饒舌な中休み
さて、君、そろそろ話にも飽きてきたから結論を先に言ってほしい、とでも思っているようだな。図星か。なぜ分かったか、だと。そんなのは君の顔を見れば自明の理だ。如何にも、なぜ自分の恋愛話をするために、他人の話ばかりするのだろう、という顔をしているからな。大丈夫。焦らずとももうじきその答えは分かるさ。この後の話はほとんど中身がない。何せそれから私とアドレナリンとキヨミはほとんど部室では顔を合わせなくなった。もともとアドレナリンは部の人間ではなかったし、キヨミだってキャンパスが別なのだから当然と言えば当然のことだ。だが、その理由が、単に忙しかっただけなのか、それとも部室に来たくなかったからなのかは、実際のところ私もよく知らない。私は彼らと積極的に会いたいと思ったことはなかったし、彼らもまた私と雑談をするための関係になろうなどとは考えていなかったからだ。
ただ、彼らが部室に来なくなったのを寂しく思う反面、私はそれを僥倖のように感じていたのもまた事実だった。アドレナリンとキヨミが付き合っていることを先輩に喋ってしまったのが、当人たちにだけは伝わらなかったためだ。それどころかその噂が、部内でアドレナリンと付き合っているのではないかと言う疑惑を打ち消すことにもなった。皮肉にも、私は彼らとの距離が遠くなったことで、彼らの噂に縛られることから解放されたのだった。
だが先に言っておこう。一見、最も関係が薄くなっていたはずのこのときから、私たちが大学三年になるまでの間が、私と彼ら二人の関係性の中でおそらく一番濃い付き合いだった。それはアドレナリンとの同居生活や、キヨミとの部室での時間にも勝るものだった。一年や二年での私たちの付き合いなどせいぜい仲良しの範疇でしかない。アドレナリンの場合は事故の加害者という特殊な立場にあったが、それでもやはりお互いのことを語り合う仲というよりは、適当に話す奴程度の認識を出ない。それが適当でなくならざるを得なくなったのは、それから半年後、私が次の年末制作会のために、画材を買いに行った時からだ。