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第1話 転生

神代 遥翔と言います。

最近になって小説を書きたい意欲が出たので、投稿する事にしました。


仕事の都合上、不定期更新になると思いますが、暇潰し程度に見ていただけると幸いです。



後書きに用語説明を載せますので、そちらも是非。



 ――俺は転生した。


 いきなりこいつは何を言っているんだ。頭可笑しいんじゃないかと思うかも知れないが、少しだけ俺の話を聞いて欲しい。



 俺の名前は『御堂(みどう) 聡哉(そうや)』。二十一世紀の現代日本に生まれた極普通のサラリーマンだ。そんな一般的な社会人である俺にも密かな趣味があった。

 主にライトノベルが多かったが、小説を読むこと。最初は仕事で目を使って疲労感があるのにも関わらず読書はちょっと……と思っていたが、書店でおすすめのラノベコーナーが出来ており、そこへ並んでいたラノベのイラストが目に留まり、ちょっと読んで見ようかなと好奇心に駆られて読了してしまったのがキッカケで俺はラノベに嵌った。


 “とあるラノベ"のタイトルは、『俺、借金の式神(カタ)にされました』。

 簡単に物語のあらすじを語ると、主人公『御影(みかげ) 零夜(れいや)』は両親が作って遺していった多額の借金を払いながら学生生活を送る苦労人である。その多額のお金を貸してくれていた会社が倒産寸前で、借金を一括で返済して欲しいという無茶な要望を受け、バイトの掛け持ち等を行い帰りが遅くなった日――。零夜はある事件に巻き込まれる。原作ヒロイン『二宮(にのみや) 紗花(さやか)』との出会いもあり、零夜が『退魔師(たいまし)』の世界に足を踏み入れる事となる事件に。

 そこで有耶無耶があり、零夜の素質に惚れた紗花が「借金を代わりに返済してあげるから、自分の式神(しきがみ)になって欲しい」と切り出す。他に手段がない零夜はその契約を受け入れる事にした。それから零夜は式神となり、最強の退魔師と最高の式神のタッグを目指すファンタジーな物語だ。


 最初はちょっとした好奇心であったが、最新刊が発売すれば購入の為に書店へ向かうという一連の流れを繰り返して十回目。新しい玩具が届いた子供のような心境で、小説を読み始める。小説を読んでいる間だけは辛い事を全部忘れてその世界に入り込める。 現実逃避。そう笑う人もいるかも知れない。どんだけ夢や空想の世界に逃げても、現実からは逃げられない。理解はしている。けど、納得は出来ない。そんなジレンマを抱えているうちに一つの結論に至った。


「小説の世界に行きたいな」


 ――部屋の一角に存在する大きな窓から、一つの大きな満月が見える。ソレを会社に備え付けられている俺専用のデスクから眺める。

 満月は既に高く昇り切っており、見上げるぐらい顔を上にあげなければ見えない。

 月の位置から察するに残業時間は四時間目ってところ。毎日これが続いているのが理由なのか定かではないが、既に俺の身体はボロボロだと言っても過言じゃない。

 誰の目にも一目で時間が確認出来るよう、高い場所に設置されている時計。ソレが無性に気になった俺はチラリと時計の針の位置を確認する。


(二十二時四十分――。もう後一時間ちょいで日付が変わっちまうな)


 せめて日付が変更する前には帰宅したいな。と現状に対する不満を口にする。

 どうせ残業手当なんて付いてるわけないんだし、仕事を途中で置いて帰ってやろうかな。

 明日の仕事が面倒臭くなるのが目に見えて解ってるので、消化して帰るけどさ。


 頭ではそれが明日の俺にとって最善であると認識している。しかし、今日の俺にとって最善なのかと問われると違うと即答する。その矛盾が今日の俺を更に苦しめる。だからかな、絶対に叶わない願いを口ずさんでしまったのは。


「……なんてね。行けるわけないよな」


 外に視線を動かしていたが、いくら月を見ても現実は変化しない。さっさと仕事を終わらせて小説の続きを見よう。と決意をし、デスクワークに集中する。

 ネット小説で良くある“異世界転生”。

 主に二次創作と称される小説のファンによって創られる物語に登場する単語(ワード)。良くある流れでいったら現実の世界で死ぬと二次元の世界に行ける。だったかな。

 いくら小説の世界に行きたいとは言っても、痛いのは正直言って嫌なので、死ぬのはごめんかなと考える俺がいる。



 ……もしも、神様がいると言うのなら、こんなクソッタレな世界から俺を救ってくれよ。




 次の瞬間――。

 窓から差し込む光が妙に視界にチラつき、集中力散漫で仕事が手に付かなくなる。原因解明の為、視線を外の景色に向ける。

 もしも、コレが人為的なモノであったならば文句を言うつもりだった。

 今でも既に限界なのに、俺にこれ以上何を求めてんだよ。早く帰らせろと。


 ――でも、不可能だった。


 この無駄に神々しい光は人為的なモノではなく、かと言って自然的なモノでもない。普通の生活を送っている分には起こり得ない現象であると判断出来る。……言葉に現すのであれば、これは災害。

 満月が急に眩いぐらい発光し、人間の目では耐えきれない程の光度に俺は本能的に目を庇い、バッと右腕で光を遮り目を瞑る。障害物越しであっても、光が差し込んでいるのを感じ取る。直視していたなら目が失明したかも知れない。そう思わせるぐらいの光だった。



 どれだけの時間が経ったのか。俺にはわからない。だが、体感的に結構な時間が経っていたのは確かだ。

 発光が収まったのか指の隙間から差し込むほんの小さな光がフェードアウトしていくのを感じ取った俺は、おそるおそる目を開ける。


「……なに、これ」


 創作モノで良くある展開を俺自身が経験すると思わなかったが、折角なので言わせて欲しい。


「知らない天井だ」


 視界が捉えていたのは真っ白な天井。それも全く見覚えのないモノ。さっきまでいた会社にこんな部屋はない。清潔に整えられているベッドがある以上、会社で当て嵌まるのは仮眠室一択ではある。しかし、あの会社の仮眠室は狭く、ここまで大規模ではない。それに、見た感じの印象では学校の保健室のような気が……。

 ここが何処なのか情報を得ようと見渡す。患者のプライベートを最低限確保する為に周囲一帯を仕切っているカーテン。そのプライベート空間には病人の為に綺麗に維持されたベッド、横になった後、身支度を整えられるように置いてあるドレッサー。壁際に掛けられた着用した覚えはないが、何処かで見た記憶がある黒のジャケット。


「とりあえず、ここが何処かを確認して……」


 こんな部屋の一角では、現在地が確認出来ないと、ベッドから降りようと腰掛ける。その最中、ドレッサーに付けられた鏡が目に入った。

 俺じゃない誰かが、俺が認知している動きと全く同じ体勢でいた。そして、鏡越しの男は俺と同じく“驚愕”を顔に出している。


「……あー、なるほどな」


 まさかのホラー現象ではないよな。と確認の意味を込めて、色んな身振り手振りを加えてみるも、全く同じ動きを繰り出す鏡の中の誰か。

 俺にはラノベを読むという趣味がある。それと同時にインターネットで公開されているネット小説と称されるモノを読む事もしばしばあった。その中で今のこの現象に当て嵌まる――“異世界転生”モノの小説を読んだ記憶がふと蘇る。


 異世界転生モノには大まかに二つのジャンルがあると俺は思っている。


 自分自身がその世界の住人となって生まれ変わる事。異世界転生と言われたらこっちである事が定番だと俺は思う。が、俺のこの現象はこちらではない。

 その世界の誰かに憑依して転生する事。転生者をAとして、憑依先をBとすると、Bの身体にAが入る事を指す。会社にいた時の俺はこんなにイケメンでなかったし、この世界に置ける俺が誰なのかハッキリと理解してしまった点から、俺はこっちであると確証を持って言おう。


 例えば、ネットで公開されている中で、二次創作という物をあげよう。これは既に放送・出版されているアニメや漫画、小説やドラマをモデルとし、別の誰かがその世界をモデルに物語を作ったとする。

 その世界に御堂聡哉という青年がいました。両親は既に他界、兄妹は一人もいない設定。だが、二次創作では、御堂聡哉には兄妹がいたりする。その兄でも、妹でも良い。勿論、姉や弟でもだ。そのキャラとして転生するのは、異世界転生ではあるが、憑依転生ではないと思う。しかし、御堂聡哉に成り代わる事は異世界転生であり、憑依転生でもある。

 俺は何処かの世界に“異世界憑依転生”してしまったようだ。


「……よりにもよってこの人ですか。神様はやっぱり俺の事が嫌いっぽいな」


 転生先は御堂聡哉が好きだったライトノベル『俺、借金の式神(カタ)にされました』の世界。舞台が現代日本なので、日常生活を送る分には問題はなし。と、言いたいところだが、この世界には『魔物(まもの)』が存在する。奴らは人間の負の感情を餌に、依代にして成長する。人々は日々メンタルケアを行いながら、『退魔師』は『魔物』との戦いに身を投じる。

 『退魔師』でない人間には厳しく、『退魔師』であれば命を賭ける戦いに巻き込まれる。精神的にも肉体的にもキツイ世界だ。

 俺も好きな小説の世界でなければ、泣き言の二つや三つ漏れ出ているはず。


 憑依先であるこの体の持ち主は、物語の中心人物に入るキャラ――『市瀬(いちのせ) 聡眞(そうま)』。

 主人公達が通う『セイントクロス学院』に所属する教員の一人であり、死亡フラグが沢山建っている青年だ。



 元社畜な俺、ラノベ世界で死にそうです……。




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