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61・新しい仲間

 メイナードとの戦いも終わらせ、俺は校庭に戻った。

 すると……校庭には《ファースト》と《サード》の二クラス分の生徒しかいなかったはずなのに、帰ってきたら埋め尽くさんばかりの人でごった返していた。


「なにが起こっているの?」


 シンシアが問う。

 俺達は少し離れたところで、みんなの様子を眺めた。



「大変だあああああ! とうとう戦争がはじまちまった!」

「屋上ですっごい音が聞こえたぞ! 魔物の軍勢も王都を目指しているらしいし……」

「音だけじゃないよ! 校舎がぐわんぐわん揺れたよ! いつ崩れてもおかしくないくらいっ!」

「緊急! 緊急! 校舎に残っている生徒は、速やかに退避しなさい!」



 うむ。


「少し騒ぎすぎたみたいだな」

「そうみたい」


 どうやら、俺がメイナードと屋上で戦っている間、身の危険を感じた生徒や教員が外に出てきてしまったらしい。

 無論、戦っている間にも、校舎には結界魔法を展開させていたので崩壊することはないんだけどな。

 音と振動まで完全に防げるほど、魔力を割いてなかったのだ。


「クルト!」


 一人の生徒が俺の姿を見て、叫びながら駆け寄ってくる。


「一体なにが起こっているんだっ? 天変地異か?」

「もう大丈夫だ。少々大きい虫がいたから、屋上で退治してただけだ」

「お前の手をわずらわせる虫って、どんだけ大きいんだよ……」


 その生徒が溜息を吐く。


 後「お前……ん、まあいっか。お前ほどの男だ。恋人が何人いてもおかしくない」と呟いて、露骨に視線を外したがなんなんだろう。


 俺はみんなに危険が去ったこと、もう安心して欲しいということを伝えた。

 そうこうしている間に。



「ただいま!」

「戻りました」



 おっ。

 ララとマリーズも戻ってきた。

 二人は俺の姿を見るなり、まるで子犬のようにして俺に近寄ってくる。


「ねえねえ、わたし達! クルトの言った通り、魔物をぜーんぶ殲滅したよ!」

「わ、私も成長したんでしょうか? ちょっとはクルトに近付けたんでしょうか?」


 二人がグイグイと顔を俺に近付ける。

 これこそ、まるで飼い主から餌をねだる子犬のようだな。


 俺は思わず「ふっ」と吹き出してしまった。


「よくやったよ、二人とも。あの魔物を殲滅出来る……というのは信じていたが、まさかこんな短い時間で戻ってくるとはな」

「クルトでも予想外だったの?」

「ああ。俺の予想を裏切るとはなかなかのもんだぞ。後三分くらいは戻ってこない予想だった」

「たった三分しか短縮出来なかったんですか……」


 なにを言う。

 三分もあれば、神竜クラスのドラゴンを十体は滅ぼせる計算である。

 それだけの時間を短縮出来たとなったら……大したものだ。


「ああ、それから二人とも。俺達の迷宮攻略パーティーに新しい仲間が出来た」

「「仲間?」」

「シンシアが加わってくれることになったんだ。落印魔力は魔力を察知したり、トラップを解除することに長けている。俺達の心強い仲間になってくれるはずだ」


 とシンシアに目をやる。


「……よろしく」


 シンシアは俺の体に半身を隠しながらも、小さくそう口にした。


「シンシアちゃん、改めてよろしくっ」

「私も賛成です。シンシア、よろしくお願いしますね」


 どうやら二人も受け入れてくれたらしい。


 シンシアにいたっては、少々人見知りのようだが……まあそれも直によくなっていくだろう。

 ララとマリーズが、どんどん自信を付けていったように。


「それから……クルト」

「どうした?」

「シンシアちゃんが仲間になるのはいいんだけれど……」


 ん?

 ララが俺の右腕にじーっと視線を注いでいる。

 一体なんだ……あっ。


「どうして、さっきからシンシアちゃんはクルトの腕に引っ付いているの?」


 ララの言った通り、シンシアは屋上を出てから、何故だかずーっと俺の腕にしがみついている。

 少々歩きにくいものの、特段困るものでもなかったので、そのままにしておいたのだが……。

 二人はどうも納得いかないらしい。


「クルトはシンシアちゃんのものだけじゃないんだからねっ」


 むぎゅっ。


 残りの左腕にララがしがみついてきた。


「コラ! 二人とも! クルトが困っているではないですか! ずるい……じゃなくて、早く離しなさい!」


 続いてマリーズが二人を引きがそうとした。

 しかしそのせいでマリーズも俺に密着してしまっている形となって、どうも動きにくい。


「……まあ好きにさせておくか」


 それよりも。

 メイナードの言ったことを思い出す。


《四大賢者》はただ《魔王魔法》を試すためだけの、実験体ということ。

 これは、《四大賢者》すらも操っている上の存在がまだいるということだ。

 というかまだ三人しか現れていないしな。残り一人も気になる。


 そして……この世界には嘘が隠されている。

 メイナードは《大いなる嘘(オール・フェイク)》と言っていた。

 それら全てに、この時代の衰退の理由が隠されてそうだった。


「そろそろ帝国との因縁には、ケリを付けておくべきかもしれん」


 今まで悠長にやりすぎていたかもしれない。

 ならば——



「クルト!」



 と思考を巡らせていた時。

 エリカ先生が校舎の方から息を切らしながら、こちらに走ってきた。

 その傍らにはデズモンドと校長の姿もあった。


「どうしたんですか。あっ、もう危険は去りましたよ。安心してください」

「クルトがこの学校にいる時点で、解決だと思っていたし……そのことについては心配していない!」


 どうやら別のことらしい。


「クルト。お呼びがかかった」

「お呼び?」


 エリカ先生はすーっと息を吸い込んで、こう続けた。



「クルトに国王様からお呼びがかかった。今すぐ王宮に向かってくれ」

二章終わりです!

ここまでありがとうございます!

三章では帝国に迫り、これまでの謎が明かされていく回にしていこうと思います…!

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