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異世界転生殺し-チートキラー-  作者: Michikazu Sashie
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第44話「異世界ゴールド/シルバー」

捕らわれた仲間を助けるため、ついに”異世界転生勇者同盟(Other Worlds Heros League)”、通称”O.W.H.L.”最強の異世界転生者、”第一聖”エライトの異世界へと足を踏み入れる。

挿絵(By みてみん)

数日間、デリトは異世界”戦国乱世”を歩き回っていた。




民衆は当初、第六天魔王が消滅したことで喜びを(あらわ)にしていたが、すぐにその喜びは消えることになった。




天下を統一し、圧政を敷いていた第六天魔王が死んだことで各地の武将が次の天下人へと名乗りを上げ、お互いの領地や領民を狙って戦いが始まった。




まさに群雄割拠する戦国乱世の世へと変化していたのだ。




民衆たちはその戦いの渦の中へと巻き込まれていくことになった。




しかし、刀子を失ったデリトはそんな世間には目もくれず、何かを追い求めてさまよっていた。




そして、ある時、見知った光が、山で野宿をしていたデリトのもとへと舞い降りた。




転生の女神ウルレカッスルだった。




「・・・・・・探しましたデリト。異世界転生者をまた殺したことで天啓があり、あなたがいる異世界を見つけ出すことができました。」




「・・・ウルレカッスル。お前は何か隠していないか。」


デリトはろくに挨拶をすることもなく(うつ)ろな目で転生の女神を睨んだ。




「・・・何のことですか?あなたは・・・」


「とぼけるな!転生の女神ウルレカッスル!」


ピシャリとデリトはウルレカッスルの言葉を遮った。


「貴様、魔王は勇者たる異世界転生者によって倒される運命にある。そう言ったな。


しかし、この異世界の転生者は・・・勇者は、死んだ。しかも魔王に殺されて。」


「魔王が異世界転生者を・・・一体何が・・・」


「聞かせてやろう。この異世界での輝かしき冒険譚を。」


デリトは皮肉を言うとウルレカッスルに一部始終を話した。




ウルレカッスルが知っているデリトは声を荒げたり感情をむき出しにすることはほとんどなく、あくまでクールな印象を保っていたが 今回はそうではなかった。




刀子やヒデキチとの出会いはさも楽しそうに話し、2人との別れの場面になると何度か嗚咽しながら涙を流していた。




「・・・この異世界はあなたに大きな変化をもたらしたようですね。」


「他人事だな。貴様は何をしていた。」


「私はあなたを探していました。慌てて異世界転生させたので、どこの異世界に飛んだのかが分からなかったのです。


異世界はあまりにも多くあります。その中であなたを再び見いだせたのは奇跡に近いでしょう。

この異世界の転生者が消えたお陰であなたの存在に気づきました。」


「その奇跡とやらは、俺が刀子を、”異世界転生者”を殺したから分かったと。」


「・・・ええ。そのくらい大きな出来事がないと、変化がないと私たち転生の女神は感知できないのです。異世界はあまりにも増えすぎましたから。」


「それは良かったな。この俺がちゃんと仕事をするやつで。任務完了だ。次はどこの異世界に行けばいい?また魔王に勇者が負ける異世界か?」


「デリト。私が言っていたことは本当です。勇者は、異世界転生者は魔王を打ち倒すためにあなたのいた宇宙から、つまり地球からチート能力をもって転生してくるものなのです。


しかし、その第六天魔王とやらは特殊でしたね。勇者の体や精神を利用する魔王は他にもあれど、まさか完全に融合してしまうとは。ただ、嘆いてばかりはいられません。

あなたにはまた行ってほしい異世界があります。」


「もうこれ以上、俺を戦わせないでくれ!うんざりだ!」


デリトの叫びを無視してウルレカッスルは続けた。


「私は異世界転生勇者同盟、”O.W.H.L.(オール)”に追われながらある異世界であなたの仲間を見つけました。」


「仲間?」


いらいらと震えていたデリトの膝が止まった。

仲間・・・。

デリトの頭にはすぐに二人の顔を思い出した。


「そうです。ボッチェレヌとゾーレ=ペリテット=マクスガム。あなたが”ゴブリンズ・スレイブ”や”ギガンテス・オケアノス”で共に戦っていた仲間です。」


「・・・どこにいるんだ。」


「あなたが”ギガント・オケアノス”で戦った”光の異世界転生勇者”エライトのいる異世界”ゴールド/シルバー”で彼によって牢にとらわれています。」


「何だと?」


デリトは思い出していた。エライトは目にも止まらぬ早さで動いた大剣の異世界転生者だった。


もう仲間を失いたくは無かった。




「ゾーレやボッチェレヌが捕まえられたのも貴様が仕組んだ罠じゃないだろうな。」


立ち上がり、デリトはウルレカッスルを(にら)んだ。


「あなたが疑うのも無理はありません。しかし、本当です。私はこの件には全く関わっておりません。


”O.W.H.L.”はあなたを狙っています。これはおそらくあなたを狙った罠でしょう。」


「・・・それを知っていて、俺が行くと知っていて、伝えたな。汚い女神め。」


デリトは立ち上がった。


ウルレカッスルは悲しげな顔をしたが、何も言わなかった。




「どうすれば良いんだ?」


自分でもピリピリしているのがデリトには分かった。


「あなたを異世界”ゴールド/シルバー”に転移させます。異世界の中でも最も異世界らしいともいえるかもしれません。ドラゴンやオークが闊歩する剣と魔法の世界です。


彼の関心は今やあなたに向けられています。」


「罠か。」


「いえ、おそらく私がボッチェレヌたちの消息を掴んだことすら把握していないでしょう。


エライトが彼らを捕らえているのはあなたや私の行き先を聞くためのようでしたが、私ですら掴めなかったあなたの消息を知っているわけもありません。」


「ならば、忍び込んでゾーレとボッチェレヌを助けよう。それで俺の戦いは終わりだ。・・・異世界転生者と戦うのはもう、やめる。」


デリトは暗い顔をしてうつむいた。


「・・・そうですか。それは残念です。ですが、異世界転生者によって苦しめられている異世界の住人を救うためには”異世界転生殺し”が必要です。

あなたがやらないのなら、新しい適任者を探すことになりそうですね。」


「・・・悪い。俺には荷が重い仕事だった。前世で仕事を逃げ出した俺がこんな仕事をできるはずがなかったんだ。俺が”異世界転生殺し”としてやる仕事はこれが最後だ。」


「そんなことはありませんよ。・・・それでは、最後の、異世界転移を始めます。」


そう言うとウルレカッスルはセフィロトの杖を振るった。




気づくとデリトはひらけた平地にいた。


「ここが異世界”ゴールド/シルバー”か。だが、どこだ・・・・?毎回あの女神は目的地に直接送ってくれないのは何でなんだ・・・。」



ふと、地響きがして、デリトの体を芯から揺らした。


ゆっくりとしかし確実に大きくなっていく


「何だ・・・?」


平地の両脇には鬱蒼とした森が広がり、左右の森両方からガチャガチャと何か硬いものがぶつかる音と、重々しい腹の底に響くような音がした。


「あれは・・・」


自分の右側にある森の中へデリトは目を凝らした。


「まさか・・・!」



「ウォォォォ!!!」


大きな雄叫びとともに左右の森からほぼ同時に、幾千、幾万にも及ぶ兵士が飛び出してきた。


兵士たちは皆、厚い甲冑を着込み、中には馬にも甲冑を着させた騎馬兵もいた。



「おいおいおい・・・!」


デリトは立ちすくんでしまった。


何故なら、左右の森から出てきた兵士たちはデリトのいる平地の中心を目指しているようにみえたからだ。

「まさか、罠・・・か・・・?」



ずんずんと左右の軍隊はデリトのほうへと迫ってくる。


そして、ついにデリトの姿は左右の軍隊の目前へと迫った。


軍隊は止まるどころか、むしろ勢いを増しているように見えた。


「ウォォ!!」


兵士たちは再び雄叫びをあげた。




「くそっ、<静かなる侵入者(サイトサイレンサー)>。」

デリトは姿を消す呪文を備えた。


そのまま左右の軍隊はお互いに激突した。




「あのクソ女神、わざととしか思えん・・・!」


デリトは驚異の動体視力をもって兵士たちがお互いに繰り出す攻撃を(かわ)しながら悪態をついた。


「俺を狙っているわけではなさそうだな・・・。単に俺を戦場のど真ん中に転移させたってことか!」




そう、デリトは2つの軍が激突する戦場のちょうど中心へと異世界転移させられたのだった。


だから2つの軍がデリトのほうへと向かってくるように見えたのだった。




幸いにも両軍はデリトの存在に気づくこと無く、お互いに戦い合っており、


デリトはたまに飛んでくる流れ矢や、剣などを(かわ)しながら戦場を抜けようと歩いた。




「意外と端まで遠いな。」


攻撃は当たらないとはいえ、戦場をかいくぐりながら端を目指すのは少し時間がかかることだった。


「それにしてもこれはどいう戦いなんだ?人間対モンスター・・・というわけでも無いな。」




両軍、甲冑の色は白と黒で違いはあるものの、種族はてんでバラバラだった。


当初騎馬兵に見えたとのは片方の軍、黒軍は本当に騎馬兵だったが、白軍は甲冑を来た4足歩行の半馬人、ケンタウロスだった。


歩兵はお互いにオークや人間、ゴブリンなどが混じっていて、数は多くないが、エルフもお互いいた。


また、白軍のほうは空飛ぶ魔獣ハーピィが黒軍の歩兵に爆弾のようなものを落として攻撃していた。




「ウルレカッスルは異世界”ゴールド/シルバー”は剣と魔法の世界だといっていたな。とすると・・・」


そう思ったとき、一瞬、デリトの目の前が明るくなった。


「まずい!」


デリトがそう思った瞬間、天空から小さな竜巻が降りてきた。




「うぎゃぁぁ!魔法だぁ!」


白軍の魔法使いが竜巻を起こす魔法を使ったのだ。




「おいおい、敵味方巻き込んでんじゃねぇか!」


既に透明化の魔法が解けたデリトは竜巻の魔法に飲み込まれ、白軍と黒軍の兵士と一緒に空を舞い上がっていた。


「おー、なるほど、白軍はハーピィに助けられるのか・・・。」


敵味方もろとも巻き込んだように見えた竜巻魔法は作戦のうちらしく、味方である白軍はハーピィによって空で受け止められ無事助けられていた。


ハーピィは女性の胴体に鳥の翼と下半身の半魔獣である。


その昔、鳥と愛し合った女性の子孫だとか、禁忌を犯した女性たちが神に処刑される代わりに罰としてその姿にさせられたとか色々由来の説があるらしい。


見た目は人間のような部分もあるが、人間の言葉は喋れないそうだ。


以前聞いたウルレカッスルの話によると男性の姿をしたハーピィがいる異世界もあるらしいがここでは見回す限り女性型のハーピィしかいないようだった。



「よいしょっ。」


周りでは竜巻魔法によって巻き上げられた黒軍の兵が地面に叩きつけられていたり、白軍の兵士がハーピィに助けられていたが、 異世界転生者であるデリトは、地上100mほどに巻き上げられながら、普通に着地した。


「今更だが、チートって便利だよな。」


デリトはひとりごちた。


その言葉は誰にも聞かれること無く、周囲の喧騒(けんそう)に消えた。


完全にひとりで異世界を冒険するのは初めてだったので不思議な感覚がした。


思えば”異世界転生殺し”として使命を受けたときに”使い天使”としてデリトの補助をするためにボッチェレヌをウルレカッスルより与えられたので、 最初から仲間がいたといえばいたことになる。




ただ、ボッチェレヌのことを補助というには、魔法の実力なども少し心もとなかったし、何より生意気でデリトとは当初衝突ばかりしていた。


やがて、お互い慣れてくると気遣うこともなく、普通に話していた。


まだまだ、ボッチェレヌがうさんくさい、というか見た目の可愛さのわりにおっさんくさい部分はあるものの、それが今や懐かしくなっていた。


「・・・おっと。」

戦いの中だということを忘れかけていたデリトは飛んできた矢を避けた。


「なかなか実力も拮抗(きっこう)しているな。」

白軍も黒軍もお互いよく鍛えられているようで、動きはみな洗練されているようにみえたが、いかんせん、実力は同じくらいのように見えた。


その時、空から大きな爆発音のようなものが聞こえた。

隣で白軍の兵士が震えているのが目の端に映った。


「き・・・きた・・・邪竜だ・・・!邪竜がきたぞぉ!!」

「邪竜・・・?」

「邪竜ジャドドだぁ!」

周囲の黒軍兵も白軍兵も、反応は歓喜と絶望と対照的ながら一様にその名前を呼んでいる。


デリトも白軍の兵が見ている上空へと目を向けた。

「な・・・なんだありゃ・・・」

流石のデリトも目にするのは初めてだった。


上空を舞っていたのは、空を覆うかと思うほどの巨大なドラゴンだった。

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