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126・開かない扉

 城の中へ転移する。


「誰もいない……?」


 ララがキョロキョロと周囲を見渡して、首をかしげた。


「ここは……大広間といったところか」


 俺も歩きながら、周囲を隈無く観察していく。


 城の中の防備に人や魔物を割くべきだと思うが……恐ろしいまでに無警戒だ。

 ここは魔念の中だ。余分なところが削られたためだろうか。

 もしくは、俺達のことを脅威に思っていない……いわば()()()いるかのどちらかだ。


「クルト、こっち……」


 三人で手分けして広間を歩いていると、シンシアがとある扉を指差した。

 大広間には、どこかに繋がるであろう扉が何個も設置されている。

 その中でも……シンシアが指差した扉は、一際大きなものであった。


「内部から魔力を感じるな」


 俺もシンシアの隣に立って、そう分析する。


「おそらく……この奥にオーレリアンがいるのだろう」


 ならばこの先に進まなければならない。


「じゃあ早速行こうよっ!」


 ララが扉の取ってを持ち、そのまま思い切り押した。


「よいしょっ! よいしょっ!」


 一生懸命押している。

 しかし扉はびくともしない。


「おっかしいな……もしかして、押してダメなら引いてみろってことかな?」

「ふっ。そんな単純なものではないだろう」


 思わず吹き出してしまった。


「扉に鍵がかかっている」

「んー、それくらいならわたしだって分かるよー。でも……いくら鍵がかかっていても、魔法で体を強くして、無理矢理押し開けばなんとかなるかなって」


 ララの言った通り、俺の教えによって魔法の修練をした彼女なら、そうやれば無理矢理扉をこじ開けることも可能だろう。

 だが、それは『物理的』に鍵がかけられていた場合だ。


「魔法によって施錠させられている……」


 ぼそりとシンシアが呟く。


「シンシア、分かるか」

「うん」


 シンシアが頷く。


「シンシア、この扉を開けるためにはどうすればいい?」


 俺は答えが分かっているが、あえてシンシアを試すように問題を出してみた。


「ちょっと待って」


 シンシアが右手を扉に当てる。


 そして目を瞑り集中。

 扉にかけられている施錠魔法の分析をしているのだ。


 目の前に魔法陣が現れ、彼女の魔力が緑色の光となって周囲に広がっていった。

 やがて。


「……三つの魔石が必要……」


 とシンシアは答えを導き出したのだ。


「なかなかやるではないか、シンシア。正解だ」


 この施錠魔法は一筋縄ではいかない。

 まずは鍵の役割を担っている三つの魔石を見つけなければならない。それがなければ開かない仕組みになっているのだ。


「でも、その魔石がどこにあるか……分からない」

「おそらく、この城の中だろうな」


 もう一度繰り返すが、これ以外にも扉がいつかある。

 なかなか広そうな城だ。普通に捜しては、時間がかかりそうだ。


「でも、なんでわざわざそんなことをするのかな?」

「オーレリアンが俺達を試しているんだろうな」


 でないと、このような趣向を凝らす必要がない。


「一つずつ捜さないと……ダメ……?」


 シンシアが言うと、ララは「うわ……めんどくさ……」と呟いた。

 繰り返すが、()()()三つの魔石を捜し出すとなると……少々骨が折れる。


 だが。



「なに、心配はない。魔石の居場所ならもうつかんでいるんだからな」



「「え?」」


 二人が声を重ねる。


「城全体に探知魔法を張り巡らしている。それによって、城内部の構造……そして、配置されているアイテムを全て把握出来た」


 そこまで出来ていれば、真っ直ぐ魔石を拾いに行くことが出来る。

 急げば、一時間もあれば魔石は集まるだろう。


 そう続けると、


「こんな広いお城なのに、そんなこと出来るの!?」

「シンシアもやろうとしたけど……それを阻害するような魔法陣がいくつも仕掛けられている……クルトにしか出来ない」


 と二人は目を見開き、あんぐりと口を開けた。


 しかし1000年前において、ここより広い地下迷宮に潜る必要もあったものだ。

 しかもその中には、千層まで続いているものもある。

 それなのに、いちいち探索していては時間がいくらあっても足りない。


「じゃあ……クルトに付いていけば、すぐに魔石を回収することが出来るね!」


 ララの瞳に光が宿る。


「いや……そういった方法も可能だ、と話しただけだ。今回は別の方法を採る」

「ふぇ? なにをするつもりなの?」

「見ておけ」


 ララとシンシアに見られながら、俺は扉に片手を置いた。

 ……身体強化魔法発動。

 力任せに扉を押す。


 すると……。


「ひ、開いていくよ!?」

「どういうこと……?」



 扉はぎいぃと不快な音を立てながら、完全に開いたのだ。



「魔法で鍵がかけられようと関係はない。力尽くで開けてしまえばいいだけのことだからな」


 さて、これで道は開かれた。

 扉が開いた先を見ると、光が射し込まない真っ暗な廊下が続いているようであった。


「いやいや! だって、さっき! わたし、さっき同じことやっても無駄だったよ!?」

「まだララにそれだけの力がないだけだ」


 確かに物理的な鍵ならともかく、魔法で施錠させられている扉を力尽くで開けることは困難だ。

 しかし……それは難しいというだけで、()()()()不可能という意味ではない。


「……まさか、この扉を施錠した人もこんな開け方されるなんて……想定外だと思う……」

「かもしれないな」


 俺からしたら三流にも程があるが。


「とにかく道は出来た。先に進もう。まだ気を抜くなよ」


 俺が前を歩くと、後からララとシンシアが続いた。

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