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二周目チートの転生魔導士 〜最強が1000年後に転生したら、人生余裕すぎました〜  作者: 鬱沢色素
三章

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93・1000年前、帝国は滅ぼされた

 帝国と決着を付けるため、俺とアヴリルは玉座の間へと向かっていた。


「お主……一度ここに来たことがあるのか?」

「なんでだ?」

「これだけ城内は複雑だというのに、随分迷いのない動きだと思ってな」

「そうだな……まあ似たようなところには来たことがある、と答えておこうか」


 俺の答えに、アヴリルは不思議そうな顔になっていた。


 無論、こ(・)の(・)城に俺が来るのは、はじめてだ。


 しかし1000年前のシェヌベイル城には何度も来ていた。

 その時と、城内の構造は大体同じだったのだ。


「王室までもう少しだ、アヴリル。どうした、隠蔽魔法の魔法式が崩れてきてるぞ?」

「さすがにこれだけ長時間、精度の高い隠蔽魔法は疲れるものでな……」

「なにを言う。それくらいなら、半年くらいは保たせておかないと話にならないぞ」

「お主基準で言うな!」

「冗談だ」


 まあ俺ならやろうと思えば、出来ないことはないが。


 それにしても……1000年経っても、あまり変わらないものだな。

 1000年前、帝国は一度あ(・)い(・)つ(・)に滅ぼされたとはいえ、シェヌベイル城だけは壊されなかったからな。

 何度か修復はしているだろうが、そのまま現在に至ったのだろう。


「よし、ここだ。玉座の間だ」


 とある扉の前で、俺達は立ち止まった。


 そろそろこの重いだけの鎧は脱ぎ捨てるか……。

 鎧を脱いで、改めて隠蔽魔法に身をまとう。


「すぐに乗り込むか?」

「待て。中に誰かいる。少し様子をうかがおう」


 と言って、透視魔法を使うと、頭の中にぼんやりと中の様子が浮かんでいった。


 さらにアヴリルの魔力と連結して、彼女にも同じ映像を見せられるようにする。



「——ついに時は満ちた」



 中には一人の男。


 玉座の間には、奥に豪壮な椅子が二人分置かれている。王と王女が座る場にあたるだろうか。

 しかし……このような事態でありながら、玉座には誰も座っていなかった。

 代わりに黒塗りの不気味な棺桶が、そこにまるで座るようにして置かれていたのだ。


「なかなか悪い趣味をしているな」


 いや……ただの飾りというわけではないか?

 そのまま魔法を使って、棺桶の中を見ようとするが……魔法式で施錠がさせられていて、見ることが出来ない。

 さすがに二重の透視は難しいか。

 まあ無理矢理魔力を注ぎ込めば、見られないことはないが、相手に気付かれてしまうかもしれない。

 もう少し様子を見るのが得策か。


「私は間に合った。これで転生してきたヤツを滅ぼすことが出来る」


 愉悦に浸っているかのような口調。

 男は大きい窓の前に立ち、こう続ける。


 ああ、我が悲願が達成されようとしている。

 運が良いことに、今宵は満月だ。

 天も私を味方してくれているのだろう。


「なにを気持ちよく語っているのだ?」

「さあな」


 そいつの言っていることは理解出来ない。

 しかしそれほど、今日という日を待ちわびていたということだろう。


「——起動」


 その男が手を挙げる。

 するとその周囲にあった魔法陣から光が放たれた。


「クルト……! これは!?」


 アヴリルの体が震えている。


 うむ。膨大な魔力だ。

 きっとそれをアヴリルが感じ取り、恐怖を覚えているのだろう。


「あの棺桶……魂? あの魂が魔力に変換されようとしているのか?」


 玉座に置かれていた二人分の棺桶。

 そこからも赤色と青色の光が発せられた。

 魂が男の手に向かって引っ張られていっているのだ。


「ああ! これでみんなみんな一つになる! そうして私はヤ(・)ツ(・)を倒す力を手に入れるのだ!」


 光が一点に収束していく。

 今にも魔法が発動されようとしていた。

 はじめて見る魔法式だ。


 しかし。



「黙って発動させるわけないだろうが」



 光魔法アトーンメント・シャインを扉の向こう、男に対して発動する。


 男の四方八方から七色の鏡が現れる。

 それが光の矢の発射台となり、男に向かって次々と発射されていった。


「アヴリル!」

「ああ、分かっている!」


 そして俺達は隠蔽魔法を解き、扉を蹴飛ばすようにして開いた。


「ファイアースピア!」


 未だ止まぬ光の矢の攻撃の最中、アヴリルが間髪入れずにファイアースピアを放った。

 その全てが男に向かっていた。


 だが。



「待っていたぞ、異(・)端(・)者(・)。我が崇高なる魔法を妨げるとは、面白いことをしてくれるじゃないか」



 魔法の猛攻を受けても、男は自分の周囲に結界魔法を展開したおかげで、一発も直撃を許さなかったのだ。


「うむ。お前がなんの魔法を使おうとしてたか分からないがな」


 これ以上やっても無駄だと感じ、俺はアトーンメント・シャインへ供給する魔力を断つ。


「発動を止められて、よくそれだけ偉そうな態度が取れるものだ」

「こういう未来があるとも予測していた。1(・)0(・)0(・)0(・)年前からな」


 男は琥珀の瞳を向け、落ち着き払った声でそう言った。


「しかしな。相変わらず油断するのが、お前の悪い癖だ。俺の魔法は……」

「ん?」


 指を鳴らし、俺はこう続けた。


「まだ終わっていない」


 男の背中に……追撃となる光の矢が襲いかかっていく。


「ぐ、ぐあああぁぁああ! ど、どういうことだ!? アトーンメント・シャインは魔力の供給を止められ、光の矢を創造することが出来なかったはず……!」


 光に胸を貫かれる男。

 口から血を吐き、床に膝を付いた。


「確かに普通ならそうだな。しかし……俺の作った魔法が、魔力がなくなったごときで攻撃を止めるようなものだと?」

「ま、まさか貴様……! 魔法式に『意志』を持たせただと!? 魔力の供給を止めても、半永久的に動き続ける魔法を完成させたのか……! くっ!」


 膝を付く男の背後から、容赦なく光の矢が発射される。

 しかし男は即座にファイアースピアを矢の発射台となる鏡を壊し、今度こそ魔法の発動を止めた。

 うむ。これくらいやってもわなくては、拍子抜けすぎる。


「さあ、決着を付けようじゃないか」


 男に向かって一歩踏み出し、俺はその名前を口にした。



「1000年前、帝国を滅ぼした魔神——フォンバスクよ」

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