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166・神器

「ラゼバラ……どういうつもりだ?」


 朝のHRが終わった後。

 俺はラゼバラにそう問い詰めた。


「あら」


 すると彼女は振り返り、妖艶な笑みを浮かべる。


「実は嬉しいんじゃないの?」

「俺が?」

「うん。だって私みたいな美女に乗られているんだからね〜。男の子だったら、たまらないんじゃないの?」


 なにを言っているのだ。

 全く。元々悪戯好きの神ではあったが、魔法学園に転校してくることでそれに拍車がかかっているような気がする。

 ちなみに——未だラゼバラは俺の膝の上だ。

 離れる気配もない。


「クルトから離れろー!」

「本当です! 破廉恥です!」

「いくら神でも……それは反則……」


 その様子を見て、周りではララとマリーズ、シンシアが彼女をどかそうと騒いでいる。

 シンシアにいたっては騒ぎを聞きつけ、わざわざ隣のクラスからすっ飛んできたほどだ。


「ふふふ、嫌よ。クルトの膝の上は私のものなんだから」


 しかしラゼバラは動かない。

 一生懸命ララ達がどかそうとしてくれるが、ラゼバラは微動だにしなかった。


「身体強化魔法のライズパワーを使っているのか……」


 そのせいで一見か弱そうに見える少女、ラゼバラを動かすことが出来ていないのだ。

 神でも簡単な魔法くらいなら使える。


「魔法……それだったら!」


 ララが気合の一声を発する。

 それと同時、彼女も身体強化魔法のライズパワーを発動した。


「クルトから離れろー!」

「あら」


 するとテコを使ってもどかせなかったラゼバラが、ひょいっと持ち上がったのだ。


「こんなことしちゃダメなんだからねっ!」


 そのまま地面に下ろすララ。

 腰に手を当てて、ぷんぷん顔である。


「驚いたわね。いくら私が魔法はあまり得意ではないとはいえ、クルト以外の人間に負けるなんて……」


 ラゼバラは唖然とした表情。


「わたしはクルトに魔法を教えてもらっているんだからねっ!」

「私も……! 先ほどはララでしたが、これくらいなら私でも出来ます」


 ララがえっへんと胸を張り、マリーズも慌てて口を挟んだ。


「あなたも……?」


 マリーズを見て、さらにラゼバラは驚いた顔になった。


 ——うむ。

 やはり、ララとマリーズは先の戦いでなにかをつかんでいる。


 俺は『俺より強いヤツ』を求めて1000年後に転生してきた。

 もうそんなヤツはいないと半ば諦めていたが……なかなかどうして、やはりこの二人には素質がある。


「追いついてくるのも時間の問題かもしれんな」


 つい呟く。


「クルト、なんて言ったの?」


 ララがそれに気付き、問いを投げかける。


「いや……ララとマリーズの成長度合いも、俺の予想以上だと思ってな。この調子だったら、教えられることがなくなるのも時間の問題かもと思ってな」


 率直な感想だ。

 最大限の賛辞のつもりだった。


 しかしララとマリーズ、そしてシンシアが慌てて顔を近付け、


「えーっ! クルト! なにを言ってるの!」

「まだまだ教えてもらうことは残っているんですからね!」

「クルトに教えてもらえなくなるのは……シンシアも嫌……それにシンシアだって成長している……」


 と口にした。


「くはは。そうだな。まだまだララとマリーズ、シンシアには教えることが山積みだ」


 彼女達の顔を見ていると、自然と笑みが零れた。

 俺は彼女達の頭を順番に撫でる。


「相変わらずいちゃいちゃしてるわね」


 その様子を見て、ラゼバラは唇を尖らせた。

 なにか気に入らないことがあるのだろうか。


「それにしてもラゼバラ。バグヌバを倒してから少し聞いたが……神々がよからぬことを考えている、ということについてもっと詳しく説明してくれないか?」


 ほんわかした雰囲気から一転。

 俺が問いかけると、ラゼバラは真剣な瞳になった。


「ええ……言ったと思うけど、私も全容は分かっていないわ。でも相当まずいことになってるみたい」

「というと?」

神界しんかいには古の神器というものが存在しているのよ」

「ほう」


 神器の存在については俺も知っている。

 ラゼバラが使う神剣もその一部だ。

 だが『古の神器』というのは、どうやらまた別のことらしいな。


「ラゼバラの口ぶりからすると、なかなか厄介なように感じるが?」

「ええ。ただなんせ()()()()の神器だからね。私達にとっては1万年前なんて、人間にとっての1年前みたいなものだけど……それでも、あまりに強大な力すぎてもう使えなくなっているわ」

「故障している……ということか?」


 俺の問いに、ラゼバラは首肯する。


 それにしても1万年前ときたか。

 1000年前にそんな名前を聞いたことないと思ったが、当然か。


「古の神器が起動してしまえば、いくらクルトでも勝てないと思うわ」

「ふっ。俺でもか?」


 吹き出してしまう。


「それは楽しみだな。是非、その古の神器とやらをお目にかかりたいものだ」

「あなた、今すっごい笑顔よ。『勝てない』と聞いて嬉しがるなんて、あなたくらいよ」

「そうか?」


 口元に手を当ててみると、確かに——俺は無意識に笑みを作ってしまっていた。

『俺より強いヤツ』がいるかもしれない、ということを聞いて、全く恐れを抱いていない。

 それどころか、まだ見ぬ武器に心を弾ませているほどだ。


「クルトでも勝てないってどういうこと!?」

「まあ今までそんなことを言ってきた敵はたくさんいましたからね。今更です」

「クルトだったら……そんなの一発で倒せる……」


 ララが動揺し、マリーズは冷静を保ったまま。シンシアは不満げに頬を膨らませた。


「それで……話の流れでいうと、古の神器がその『よからぬこと』の鍵を握っているといったところか?」

「ええ。その話は長くなるんだけど——そうだ」


 そこでふとラゼバラはなにかを閃いたようにパンと手を叩く。


「クルト、古の神器を見てみたいのよね?」

「ああ、もちろんだ」


 故障しているとはいえ、なんせ神器なのだ。

 興味が出ないわけがない。


「じゃあ見てみる?」

「は?」


 俺が聞き返すと、ラゼバラは口元に指をつけこう続けるのであった。


「あなた達を神界に招待するわ」

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