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180・なにかがおかしい

「ま、まあララ達はララ達で楽しくやれているなら問題ないか」


 俺のことを全く気にかけていないように見えるのは解せぬが……まあ信頼されているということだろう。


「ここにも飽きた」


 ここでこれ以上情報も得られそうにないしな。


「もうお帰りなんですかー?」

「ああ」


 席から立つ。


「そ、それにしてもお兄さん、強いんですね。全然酔わないじゃないですかー」

「まあお酒は苦手とはいえ、だからといって弱いわけではないからな」

「ふ、ふうん。そうなんですね」


 女店員がじゃっかん()()()みたいで、そう返事をする。


「しかし……今度こんなことしたら、俺とて自分の身を守るために反撃しなければならない。よく心得ておくんだな」

「……!」


 周囲に緊張が走る。

 やはり……わざとやっていたか。まあ俺は最初から気付いていたがな。


「代金は……」

「い、いいのー。お兄さん、カッコいいからタダにしてあげる。また来てくださいね」

「機会があればな」


 と俺は言い残し、店から出た。


 騒がしい場所ではあったが、料理は美味しかった。

 変なヤツに絡まれたが、それもご一興といったところだろう。


 俺が店から出ると、後ろからひそひそと神達の声が聞こえてきた。



「ちょ、ちょっと! 本当にあんた、強い酒出したの?」

「ほ、本当です! このお店で一番強い酒を出しました! どんな酒豪でも一滴飲めば、すぐに酔い潰れるのに……」

「あの子、何者!? 本当に人間なの?」



 やはりか——。

 大方、あいつ等は俺に強い酒を飲ませ、酔い潰させるつもりだったのだろう。


 さらに近くに女の子も配置し、俺を良い気分にさせる算段ではあったようだが……残念だったな。俺はあの程度で媚びないし、そもそも飲んだアルコールは無効化させてもらった。

 アルコールというのは謂わば『毒』みたいなものだからな。魔法で除去することも容易い。


「最後に警告しておいたが……まあここに立ち寄ることは二度とないし、別にいいか」


 人間と神の間で大きな隔たりがあるということが分かった。

 基本的に神は人間のことを嫌い、排除しようとする傾向がある。

 ララ達と一緒にいるブライズみたいな天使は特殊なんだろう。


 俺はそんなことを思いながら、その場を後にするのであった。



 ◆ ◆



「しかし……この世界はなんなんだろうか」


 街中を歩きながら、一人思考を続ける。


 ほとんど人間界と様変わりしない市内。


 ユンヴルは俺になにを見せたかった?


 結局分からずじまいではあったが……全く収穫が得られなかったと言われればそうでもない。


「この神界はなにかがおかしい」


 上手く説明出来ないが、まるで紛い物みたいなのだ。

 言うなれば、人間によく似た『なにか』が人間の真似を暮らしているような感覚。

 彼等がする動作一つ一つ取っても、そう違和感を覚えざるを得なかった。


「しかしこれ以上は俺だけでは分からぬ。今すぐララ達のもとに戻って、ラゼバラにでも話を聞く……ん?」


 立ち止まる。

 今まで真っ昼間のようであった街並みが突然、夜のように真っ暗になったのだ。

 空を見上げると、ぽっかりと丸い月すら浮かんでいた。


「神界にも夜がある? だがそれにしても、どうしてこんな急に夜になった。それに……」


 どうして人間界と同じように()が昇る?


 ここは人間界とはまた別の世界。これではまるで神界が人間界の中にあるようではないか。


「やはりおかしい……ん、あれは?」


 空に浮かぶ満月。

 そこにぼんやりと映像が浮かび出した。


「ララ……マリーズやシンシアも?」


 ララ達の姿が映し出されている。

 彼女達は先ほどと変わらず、市内の観光を楽しんでいるようであった。


 なんだ? なにが起こっている。


 俺が混乱していると、突如——。


「は? 街が……」



 周囲にあった建物や神がぽろぽろと崩れ出したのだ。



 それはまるでクッキーを地面に落としたかのよう。

 やがて地面さえもアイスが溶けるようになくなっていき、俺は浮遊魔法を使って宙に浮く。


「一体なにが起こっている」


 もう一度月を見る。


『え、え、なにが起こってるの!?』

『どうして街がこんな風に?』

『ラゼバラさん……これは……?』

『わ、私にも分からないわ! こんなこと、今まで一度もなかったのに……』


 どうやらララ達の側でも同じことが起こっているようで、消えていく街並みに彼女達は慌てふためいていた。


 ……うむ。

 どうやらこの神界で、元上位神であったラゼバラでさえも不可解なことが起こっているらしい。

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