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119・平和な空を取り戻す

 魔念をみんなで協力して片付けた。


 その後、一旦俺達は《ファースト》クラスの前で集まり、これからのことについて話し合うことにした。


「みんな、よくやったと思う。俺も助かった」


 これは心からの本音である。

 それを言うと、ララとマリーズ、それにシンシアとアヴリルは一様に嬉しそうな顔となった。


「うん……! これもクルトに教えてもらったおかげだよ」

「それにしても、急に魔力が湧いてきたように思えましたが? もしかして、あなたがなにかやってくれたのではないでしょうか」

「シンシアも、そう。戦いの後、振り返ったら倒した記憶のない野犬が倒れてた」

「全く……お主は大したことものだ。そんなクルトに褒められるとなると、いくら私でも頬が緩んでくるな」

 

 どうやら、俺が遠距離からみんなのサポートをしていたことはバレていたようだな。

 まあ隠そうともしてなかったから、彼女等の魔法探知の腕をもってからすれば気付かれるのも仕方がないか。


「これで……魔念は全て片付いたんですか?」


 マリーズが尋ねてくる。


「まだだな」

「なっ……!」


 マリーズが目を見開き、緊張感を高める。


「とはいえマリーズ達のやり方が悪かったわけではない。今いる魔念はあらかた片付いた。しかし魔念というものは大本おおもとを叩かない限り、湧いてくる存在だからまだ油断するのは早い」

「今はよくても、少し経てば新たに魔念が生まれてくる……といったところでしょうか」

「ああ」

「でも、その大本ってのはどこにいるのー?」


 ララよ、いい質問だ。


「それを今から突き止める。魔力の分析は完全に済んではいないが……今から俺がしようと思っていることに関しては、これだけでも十分だ。後は任せてくれ」


 そう、みんなに言った。


 すると四人は目に力を込めて、


「わたしもクルトに協力するよっ!」

「本当です。私達は仲間ですよ」

「クルトはすごい……そんなクルトに付いていけるよう、シンシアがんばる……」

「クルトはなんでも一人で片付けようとする。それはカッコいいのだが……たまには私達も頼ってくれ」


 と言葉にした。


 全く……俺は本当にいい仲間を持ったものだ。


 1000年前では考えられなかった。

 四人を眺めていると、しみじみとそう思うのであった。

 だが。


「ありがとう。だが、ここは役割を分担しよう。まずはマリーズにはクラスの方を任せたい」

「クラス……ですか?」


 マリーズが不思議そうな顔をする。


「そうだ。もうすぐで《ファースト》クラスの演劇がはじまってしまうだろう? マリーズはクラスのまとめ役だ。まとめ役がいなくなったら、クラスは混乱してしまう」

「で、ですがっ! そんなことをしている場合じゃないといいますか……」

「マリーズ、俺は余興が好きだ」


 それなのに、たかが魔念ごときで文化祭を台無しにしてしまうなど、考えられない。

 それに文化祭の一部……クラスの演劇をなくしてしまうことにより、魔念がさらに強くなってしまう可能性もあるからな。


 そう説明した後に、


「これはマリーズにしか出来ないことだ。頼めるか?」

「あなたがそう言うなら……任せてください」


 尋ねるとマリーズは覚悟を決めたのか、拳をぎゅっと握りしめた。


「その次にアヴリル。アヴリルには王都の防衛を任せたい。万が一なにかあれば、学園……そして王都のみんなを守って欲しい」

「ん? ということは、お主は今からどこかに行くのか?」

「いや、()()にはいかない。だが、王都を気にしながら戦うのは、なかなか難儀なものでな。そんな時、アヴリルが王都にいてくれるとなれば俺も安心出来る」

「? よく分からんが、任せてくれ。これでも大賢者と呼ばれているのだからな」


 アヴリルが自分の胸を叩いた。


「後はララとシンシアだが……」


 言葉を続けようとした時であった。


 ん?


「そ、空が黒くなっていくよ!」


 突然真っ黒な雲が空を覆いだしたのだ。


 いきなりの出来事に、周りの人達も窓から外を眺める。

 太陽の光が一切射し込まず、まるで校舎は昼から夜に変わってしまったかのようだ。


「クルト! あれは……」


 マリーズが俺の方を見る。


「魔念だな。ふむ、どうやらあちらは一気に片を付ける気にでもなったというのか?」


 無論、ただ曇っているだけではない。

 空を覆うのは邪悪な魔念だ。

 その魔念が王都の空に広がることによって……。



「あれ? だんだん力が抜けていくぞ?」

「もう立ってられない……気が抜けていく」

「一体なにが起こっているんだ!?」



 周りにいる人達が、次々に床に膝を付いていった。

 まるで糸が切れた操り人形かのようである。

 その中には、顔面が蒼白になっているものもいた。


「クルト……これは?」


 シンシアが首をかしげる。

 他のララとマリーズ、アヴリルも見る。

 どうやら三人は無事のようだ。


「魔念が空を覆うことにより、その影響のせいで体から魔力が抜けていっている。強い倦怠感に襲われているはずだ」


 なので、俺により魔力のコントロールの仕方や、そもそもの魔力貯蔵量が多いララとマリーズ、シンシアは平気な顔をしているのだ。アヴリルも似たようなものだろう。


「今のままだったら、まだダルいだけで済むのだがな。このまま続いていけば、魔力が完全になくなってしまい、精神が崩壊する者も現れるだろう」

「えっ、じゃあ早くなんとしないと! でもどうやって……」


 ララが深刻そうにするが、自らではどうすればいいか分からない様子であった。


 だが、心配する必要はない。


「すぐに片付けてやる」


 俺は窓を開けて、空を眺める。


「ファイアースピア」


 そして空目掛けて、一本のファイアースピアを発射したのであった。

 炎の槍は大気を切り裂き、ぐんぐんと空に向かっていく。


 雲のように見える魔念に辿り着いた瞬間、



「わっ! 魔念が一瞬で消えた!?」



 ファイアースピアの衝撃によって、空を覆っていた魔念が一瞬にして霧散したのであった。


 突き抜けるような色をした青空が戻り、太陽が再び王都に降り注ぐ。

 それと同時に、周りの人達も元気を取り戻していった。


「王都全域を魔念で覆ってしまえば、なんとかなると思うのは浅はかだったな。今の魔法を何百発でも何千発でも、俺はまだ放てるぞ?」

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