063 ギルドの報告
「……いいかね?」
サクラとレクトルのやり取りが一段落ついたタイミングを狙ってロイエンが話しかけた。
「あぁ、悪いな」
「構わないよ。ご足労かけたのはこちらだからね。では、初めての者もいることだし、改めて自己紹介といこうかね。私はこの冒険者ギルドの代表であるギルドマスターを務めているロイエンという者だ」
「私はルーミエです」
「そういえば、ギルドマスター自体には名乗ってなかったな。俺はレクトルだ。それで、こっちにいるのが……」
「サクラだよ」
「セピアなの」
レクトルが名を告げる前にサクラが自ら名乗ったことでセピアがそれに続く。そうなれば流れができたとばかりにレクトルが左に顔を向ければ同じように名を告げる。
「ベルよ」
「ハクナです」
「ベル……聞かない名だね」
ベルとハクナは愛称で名乗っていたが、魔王であるベルの名を聞いたところで少し考え込むロイエン。実際には昨日に【鑑定】を実施し本名も知っているはずなのだが、魔王との邂逅という一大事に頭から消えていた。精々もう少し長かったような? という懸念があったくらいだった。
それを余所に、続けて軽く自己紹介したルーミエを見てレクトルはあることが気にかかり問いかけた。
「そういえば、ルーミエさんも参加されるんですね」
「はい。誰かのせいで私も忙しい身なのですが……」
ルーミエはそう言いながらチラッと横にいるギルドマスターを見て、軽くため息をついた。普段はまともに仕事をしないくせに、こと楽をする為や自分にかかる責任を少しでも軽くするためにならかなりの労力を発揮する上司に呆れていた。
特に今回ルーミエが驚いたのは、レクトルの後ろに控えているメイド服に身を包んだ少女についてだった。今も自分が座っているにもかかわらず、ずっと立たせているままなのを申し訳なく思い、後で問題にならないかとドキドキしていた。
それは目の前にいる少年よりも、ルーミエにとっては相手が誰かわかっている分質が悪かった。だが、少女の方へと視線を向ければ当の本人はにこやかに微笑んでいる。取り敢えず同じように笑顔を返していると、そんな人の気も知らないロイエンは話を進めていく。
「ルーミエ君はこのギルドのサブマスターだからね。私一人で抱えるには、少々話が大きすぎる。ルーミエ君と、後サポートに回る彼女の参加を認めてはもらえないかね?」
その言葉にレクトルたちが振り返ると、ルーミエと微笑みあっていたメイド服の女性はペコリとお辞儀する。一瞬スカートの裾を掴もうと手を伸ばしかけていたが、思いとどまる。それでも、どこか品のある雰囲気が感じられる所作だった。
あまりそういうものに慣れていないレクトルは特に思うこともなく、自分も同様に軽く会釈を返すとロイエンへと向き直る。
「ルーミエさんはサブマスターだったんだな。別に問題ないが……ちなみに、何かあった時の責任はギルドマスターが取るんだよな?」
「それは構わないが……当人ではないのかね?」
「あなたの判断で巻き込んだんだろ? それとも、彼女達を使って何かするつもりでも? それで、やったのは自分ではないからと責任逃れするつもりか?」
レクトルは警戒心を前面に押し出し、ギルドマスターを威嚇する。不要に口外しないという誓約を交わしたにもかかわらず、いきなり他者の参加を求めてきたからだ。それはロイエンが持つ“企てる者”の称号からも、何かを画策しているのではという疑念を抱くには十分なものだった。
ロイエンとしてはそんなつもりはなく、ただこの場に一人でいたくなかったというのと、面倒事をサブマスターであるルーミエに押し付けるのが主だった狙いだった。確かに画策していることはあるが、関係ないところで疑われ、この場自体が無効になることを恐れ潔く了承する。
「そんなつもりはないよ。その条件で構わない。それと、あと一人、ここでの話し合いの報告をしたい人物がいる」
「まだいるのか……。最初の誓約を覚えてないのか?」
「覚えているからこそ、だね。事前に了承を得ておきたいのだよ。私もギルドマスターという身分なのでね。当然、報告すべき相手というのがいるのだよ。しかも、嘘を伝えるわけにもいかず、隠し通すのも難しい相手だね」
「それって……」
「予想がついているかもしれないが……国王だね」
「……………………」
どんどんと話が大きくなっていく流れに頭を抱えるレクトル。国のトップにまで話が及べば、静かに暮らしたいという思い、ベルを守るという自身の誓約、そしてこれからの行動に大きく関わってくることは明白だった。
ただ、確かにギルドマスターまでで話を終わらせた場合、国からしたら西の森の異変は謎のままになる。となれば原因究明に動き出すかもしれない。そうなれば、ギルドの方にも圧力がかかるだろう。サブマスターであるルーミエ達にまで圧力がかかった場合、ベルたちの事が外に伝わってしまう恐れがある。バレるのも時間の問題となるだろう。
レクトルにとって別に誓約を交わしたギルドマスターがどうなろうと構わないが、そうの後に国がどう動くのかがわからなかった。魔王が復活を果たしたのだ。レクトルが聞く限りの話では、人にとってそれは脅威でしかなかった。
そうなれば人々は混乱に陥り、勇者の活躍を期待するだろう。街を自由に訪れることはできなくなり、待っているのは創作世界での閉じこもった生活か。レクトルにとってはそれでも別にいいという思いはあったが、サクラや買い出しに出掛けるレア達には広く世界を知ってほしかった。
仮に国王にまで話を通していた場合、そのあたりをうまく調整してくれるのではないか。その期待がレクトルの胸の中で膨らみ始める。今後を左右する重要な話だ。その決断が正しいかどうか、せめて後悔しないようにと質問を投げかける。
「この国の王というのは、どういった人なんだ?」
「聡明な人だよ。私も昔仕えていたことがあってね。民の事を常に考え、この地をしっかりと統治している。悪い事にはならないはずだよ」
「そうか……わかった。仮にベルや俺たちに何かあった場合、あなたと交わした誓約は全て無効だ。何が合っても保証しないぞ?」
「む……了承した。そうならないよう、こちらも尽力するとしよう。では、誓約の更新を」
「あぁ」
レクトルとロイエンは再び手のひらを合わせ、誓約の更新を行う。ロイエンにとって、王への報告を取り付けることは一つの大仕事だったのだろう。どこか肩の荷が下りたのか「ふぅ」と安堵の吐息を漏らし、席に深く座る。
「では、本題に入らせてもらう」
「あぁ」
「まずは西の森の調査の結果からだ。ルーミエ君」
「こちらを」
「これは……」
ロイエンの言葉に、隣にいたルーミエが透明のカードのようなものを差し出す。それにどこか見覚えがあったレクトルは拾い上げると、その中身に目を通す。
「依頼の達成票?」
「はい。調査の結果、現状の段階では特に問題は見つかりませんでした。むしろ、一番危険とされていた西の森が、今となっては一番安全と判断されるくらいです」
「まぁ、今後も調査は継続していくことになるのだがね。君に依頼した森の異変については収束したとみて問題ない。エリスティアに依頼し、依頼自体の取り下げをお願いしていたのだが……こうも完全に解決されては報酬を支払わないわけにはいかないね」
確かにエリスにそんなことを言われたなと思い出すレクトル。レアが無駄遣いしたこともあり、あれを口実に報酬はないということにならなかったことに安堵すると、報酬額に目を通す。そこには当初記載されていた報酬よりも二回りどころではない程多い額が記載されていた。
「随分と額が上がっているようですが?」
「はい。こちらの不手際と依頼の達成状況から上乗せさせていただきました。聞いた話ではそこにいたのは悪魔の少女ではなかったという話でしたので。対象が違うというのは命に関わるこちらのミスです。それに、冒険者や騎士団を癒したあの力……詳しくは訊きませんが、それに対する感謝の意も含まれています」
「あぁ、ちょっとした騒ぎになってましたね。そちらにも迷惑がかかったのでは?」
レクトルはギルドに来るまでの道中を思い出し、そう問いかける。ギルドの前に兵士を立たせるくらいだ。下手をすると、あの力を我が物にと情報求めて暴れたバカがいたのかもしれない。深く考えずに外で星の魔術を使った事を少し反省していたレクトルはギルドがどの程度情報を掴んでいるのか知りたかった。
返答次第ではもう外での【極光天】の使用を控えようとしているくらいだ。だが、それも必要に迫れれば関係がない。それはちょっとした面倒を避ける為に控えようとした【渡扉】を使おうとしていることからも明白だ。
「そうですね。ただ、傷つけたわけではなく、癒されただけですのであなた達に非はありません。それが貴族街でなく、貧民街だったのが少し騒ぎを大きくしましたが……それも無知な子供が騒ぎ立てているだけです」
「彼らを子供扱いとは……相変わらず、君は貴族に当たりが強いね」
「言っても聞かない彼らが悪いんです。少しはエリスを見習ってほしいですね」
過去に何かあったのか、吐いて捨てるように言い放つルーミエに驚くレクトル。どうやら、同じ貴族であるエリスティアとはわだかまりがないようで、普通に接している。逆にギルドに所属している冒険者の中では仲がいいくらいだった。
「そうですか。そういうことなら、わかりました」
「それとだね、君達の事情を聴く前に確かめたいものがあるんだ。ルーミエ君、あれを」
「はい、これですね」
ルーミエがロイエンに言われ取り出したものは台に置かれた手のひらサイズの透明の球体だった。水晶の様に光輝くそれからはどこか神聖な魔力を感じ、何かの魔術道具かとそれを眺めながらレクトルは問いかけた。
「これは……?」
「心当たりはないかね? 件の西の森で見つかったものなのだが……」
「あそこで?」
ロイエンの言葉に、西の森でのことを思い出すレクトル。だが、特に森自体を細かく観察していたわけでもない為、全く心当たりが浮かばない。ならと、両側にいる仲間に問いかける。
「サクラたちは何か見た覚えがあるか?」
「わかんない。見つけてたら師匠に話すと思う」
セピアも首を振って返答する。人見知りなのか、言葉までは発しない。レクトルが話している間はサクラと一緒にメイドの女性が持ってきた御菓子を珍しそうにつまんでいた。バリバリと食べるサクラの5倍くらいの時間をかけてチビチビとクッキーらしきものをかじっている姿はどこか拾ってきた猫のようだった。
「そうか。ベルたちはどうだ?」
「どうかしら。少なくとも、あの瘴気が満ちた森の中でこれだけ正常な魔力を保っていたのなら相当なものなのでしょうけど……わからないわね」
「見てないです」
「だそうだ。俺も心当たりはないな」
「そうかね。では……こちらは?」
さっきの透明の水晶を少し横にずらすと、今度は透明の箱の中に入れられた黒い結晶を取り出した。その結晶からは瘴気のようなものが漏れ出ており、それが箱の内側に接触した瞬間バチっと弾け、消えていく。
見るからに危ない物体の登場にレクトルは警戒を露にする。それは思わず少し身を乗り出し気味なサクラを下げさせるほどだ。それほど嫌な感じが、封印されているであろう箱から漏れ出ていそうな勢いで、その黒い結晶から感じられていた。
その気配は西の森に充満していた瘴気に近いものを感じたレクトルは、ギルドマスターが何を言いたいかを理解する。
「これが西の森を異常化させていた原因なのか?」
「恐らくは……だがね。これも先ほどの結晶と同じく森から見つかったものだ。だが、これが見つかったのは件の教会からはかなり離れた位置でね。どうも、瘴気の濃度とこの結晶体の関連性がいまいち掴み切れていないのだよ」
「これなら見たことあるぜ」
「へ?」
会話に割り込むように声を発したのはセピアだった。その言葉にロイエンが目を丸くして驚いていた。驚いているのは彼だけでなく、ルーミエもメイドの少女も同様だ。それは何も話の内容に関してではない。言葉遣いに関してだ。
さっきまでは大人しくクッキーをかじっていた少女が突如偉そうに話し出せば当然と言えるのだが、実際には話しているのはセピアではない。
「その感じ、クルスか? なんでまた……」
「こっちにも色々と事情があるんだよ」
レクトルが言いたいのは何故元の姿――といってもぬいぐるみだが――ではなく、セピアが森で見せた戦闘時のように乗り移る形で会話に参加したのかということだったが、理由を説明せずにその疑問を一蹴する。
「か、彼女は一体どうしたんだね?」
「あー、まぁ、その、なんだ。セピアはちょっと多重人格なんだ。気にしないでやってくれ」
「ず、随分な変わりようね」
その変貌ぶりには、静かに会話を聞いていたルーミエも思わず素に戻ってしまうほどだった。
「ま、まぁ、怒ったわけでないなら問題ない。それで、見たというのはどういうことかね?」
戸惑いつつも、話が逸れていたために強引に戻しにかかるギルドマスター。昨日天使の姿を見ている分その動揺はルーミエの比ではなかったのだが、流石はギルドマスターと言うだけはあり切り替えは早かった。
「あの教会の近くでそれと同じものを見たってぇことだ。それも1個や2個の話じゃねぇ。大量にばら撒いてあったな」
「何だって? 教会の周辺に?」
「あぁ。こちとら利用させてもらった身だ。おおよその数も分かるぜ。俺が認識できた範囲でも10は軽く超えてたな」
「そ、そうか。それにしても多いね……。私たちが見つけられたのはさっきの透明のものが7つ、この黒いものが2つだ。となれば、まだどこかに探せばあるということだね。まだ規制も解除していない。探させてみるかね」
今後の事を考えるロイエンの横で、内容をルーミエがメモしていく。長年の経験故か、仲が悪い様でしっかりと連携が取れていた。
「聖宝珠と邪霊珠ねぇ。またまた物騒なもんだな」
「……! これが何か知っているのかね!?」
レクトルが何気なく呟いた言葉に、ロイエンが反応する。それは何かわからず調べている最中だった謎の球の名称らしきものをレクトルが口にしたからだ。ギルドに所属している高い【鑑定】スキルを保有するライアンですら何かわからなかった為、ロイエンはその名称すらつかめていなかった。
レクトルはあまり気にしていなかったが、スキルには階級が存在する。魔物や魔術道具、世創道具などと同様に大まかにF~Sの7段階に分かれている。それに加え、枠に収まらない特殊な階級を王級、もしくはランクEXと呼称する。
ライアンが保有する【鑑定】のスキル階級はランクAを誇っていた。基本的に妨害が施されていなければ、看破できるのは同ランクまでだ。それはすなわちこの球がランクS以上の代物であることを意味していた。
ロイエンがランクSの【鑑定】スキルを持つ者を探していた中、平然と口にされたその名前に、ロイエンはレクトルに当初の魔王との関連性とは別に興味を示す。
「あぁ、さっき解析したからな」
「解析……? 鑑定ではなく?」
「……力に関しては秘密だ」
レクトルは怪訝な顔をするロイエンを見て、一般的な力じゃないのかと認識すると探りを入れられないように、昨日誓約した時のことを念押ししておく。
「あ、あぁ、わかっている。ただ、これが何なのか……それだけでも教えてもらえないかね? 調査の方が行き詰っていてね」
「まぁ、それくらいならいいか」
レクトルは再び【魔力解析】を実行し、その内容をロイエンに伝えていく。
【聖宝珠】
・Rank:S
・魔力を込めることでそれを蓄積、増幅させることができる珠。容量を超えた魔力は外部に放出される。濁りのある魔力を正常に戻す浄化の特性を合わせ持つ。
【邪霊珠】
・Rank:S
・瘴気を込めることでそれを蓄積、増幅させることができる珠。容量を超えた瘴気は外部に放出される。異なる瘴気や瘴煙をまとめ、濃度を高める特性を合わせ持つ。
「ランクS……! 予想はしていたが、それがこれだけの数となると……。それに、この力は……あまりに危険すぎるね」
「そうですね。魔力や瘴気の蓄積と増幅ができるとなると、その用途は多岐にわたります。知れ渡る前に、残りも早急に回収した方がいいですね」
「あぁ。全く、休む暇もないね」
「普段仕事してないんだから、こんな時くらいまともに働いてください」
「むぅ。ルーミエ君はもう少し老人を労りたまえ」
「ギルドマスターなら後40年は大丈夫ですよ」
「一体どこまで私をこき使うつもりなのかね!?」
突如目の前で繰り広げられる漫才にレクトルは呆れ、ソファに背中を預ける。すると、その隣でお菓子を食べて満足したのか、ウトウトと眠そうにしているサクラが目に入った。
「サクラ、眠いのか?」
「……はっ! 寝てないよ!?」
「いや、別に怒るつもりはないからな。悪いな、付き合わせて」
「ううん。大丈夫だよ」
首を振って否定し、姿勢を正すサクラ。それでも、あまり長くなるのは退屈だろうとルーミエと話を続けているロイエンに話しかける。
「西の森についてはもういいか?」
「そうだね。ちなみに、君はこの聖宝珠などを欲しくはないのかね?」
「それか? いや、トラブルの元になりそうだしいらないな。別に魔力にも困ってないからな」
「そうなのかね? わかった。では、今度は君達の話を聞くとしよう」
「俺たちの話ね」
「あぁ、昨日、西の森であった異変の中で起きていたことと、そして……」
チラッと目線をベルに向けると、
「そこにいる魔王の少女について……ね」
「え?」
「けほっこほっ」
その言葉にロイエンの横で資料をまとめていたルーミエは素っ頓狂な声をあげ、後ろに待機していたメイドがせき込んだ。
ロイエンは彼女達をこの場に参加させる際に詳細な説明をしていなかった。こと魔王に関しては何一つ話題にも出していない。言えば騒ぎになるか、参加してもらえないことが明白だったからだ。
「は? 魔王? え? 冗談ですよね!?」
「冗談などではないよ。昨日、出会いがしらに鑑定を実施したからね。クラスAの鑑定石を使っても読み取れたのは僅かな情報だけだったが……。それでも、彼女が魔王であることに間違いはない」
「ちょ、ちょっと待ってください。それってもしかして、復活したかもしれないと噂になっている東の魔王ですか!? ギルドマスターは私の事情を知ってますよね!?」
「もちろんだとも。だからこそルーミエ君に参加してもらったんじゃないか。大丈夫。しっかりと私たちや国に危害を加えないと誓約してあるからね」
「そんなことじゃなくて……!」
どこか脅える表情でベルを見ながらロイエンを責めるルーミエ。そこにはかなりの必死さが窺えた。
「魔王……」
後ろに控えていたメイドも驚きの表情で口元を押さえ、冷や汗を流していた。その動揺はさっきまではにこやかに紅茶やお菓子を差し出していたが、今それと同じことをしろと言われてもできるか怪しいほどだった。
そんなギルドマスターと言い合うルーミエの姿をじっと見つめていたのは、話題の元となった元魔王であるベルだった。慌てふためくその姿にどこか覚えのある光景に、記憶を探る。
そして、頭に浮かぶのは一人の少女――
それは、封印される以前……当時の勇者一行を追い払い、終わらぬ戦いに疲れ森の中を歩いていた時の事。
薬草でも取りに来ていたのか、近くの村から森の中へとやってきていた少女。ベルが魔王だと気づいた時のその少女の反応と、目の前のサブマスター、ルーミエが重なる。
その瞬間、ベルは立ち上がり、ビシリとルーミエを指さした。
「あ、あなた! 何か見覚えあると思ったら、あの時の村娘じゃない!」
「べ、ベル!?」
そのいきなりの発言にこの場にいた全員が驚き、その注目はベルへ、そしてその指が示す先にいるルーミエへと移った。
「ああああああああああああああ」
その言葉に、顔を青ざめ、聞きたくないと両耳押さえてしゃがみ込むルーミエ。丸くなりながらボソボソと私じゃない、私じゃないのと呟いていた。
そろそろ章タイトルを変えようか悩み始めます。自分で言って何ですが、前振りが長すぎですね。
下手をしたら、まだこれは2章のエピローグなのでは? と思わなくもなかったり。
次回、4/21更新予定です。




