第28話「JK(女子高生)の異世界無双!」
”O.W.H.L.”に負けウルレカッスルに強制転移させられたデリトはボッチェレヌとゾーレと離れ離れになり、転移した異世界で大勢の武士たちに囲まれる。
「ここは・・・別の異世界か・・・?」
肌で感じる空気は異世界”ギガントワールド”のそれとは全く違っていた。
海がどこまでも広がっていた”ギガントワールド”に比べて湿度は低いが、どこか重く暗い雰囲気のある森だった。
「おーい!ゾーレ!ボッチェレヌ!」
声の限り叫んだが密度の高い森に吸い込まれるばかりで反応はなかった。
デリトが転移してきてから既に2時間ほど経っていたが、ゾーレとボッチェレヌは見つからずじまいだった。
暗い森をさまよっていたが、目の前に少し開けた空間が出てきた。
そこは森の中を流れていたいくつかの小川の源流のようで、丸く縁取られている泉の中から水が静かに湧き出していた。
デリトは二人を探すのを一旦諦めてその小川の水を飲んだ。
水は冷たく澄んでいて、先程まで異世界で戦っていたデリトの喉を潤した。
デリトは水を飲み終えてぐっと腕で水を拭うと、周囲をぐるりと見渡した。
「・・・誰だ。」
静かに森に問いかけたが答えは帰ってこなかった。
「お前らが先程から俺を見張っているのは分かっている。」
デリトがそういうや否やどこからともなく矢が一本飛んできた。
「この程度じゃ俺は殺せない。」
そう言いながらデリトは飛んできた矢を素手で掴んだ。
ざざっと木々が揺れる音と共に周囲の森から100人を超える武士たちが出てきた。
「貴様、異世界転生者の一味か?」
「ほう、お侍とはな。何となくこの格好で気づいていたが・・・ここはただ和風の異世界か?それとも戦国の日本か?」
デリトはそう言うと自分の姿を見下ろした。
異世界転移するとその異世界に合った姿になるが、デリトは転移してきた直後、武士のような出で立ちだったためここが和風の異世界だと気づいていた。
もしかすると戦国時代の日本をそのまま写したような異世界なのかもしれない。
「・・・・・・。」
武士たちは無言でデリトに日本刀を向けている。
中には先程、弓を射ったであろう武士も弓を構えていた。
「・・・答えてくれないのか。それにしてもこれだけの人数が隠れていたとはさすがに気づかなかった。よく訓練されている。」
デリトは友好を示す印に腕をあげて武器がないことを示したが
やはり答えはなく、辺りには泉の湧き出る音と弓を強く引くぎりぎりとしなる音のみが聞こえていた。
「破っ!」
指揮官らしき武士の掛け声に合わせて他の武士も同時に動いた。
「ほう、統率のとれた武士たちだ・・・!だが、俺にはそんなもの・・・」
デリトは敵を攻撃しようと魔法スキルを発動しかけたが、何かが急にデリトの前に降ってきたため中断した。
「<無双・連撃>!」
後ろ姿しか見えなかったが、その何かはどこからどう見ても刀を持った女子高生だった。
「ぐああ!」
女子高生は目にも止まらぬスピードで勢いよく刀を振り回し、文字通りバタバタと敵を倒していった。
武士たちもそれなりの手練のようで、鋭い太刀筋で、足場の悪い泉の周りを立ち回っていた。
一人の武士が女子高生の首を狙い刀を振るうと女子高生は刀で受け止めながら強烈な蹴りをお見舞いし、怯んだところを何の迷いもなく切り倒した。
その一撃は武士の硬い甲冑を体ごと真っ二つに切るほどの威力だった。
「やれえ!」
武士が三人同時に斬りかかった。
「<無双・旋回>!」
女子高生は素早く身を屈め前方・斜め後方左・斜め後方右から襲いかかる武士たちを回転斬りで同時に倒した。
「これなら・・・!」
武士たちと戦う女子高生を狙い弓兵が矢を放った。
「<無双・反転>!」
女子高生は矢を弾くと同時に弓兵のほうへ打ち返した。
「がぁっ・・・!」
跳ね返した矢は弓兵の喉元へ一直線に進み、深々と刺さった。
数十秒後、泉を血の赤に染めて、青いセーラー服を着た女子高生は立っていた。
赤と青が女子高生の肉付きが良く、すらりとした白い足と対比して、実際よりも鮮烈な色に見えた。
「大丈夫?怪我してない?」
女子高生は心配した表情で振り返った。
100人以上の手練れの武士をものの数十秒で倒したとは思えないくらいの軽やかさだった。
凛とした少しつり上がった目つきの女子高生は、戦いによって頬が紅潮していたため柔らかさもほのかに感じさせた。
「ああ、ありがとう・・・ん?ゾーレ・・・?」
その強さから、どう考えても異世界転生者である女子高生の顔は、良く見知った顔だった。
肌の色こそ違えど、ゾーレと瓜二つと言っても良かった。
「ゾー・・・?何?」
女子高生はぽかんと穴が空くくらいデリトの顔を見ている。
「い、いや、知り合いに似ていたもので・・・」
「ふーん、そう。」
「・・・あ、大丈夫だ!助けてくれてありがとう。」
女子高生が現れてからというもの呆然としていただけのデリトはようやく正気を取り戻した。
相手が若い女性だからというわけではないが、何となくデリトはどきどきしていた。
いやいや、いきなり現れてさっと助けるなんてかっこよすぎだろ。惚れてまうやろ。
デリトは前世の冴えない中年サラリーマンに一瞬戻りかけていた。
「あなた名前は?魔王軍に追われていたみたいだけど?」
「ああ、俺はデリト=ヘロ。君は?」
「私は剣持刀子。デリトっていうんだね、よろしくね!」
「よろしく。ところで魔王軍って?」
「あれ、魔王軍も知らない感じだった?じゃあ何で襲われてたんだろ・・・」
話しぶりがだいぶ軽い・・・あれだけ強く簡単に人を斬っても中身は見た目通りの女子高生のようだ。
「魔王軍っていうのは正確にいうと第六天魔王が統率してる軍のことだよ。この異世界”戦国乱世”を支配してるの。」
「”戦国乱世”?」
「そう!あ、異世界っていうのは私がいた世界とは違う世界でって・・・わからないか。とにかく、魔王軍は悪い人たちで、ここに住んでる人々は第六天魔王に逆らわないように生きてるの。」
「なるほど・・・第六天魔王・・・。」
どうやら刀子はデリトが異世界転生者や異世界転移者であるとまでは気づいていないようだった。
「ところで、普通の人は第六天魔王のこととか、魔王軍のことは子供のときから知っているはずだけど・・・?」
「あ、ああ!実は頭打っちゃって、記憶が無くて・・・。」
デリトは慌てて取り繕った。この異世界の常識を知らないなんて怪しすぎた。
ベイスレの例外はあるとはいえ、今まであった異世界転生者は全て、魔王にも勝るほどの悪行を重ねていた。
最初は良い人のようにみえても最終的には悪い奴だということもあるため、刀子がこの異世界の転生者であるならば戦う必要性が出てくる。
今、疑われるわけにはいかなかった。
よく考えてみれば刀子のことを知り合いに似てるといったり、自分の名前を名乗れたりと穴だらけではあったがそれすら気づかないほどにデリトは動揺していた。
「君は・・・」
「君じゃなくて刀子ね!」
「・・・刀子は、魔王を倒すためにあいつらと戦っていたのか?」
デリトは君と呼んだのを強めになおされて言い直した。
これからは刀子と呼んだほうが無難なようだ。
「うーん、倒そうと思っていた訳じゃないんだけど、私が異世界転生者って分かったら追われることになって・・・嫌々戦うことになったってかんじかな?
それに苦しんでるこの異世界の人達を助けたいっていう気持ちもあったしね。人助けもできるし一石二鳥ってとこかな!」
「なるほど、それは偉いな・・・。」
今まで会った異世界転生者は全員、異世界を支配する魔王を打ち倒すために異世界転生してきていた。
しかし、魔王を倒すと世界で一番強いのは転生者のため自らの力に奢って堕ちてしまっていたのだ。
刀子もその例に漏れずこの異世界の魔王を倒すために転生してきたのだ、魔王に追われるのは当然の流れかもしれない。
「でも、あなたは何故追われていたの・・・?」
「い、いや、分からないな・・・。」
まさかあの異世界一般武士(という言い方もおかしいような気がしたが)にも異世界転生者と見透かされていたというわけではないだろうが、デリトは何となくごまかした。
「おそらく、君を追っていた武士たちが勘違いしたとか・・・」
「え!ごめんなさい!確かに、魔王軍にずっと追われてるし・・・そうかも。ごめんね、巻き込んじゃって・・・。」
「い、いや!そういう意味ではないんだが・・・。調子狂うな・・・」
デリトは分析した事実を述べたつもりだったのだが、嫌味を言ったように捉えられてしまったようだった。
前世も含めて刀子のようなはつらつとした女性とは話した経験が無かったので、デリトは出会ったときからあたふたしていた。
異世界転生してからというもの、チート能力で女性を守ったり、異世界転生者などの敵と戦うことは多かったが、女性に敵から守られるのは珍しかった。
「そしたら、私があなたのことを護衛してあげるよ!」
「え、いや・・・」
「うん、それが良いね!」
「えー、少しは聞いてくれよ・・・」
転生してからというもの、クールに振る舞っていたはずのデリトのキャラは崩壊寸前だった。
思えば前世ではメイしか女性を知らず、転生してからは異世界転生者を抹殺するために女性はおろか、他の人間とプライベートな感じできちんと話すことも無かったため当然の結実であった。
思えば、娘ともきちんと話せた試しがない。
彼の精神は芯では童貞同然、否それ以下でただのコミュ障かもしれなかった。
「あなた・・・あ、私も名前で呼んだほうが良いよね?デリトは記憶無くなる前、どこに行こうと思ってたのかな?」
「ん、俺はその・・・」
異世界転生者を殺すのが目的だから、刀子に会えたので目的は達成しているとまでは言えなかった。
「あ、もしかして東でしょ!あそこは魔王軍もあんまりいないっていうし。」
「え、ああ、まぁ?」
「おっけい!じゃあこの”メチャつよ”な私が護衛してそこまで送ってあげる!決定ね!」
「んぁ・・・ああ・・・。」
デリトは刀子に押されるがままに東へと向かうことになってしまったのだった。
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