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20・ベヒモスを換金したらとんでもないことになった

《災害級》らしいベヒモスということで、換金に時間がかかるらしい。

 解体していないし、仕方ないか。


 というわけで時間を持てますことになると思ったが……。


「クルトさん。ギルドマスターがお呼びです。一度お会いしていただいてもよろしいでしょうか?」

「ギルドマスターが?」


 ギルドで一番偉いのがなんの用なんだ。


「ギ、ギルドマスターっ? それってベネディクトさんだよね?」

「めったに人前には現れず、その姿を見た人は冒険者でも少ない……と聞いていましたが」


 どうやら有名人らしい。

 まあ今後ギルドには世話になることが多いと思うし、会っておいて損はないだろう。


 俺達は受付嬢の案内で、ギルドの奥の部屋に通された。



「お前か? ベヒモスの死体を持ってきたっていう、とんでもないヤツは」



 そこに着くと、大柄な男がソファーに腰掛けていた。


「はい」

「しかも収納魔法を使って持ってきた、という出鱈目でたらめ()も聞こえてきたが……どうやってここまで持ってきたんだ?」

「嘘じゃないですよ。収納魔法はごくごく普通の一般的な魔法です」

「収納魔法が普通なわけあるか!」


 突っ込まれた。

 やはりギルドマスターは騙せないらしい。


 俺達は対面のソファーに並んで座った。


「わわわ! 本物のベネディクトさんだ……!」

「一度はお目にかかりたいと思っていましたが……まさかこんなに早く会えるなんて」


 隣を見るとララとマリーズがカチコチに緊張していた。


「それで俺達になんの用ですか?」

「ベヒモスを持ってくるわ収納魔法を使うわ……しかも子どもって聞いて、用がないわけねえだろう?」


 呆れたようにギルドマスター……確かベネディクト言ったな……は溜息を吐いた。


「今年の魔法学園にはとんでもない天才が入学してきた……と聞いていたが、まさかこれ程のもんだとはな」

「情報が早いですね」

「当たり前だ。魔法学園を卒業した後に、冒険者になるヤツも多いからな。情報は嫌でも入ってくる。なんでもお前、入学試験であの戦闘狂のデズモンドに勝ったらしいじゃねえか」


 デズモンド?

 ああ、あのSランク冒険者といった男か。

 この世界においては、一番骨のある男だったので覚えていたのだ。

 また戦いたいなあ。


「デズモンドは今は現役から退いているとはいえ、史上最強の冒険者とうたわれた男だぞ? そいつに勝つなんて……一体どんな手を使ったんだ?」


 確かにデズモンドは強かった。


 だが、デズモンドが史上最強なら……例えば1000年前の俺はどうなるって言うんだ。

 デズモンドには悪いが、1000年前の俺なら片手片足だけさらに魔法を禁止しても勝つ自信がある。


 そういえば、この世界において前世の俺はどういう風に言い伝えられているんだろう?

 以前には軽く調べてみたが、それらしき話は見つけられなかった。


「ベネディクトさん」

「ん、なんだ?」

「こういう人って知っていますか?」


 前世の俺の名前を伝えて、ベネディクトに聞いてみることにした。

 ギルドマスターならなにか知ってる、と思ったのだ。


 だが。


「悪いが、知らんな。どうした? 知り合いか?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど」


 まあ1000年前の魔法革命がなかったことにされていることから、こういう答えが返ってくるのは薄々感づいていた。


「さて。本題に入らせてもらうか」


 とベネディクトは手を組み、若干じゃっかん前のめりになって続けた。


「単刀直入に言う。今すぐ魔法学園を出て、冒険者一本でやっていくつもりはないか?」


 やはりそんな話か。

 この世界においては、あのベヒモスごときで《災害級》になっているのだ。


 それを俺は5秒で倒した。

 ギルドマスターとして勧誘するのは至極当然だろう。


 しかし。


「お断りします。まだまだ学ぶことがありますので」

「そ、そうか……」


 ベネディクトが肩を落とす。

 というか入学早々の学生に、そんな勧誘仕掛けるかっ?


 それに冒険者になることはいつでも出来る。

 だから前世で体験してこなかった面白そうな学園生活とやらを、今は楽しみたいのだ。


「クルトが学ぶことって、なにかあるのかな?」

「わ、私としてはクルトと一緒に勉強したら学ぶことも多いので、そんな申し出愚問(ぐもん)ですけどね!」

「もちろん、わたしも! クルトは渡さないよ!」


 ララとマリーズが両隣から、俺の腕をつかんでくる。

 その際、腕に柔らかい胸の感触が伝わってきて、思わず体が固まってしまった。

 俺にとっては、ギルドマスターなんかに会うよりも、こういうことをされる方が一億倍緊張するのだ。


「だが、クルト。知ってると思うが、魔法学園の学生証が冒険者ライセンスの代わりにもなる。実力に応じて依頼クエストを受けることも出来るから、是非利用してくれ」

「はい、もちろんです」

「それに……もしギルドでは手が負えないことがあったら、クルトに頼み事をするかもしれんが……良いか?」

「まあ無理のない範囲でしたら」


 話が大きくなるのは嫌だが、デズモンドよりも——さらに俺よりも強いヤツに会える可能性があるなら、どこにでも足を運ぼうじゃないか。



 そんなこんなで、ベネディクトと会話をしていると、良い感じに時間を潰すことも出来た。



「お待たせしました! 換金が終わりました!」


 部屋にさっきの受付嬢の人が、息を切らして入ってくる。


「どれくらいになりましたか?」


 この世界の《災害級》というのが、どれくらいの位置にあるのかは分からない。

 だが、結構強いらしい魔物を倒したんだ。

 俺が思うに……報酬は金貨一枚と見た!


「は、はい! これです!」


 どさっとソファーの前のテーブルに、袋を置く。


 重そうだ。

 もしかして全部銅貨とかっ?


「ふう……」

「も、もしかしてご不満ですかっ?」


 思わず溜息を吐いてしまって、受付嬢をビビらせてしまったみたいだ。


「いえ、そういうわけじゃありませんよ」


 フォローを入れてから、大して期待を込めずに袋の中を見た。


 うーん、これは銅貨には見えないなあ。というか金貨だ。

 金貨が1、10……ん? 100は超えているように見えるぞ。


「金貨300枚! これがベヒモスの値段です!」


 ……マジで?

 当初俺の思っていた予想より、300倍の開きがあった。


「こんなにいっぱいのお金、わたしはじめて見るよ!」

「当然です。《災害級》の魔物を倒す、ということはそういうことなんですから」


 ララが驚き目を見開いて、マリーズは澄ました顔をしていた。


 うん。

 今回の件で一つ分かったことがある。

 ベヒモスを倒したごときでこれだけ貰えるなら、これから先お金に困ることはなさそうだ。

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