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143・俺の家へようこそ

 ラゼバラと別れ、すぐに俺はララ達のもとに戻った。


「待たせたな」


 すると……いの一番にララが俺の胸に飛び込んでくる。


「もう……! 心配したよ! ほとんど説明なしにどこかに行くのは止めて! クルトが戻ってこないような気がして、寂しくなってくるから……」

「す、すまんな」


 ララから伝わってくる熱量に驚かされながらも、俺は彼女の背中をポンポンと叩いてやった。

 次にマリーズとシンシアも俺に駆け寄る。


「あなたのことですから心配はしていませんが、もう少し説明はして欲しいものです」

「マリーズと……同感。シンシア、クルトがいなくなったら悲しむ……」


 三人から離れていたのは少しの間だけだったがな。

 思っていた以上に心配させてしまったらしい。

 悪いことをした。


「それでクルト、説明してくれるんだよね?」

「1000年前とか聞こえましたが……一体どういうことでしょう」

「シンシア、気になる」


 一転。

 今度は三人が興味津々といった感じで、矢継ぎ早に俺に問いかけてきた。



 ——説明か。



 今まで信じてもらえないものだと思い、詳細な説明を避けてきた。

 しかし今後のことも考えると、この三人くらいには本当のことを打ち明けるべきだろう。

 なんなら遅すぎたくらいだ。


「そうだな……ここで言うのもなんだ」


 周囲を見渡しながら、俺は続ける。


「この地下迷宮から脱出するぞ。用は済んだしな。そして……三人を連れて行きたい場所がある」

「「「連れて行きたい場所?」」」


 一様に首をかしげる三人。


「そうだ」

「クルト、それってどこなの?」

「言葉では説明しにくいな。今からすぐに向かおうか。みんなは疲れていないか?」


 問いかけると、


「うん、大丈夫!」

「早くあなたのことを知りたいですからね」

「シンシアも……みんなと同じ……」


 と揃って首を縦に振った。


 この程度で疲労を感じるような鍛え方はしていなかったが……本当に三人はたくましくなったものだ。

 ただただ誇らしい。


 俺はパンと手を叩いて、


「よし……帰るぞ。あのへっぽこ勇者も迎えに行かないとな」


 さすがにあのまま放置して、殺してしまうのも寝覚めが悪い。


 早速俺達はこの層……そして地下迷宮から出るために、足を踏み出すのであった。


 ◆ ◆


 地下迷宮から出て、俺は転移魔法を使ってある場所に向かった。


 ちなみにあのアイヴァンだとかいう男は、溶岩地帯で死にそうになって倒れていた。

 それを俺は担いで、地下迷宮の入り口のところで寝かせておいた。

 つくづく世話のかける男だ。

 まあ二度と会うこともないだろう。後はアイヴァンの方でなんとかすればいい。



「ここだ」



 鬱蒼と生い茂った森の中。

 なんの変哲もなさそうな岩壁がんぺきの前まで、俺達は来ていた。


「……? 行き止まりだよ、クルト」


 ララが不思議そうな顔をして、岩壁を叩く。


「いや……行き止まりではない。ララが今触っている部分は入り口にあたるところだ」

「入り口?」


 ララがきょとんとした顔になる。


「よく見ておけ」


 俺は岩壁に手を当てそこに魔力を注ぐ。


 すると……。


「魔法陣が浮かび上がっていきます!」


 真っ先にマリーズがそう驚きの声を上げた。

 目の前にそびえ立つ岩壁全体に模様のような魔法陣が現れ、黄金の光を放ちはじめたのだ。

 夜空を斬り裂かんばかりに、神々しい光が周囲に拡散していく。


「複雑な……魔法陣……」

「シンシアにもそう見えるか」


 俺が問いかけると、シンシアはコクリと頷いた。

 魔法の分析に長けている緑色魔力の持ち主、シンシアとてこの魔法陣の全容をつかむことはなかなか困難であろう。

 俺はその魔法陣に仕込まれた施錠を一つずつ解いていく。

 全て解錠するのにはさほど時間はかからなかった。


「これで……終わりだ」


 最後の一つを解く。

 すると、瞬く間に岩壁が変形し、優に中へと入れるような穴が出来たのであった。


「こ、こんな仕組みが!」

「一体これはなんですか?」

「さっきの魔法陣……美しかった……」


 三人は一様に困惑している。


「もしかして……クルトが見つけた古代遺跡でしょうか?」


 その中でも優等生のマリーズが一番最初に問いを発する。


「古代遺跡?」


 ララが首をかしげた。


「はい。ずーっとずーっと過去に作られたと言われている跡です。噂では1000年も前に作られた遺跡もあるだとか」


 うむ、古代遺跡か。

 1000年前においても、そのような類のものはいくつか見かけたことがある。

 そこには現代の人間が持ち得ないようなアイテムや知識が眠っており、暇潰しにそれを閲覧することは丁度良かったのだ。


 しかし古代遺跡を見つけること、そして中に入ることも一筋縄ではいかないことが多い。

 先ほどのように魔法で施錠させられていることがほとんどだ。


「マリーズ、なかなかの考察だな」


 彼女の頭を撫でてやる。


「しかし……マリーズが思っているものとは少し違う」

「違う? これだけ厳重に魔法で施錠させられていたのに? クルトがいなければ、見つけることも出来ませんでしたよ」

「ああ。これはそんな大層なものではないのだからな」


 どちらにせよ、説明するよりも一度中に入ってみる方が三人の理解も早いだろう。


「よし、三人とも中に入るぞ」


 俺が先頭になって、その中に入る。

 三人も慌てて俺の後に続いた。


「俺の()へようこそ」


 みんなが入ったところで、クルリと三人の方に振り返ってそう言った。


 一瞬、ララ達はぽかーんとした表情。

 しかし。


「えーっ! ここ、クルトの家だったの!?」

「どうして古代遺跡に住んでいるんですか!」

「意味が分からない……」


 と捲し立てるようにして三人は続けた。


 ぐいぐいっと俺に迫ってくる。

 そのせいで、三人の胸とか太ももの柔らかい部分が俺の体に当たってしまっていた。


「マリーズ、先ほども言ったがここは古代遺跡ではない。ここは俺が居住するために一から作ったただの家だ」


 この時代において。

 俺は魔法学園の学生寮に住んでいるため、ここに来るのははじめてではあるが。


「クルト。家って……別荘みたいなものかな。いつの間にこんなもの作ってたの?」


 ララが質問する。

 まだ混乱している様子だ。


 そんな彼女に俺はこう続けた後、再度歩きはじめた。


()()()()()()だ」

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