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二周目チートの転生魔導士 〜最強が1000年後に転生したら、人生余裕すぎました〜  作者: 鬱沢色素
六章

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コミカライズ8巻発売記念短編・光の果てに立つ者

コミカライズ8巻、好評発売中です!

こちらはその記念短編となっています。

「クルト、一緒に舞台を見に行きませんか?」


 ある日。

 教室で帰る準備をしていると、マリーズに話しかけられた。


「舞台?」

「はい!」


 聞き返すと、マリーズは鼻息を荒くして、早口で捲し立てる。


「ここから馬車で三日ほどかけて行った街で、『光の果てに立つ者』という舞台が行われるんですよ! 勇者を主人公とした王道の物語で、笑いあり涙ありの大人気舞台です! 毎回チケット争奪戦になりますが、今回たまたま二人分のチケットが取れまして、ぜひあなたと一緒に見に行きたいと!」


 勇者……か。

 そういえば先日、異世界に召喚されて勇者と囃し立てられたことがあったな。

 夢か現実か分からない出来事であったが、あれはなかなかに勉強になった。


「面白そうだな」


 俺はそう声を返す。


「いいだろう。行こうではないか。丁度、学園も一週間の長期休暇に入る。特に用事もなかったし、ぜひ一緒に行きたい」

「やった……!」


 マリーズは後ろを向いて、ぐっとガッツポーズを作る。


「二人分のチケットを取ることもそうですが……ここまで幸運が続くなんて! クルトと二人きりの旅行です。旅行先で一体どんなことが──って、私はなにを考えているんですか!? ハレンチです。でも、ちょっとくらいは期待しても罰は当たらな……」

「おーい、マリーズ。なにを言ってるんだ?」


 急にすごい勢いでぶつぶつ呟き出したマリーズに声をかけるが、彼女は気付いていないよう。


 変なヤツだな。

 だが、久しぶりの休暇だ。


 舞台俳優として演技をした経験もあるし、観劇を通して新たな魔法習得のヒントに出来れば……そんなことも考えていた。


「あっ、マリーズちゃんだ!」

「クルトもいる」


 一人の世界に入ったマリーズを見守っていると、ララとシンシアもやってきた。


「二人でなにを話してたの?」

「なあに、次の休暇に舞台を──」

「な、なんでもありません! クルトも余計なことを言わないでください! いつものパターンだと、ここで私の計画が台無しになるんですから!」


 説明しようとするが、マリーズがすかさず俺の言葉を遮る。

 全く、さっきからなんだというのだ。


「ふうん? まあいっか」


 ララは首をかしげ、「そんなことより聞いて!」と声を弾ませた。


「実はいいものが手に入ったんだ! クルトは『光の果てに立つ者』っていう舞台は知ってるかな?」

「知ってるぞ。丁度マリーズとその話をしてたんだ」

「丁度よかった。実はたまたま二人分のチケットが手に入ったんだ! それでシンシアちゃんも見たいと言ったから、二人で行くことになって」

「シンシア、前からその舞台をずっと見に行きたいと思ってた……! 今から楽しみ」


 シンシアは相当楽しみなのか、彼女にしては珍しく声が上擦っているように感じた。

 うむ、奇遇だな。


「それなら、俺もマリーズと行くつもりだったんだ」

「え?」

「よかったら、四人で見に行くか? 大勢で行った方が楽しい」


 それによくよく考えれば、マリーズだって俺と二人きりで出掛けることに抵抗があるかもしれない。

 今更二人きりの旅行ごときで、気を遣う必要がないと言っても……だ。


 そう考えれば、ララたちも舞台のチケットが取れたことは好都合。俺にしては良い気遣いが出来たんじゃないだろうか?


「うん! 行こ行こ! すっごい幸運だね!」

「きっと日頃の行いがよかったから」


 よかった。

 ララとマリーズも乗り気のようである。


 あとは旅行に向けて準備を始め……。


「ああ……」


 だが、マリーズはなにか気にかかることでもあったのか、露骨に肩を落とした。


「やっぱり、こうなってしまった……せっかく二人きりの旅行だと思っていましたのに。きっと、抜け駆けしようとした私に対する罰です……」

「マリーズ。さっきから、なにを変なことを言ってる。もしかして四人で舞台を見に行くことが嫌なのか?」

「いえ、そうではありません。四人で行きましょう。あなたが鈍感なのは今更ですし」


 少し投げ槍な感じで、マリーズが答えた。

 情緒が不安定なヤツだ。

 なんにせよ、予定が埋まった。


 1000年前では、誰かと旅行に行くことなんてなかったな。俺は早くも、舞台当日を楽しみにするのであった。



 ◆ ◆



 そして当日。

 俺たちは三日かけて舞台が開かれる街まで行き、観劇を終えた。


「面白かったね〜」

「私、興奮しっぱなしでした!」

「最後は感動で泣いちゃった……」


 宿まで歩きながら、ララたちは各々舞台の感想を言い合っている。


「クルトはどうだった? あまり表情が変わらなかったから、面白くなかったのかな……って思ったけど」

「ふっ、なにを言う。最高だった」


『光の果てに立つ者』はオーソドックスな物語で、あまり観劇などしない俺でも楽しめた。

 特に最後の、愛する人のために立ち上がる勇者を見た時は、心が震えたものだ。

 表情が変わらないように見えたのも、どう魔法に活かそうか考えていたからだろう。


「それにしてもララ、よく俺の表情が変わっていないことに気付いたな? 舞台に集中していると思ったが」

「……っ!」


 俺がそう指摘すると、ララはびくっと肩を震わせた。


「た、たまたまクルトの顔が目に入っただけだよ。それ以外はずっと舞台を見ていたよ?」

「本当か? もしや、体調が悪いんじゃ……」

「とにかく!」


 ララは強引に話を打ち切り、こう続ける。


「今日はこの街で一泊だね! わたしとマリーズちゃんと、シンシアちゃんで一部屋。クルトとは別部屋で予約を取ってあるけど……本当によかったの?」

「もちろんだ。ララたちのような可愛い女の子と、同じ部屋に泊まるわけにはいかないだろうに」

「シンシアは別によかったけど……」


 俺としては当たり前のことを言ったつもりだったが、何故かシンシアは不満顔であった。


「これから泊まる宿は、キレイなところみたいですね。温泉もあるみたいですし、日々の疲れを取って──」


 とマリーズが言葉を続けようとした時であった。



「た、大変だ!」



 突如、街の中に剣呑な声が響き渡った。


 俺は足を止め、声の方へと耳を澄ます。


「自警団から連絡が入った。どうやらこの街に、隕石が落ちてくるらしいぞ!」

「な、なんだと!? どうして今まで気がつかなかったんだ!」

「隕石はものすごい勢いで向かってきているらしい。自警団の予測によると、落下まで残り()()。もうこの街はお終いだ!」


 ざわざわ。

 街が阿鼻叫喚に包まれる。


「い、いいいい隕石だってさ! クルト、どうする!?」

「ララ、なにをそんなに慌てているんだ? ()()()隕石じゃないか」


 嘆息する。


 こうしている間にも、人々は街から脱出しようと逃げ惑っている。

 しかし時間が少なすぎだ。


 ごった返したような騒ぎになっていると、上空から炎に包まれた隕石が向かってきた。

 なるほど。これが街に落ちればタダでは済まないだろう。


 だが。



「隕石ごとき、()()潰してしまえばいいだけだろう?」



 隕石に向かって手をかざす。

 そしてそのまま、ぎゅっと強く握りしめた。


 ドガァァアアアアアン!


 そんな破裂音が響いたかと思うと、隕石は空中で木端微塵に砕け散った。


 隕石の破片が街へと降り注ぐが、咄嗟に結界魔法を張って凌ぎ、事なきを得たのであった。


「い、隕石が弾けた……!」


 シンシアが驚愕で目を見開く。


「驚くことはない。これは所謂、()()()()だ」


 実際、千年前もこういう出来事はよくあった。

 どうやら一万年に一度、隕石が落ちがちの周期だったらしい。


 だが、その時も俺は慌てなかった。

 落ちてくる隕石を壊し続けていると、いつしか魔力を込めてぎゅっと拳を握るだけで、破裂させることが出来ていた。

 この時代では初めての隕石だったが……俺の腕も鈍っていないようだな。


「さあ、宿に行こう。温泉に入るんだろう?」

「今更ですが……相変わらず、クルトは規格外ですね。街一つ──いえ、下手をすれば大陸滅亡の危機だったというのに、一瞬で解決してしまうとは。スピード解決すぎます」


 マリーズがジト目で俺を見る。


 彼女の視線を受け流し、再び歩き出そうとすると。



「勇者だ……」



 街の住民の一人が、唐突にそう声を零した。

 そしてその声は周りに伝播していく。


「隕石を一瞬で砕くなんて……あの人は何者!?」

「まるで『光の果てに立つ者』の勇者みたいだ!」

「有り難や。まさか舞台が終わっても、こんな感動的な場面に立ち会えるとは……」


 おや?

 人々はいつしか俺を囲み、「勇者! 勇者!」と喝采を上げ始める。


「面倒なことになったな」


 頭を掻く。

 これでは、すぐに宿で体を休められないではないか。


 平和な旅行。

 だが、運命の悪戯と言うべきだろうか──どうやら神は、俺たちをゆっくりさせてくれないようだった。

おかげさまで、石後千鳥先生によるコミカライズ8巻が発売となりました。

8巻はいよいよコミカライズの最終巻となっています……!

全国の書店や電子書籍などで、お買い求めくださいませ!

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