112・元Sランク冒険者と再び戦うことになった
その後、俺は特に問題もなく勝ち抜いていった。
「どうやらララも負けてないようだな」
試合の合間にララの戦いも見ていると、彼女は華麗な魔法で目の前の敵を次々となぎ倒していった。
「おいおい、あの可愛い女の子! メチャクチャ強いぞ!」
「見たこともない魔法を使いやがる!」
うむ。
俺はともかく、ララのような女の子が勝ち上がっているのを見るのは、想定外だったようだな。
「まあ俺は予想していたことだがな」
俺がララに魔法を教えるようになって、日も長い。
きっとマリーズがこの大会に出場したとしても、同じような結果となっていただろう。
「さて、俺の方も向かうとするか」
次は準々決勝である。
名前を呼ばれ、ステージに上がった。
「ガハハ! まさか次の相手はクルトだとはな!」
「デズモンド……?」
舞台上には、木剣を持って肩をポンポンと叩いているデズモンドの姿があった。
言わずもがな、元Sランク冒険者でもあり、そしてロザンリラ魔法学園の先生でもある。
デズモンドは口元に笑みを浮かべ、こう続けた。
「儂もこの祭りを楽しみたくてなあ。そうすると面白そうな大会がやってるじゃねえか。というわけで参加したみたのだ」
「……これは想定外だったな」
頭を掻く。
戦いのスケジュールが過密だったこともあるが、ララ以外、他の人達の戦いにあまり興味を抱けなかったのだ。
「まあ良い。早く戦おう」
クイッと手招きをする。
「ふっ、教師相手にそのような態度とはな。これには少し教育が必要なようだ」
そう言って、デズモンドがスペアの木剣を俺に放り投げてきた。
手に取る。
これで戦え……とでも言いたいのか。
「デズモンドと戦うのは入学試験以来だな。あれから、どれだけ強くなっているか……もしくは弱くなっているのだ?」
なんせ今まで先生業務をしていたのである。
腕が鈍っていたとしてもおかしくない。
そういう意味で言ったのだが、デズモンドは「ククク」と笑いを零し、
「舐めるな。儂は魔法学園に来てから」
デズモンドが木剣を構える。
「——さらに強くなった」
地面を蹴り、デズモンドが俺に向かってくる。
うむ、なかなか速いな。
今までの出場者と比べたら段違いだ。
体当たりのように木剣を振るうデズモンドに対して、俺も手に持った剣で応じる。
つばぜり合いが起こり、デズモンドの顔がすぐ前まできていた。
「ほう、これだったらまあまあ楽しめそうだな」
「余裕綽々だな。儂相手なら、いつでも倒せると思っているのか」
「どうだろうな」
剣で押し、デズモンドと距離を取った。
それにしてもさっきの速さと強さ……ただ、身体能力に任せているだけではないようだ。
「身体強化魔法をしっかり身に付けているようだな」
俺が言うと、デズモンドはニヤリと口角を釣り上げる。
「ああ、お前に教えてもらってから、影で身体強化魔法を特訓していたのだ。そのおかげで——」
デズモンドが剣を振り上げ、
「儂の剣は光の速さとなった」
無数の剣筋で俺に襲いかかってきたのだ。
「うむ、どうやらハッタリではないようだな」
一回戦で戦ったノーマンとは、明らかにレベルが違う。
光速の剣の応酬を、俺は感心しながら剣でいなしていった。
「なにが起こってるか分からねえぞ!?」
「速すぎて見えない!」
「レベルが高すぎる戦いは、普通の人には理解不能ということなのか……」
そうしながら耳を傾けると、観客の方からもそんな声が聞こえた。
無理もない。
戦闘に長けていなければ、俺達がなにをしているのかを観測することさえも不可能だろう。
「ガハハ! どうだどうだどうだ!」
デズモンドはこれだけ剣を繰り出しているというのに、息切れ一つ起こしていない。
身体強化魔法で、持久力も増している証拠だ。
特訓してきたというのは本当か。
「しかしな、デズモンド」
剣を躱したり、自分の剣で受け止めたりいなしながら、こう語りかける。
「なにを光の速さになったごときで調子に乗っているのだ?」
「ああ?」
剣を振るいながら、デズモンドは怪訝そうな顔つきとなった。
俺は握っている剣に魔力を込め、
「光の速さが相手なら、それを超えればいいだけのことだ」
と言ってから、光をも超える速さでデズモンドを一閃したのだ。
「ぐはっ!」
たった一発の斬撃。しかしそれは必殺の一撃となった。
デズモンドが後方に吹っ飛ばされる。
時間をも超越した一撃をくらってなお、デズモンドは床に手を付きながら、戦意を失っていなかった。
「はあっ、はあっ。やはり、お前は儂の愛弟子だ。そうこなくっちゃ……面白くないってもんよ!」
叫び、デズモンドが力の限り剣を振るう。
先ほどの一撃をくらってもまだ立ち上がるとはな。
デズモンドの剣が俺に直撃。
これが真剣だったら、身体強化魔法の恩恵を受けたデズモンドの一撃で、キレイに両断されてしまったことであろう。
しかし。
「それは俺じゃない」
俺の姿が煙のように消えていく。
「なっ……! これは!」
驚愕しているデズモンドに背後に回り込み、俺はその首筋にトンと木剣を当てた。
「戦場ならあんたはここで終わりだ。まだ戦いを続けるか?」
入学試験と同じことを問うと、デズモンドは持っていた剣を落として、
「……儂の負けだ」
そう項垂れた。
同時、爆発的な歓声が巻き起こる。
「奇しくもあの入学試験の時と同じ結果になってしまったか。儂もまだまだだな」
「そんなことはない。ここに至るまでの過程が全然違う。もう少し自信を持て」
「やれやれ。どっちが教師なのか分からなくなるのお」
とデズモンドは呆気に取られた様子で、溜息を吐くのであった。





