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異世界転生殺し-チートキラー-  作者: Michikazu Sashie
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第35話「商人リキュウ」

鷹面を倒したデリトは天魔城へと向かう。


一方、天魔城に先に着いたヒデキチと刀子は、ヒデキチの父であるリキュウがとらわれていそうな地下牢へと向かう。


そこで出会ったのは・・・。

挿絵(By みてみん)

デリトは全力を込めた強力な蹴りを鷹面に食らわせ、その体を吹き飛ばして対面の壁に吹き飛ばした。




「・・・きゅう。」




強烈な蹴りを食らった鷹面はその場で意識を失ってしまった。




「・・・やはり集中して耳をすませ、常人の何倍もの異常に良い聴覚を研ぎ澄まして俺の息遣いを聞き分けてたんだな。

だが、その以上な聴覚故に急に大きな音を耳にしたら常人の何倍もダイレクトにダメージを受けると踏んだ。

・・・って、もう聞こえてないか。」




そう言うとデリトは城へ向かって走り出した。


大きな音は出てしまったものの、鍋というありふれたものを使ったおかげで天魔城の守衛たちも気づいていないようだった。




「ちっ、とんだ雑魚に時間を割いてしまったな。」


本来であれば魔王の幹部のため雑魚なわけがないが、異世界転生者・異世界転移者として数々の強敵を倒してきたデリトには戦いづらい雑魚だという認識しか無かった。



刀子たちは魔王城の地下牢を回っていた。


地下牢にはこれまで捕らえられた罪人たちがうずくまっていたが、異物である刀子たちを見ても騒がず、みな静かに見つめるだけだった。


「他の人たちが騒いだら大変と思ったけど逆に静かすぎて不気味・・・」


刀子はぶるっと震えた。


何もされていないのに空気感の冷たさだけで鳥肌が立っていた。


「魔王軍に捕まったが最後。死しかないというのは常識でやんすから。みんな(あきら)めてるんでしょう。第六天魔王に反逆の(きざ)しなど見せたには即、打首獄門(うちくびごくもん)ですからね。」


ヒデキチがこそこそと耳打ちした。


「ところで、お父さんはいそう?」


「うーん、いったいどこにいるのやら・・・捕らえられた人が多すぎてよく分からなくて・・・」


ヒデキチが自信なさげに言う。


その時、2人の前に一段と大きな檻が現れた。


檻の中にうずくまっている人物を見たときヒデキチが駆け出した。


「父ちゃん!」


「え?あれがお父さんなの?」

全然似てる感じがしないな、と刀子は思った。


「リキュウ父ちゃん!俺だよ!ヒデキチだよ!助けにきたよ!」


ヒデキチは檻につかまり何度も父の名前を呼んだ。


「ん・・・おお、ヒデキチ・・・ヒデキチなのか?」


「そうだよ!俺だよ父ちゃん!」


「おお・・・まさかお前が本当に助けに来てくれるとは・・・そちらの方は・・・?」


「刀子っていうんだ!めちゃくちゃ強いんだぜ!」


「・・・まさか!あの”異世界転生無双”?」


リキュウは驚いた様子であんぐりと口を開けている。


「そうだよ!刀子、力を見せてやってよ!こんな檻なんて”異世界転生無双”には一発でしょ!」


「え・・・?ええ!その通りよ!」


刀子はえっへんと胸を張り、その高々とそびえる胸をさらに高くさせた。


「2人とも檻から離れてね!・・・<(さば)の>・・・・」


刀子はそう言うと少し俯き、白く透明感のある左足を大きく後ろに伸ばした。


「<三枚おろし>!」


構えから目にも止まらぬスピードで刀を引き抜き真横に刀を大きく振りさばいた。


バキバキという音とともに鋼鉄製の檻が、いとも簡単に3つに切れた。


「うぉぉすげえ!さすが”異世界転生無双”!でも、なんで(さば)?」


「えへへ、前世で料理が得意だったからね。必殺技はだいたい私の得意料理から来てるの。」


「な、なるほど・・・よくわからないけど料理すごそう・・・いろんな意味で。」


「どういう意味?これでも私の料理は『天下無双!最強に激マズ!』って恐れられたんだからね!」


「いや、思った通りマズイんじゃねぇか!」


ヒデキチがビシとツッコむ。


2人ともリキュウをすんなりと見つけられてほっとしていたのだった。


「ヒデキチ・・・!こちらに来ておくれ・・・動けないんじゃ・・・」


リキュウがおいでと手を招く。


「父ちゃん!大丈夫だったか、心配したんだぞ・・・」


ヒデキチがかけよろうとしたときだった。


刀子の目の端に何かが映った。


それが何かは判別できなかったが、明らかに敵意をもった何かであることは間違いなかった。


「ヒデキチ危ない!」


刀子は素早く刀を引き抜き、ヒデキチを攻撃しようとしたその何かを受け止めた。


「あれ?刀子・・・?」


ヒデキチは刀子に守られながらぽかんとしている。


「これは・・・蛸の足・・・!?」


刀子の刀に吸い付いている”それ”は巨大な蛸の足のようだった。


「ぬっふふふ・・・!さすがは”異世界転生無双”じゃない?惚れ惚れするような素早い動きね!」


そう言いながらリキュウの後ろから現れたのは不気味な蛸の面をした男だった。


刀子を攻撃しているのとは別の足でリキュウに巻き付いていた。


「あら、私のことを男だと思った?残念だけどわたしはレディよ・・・!」


「こいつ何いってんだ・・・!?おめえ誰だ?」


ヒデキチが敵意をあらわにする。


「ぬふふふ!私は第五天魔将・蛸面(たこめん)!第六天魔王様の忠実なしもべにしてこの城を守るもの。この地下迷宮を統べるものよ。」


「蛸面だと?」


「その通り、私の足は蛸の足。8つの足それぞれに強力な吸盤がついているの。ほらほら!」


蛸面は吸盤でくっつけていた刀子の刀をもぎ取った。


「あっ、私の刀が・・・!」


刀子は怒りや驚きよりも悲しげな顔をしている。


「”異世界転生無双”も刀無(かたな)しでは型無(かたなし)(かな)し・・・なんてねぇ!」


「父ちゃんを離せキモメン!」


「ぬふふ。良いわよぉ・・・!それぃ!!」


蛸面は突然ぬ太い声を出しながら掴んでいたリキュウを刀子たちのほうに投げつけた。


「くっ・・・!」


刀子は素早くヒデキチの前に踏み出し、リキュウを受け止めた。


「あらぁ、ナイスキャッチー。私、思いきり人をぶん投げてぐちゃぐちゃにするのが日課なの。」


にやにやと笑いながら蛸面はパンパンと器用に足をぶつけ拍手(拍足?)をしていた。


「うう、すまないヒデキチ。あいつの目的は”異世界転生無双”だけだと・・・お前には何もしないと言われて・・・」


刀子に地面に下ろされたリキュウはヒデキチと刀子に土下座した。


「父ちゃん・・・しょうがないよ。あいつが悪いやつなんだ!俺が倒したる!」


「残念だけど、あなた達には何もできないわよ。ワタクシの武器はこの美しい8本のタコ足。”異世界転生無双”でも2人同時に守れるかしらん?」


そう言うと蛸面は8本の足を(とどろ)かせ3人に襲いかかった。


「暗くてよく見えない・・・!」


蛸面の連続攻撃を刀子は蹴りや(こぶし)で防御していたが、地下牢の暗闇から縦横無尽に繰り出される不規則な動きに翻弄(ほんらい)されていた。


「ほらほらほら!そんな手数じゃワタクシの攻撃を受けるには足りないわよ!」


蛸面がリキュウを返したのはわざとだった。


刀子の武器を奪い取ったうえで、刀子1人だけでなく2人の非力な者を守らせることで無敵の強さを誇る異世界転生者にも勝てるという算段(さんだん)を立てたのだった。


やはり第六天魔王様の思惑どおりね、と蛸面は密かににやりとしていた。


「やはり強いわね・・・”異世界転生無双”!でも、これで終わりよ!」


攻撃を繰り出していた蛸面は一度全ての足をしまい込み、同時に8つ全ての足を繰り出した。


「うっ、だめ・・・間に合わない・・・!」


蛸面の足は素早い動きで同時に刀子とヒデキチ、リキュウを狙い、武器を失った刀子へと迫った。




その時、どこからか飛来した砲弾が蛸面の足を直撃した。


「ふぎゃぁ!痛い!」


砲弾は蛸面の8つの足に被弾するや否や爆発し、蛸面の柔らかく強靭な足を木っ端微塵(こっぱみじん)に粉砕した。


「・・・俺の大切な仲間に手は出させねぇ。」


爆煙が晴れたところには黒い着物を着た男が立っていた。

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