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46・返り討ちにしてみた

前回のあらすじ・暗殺者が勝負をしかけてきた。

「少しはマシな動き方をするみたいだな」


 だが、俺の目から見てあまりに遅い。


 二人の暗殺者が剣を手に取り、俺に特攻。その後ろで控えている男が、ファイアースピアを無詠唱で放とうとする。

 普通だったら、目の前に襲いかかってくるヤツに気を取られて、魔法での攻撃を許してしまうんだろうな。

 しかし。


「どうだ? 魔法、使えたか?」


 魔法を放とうとしていた男が、戸惑った表情を見せていた。


「背反魔法というものだ。相当な実力差がないと出来ないわけだが……さて、これを見てもまだ逃げないか?」

「背反魔法だとっ? 有り得ない。あれは理論上では可能なものの、実現不可能と断定されたものではないかっ!」

「その常識は間違っている」


 と俺は言いながら、剣を抜いた。

 襲いかかってくるヤツ等の剣を、右手で持った一本の剣で対処する。


 カキンッ!

 二本同時に剣が当たり、つばぜり合いが起きるが、弱々しい力のために相手は押し切れずにいた。


「ど、どういうことだっ?」

「二人がかりだぞ? それなのに、どうして押し切れない!」

「そんな身体強化魔法もなにも使っていないのに、どうして俺に勝てると思ったのだ?」


 どうやら、身体強化魔法……探知魔法……といったものは《四大賢者》くらいしか使えないらしい。

 無詠唱魔法を使ったくらいでいい気になりすぎだ。

 俺は右手で持った剣を押す。


「ぐっ!」

「ま、まだだ! こっちは三人! 一気に魔法を放つぞ!」


 三人が一列に並んで、魔法式を組んでいく。


 ん……? これは結束けっそく魔法か?

 三人の魔力を繋げ、協力して魔法式を組む方法である。

 魔力を共有しているのだから当たり前だが、一般的に一人で魔法式を組むより素早く強力な魔法を放つことが出来ると言われる。

 しかし……。


「三人で結束魔法を組んでおいて、そのレベルなのか?」


 有り得ない。

 あまりに三人間でのノイズが多すぎて、そんなのじゃ十分に魔法の力を発揮することが出来ない。

 歪な形になってしまうのだ。


 せっかく結束魔法なんて、この世界では珍しいもの使っているから、期待していたのに……。

 そんなんじゃ一人で魔法式を組んだ方がいいんじゃ?


「いや……お前等一人だけの魔力だったら足りないからか。ザコ三人にしてはブリザードは少々負担が大きいか?」

「黙れええええええええ!」

「知ってるぜ? お前、欠陥魔力なんだろ?」

「命乞いなら今のうちだぜ?」


 やれやれ。

 完全に魔法の方は分析し終わったので、背反魔法で打ち消してもいいが。

 だが、ここはあえて実力差を見せるとしよう。


「さあ、放ってこいよ。そろそろ魔法式が完成するか?」


 俺にしたら未完成もいいところだが。


「「「ブリザード!」」」


 三人が声を揃える。

 すると俺の周りに吹雪を伴った暴風が現れる。

 なにもしなければ、冷気にさらされ一瞬で凍死してしまうかもしれない。


「ハハハ! あいつ、偉そうなこと言っておいて大したことなかったぜ!」

「いくら《四大賢者》を倒したとしても、オレ達三人が力を合わせたら楽勝だぜ!」

「ま、待て……あれは……!」


 さて、そろそろ吹雪が止むところだな。

 歪な魔法式だったため、そんなに長く保たないのだ。


「どうした? それがお前等の本気か?」


 俺はなにくわぬ顔を意識的にして、三人に話しかける。


「ど、どうして生きてやがる!」


 すると一人がわなわなと震えながらも、声を絞り出した。


「結界魔法だ。無詠唱魔法を使えるんだから、結界魔法くらいは知ってるよな?」

「あ、有り得ない! オレ達が魔法を放とうとする瞬間まで、お前が魔法式を組んでいる様子なんてなかったぞっ?」

「当たり前だ。お前等が魔法を放ってから、ゆっくり結界魔法を組んだんだからな」

「そ、そんな……ば、化け物!」


 遊びには付き合ってやった。

 次は俺から攻撃させてもらおう。


「……ふんっ」


 右手で剣を横に払うようにして振る。

 当然、三人との距離が離れているので普通なら届かない。

 だが……。


「グ、グハッ!」


 三人仲良く胸に血の横線が入り、後方に吹っ飛んだ。

 そのまま屋根から落ちると思ったが……寸前のところで踏みとどまっていた。


「魔撃だ。お前等、結束魔法を使う際に横一列に並ぶのは何故だ? もっとバラけてたらいいのに。そんなのじゃ、一括でやられてしま……ああ。そうか」


 近付いてないと、上手く魔力を連結させることが出来ないからか。

 その結果、あまりにも無防備な姿をさらしてしまったということだ。


「こ、こいつ化け物だ! オレ達に勝てるわけがない!」

「ク、クソッ! これだけの人数がいれば、勝てると思ったんだが!」

「逃げろ! 命あっての物種だ!」


 三人はしぶとく立ち上がって、逃げようとした。


「俺が逃がすわけがないだろ」


 三人は屋根伝いに走っていき、俺から逃走を図る。

 中立都市は建物同士が密集しているため、そういったことも可能なのだ。


 なるほど。

 さすが暗殺者といったところか。

 やけに逃げる際の身のこなしが上手い。

 それだけは唯一及第点を上げられるところだが。


「はあっ、はあっ……どうだ? 逃げ切ったか?」

「あの欠陥魔力があんな化け物だったとは……どうなってやがるんだ」

「しかし所詮は子どもだ。やはり詰めが甘い」


 三人が振り返り、俺の姿が見えなかっただろう。走りの速度を弱め、安堵の息を吐いた。

 それを俺は……。



「ん? どうした。駆けっこはこれで終わりか?」



 とヤツ等の()に立って話しかけた。


「……っ! ど、どうしてお前が前にいる」

「追い抜いたからな」


 今回は転移魔法を使ったわけでもない。

 ただ純粋にこいつ等を追い抜いただけなのだ。

 もっともあまりに俺の動きが速すぎて、三人は気付かなかったようだが。

 身体強化魔法を使っているものと、使っていないものとの差だ。


「……ふんっ」

「くっ……! 体が動かない……?」


 三人はまるで凍ったように、身動き一つ取れなくなっていた。

 バインドという魔法で相手の動きを封じたのだ。


「命乞いなら聞くだけ聞いてやるが?」

「ま、待ってくれ! オレ達は依頼されただけなんだ!」

「ほう?」

「帝国の……ディスアリア魔法学園の校長にな。だから……許してくれ。お前に恨みはないんだ」


 まあ大体予想は付いていたことだ。

 これ以上こいつ等からは情報を引き出せないだろう。

 それに……まだここに出てきていない残りの一人から聞いた方が早そうだ。


「そうか。なら仕方ないな」


 拘束を解く。


 俺は背を向けて、三人の前から立ち去ろうとした。

 その瞬間。


「死ねえええええええええ!」


 と短剣で後ろから斬りかかろうとしてきたのだ。


「……お前等、学習能力ってもんがないんだな」


 溜息を吐く。


 俺は振り向きざま、光属性魔法のレイを放って三人の胸を同時に貫いた。

 一発目の魔撃には耐えられた三人であったが、さすがにこれは無理だったらしい。

 ゆっくりと体が前のめりに倒れていき、息をしなくなった。


「見逃すつもりもなかったが」


 どうせ俺がわざと隙を見せてやったら、すぐに襲いかかってくると思った。

 無論、ここで三人が逃げようとしても、見逃す気は毛頭なかったわけだが。


 こういう手負いは、俺のことを恨みまた復讐しにくるのだ。

 ましてやこいつ等は学習能力がない。

 俺との実力差も忘れ、また寝込みでも襲いかかってくるだろう。

 そうなると、また熟睡出来る一夜が少なくなってしまうので、俺の睡眠事情からしてよろしくないのだ。


「さて……いい加減、出てこいよ。俺にちょっとは本気を出させろよ。どうせ《四大賢者》の一人だろう?」


 俺がそう呼びかける。

 すると……。


「そこまで見抜いていたのね。私が見込んだ通り、なかなかいい男ね」


 なにもない空間から一人の女が姿を現した。

かませ犬登場…?

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