第32話「凶都潜入」
デリトと刀子の前にヒデキチと名乗る少年が現れる。
彼は自身の父で行方不明となった商人リキュウを探していると話す。
「父ちゃんを救いに来た?」
虚を突かれた表情でデリトが言った。
「ええ、あっしの父である商人リキュウが凶都で行方不明になったんです。
だからあっしはここまで来た。集めた噂によれば商人リキュウは魔王軍に捕まったらしいということが分かったんです。」
腕を組んで目を閉じ、ヒデキチは大変だったと振り返った。
「なるほどね。そこで私達を見かけたってところ?」
刀子が刀を突きつけながら言った。
「ええ。どうやって子供ひとりで凶都に忍び込もうか考え込んでいた矢先、アニキたちの話が聞こえてきたんですよ!
こりゃ、渡りに船ということでねぇ、おねげぇです!あっしを凶都まで同行させてくだせぇ!」
「だが、お前に何ができるんだ?俺らとしては信用のならない子供を連れてくことにリスクしかないんだぞ?メリットを提示しないと。」
「へへへ、安心してくだせぇ。ちゃんとありますよ。メリットってやつが。見てください!」
そう言うとヒデキチが取り出したのは通行証と筆で書かれた木の板だった。
「あ!これ知ってる!凶都に入るために必要な魔法のお札でしょ?何で持ってるの??」
「えへへ、これは父ちゃんが凶都に入る時に色々なルートで手に入れたものでして、なにか起こったときのための予備としてあっしに送って来てくれたものなんですよ!」
「じゃあ、お前はそれを使えばいいんじゃないか?」
「それが、これを使うには大人と一緒でないといけなくて、本当は父ちゃんが捕まったらしいという噂が流れた時に
あっしのばあちゃんと行こうとしていたのですが、ばあちゃんが腰を痛めて動けなくなってしまって。
ばあちゃんは親戚に預けて、急ぎこの凶都に向かってきたというわけでやんす。」
「・・・だが、大人が同行していないので使えないと、そういうことだな。」
「ええ!どうにかおねげぇです!これが無いと旦那たちも凶都に入れないし、旦那たちがいないとあっしも凶都に入れないんですよ。」
「・・・分かった。じゃあ、これは俺らが力づくでもらっていく。」
「そんなぁ!」
「デリト!」
ヒデキチと刀子が同時に声を上げた。
「・・・嘘だ。その話乗ろう。だが、それが本当でないなら・・・容赦しないぞ。」
「さすが旦那!そうこなくっちゃなぁ!信じてください!」
ヒデキチはパチンと指を鳴らした。
「もー、びっくりしたよデリト。」
「すまない。そうと決まれば行くか!」
デリトは自然に微笑んでいた。冗談がこんなにすんなり出てくるのは前世でもなかなか無いことだった。
「行っていいぞ。」
凶都の関門では一人づつチェックが行われていた。
といっても通行証と書かれた魔法の札を使えば自動的に関門が反応し通ることができるような仕組みになっていたため、門番は人数や職業などを聞くだけで特に止められるひともいないようだった。
既に第六天魔王の長い圧政に慣れてしまったため、反乱を企てるような者もしばらくいないので魔王軍も緩んでいるとヒデキチが教えてくれた。
「む、お前らは家族か?」
デリトたちは鋭い目つきをした門番に聞かれた。
全員デリトのBクラス魔法<メタモルフォーゼ>によって服装を現地の人の格好に変えていた。
その声には特段刺々しさは無かったが、どうやら刀子の若さの割に子供だとしてもヒデキチが年齢が行き過ぎていると思われたようだった。
「あ、甥っ子です・・・都を見たいって聞かないもんで連れてきたんです。へへへ。」
デリトはごまかし笑いで乗り切ろうとした。
「なるほどな。それで?お前らはどこから来た?」
「・・・・・・。」
デリトと刀子は答えられなかった。
ふたりともこの異世界の地名についてあまり知らなかったのだ。
「基州だよ!」
ヒデキチが答えた。
「そうか、じゃあ通行料30000イエンだ。よし、行っていいぞ。」
門番は少し不審がりながらも三人を通した。
但し、通行料を思い切りふんだくられた。
本来の通行料は20000イエンと高額だが、さらに門番のお小遣い分も上乗せされているらしい。
門番は小遣い稼ぎができるので態度が悪いものはあまりいないが、普通の魔王軍の武士たちは窃盗、強姦、恐喝など悪行の限りを尽くしているらしい。
人々はそんな腐敗しきった圧政に苦しんでいるが、皮肉なことに好き勝手に振舞えるので魔王軍に入りたいというのが子どもたちの一番人気の夢らしい。
「ふう、助かった。ありがとうヒデキチ。」
「いえいえ!デリトのアニキと刀子のためならこんなもの!」
デリトと刀子は早速ヒデキチを仲間に入れたことを正解だと思っていた。
三人は関門をくぐってしばらく過ぎた市場の裏通りにいた。
わいわいと賑わいを見せる市場の喧騒が聞こえる。
「それで、お二人はどちらに向かわれるので?いきなり第六天魔王に会いに行くおつもりですか?」
「うん!ちゃっちゃと戦って、ちゃっちゃと倒しちゃおうかと!」
「ちょちょ、そんな大きな声で言っちゃダメですよ!ここは魔王のお膝元でやんすよ!」
ヒデキチが慌てて刀子の口を塞ぐような動作をした。
三人の隣を行商人が通り過ぎたが聞かれてはいないようだった。
「もし、よろしければでやんすが・・・」
もじもじとヒデキチは二人を見上げた。
「あっしの父ちゃんを探すのを手伝ってくれやせんか?1日で見つからなかったらあっしが一人で探しに行くので!」
「うーん、でもな・・・。」
デリトはちらりと刀子を見た。
異世界転生者である刀子を監視するという目的しかないデリトとしてはどちらでも良いが、面倒事に巻き込まれそうな気がしていた。
「うん、いいよ!」
「即答!?」
刀子の明るい返答に、もはやデリトは驚くばかりだった。
「すみません!じゃあ、リキュウの噂を収集しやしょう!」
「よっし!行こう!」
「はぁ・・・」
ずんずんと歩きだす二人に渋々デリトはついていき始めた。
「ああ、リキュウ?聞いたことあるな?」
三人が聞き込みを開始して3人目で知っていそうな行商人に行き当たった。
「え!?おじさん聞いたことあるの?」
「ああ、なんかこの間そこらへんで騒ぎになってたかなぁ、」
さすがにうまく行き過ぎでデリトは不安だったが、話を聞いていくとどうやらヒデキチの父、商人リキュウが捕らえられたのは間違いないようだった。
魔王軍の城、天魔城に連れ去られたようだった。
さらに魔王軍に捕まったものは城の地下牢へ捕らえられるとのことだった。
その後の聞き込みでも商人や住人たちは同じように言っており、リキュウの逮捕はかなりの騒ぎだったことが分かった。
「まさか、こんなに早く情報がつかめるとはな・・・。」
デリトはつぶやいた。
全てが上手く行き過ぎているような気もしていた。
「でも良かったね!お父さん、捕まっちゃってるらしいけど居場所が分かって!」
「いやぁ、でも心配です。捕まったのは分かったんですが、その理由を誰も知らないってのが・・・」
「確かにな、閉鎖的な都だからこそ、どのような罪で捕まったのかを誰か知っていても良いようなものなのに誰も知らないとは。」
「とりあえず天魔城に忍び込もう!」
グッと拳を握って刀子が言った。
「そんなに簡単に忍び込めるんですかね・・・」
「大丈夫だよ!」
「どこからそんな自信が・・・」
「できるよ!だって、デリトは魔法いっぱい使えるし、忍び込む魔法くらい、ちょちょいのちょいちょーいでしょ!」
「えっ」
急な指名でデリトは固まってしまった。
「おー!さすがデリトの旦那!頼りにしてます!」
「頼りにしてるよ、デリト!」
「・・・・・・。」
デリトとしては異世界転生者である刀子や異世界の住人であるヒデキチの前で手の内を明かしすぎるのは避けたかったが、話の流れ的に断れる空気ではなかった。
「ああ、見せてやろう、俺の本気を!」
「わーい、やったー!」
「いえーい!」
子供のように(そもそも、ふたりとも子供だが)はしゃいでいる二人を見てデリトは心が暖かくなるのを感じていた。
その頃、天魔城の天守閣では仮面を被った男のところへ側近が何やら耳打ちをしていた。
「商人リキュウの件は順調だな?」
「はっ。首尾は上々でございます。第六天魔王様。」
「ふん。引き続きやれ。異世界転生無双を捕らえるぞ。」
「かしこまりました。」
側近の忍者が去った後、第六天魔王は一人にやりと笑った。
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