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3・当たり魔力が欠陥魔力呼ばわりされていた

 魔力には種類があり色が付けられている。


 魔法を放つ際に見える、魔力の波動……という見方をしてもらっていい。

 黄金色以外にも赤色、青色等といった魔力色があるが、それには全て長所と短所がある。


 例えば赤色魔力は攻撃系統の魔法を使う際には適しているが、他の魔法は使いにくいといった具合だ。

 この魔力色というのは持って生まれたものであり、これを生きている間に変えるのは不可能。


 そして俺が引き当てた黄金色おうごんしょくの魔力というのは『使うのは難しいが、極めればどこまでも伸びていく』ものだ。

 俺は1000年前の前世においても、黄金色の魔力だった。

 現世でも魔法を極めるつもりだったので、黄金色を引き当てて安堵したものだ。


 それなのに……。


「なんで俺にとって大当たりの黄金色が、欠陥魔力なんて呼ばれているんだ?」


 一体この世界はどこまで衰退してしまったというんだ?


 まあそのことは後々追及していこう。

 例え欠陥魔力だと呼ばれていても、大当たりの黄金色であることは変わりないのだから。




 また別の日。

 俺はまた森まで行って、暇潰しに魔物狩りをしようとした時であった。


「おいおい、欠陥魔力が歩いてやがるぜ!」


 村の中を歩いていたら、そう罵声を投げられた。


 俺はそっちの方を向く。


「シリル。あいつ、森の方に行くみたいだぜ」

「わあ! 命知らずだ!」

「欠陥魔力が森なんかに行ったら、一瞬でウルフに殺されるぜ! オレみたいに完全魔力じゃねえとな!」


 三人組の男。

 そこで真ん中に立つ俺と同世代くらいの一番偉そうな男の子。


 えーっとあいつは……シリルって言ったけな。

 確か最近、この村に引っ越ししてきた男の子だったはずだ。


「俺になにか用か?」


 良いだろう、これも暇潰しの一環だ。

 それにさっきこいつが言った言葉も気になる。

 俺はシリル達の方へ歩み寄った。


「なにも用なんてねえよ! お前が欠陥魔力だって聞いたからな。心配してやってんだ!」


 シリルはそう口では言うものの、心配している素振りは一切なかった。


「俺が欠陥魔力なんていうのはどうでもいい。お前のその……完全魔力というのはなんだ?」

「お前、完全魔力も知らねえのか? はあ〜、これだから欠陥魔力は」


 シリルはわざとらしく溜息を吐いた。


 ——ああ、頭が痛くなってきた。


 今すぐここからいなくなりたかったが、情報を得るため我慢してシリルに質問を繰り返す。


「だから教えてくれよ。その完全魔力ってのは……」

「ふんっ、良いだろう! こんなところで魔法なんか放ったら、大人に怒られるから森にでも行くぞ!」

「魔法? シリルは魔法を使えるのか?」


 繰り返すが、1000年後のこの世界において、魔法を使えることはどうやら貴重のようなのである。

 まあ村の中基準かもしれないが。


「ああ! 俺の魔力を見て、腰を抜かすんじゃねえぞ?」

「楽しみだよ」


 これは心からの本心であった。


 ——俺以外が魔法を放っている様を、はじめて見ることが出来る。

 この世界の魔法技術がどれほどのものか、少し分かるかもしれない。


「付いてきやがれ!」


 偉そうなシリルの後を、俺は付いていくのであった。




「俺のお父さんは元冒険者だったんだぜ! それで自警団が足りなくなったこの村に移住してきてやったんだ。有り難く思え!」


 シリルは胸を張りながら、森の中を突き進んでいった。


「おい」


 そんな中、俺は足を止める。


「そっちの方、本当に行っていいのか?」

「なにがだ?」

「でっかい魔物の気配を感じるが」


 これは事実である。

 ここまで十二年生きてきて、どうやらこの村の人達はウルフごときでも苦戦することは分かっている。

 ならば、もう少し行った先にいる魔物は子どものシリルには手に負えそうにないのだ。


「なにを言っている!」

「お前も探知魔法使えるんだろう? 分かるだろ。この先にいる魔物が」

「探知……魔法……? なんだそりゃ」


 ……頭がさらに痛くなる。


 ダメだ、こいつ。

 1000年前においては、そこらへんの子どもでも使えていた魔法を使えないどろこか知らないなんて……。


 まあ好きにやらせておこう。

 もしかしたらなにか計算があるかもしれないし。


「お前、ビビってるんだろ! ここで逃げ出すか?」

「まさか」


 俺は頭痛をこらえながらも、シリルの行く方向へ足を進めるのであった。


 そして十分くらい歩いた後。



「グオオオオオオ!」



 でっかい牛のような魔物——ホワイトバイソンが姿を現した。

 家一軒分くらいの大きさで、ウルフなんかとは比べものにならいくらい強力な魔物だ。


 ……まあそれでも俺にしたら大したことないが。


「ホ、ホホホホワイトバイソンだと? この森にはウルフしか現れないんじゃなかったのか!」

「どうした? 丁度良い相手じゃないか」

「ホワイトバイソンだぞ? お前、なに言ってんだ?」

「それとも本当は魔法が使えないのか?」

「——! 完全魔力の俺にそんな口を利くな!」


 とわめいて、シリルは手の平を掲げた。


「この手に集まりたまえ炎よ。槍となって敵を灼き貫け!」


 なんだかよく分からないものをシリルは口にした後、弱々しい炎の槍がホワイトバイソンに向かっていた。

 だが……。


「ぜ、全然効いていないだと?」


 炎の槍の直撃を受けたホワイトバイソンは、ピンピンしているのである。

 シリルはそれに驚いているみたいだが、俺はこいつの魔力色の方に愕然としていた。


「に、ににに逃げよう! こんなヤツ。俺達には手に負えねえよ!」


 その様子を見たシリル達は、愚かにもクルリと背中を向けて、逃走を図ろうとしたのである。


 ああ、そんなことしたら……。


「グオオオオオオオ!」

「うわあああああああ!」


 それを見て、ホワイトバイソンが興奮して雄叫びを上げた。

 そしてシリルの方じゃなくて、あろうことか俺の方に向かってきたのだ。


「このままじゃ踏みつぶされちまうな」


 シリルが演技で逃げているふりをしている可能性も考えられた。

 というかそうじゃないと、あまりに間抜けすぎる。

 こんなので俺に威張ってたのか、ってな。


 だが、せっかくウルフ以外の魔物を見つけたんだ。

 ここでシリル達に絶好の獲物を渡してしまうのは、あまりにもったいないだろう。


「ついでに欠陥魔力の魔法とやらも見せてやるよ」


 と俺は氷属性の魔法を展開していった。


 ホワイトバイソンが俺を踏み潰さんとする時。

 俺の組んでいた魔法が発動。

 フリーズノヴァと言われるちょっとだけ強い魔法だ。


 するとホワイトバイソンは——氷漬けになって固まってしまった。


「うわあああああ! 誰か助けてくれえええええ!」

「そんなに泣き叫ぶな。もう大丈夫だから」

「あれ……?」


 頭を抱えてしゃがんでいたシリルであったが、ようやくここで氷漬けになっているホワイトバイソンに気が付いた。


 彼はゆっくりと立ち上がって、


「ど、どどどどどうなっているんだ!」

「氷魔法を見るのは、はじめてだったか?」

「もしかして、これはお前が……?」

「ああ……そうだ。このままだったら不完全だな」


 俺が指を鳴らすと同時、パリンと音を立てて氷ごとホワイトバイソンがバラバラとなった。


「ホ、ホワイトバイソンがバラバラに? ああ——」

「シ、シリル様!」


 その様子を見て地面に倒れいていくシリルを、取り巻き連中が支える。

 どうやら気を失ってしまったらしい。


 俺は溜息を吐いてから、シリルがさっき使ったファイアースピアから漏れていた魔力色を思い出す。



 あれは——白色魔力。



 あくまで俺にとってだが……一番ハズレの魔力だった。

 初心者には扱いやすいが、すぐに限界がきてしまうのだ。

 いわゆる『強い魔法使いになるためには向いていない』とも言われている魔力であった。


「黄金色が欠陥で、白色が完全か……」


 どちらにせよ俺はこの世界の魔法についてもっと知る必要がある。

 そう感じる出来事であった。

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