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異世界転生殺し-チートキラー-  作者: Michikazu Sashie
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第39話「未ざる。効かざる。」

ついに真の姿が明らかになった天魔大将・鬼面。

何度倒しても倒しても立ち上がるその不死身の姿にデリトと刀子は困惑する。

記憶と力を引き継いだ猿面と防御力を引き継いだヒデキチ。


そして、2人が合体した本来の姿・鬼面は最強の天魔将、否、天魔大将だった。



「見せてやろうぞ、俺らの真の姿をよ!合体!」


そういうと猿面はヒデキチの首を掴み持ち上げてバリバリと頭から食べた。


「な・・・!」


流石にこれはデリトも予想外だった。


すると猿のお面が段々と赤黒く変化し、ボコボコボコと音がしたかと思うときんにくが 盛り上がり、体もさらに大きくなった。


「ヴヴヴ・・・!ウォー!!!」


「なにあれ・・・?」

刀子は口を(おさ)えた。

ギン、と猿面だった男は目を光らせた。

「俺様は天魔大将、”鬼面”!第六天魔王様をお守りする最強の矛、最強の盾!」



「ンー、ドコドコドコドコ!」


鬼面は少し上を向くと胸をドラミングした。


「・・・ヨシ、これじゃあ!

猿面のままじゃ、自分でドラミングしただけでも死んでしまうほど脆いからな・・・! その代わり死にゃせんが・・・!

やっぱり気持ちええのぉ。」


「ヒデキチ!お前自身を取り戻せ!」


「何を言っとるんじゃぁ!ヒデキチの記憶があろうと、ワシャ数十年・・・いや、数百年だったか?

とにかく、ヒデキチの1,2週間くらいの記憶しかなかったのに対してワシ本来の記憶が遥かに勝っておるわ!!」


「ヒデキチが1,2週間・・・?」


刀子は驚きの連続で卒倒しそうだった。


あんなに感情豊かに見えたのに。


「そうじゃぁ、ヒデキチも猿面も”異世界転生無双”が凶の都の近くに現れたから第六天魔王様が考案した策じゃ。

もともとワシには自分の要素を分離する能力はあったが、防御力だけのやつとか力だけのやつなど意味がなくなってしまうからなぁ。

困っていたが、まさかこんなふうに使えるとは思いもよらなんだ。」


「・・・だが、どうやってヒデキチの記憶を作った。」


デリトが鬼面に銃を向けた。


「そりゃ、魔王軍の研究者が作った薬で記憶を上書きしたんじゃ。


あとはそうじゃ、”異世界転生無双”の周りの人間の脳みそを喰らいながらヒデキチは”リキュウの子供ヒデキチ”として記憶を作っていったんじゃ。

最初はほんに猿そのものでのぉ、手に負えんかったわ。・・・やれやれ、話すのも飽きたのぉ。<虐訣(ぎゃっけつ)>!」


急に気が変わったように鬼面は地面を蹴りデリトたちに殴りかかってきた。


「避けろ!刀子!」


デリトと刀子は鬼面の攻撃をすんでのところで(かわ)したが、そのまま拳に殴られた地面が大きく凹んだ。


「なんて力だ・・・!」


「猿面はほとんど防御力は無かったけど、攻撃力だけは異世界転生者の私を上回るほどだった。


鬼面になった奴の防御力がどれくらいかは分からないけど・・・私以上だったらやばいかも・・・。」


「”異世界転生無双”も早いが、そこのおっさんもなかなか早いのぉ!お前から先に殺そう!」


「ふん、お前におっさんなんて言われたくないね!」


再び殴りかかってきた鬼面と一定の距離を保ちながらデリトは二丁の小型火縄銃を撃った。


刀子の予想通り、鬼面は防御力が高いらしく魔法で強化したデリトの銃でもあまり攻撃が効いていないようだった。


「私も戦う!」


少しの間2人の戦いを傍観するだけになっていた刀子も鬼面を切りつけたがそれもあまり効果が無いように見えた。




「だめ・・・!やっぱり効かない・・・。」


しばらく鬼面と立ち回ったが、刀子とデリトは決定打をうてないでいた。


その間にデリトはあることに気づいていた。


「・・・刀子、お前、攻撃の手を緩めているのか?」


「・・・・・・。」


凶都に入ってから、最初に出会ったときの戦っているときと刀子の攻撃のキレが違うことを感じていた。

最初はデリト以上の戦闘力やスピードを感じ、ずっとそれが違和感だったが、今はそれとも少し違っていた。


格下であるはずの蛸面と戦っているときも、刀子の攻撃は効いていなかったが、今回はただ単に効いていないわけではなく、力をわざと抜いているように見えた。


「違う・・・これは私の”権能”のせいで・・・。」


「・・・鬼面がヒデキチだからか。」


刀子はハッとした。


自分自身でも気づかぬうちに攻撃するのをためらっていたのだ。




「どうした!どうした!ぬるいぞ、貴様はこんなものか”異世界転生無双”!」


鬼面は2人の気持ちに構わず攻撃を続けてきた。


「<鋼の蜘蛛糸(アイアンストリングス)>!今だ、刀子!」


デリトは鋼鉄製の魔法の縄で鬼面を縛りつけた。


「デリト・・・!」


「こしゃくな・・・ぬぅん!」


猛スピードで走り出した鬼面は自分の体ごとデリトを強く壁に打ち付けた。


「がっ・・・!」


その勢いはさすがのデリトにも響いた。


「くそっ、なんて力だ。これじゃ自分も潰れちまう・・・」


頭から出る血を抑えてデリトが起き上がったとき倒れた鬼面が息をしていないのに気づいた。


「こいつ・・・死んで・・・」


「・・・すけてくれ・・・」


「ん?」


鬼面が小声で何かを言っていた。


「なんだ?」


デリトが少し近づくと鬼面はガバっと起き上がって雄叫びを上げた。


「ウォオオ!鬼面ふっかーつ!!」


息が止まっていたはずだと思ったが勘違いのようだった。


デリトは素早く後ろにバク転し、起き上がると同時に鬼面にしかけられた攻撃を躱した。


しかし、頭の隅に何かが引っかかっていた。


「さっき奴は何と言っていた・・・?」


鬼面は体を翻すと刀子に向かって突進した。


「きゃぁ!」


鬼面に猛烈な勢いで突進された刀子は受け身をとる間もなく吹き飛んで反対側の壁へ激突した。


「げほっ。」


刀子は口から出た血を拭った。


思えば、この異世界に来てからというものずっと無双状態だったため、自分の血をこんなに流すのは初めてだった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()



「一か八かだ!<インフィニティウェポン>!」


すぐさま、デリトは鬼面の周囲に火縄銃や大砲を出現させ、一気に引き金を引いた。


「ぐぁぁぁぁ!!」


絶叫とともに鬼面は丸焦げになってその場に倒れた。


デリトは素早くその近くへとかけよった。


「・・・助けてくれ・・・。」


「まさか・・・!」


今度は鬼面がつぶやいた言葉がはっきりと聞こえた。


「どけい!鬼面様のお通りだ!」


すぐさま鬼面は正気を取り戻し近くにいるデリトを振り払おうとした。


「くっ、しつこいやつめ・・・!<インフィニティウェポン>!」


デリトは魔法で大砲を出現させると、ゼロ距離で発射した。


「ぐぁぁ!」




鬼面は吹き飛んでいき、刀子の近くの壁に激突した。


その時、刀子にも鬼面のつぶやきがはっきりと聞こえた。


「・・・助けてくれ・・・!殺してくれ・・・!」


「ヒデキチ・・・?」


声は猿面と同じ鬼面のものだったが、刀子には確かにヒデキチの声に聞こえた。


「おう!捕まえたぞ!”異世界転生無双”!!!」


すぐに鬼面はもとのように戻って起き上がり、すぐそばにいた刀子の華奢(きゃしゃ)な体を掴んで締め上げた。


「ぐ・・・!」


「ははは!どうですか第六天魔王様!”異世界転生無双”めをこの鬼面が殺してみせましょうぞ!」


「お~、さすが我が魔王軍最強の天魔将、否、天魔大将じゃぁ。やったれ、やったれ。」


第六天魔王は薄ら笑いを浮かべてパチパチと乾いた拍手を送った。


「くそ・・・!間に合うか・・・!?」


デリトは走り出した。


「死ね死ねい!」


「・・・<一閃連撃>。」


「え・・・?」


突如として鬼面の腕がバラバラに解体され、スタッと刀子は地面に降り立った。


「ぐぁぁ!!いてぇ!」


鬼面は慌てて後退(あとずさ)りした。




「良かった!」


デリトは刀子と鬼面の間に立ち、小銃を構えた。


しかし、刀子は前に踏み出てデリトをぐいと後ろに押しやった。


「刀子・・・?」


「・・・デリト。私がヒデキチを・・・鬼面を殺すよ。」


刀子がデリトの前に立った。


「刀子、お前・・・」


心配するデリトにくるりと振り返った刀子はにこりと笑った。


「大丈夫。私も本気を出す。だって私は”異世界転生無双”なんだから。


この異世界で助けを求める人達の味方として戦うのが私に与えられた使命だから。見てて。」


「だが、俺も一緒に・・・!」


「ううん、私が1人で戦いたいの。」


心からの笑みではなかった。


哀しさがにじみ出ていたが、しかし、強い決意がその顔に表れていた。


こうして、1人で背負い込みながら刀子は孤独に戦ってきたのか。




「貴様!やりおったな!」


鬼面はボコボコと音を立て無くなった腕の付け根から新しい腕を再生した。


「あいつの能力はやはり再生か・・・!」


天魔将たちは異世界転生者ほどではないが、ただの魔王の部下にしては強力な個性を持っているようだ。


鷹面は翼と超音波や鋭い聴覚。

蛸面は複数の触手に毒。

そして、鬼面は強い力と再生能力、か。


これまで戦ってきた別の異世界の魔王の部下たちでも再生の能力を持つものはいたが、それにしても速度が早すぎる・・・。


「死ねい!」


「<一閃・極光(いっせん・きょっこう)>・・・!」


ふぅぅ、と息を吸い込み刀子は目にも止まらぬスピードで鬼面を真っ二つにした。


声も上げることができず、バタンと2つに分かれた鬼面は仰向けに倒れた。


だが、すぐに起き上がると2つの体はくっついて鬼面が立ち上がった。


「この鬼面!何度も立ち上がる!不死身の鬼面と知れ!本来の力を取り戻した俺様は強いぞ!」


再び刀子に襲いかかるが、また倒され、起き上がるということを繰り返した。


「どうやって倒せば・・・?」

刀子は思案した。

このままでは(らち)があかない。


デリトは鬼面を観察することにした。

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