第27話「”異世界転生殺し”討伐クエスト」
ベイスレを倒したデリトだったが、異世界転生勇者同盟「O.W.H.L(Other Worlds Heros League)」のゴロスーグやエライトの手によって重傷を負わされ、窮地に陥るが・・・。
『それでは、さようなら異世界転生者デリト。”異世界転生殺し”、彼を、ベイスレを殺さずにいてくれたことに感謝いたします。』
「いいから早くしてやれ。早く世界を・・・救わせてやれ。」
既に意識を失いかけて動かないベイスレを抱きかかえてタイタンは天井へと戻っていった。
タイタンはスライムのように透明な体でぼんやりと人間の女性の姿をしているように見えた。
「さて、あと少しすればウルレカッスルが現れる。それまで少しゆっくりとしていよう。今回は一段と疲れた。」
デリトは振り返り、階段を降りてゾーレたちのもとへと戻ろうとした。
階段の最後の段を降りた時、頭上から何かが勢いよく落ちてきた。
「なっ・・・」
デリトは少し反応が遅れ、その何かによって頬を切った。
普段であれば避けられたかもしれないが、ベイスレとの戦いによって疲れ切っているデリトはうまく反応できていなかった。
「デリト!」
「旦那!」
少し離れていたところにいたゾーレたちはその姿を捕らえていた。
デリトに急に襲いかかったもの、それは人だった。
突如として頭上に光る輪が現れたかと思うとその中から人が降ってきたのだ。
「ちっ!避けてんじゃねぇぞ!」
デリトの頭をかち割ろうと振り下ろされた拳が外れ、地面つまりクロノスのぶよぶよとした体に突き刺さりイライラと声をあげたのは、ガチガチに髪の毛を固めて立てた大柄な男だった。
派手なピンク色の髪色をしているその男は筋骨隆々で眼光が鋭かった。
「ゴロスーグ、君には速さが足りないよ。誰よりも速く、何より速く、光よりも速くないと。」
「いつの間に・・・!」
ピンク髪の男に気を取られているうちにゾーレとボッチェレヌの後ろに金髪の男が立っていた。
男はいつの間にかボッチェレヌとゾーレに剣を突きつけていた。
金色の装飾が施された銀色に輝く刀身を持つ身の丈ほどもある大剣だった。
「無駄だから動かないでくれ、お嬢さん。そして、ふわふわのキャラクター。
私は勇者エライト。”光速”つまり、光の速さで動ける”権能”を持っている。私はどの異世界でも最速なんだ。」
目の前にいきなり現れたことといい、その言葉は真実のようだった。
「おい!エライト!てめえはぜってぇ手を出すなよ!!絶対にだ!」
ゴロスーグと呼ばれた男はそう言うとデリトに向かって再び拳を繰り出した。
「ちっ!こっちは疲れてんだ!<インフィニット・ウェポン>!」
デリトは突如として現れた襲撃者に対して魔法で応戦した。
ゾーレとボッチェレヌが人質に捕らえているが、エライトという男は人質をどうにかしようという気はないようでデリトは反撃しても大丈夫と判断した。
出現させた兵器は火を吹き、銃弾や砲弾がゴロスーグを直撃した。
「ウォラ!」
ゴロスーグは素早く拳を繰り出し、全ての砲弾や銃弾を殴り飛ばした。
とてつもない轟音とともに弾は全て爆発した。
「<インフィニット・ウェポン>は俺のお気に入りの魔法だったのに最近は微塵も通用しなくて哀しいな!<鋼の蜘蛛糸>!」
デリトは素早く鋼鉄の糸でゴロスーグを縛り上げた。
「おい・・・せこい技なんか使わずにかかってこいよ!フン!」
ゴロスーグが力を入れると鋼鉄の糸はミチミチと音を立て切れてしまった。
全身から血を流しているが気にする様子は無かった。
「おいおい、それを簡単に千切れるやつなんて今までいなかったぞ・・・<氷結界>!」
デリトはA級魔法でゴロスーグを氷漬けにした。
これまでの異世界転移において様々な魔法を習得し、あらかたのA級やS級魔法が使えるのだった。
相手の異世界転生者によってはA級魔法でも弱点をつくことができる場合があるため、ある程度色々な魔法を使ってみることにしていた。
バキ、と氷にヒビが入り、ゴロスーグが飛び出てきた。
「なめてんのかコラァ!」
「<黒炎の洗礼>!」
異世界転生者であるゴロスーグに効かないことは想定の範囲内だったため、デリトは間髪入れずS級の炎魔法を繰り出した。
黒く禍々しく燃える火炎放射はゴロスーグを攻撃した。
闇と炎属性の混じった高度な魔法だった。
「ウラァ!」
ゴロスーグは拳で炎を弾いた。
「魔法を弾いた!?」
デリトは驚愕した。
攻撃魔法を防御魔法で防ぐものはこれまでたくさんいたが、拳で魔法を弾く異世界転生者は初めて見た。
「俺様の”権能”は<拳花常討>!ケンカならぜってえ負けねぇ。俺様の「力は相手の能力に関わらず最強」って能力だ。
てめぇは魔法が使えるようだが関係ねぇ。魔法も物理も全ての攻撃に対して俺は最強だ。絶対に屈しないダイヤモンド級の堅い意志の現れだ。」
「そんなのアリかよ・・・!」
「行くぜ!セコい手を使うふにゃふにゃの精神のてめぇには俺の硬い拳をお見舞いしてやる。<鐵拳制祭>!」
ゴロスーグはデリトをタコ殴りにした。
「く・・・!」
素早く繰り出される拳はデリトの疲弊した体を打ちのめした。<ダイヤモンド・バリア>など高度な防御魔法もゴロスーグの前ではガラスのように割れた。
「オラァ!」
ゴロスーグは力強く拳を振り抜き、デリトの体は宙に浮いた。
「デリト!」
「旦那!」
「ちっ、俺は負けてばかりだな・・・!」
デリトは起き上がるとプッと地面に血を吐いた。
ゴロスーグが戦いにおいて圧倒的に強いのは確からしい。
「貴様ら何者だ・・・!」
「ああ?てめぇは死ぬんだ。俺が何者かは関係ねぇなぁ。」
「まぁ、そういうなゴロスーグ。私達は”O.W.H.L.”。”異世界転生勇者同盟(Other Worlds Heros League)”だ。」
いつの間にかデリトの後ろにエライトが立っていた。
デリトとは反対側を向いているエライトのマントがバサリと舞う。
その白いマントには紺色で”O.W.H.L.(オウル)”と文字が書かれたフクロウのシルエットのロゴがあった。
”OWL”とかけているのだろう。
「”異世界転生勇者同盟”・・・?」
「その通り、我々は異世界を救うため転生してきた勇者たちの代表者。異世界転生者、そして異世界そのもの救う存在だ。」
「救う・・・?」
「そう、異世界を支配する魔王たち、そして、”異世界転生殺し”デリト=ヘロ。君からね。」
エライトは大剣をデリトに突きつけた。
「何か誤解があるようだ。俺は異世界を我がものにしようとする異世界転生者のみを殺してきた。」
デリトは喉元に剣先を突きつけられながらエライトの目を見て答えた。
「・・・本当にそうかな。じゃあ、君が殺してきたのは悪い異世界転生者だけかな?」
「・・・・・・。」
少なくともベイスレはそれとは違ったのだろうと思った。
「もちろん、君にも言い分はあるのだろう。ただ、異世界転生者憎きというだけでこんな分の悪い戦いをするような人ではないかもしれないね。
だから我々は君たち”異世界転生者殺し”一行を捕らえるよう命令されている。」
「命令?誰に?」
「・・・転生女神長ユークリートそのひとだ。」
「ユークリートだと・・・!」
デリトには聞き覚えがあった。
転生の女神でありながら”反逆の女神”と呼ばれるウルレカッスルからよく名を聞く、女神長ユークリート。
異世界転生においての責任者たる転生の女神、それをまとめる者。
そして、異世界を支配することを企み、暗躍する者。
ユークリートは以前からウルレカッスルへ刺客を差し向けていると聞いていた。
だからこそ、ユークリートはデリト達の目の前へは時々しか現れず、姿を隠しているのだった。
ついに”異世界転生殺し”を指示するウルレカッスルではなく、実行者であるデリト自身へも転生の女神長は刺客を差し向けてきたのだった。
「ヴォイ!エライト。こいつと話してるのも惜しい。殺しちまおう。」
ゴロスーグがガンガンと力強くメリケンサック同士をかち合わせる。
「そうはいかない。まだ彼が敵と確定したわけではない。忘れたわけではないだろうが、私は”O.W.H.L.”のリーダーを任されている。
私の指示は女神長ユークリートの指示と心得てもらおう”暴虐の転生番長”ゴロスーグ。」
「ちっ。俺は認めてねぇからな。”光の転生勇者”エライトさんよ。」
「そういうことだ”異世界転生殺し”デリト、さぁ、おとなしく我々についてきてもらおうか・・・」
くるりと振り向きエライトがそう言いかけた時、まばゆい光があたりを満たした。
「何だぁ・・・?」
ゴロスーグが眩しそうに上方を見やる。
「遅れて申し訳ございませんデリト。」
突如として現れた光の中にいたのは女神長ユークリートと争っている”反逆の女神”だった。
「ウルレカッスル!」
「姐さん!」
ボッチェレヌが歓喜の声を上げる。
「転生の女神様・・・!」
ゾーレも眩しそうに見上げる。
闇属性である魔族の少女には対極にあるといえる光属性の転生の女神は少し苦手だった。
「来ましたね。ウルレカッスル。”反逆の女神”よ。貴方も我々についてきて頂きます。」
エライトは他の人に比べて全く眩しくなさそうだった。
「”光の転生勇者”エライト。女神長に選ばれし真の勇者よ。
残念ですがそれはできません。私には使命があるのです。そして、異世界転生者には転生の女神に触れることすら叶いません。
諦めて頂けますか。」
ユークリートは静かに優しく、しかし強く言った。
「それはできません。私にも転生の女神長に課された使命があります。ユークリートに託されたこの弓矢で貴方を捕らえるという使命が。」
エライトが手をかざすとその手に白く光り輝く一組の弓矢が現れた。
「それは”方舟の鍵”・・・!創造神すら傷つけることが可能だという隠されし神器!一体どこで・・・!」
ウルレカッスルは驚愕の表情をあらわにし、身構えた。
「貫け、真実を閻く鍵よ!」
エライトはそう言ってウルレカッスルに向けて思い切り弓矢を引いた。
「くっ・・・!」
ウルレカッスルはすんでのところで避けたが、その矢は腕を掠ってタイタンの体に突き刺さった。
「外しましたか・・・しかし、それでも十分な効果があるようですね・・・!」
「力が・・・!これは・・・!」
槍が体をかすめた途端、翼で宙を飛んでいたウルレカッスルは力を失いふらふらと地面に落ちた。
「ゴロスーグ、やれ!これで奴は実体化したぞ!」
「おうよ!」
ゴロスーグはすぐにウルレカッスルを捕らえにかかった。
「・・・セフィロトの杖よ、我が勇者を・・・」
ウルレカッスルはすぐさま力が抜けていくなんとか腕を上げ、呪文を唱え始めた。
「ちっ、させるか!」
ゴロスーグはウルレカッスルの腹を思い切り殴ったが、杖が光輝き呪文が展開された。
デリトの体の周囲に光の文字が渦巻き転移を始めた。
「ウルレカッスル・・・!」
「逃がすか!」
エライトが光の速さでデリトに近づき大剣を振るったが既に転移を始めていたため当たることはなかった。
「・・・転移させたまえ・・・!デリト・・・異世界転生者たちを倒すのです・・・!」
呪文を中断させられたウルレカッスルは殴られた腹部を抑えながらつぶやいた。
「待て・・・ゾーレ・・・ボッチェレヌ・・・!」
デリトは手を伸ばしたが、その掌は宙を掴んだ。
「くそ・・・!」
気づくと彼は鬱蒼と木々が生い茂る湿った暗い森に転移直前と同じ格好でひざまずいていた。
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