノーラス様ではありませんか? いかが致しました?」
キラン、という擬音が聞こえてきそうなくらい歯を輝かせてにっこりとエライトが笑いかけた。
「あ、あんた、あの魔族の女のとこにいってたらしいわね!な、なにを話してたのよ。」
「そうですね。私が追っているものの情報を持っていないか、聞いておりました。」
「そう。あんた最近あの女のところに・・・その、よく会いに行っているじゃない。」
ツンとした表情で少し顔を赤らめてメリオノーラスは言った。
その表情を見てエライトはふふ、と笑った。
「団長様はいつもながらとても可愛いらしい人だ。
ですが、メリオノーラス様が思っているような関係ではないですよ。安心してください。
それにあの女ではなく、彼女にはゾーレという名前があります。」
「そ、そう。覚えておくわっ。・・・またね。」
ツンツンしながら帰り際に恥ずかしそうに手を振るメリオノーラス団長にエライトはニコニコと手を振りかえした。
そのまま楽しそうに別の方向に向かっていくエライトを追いながらデリトは思った。
「あの団長、ツンデレ定型文みたいな奴だったな・・・。」
それにしても、メリオノーラスの顔を見て心臓が飛び出るかと思った。
かつて異世界”ゴブリンズスレイブ”で守ることのできなかった異世界人ネドカイとそっくりだったのだ。
何かの偶然か・・・デリトは理由を思案してみたが、答えは思いつかなかった。
その後もデリトはエライトを追っていったが、ゆく先々で男女(特に女性)からモテモテのエライトを見て、デリトはなんとなく気持ちがげんなりした。
思えば、異世界転生殺しになってから、というか転生してからまだ俺ハーレム一回も経験してなくね?とひとり落ち込むデリトだった。
「ちっ、どこまで行っても良いやつじゃないか。」
デリトは舌打ちした。
ただ、モテるだけでなく、真面目そうな執事の体調を気遣ったり、美人だが押しの強い王女の求婚をやんわりといなしたり、 おっちょこちょいなメイドが転びそうになるのを助けたりと、数時間のうちでいくつの善行をしているんだと突っ込みたくなるくらいのレベルだった。
それと起こっている出来事がやたらラノベっぽい内容なのでそれもまたデリトのイライラを加速させた。
「奴は本当に良い異世界転生者なのかもしれない。」
デリトは一息ついた。
良い異世界転生者と自分でつぶやいたときに、ベイスレや刀子の顔が浮かんだ。
しかし、デリトは何かがひっかかっていた。
光の異世界転生勇者エライトには、何か影を感じる瞬間があった。
それはひとりきりになった瞬間に現れるふとしたもので、本人も気づいていないであろうレベルのものだった。
そしてエライトをストーカーしながら調査していたが、既に夜中になって、城の人間やエライトも寝室に入って寝静まっている頃だった。
「俺も寝るか・・・。」
と、その時、エライトの扉のドアが開いた。
「!」
危うく、魔法が解けて、バレてしまったのかと身構えたが、どうやら違うようだった。
エライトは鎧を着込み、あの大剣も携えていた。
あたりを見回すわけでもなく、甲冑の音がほとんどしないくらいに静かに歩いていた。
目は虚ろで前をみているのに何も見ていないようだった。
「(なんだ・・・?何かがおかしい。)」
デリトはそのまま、城を出ようとするエライトについていくことにした。
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