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異世界転生殺し-チートキラー-  作者: Michikazu Sashie
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第34話「天魔城」

デリト、ヒデキチ、刀子は天魔城を前にして、第四天魔将の鷹面が立ちふさがる。

声を武器にする敵を前にデリトは苦戦を強いられる。

挿絵(By みてみん)

「どうしてバレた・・・」


デリトの<静かなる侵入者(サイトサイレンサー)>は異世界転生者たちにもすぐは分からないほどの消音能力のはずだった。


「ふむ、私はとてもとても耳がいいのでな。この魔王城の周囲の声なら誰の話し声でも聞き分けられる。ついでに声もよい。」


「なるほどな。じゃあ、その耳を活かして貴様は諜報部隊ってとこか?」


「イケメンな声だからお、おとこと思ったら女だ・・・」


ヒデキチは鷹面の豊満な胸を見て、場違いなことをつぶやいていた。

見ると鼻の下を伸ばしてみている。


こいつの将来が不安だ。


だが、デリトも最初は鷹面は男だと思っていた。


「その通り、私は第六天魔王様の忍部隊を統べるもの。そして、夜闇にまぎれて城に侵入する輩を排除するものだ!」


そう言うと鷹面は目にも留まらぬスピードでデリトに蹴りを繰り出してきた。


「ぐっ・・・!」


「デリト!」


デリトはとっさに腕をクロスして防御したがそのまま吹き飛ばされた。


「くそ、ここで目立つわけにはいかない!」


少し離れた陰にいるとはいえ、魔王城とそう遠くない場所で激しい戦闘をすれば敵の武士たちに気づかれる恐れがあった。


そうなってしまっては警戒が強まり、魔王城への侵入も難しくなる。


「刀子!ヒデキチ!お前らは先に行け!」


鷹面に攻撃され<静かなる侵入者(サイトサイレンサー)>が解けた二人は月明かりに照らされてしまっていた。


3人とも気づかれてしまっては終わりだ。


「でも・・・」


「いいから行け!」


デリトは躊躇する2人に<実体な(イリュージョン)き姿(イルミネイト)>、錯覚の魔法をかけた。


「・・・分かった!」


「旦那、お達者で~!」


刀子は躊躇(ためら)いながらもヒデキチを抱えて走っていった。


ヒデキチは刀子と2人きりになるのが嬉しいと見え、あまり躊躇いなく見えた。


薄情なやつだ。


だが、それでいい。


異世界転生者としての身体能力の高さを活かした刀子のあのスピードであれば魔王城につくのに1分もかからないだろうし、デリトの魔法もそこまでは持つだろう。


「ただ、早く合流しないとな。」


他の天魔将もあと一人、第一天魔将が第六天魔王の近くにいるらしい。


刀子1人でも切り抜けられるだろうが、二人一気にはいくらなんでも厳しい気もした。


「ふふ、合流できるかしら?」


「そうだな、諜報部隊ってことは実力や実戦経験は大したことないんだろ?正々堂々、対面で戦うなら負ける気はしない。」


「言ってくれるじゃない。だけど、残念だったわね!私は天魔将の中でも最速を誇る!」


そう言うと鷹面は尋常ではないスピードでデリトに蹴りを再び食らわせようとした。


「これが避けられるかしら!」


しかし、デリトはとっさに後ろに下がり、蹴りを(かわ)した。


「残念だが、ワンパターンだ。一度見きった攻撃を二度は受けない。」


「ふぅん、なかなか楽しめそうじゃないアナタ。」


「昭和の悪女みたいなセリフ吐くやつだな。しかし、まだ攻撃を受けるわけにはいかないんでね<インフィニティ・ウェポン>!」


デリトは魔法で空中に短剣を100本ほど出現させた。


まだ異世界転生者だとバレるわけにはいかないので現代的な武器は避け、さらに大きな音がでないものとして短剣を選んだ。


デリトの<インフィニティ・ウェポン>は拳銃以外どんな武器や兵器でも出現させることができたが、強力な武器を出現させればさせるほど強大な魔力を使うことになるのだった。


そのため、デリトは異世界の住人に対して強力な武器は使わず、魔力を温存することにしていた。


「なっ・・・!」


「こんな呪術は見たことがないだろう!」


デリトが腕を振ると全ての短剣が勢いよく鷹面にむかって飛んでいった。


「はっ!!!」


しかし、鷹面が口をすぼませ、デリトの方に向かって声を発すると、短剣が1本残らずあたりに撒き散らされた。


「何!?」


そのままデリトも短剣と同じようになにかにぶつかり吹き飛ばされた。


「くそ・・・」


吹き飛ばされて壁にぶつかったデリトのほうへ、こつこつと鷹面が歩いてくる。


「声が衝撃波となってあなたの邪術を吹き飛ばしたのよ。」


「ちっ、声が貴様の攻撃手段というわけか。」


「そう、声がよいというのは声がかっこいいなどということではないわ。周囲の音を全て拾うことができるし、私の声を周囲の特定の者や全ての者に聞かせることもできるのよ。」


「・・・なるほどな。身体能力やスピードだけが貴様の能力ではないということか。」


デリトはちらりと辺りを見回した。


何か使えるものはないか。


やつの弱点はないか。


「その通り。例えば、声でこんなこともできる。ふっ!」


鷹面が声を出すとその音は衝撃波となり、デリトを襲った。


「ぐっ!」


デリトは声をよけようとしたが、鷹面はあえて壁に反響させることで分散させ、デリトの後ろや横側から攻撃した。


「攻撃が見えないうえに威力も相当。厄介だな。」


吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がり口元の血を拭った。



一方、刀子たちは魔王城に潜入していた。


デリトが思うよりも刀子の移動スピードは早く、そのほっそりとした脚からは想像もつかないチート級の脚力で橋を渡りきったあと、ヒデキチを抱えながら素早く壁を駆け上がった。


たまたま開いていた2階の扉から侵入し、今は地下へと向かう道を探していた。


その間、城の見回りを行っている武士たちの間を走り抜けたが、<実体なき姿イリュージョンイルミネイト>がかかっているため、武士たちは突風が吹いたと誤認しただけだった。


実体な(イリュージョン)き姿(イルミネイト)>はデリトが敵の攻撃を受けると解けてしまうため、2人は魔法が解除されている前提で武士たちから隠れながら進んでいた。


というのも魔法がかけられている同士ではお互いに姿が見えるため、魔法が解除されているかどうかはかけた本人であるデリト以外には分からなかったので刀子たちは既に魔法が解除されている前提で動くほかなかったのだ。


そしてその予想は当たっていた。

天魔城に潜入した直後に既に魔法は解けてしまっていた。




「刀子!こっちに階段があるでやんす!」


こそこそ声でヒデキチが刀子を呼んだ。


そこには刀子たちが今いる1階から下の階に通じる階段があった。


「確か、地下に牢屋があるんだったんだよね。じゃあ、ここを進まないと・・・。」


しかし、その場には2人の門番がいた。


2人とも暇そうにあくびなどをしていたが、階段を煌々と照らす松明もあり、こっそりと忍び込むのは難しそうだった。




「あっしに策があるでやんす。このヒデキチにまかせてください!」


「え?それはどういう・・・」


ヒデキチは刀子の返事を待たずに、物陰から門番の前へ飛び出していった。


「うえーん、まよっちゃったよぉ・・・」


超絶下手くそな泣き真似をしながらヒデキチは出ていった。


どうやら、迷子を装ってその間に刀子が侵入するという算段のようだ。


「おい!お前止まれ!」


門番の1人が刀を抜きヒデキチに突きつけた。


「この魔王城に子供がいるなどおかしい・・・。コイツ、曲者(くせもの)だ!」


「ぎゃあ!バレた!」


「もう!何やってんの!」


逃げるヒデキチを追いかけようとする武士たちを素早く刀子は斬り伏せ、硬く重い甲冑を身にまとった武士たちは声を上げる間もなく倒れた。


「す、すみませんです・・・」

ヒデキチはもじもじしている。

「・・・はぁ。しょうがないけどこのまま早く進んでお父さんを助けないとね。」

刀子はため息をついた。

「ラジャ!」


ピッと手を真っ直ぐにし、敬礼をするヒデキチを刀子は白い目で睨んでいた。




「ちっ、早くいかないと!」

刀子たちが魔王城地下へ侵入したとき、デリトは鷹面の連撃に耐えていた。


猿面と違い、異世界転生者であるデリトも苦戦するほどのスピードと厄介な技をもつ敵だった。


しかし、何よりも苦戦の原因となっているのは静かに戦わないといけないということだった。


衝撃波のような声と、しなやかな蹴りを主な武器とする鷹面は、声を使ってデリトをピンポイントに攻めながらひらりと翼で舞い上がりデリトの攻撃を防いでいたが、 隠密を生業とする者らしく静かに戦うことには慣れているようだった。


声はピンポイントに攻撃でき、音域を変えることで効果や範囲を操作できるようだった。



「くっそ、音さえ気にしなければ・・・!」

デリトが大きな音を立ててしまうと敵に気づかれ、刀子たちが危険に脅かされる可能性があった。


本来は隠密作戦のようにヒデキチの父リキュウを救出するだけの作戦が既に破綻(はたん)しかけていた。


本気の攻撃を出してしまえば鷹面がすぐに敗北してしまうほどの実力差が両者にはあったが、それを分かっているかのように鷹面もあえて音を出さずに攻撃することで自分の立場を優位のまま保っていた。


「ふふふ、どうしたのかしら。そんなんじゃ私を倒すことなどできないわよ!<旋風声

手裏剣>!」


華麗に舞いながら鷹面は声の攻撃を繰り出した。


「くっ・・・!」


その攻撃は静かながら壁をいとも簡単に破壊するだけの威力を持ち、デリトもまともに喰らえば鼓膜が破れるほどのダメージを耳に追うのは明白だった。




「逃げるが勝ちぃ!」


デリトは背を向けて走り出した。


「あ!待ちなさい!逃げても無駄よ!」


あたりは城下町でも入り組んだ下町地域のようで細い路地があたりに張り巡らされていた。


その細道を逃げ回りながら策を講じることにしたが、今のところ何の策も練られていなかった。




策を練ろうにも鷹面の連撃で考える隙があたえられなかった。


鷹面に追いつけないスピードでデリトは細道を走り回っていたが、やがて立ち止まり、物陰に隠れた。


「どうにかしないと、あの声とスピードを・・・」


デリトもボッチェレヌの<ふわふわアサシン>が使えれば鷹面の喉をつかえさせ、一瞬でも声を出させないようにできたがデリトにはその系統の技は使えなかった。


姑息(こそく)だと言わずにボッチェレヌに習うべきだったか・・・」


デリトは少し後悔していた。




その時、デリトは頭上に気配を感じた 。

「みぃつけた!♥」


「何!?どこから・・・」


「どこにいても見つけてあげる!フッ!」


鷹面は口をすぼませ声をデリトに当てた。


「ぐっ・・・!」


鷹面の方にむけていた方の右耳の鼓膜は破れ、さらに体中に切り傷を負ってしまったのでデリトはすぐに繰り出された鷹面の俊敏な蹴りを躱してまた走り出した。


「いつまで逃げるつもり?」


身体能力としてはスピードは互角だが、脚力はデリトのほうがステータスに優れているため逃げれば少しの間であれば鷹面を巻くことは可能だったが それも少しの間だけだった。


「クソ・・・どうしてあいつは場所が分かった・・・?」


いくら鷹面の耳が良いとはいえ、複雑な路地の間に潜むデリトの息遣いを聞き分けられるなどそれこそチート級の聴覚と言ってよかった。


「待てよ・・・」


デリトは走っている間に見つけたあるものを活用して対応することにした。

それは下町だからこそありふれたものだったが、鷹面には効果があるとデリトは踏んだ。


「転生者としてあるまじきセコい攻撃だろうが・・・」


素早くそれがある場所に戻り、手に取った。


炎や大きな音が鳴ってしまう技、飛び道具が使えず近接戦闘も互角となるとトラップをしかける必要性があった。


「どこに行ったのかしら・・・。」


鷹面は走りながら耳を澄ました。


声が通りやすく耳も良いが、特に集中すれば声で攻撃もできるし、どんな音でも聞き分けられるのが鷹面の自慢だった。




「そこね・・・!」


デリトは今、鷹面が走っている先の角を曲がったところすぐに潜んでいるようだった。


鷹面は豊満な胸の間にナイフを仕込んでいた。


デリトは角からすぐのところに潜んでいるようだったが、鷹面は胸からその隠しナイフを取り出して準備した。


「どこに隠れたって無駄よ!」


鷹面は素早く角を曲がり、デリトを仕留めようとナイフを突き出した。


しかし、鷹面が走っていた先には誰かが使ったであろう重そうな鉄製の鍋が縄で吊るされていた。


「何!?」


「この音が聞こえるかな!?」


デリトは手に持っていた小さな鉄鍋を吊るした大きい鉄鍋にぶつけて大きな音を出した。


「うぁっ!?」


鷹面は耳を塞いでその場にうずくまった。


「これで終わりだ。」


デリトは全力を込めた強力な蹴りを鷹面に食らわせ、その体を吹き飛ばして対面の壁に吹き飛ばした。

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