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異世界にとばされてなお、彼の者は我が道を貫く。《夜天の星王編》  作者: stella212
第二章 災いを呼ぶ少女編
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053.5 幕間:セピアの軌跡2

セピアの過去の続きです。

これは神界崩壊の一側面、セピア周辺での出来事です。


「きゃあああああああ!」

「なっ! 嘘だろ!?」

「これは……!」


 次々と地面の土を使い龍が生み出されていたので、セピアたちがいた地面の中はモグラが掘りまくったかの如くカスカスになっていたのかもしれない。


 まるでそこには最初から落とし穴があったんじゃないかと思うほど、崩落してできた穴は大きく、また、深かった。


 その崩落は中心にいたセピアだけでなく、炎神の子オルゼ、そしてモルセルウィーとかいう天教騎士の第七席をも巻き込み、尚も拡大を続けていた。


「だ、大丈夫かこれ?」

「びっくりした……」


 残された俺たちはそれが収まった後に上から穴の底を覗き込むが、そこは闇が広がるだけで何も見えない。ガラガラと崩れる石も底に当たる音が聞こえない。


「どんだけ深いんだよ……」

「何かある……?」

「何か見えるのか?」

「うーん、わかんない」


 サクラはこの奥に何かを感じたようだったが、それが何かまではよくわからないみたいだった。


「まぁ、落ちた先にまた場面が変わるだろ。次は洞窟かなんかか?」


 俺がそう口にしたところで、それに答えるかのように場面が移り変わっていく。思った通りだとその変化を見守っていると、次に目に入った景色は俺が想像しているものとは大きく異なっていた。


「何だここは……」

「すごい……」


 俺たちがいるのは直径100mはあろうかという大きな空洞の脇にある窪みのような場所だった。だが、それは自然にできたものではない。明らかに人の手が入った施設のような場所だった。


 その空洞の中央には巨大な水晶が煌き、それを幾重に及ぶ複雑な魔法陣が覆っている。その水晶を囲う様に神聖な力を感じる白柱が並び、まるで神でも祀られているかのように飾り付けられていた。


 その場に水晶体は何かの動力のように感じられた。ファンタジーものによくある飛行艇の燃料源のようだ。だが、これはそんなものとははるかに規模が異なる。もっと、大きな……そう、まるでこの世界、星の命そのもの……


 俺が目の前に広がる光景に目を奪われていると、突如激しい揺れと共に天井が崩れ出した。


「なんだ!?」

「師匠!」

「あれは……!」


 急な事態に何事だと上を見上げれば、サクラがある場所を指さす。そこに目を向けると崩れた天井から落下してくるセピアの姿が目に入った。


 気を失っているらしく動きがない。このまま落下すれば地面に盛大に身体を打ち付け、崩落した土砂がのしかかってくるだろう。とても助かるとは思えない。


 どうすればと考える間もなく、ぬいぐるみの妖精クルスがセピアの顔を思いっきり引っ叩いた。それに目を覚ましたと思った瞬間、眼前に迫る地面に「いやぁ!」と悲鳴をあげると同時に翼を広げるセピア。地面に届くかという時に、まるでセピアだけを押し出すかのように突風が吹き荒れ、地面に当たるスレスレのところで滑空し崩落から逃れた。


「わわっ」


 だが、セピアは目まぐるしく変わる景色に目を回し、そのままバランスを崩して地面に転がっていった。


「い、痛いの……」


 打ち付けた背中を抑えつつ上を見上げるセピア。


「た、助かったの……?」


 未だにガラガラと天井から崩れる土砂を眺め、信じられないように呟く。そして、さっきまでの事を思い出し、はっと辺りを見回していた。


「オルゼは!?」


 キョロキョロと周囲を探している。心配そうにしているあたり、セピア自身彼の事は嫌いではないのだろう。おそらく、自分が持っていないものを持ち、ただそれを当然のようにこちら側へと押し付けてくるのが苦手なだけなのかもしれない。


 だが、見つからないままセピアが後ろを振り返った瞬間、その顔が凍りつく。今、自分がどこにいるのかを認識したんだろう。その表情は驚きに満ちていた。


「うそ……なんで? どうして……こんな所に来ちゃうの!?」


 クルスを抱き上げ、フラフラと立ち上がり後ずさる。目に入るものを拒絶するように、嘘であってほしいと願いながらも、それが覆りようのない真実だと認識して、顔面が蒼白になっていく。


 セピアが目にしたのは、広い空洞の中央に鎮座する巨大な水晶体だ。それが何かを知っていたのか、ボソッとその名を呟く。


要石(クラネリア)……」


 フワッと、セピアの周りに薄っすらと靄が生まれる。それはどこか排気ガスのように黒ずんだ不吉な予感がするものだった。


「なんで……嫌なことばかり現実になるの……? どうして!」


 セピアが泣き喚いた瞬間、バサァッと窪みの入口に立ち塞がるように2人の天使が舞い降りた。いや、正確には違う。こいつらは……


「侵入者、発見」


 淡々と告げられる言葉に緊張が走る。


「排除します~」


 それとは真逆に、どこか気の抜ける言葉が続く。


「あ……」


 それでも、その言葉が示す意味は同じだ。それを見たセピアは全ての終わりを悟ったかの如く、精神が抜け落ちたかのように思考が停止していた。


 武器をセピアへと向ける2人の姿には見覚えがある。というよりも、さっきまで戦っていた戦乙女(ヴァルキュリヤ)と瓜二つだった。それなのに、感じる力はまるで一致しない。


 教会で出会った戦乙女(ヴァルキュリヤ)能力値(ステータス)はセピアにも及ばない3桁代のものだった。だが、目の前にいる2人からはハクナすら上回る強大な力を感じる。その姿もどこか力強く、背中には神紋に似た光輝く羽が生えている。神に連なる力の系統は同様の紋様になるのかもしれない。


 ハクナは彼女たちが要石(クラネリア)の守護者だと言っていた。要石(クラネリア)は神界にとって重要なものらしい。そんなものを守護する者ならそれなりの実力が必要になる。


 それが、神族とはいえ、その子供や従者に劣る、下手をすれば人族にすら劣る能力値(ステータス)であっていいはずがないんだ。つまり、これが彼女たち本来の力なのだろう。


 確か、スキル欄に【光速学習】や【改良】といった成長要素が含まれるものが多数存在した。どれだけの年月を通して鍛え上げられたのかは知らないが、目の前の彼女たちなら確かに守護者として申し分ない。


 それが今となっては瘴気の影響か、リセットされてしまったのだろう。本来の彼女たちの力が残っていた場合、俺たちは無事ですまなかったかもしれない。


 大丈夫と思っていた相手が想像以上だったことに、残してきたハクナやベルたちに一抹の不安を感じつつも頭を目の前の事へと切り替える。心配してもここから俺ができることはない。できるのは事情を把握し、問題を早期に解決することだけだ。


「逃げないとなの……」


 辛うじて聞こえるような、か細い声でセピアが呟く。


「こんなところで、死にたくないの……」


 セピアの周囲に、薄黒かった靄のようなものが濃く色付き漂い始める。


「これは……」

「危険ですね~」


 その変化をいち早く察知し、剣の戦乙女(ヴァルキュリヤ)が動く。もはや瞬間移動かと見紛う動きで振られた高速の剣は、セピアの眼前でキンという甲高い音と共に弾かれた。


「……!」

「生きなきゃ……駄目なの」


 腕を振り上げたセピアの手には短剣が握られていた。先の戦いでも使っていた、光の短剣だ。だが、セピア自身は虚ろな眼差しで見当違いな場所を眺めている。その瞳は戦乙女(ヴァルキュリヤ)を見てはいなかった。


「死んでください~」


 背後に回り込んでいた槍の戦乙女(ヴァルキュリヤ)が高速の突きを繰り出す。だが、それすらもまるで見えているかのように鮮やかな軌跡をもって反対の手に生み出した短剣で弾く。


 そして武器を弾かれたことによって生まれた隙。そこを短剣の先に生成された光弾が打ち抜いた。


「くっ!」

「やぁん!」


 さっきまでの雰囲気はどこかに消え去り、本能に満ちた瞳で戦乙女(ヴァルキュリヤ)を見据えるセピア。発する雰囲気から第二心格(コナトゥスⅡ)へと入れ替わったのかもしれない。


「それが本性ということですか。まんまと騙されましたね」

「生意気です~」


 しかし、直撃したその攻撃を受けても戦乙女(ヴァルキュリヤ)はピンピンとしており、まるでダメージが通ってる気がしない。余程防御力が高いのだろう。


「目的が何かは知りませんが、全力で排除します」


 戦乙女(ヴァルキュリヤ)の翼がさらに光輝き、全身に神力が満ちていく。


「覚悟してください」


 先程の攻撃をはるかに超える速度の攻撃がセピアを襲う。残像すら見える連撃の嵐だが、セピア(第二心格(コナトゥスⅡ))も負けておらず的確にその全てを弾き、受け止め、受け流していた。


「どこにそんな力が……!」


 力は圧倒的に自分が上。なのに決定打を入れられないことに歯噛みし、焦りだす。だが、セピアは淡々と処理するのみでまるで生気が感じられない。


「どういうことだ?」

「どうしたの?」

「いや、ここに来る前のセピア……天使の事を覚えてるか?」

「うん」

「最初の、弱気なセピアの次に現れた心格に変わったのかと思っていたが……どうやら違うみたいだ」

「喋らない……?」

「あぁ」


 俺たちと戦っていた第二心格は口が悪く、口数もそれなりに多かった。だが、目の前のセピアはほとんど無言で戦闘を行っている。それどころか意思があるのかすら不明だ。


 それに、戦い方も違う。確かに短剣を使ってはいたが、どちらかといえば羽を飛ばしたり、天術を使ったりと魔術的攻撃が多かった。だが、目の前のセピアは物理一辺倒だ。


「もしかして、また違う心格なのか?」

「危ない!」


 これじゃあ、あの心格を第二心格とは呼べないななんて考えていると、様子を見ていたサクラが叫ぶ。よく見るとセピアが壁際に追い込まれていた。逃げ場をなくした状態で力づくで押しつぶすつもりなのか、大きく振りかぶる剣の戦乙女(ヴァルキュリヤ)


 攻撃を崩すためにその隙を逃さず反撃するセピアだが、ニヤリと笑った戦乙女(ヴァルキュリヤ)が振り上げた剣の慣性に引っ張られるままバク転するように飛び退くと、その下をくぐるように槍の戦乙女(ヴァルキュリヤ)が突きを放ってきていた。


 攻撃態勢で、しかも視界外からの完全に意表を突いた攻撃。スキル【連携】による賜物か、素晴らしいコンビネーションで繰り出されたその一撃がセピアへと届くかと思った瞬間、突如その姿が掻き消えた。


「え?」

「なっ! がはっ!」


 ズガッと壁に槍が突き刺さった瞬間、飛び退いたはずの剣の戦乙女(ヴァルキュリヤ)が地面へと叩きつけられた。その横には短剣を振り下ろしたセピアの姿があった。


「瞬間移動!?」


 驚く間もなくセピアは再度姿を消すと、次の瞬間には突き刺さった槍を抜こうとしていた戦乙女(ヴァルキュリヤ)の隣に立っていた。


「ま、まってくださ――あん!」


 制止の声をまるで聞かず、その身体を問答無用で切り飛ばした。だが、やはり防御力が高すぎるのか刃自体は通らず、身体を弾き飛ばすにとどまっていた。槍は壁に刺さったままだ。


 恐らく、スキル欄にあった【瞬天】の効果だろう。短距離を瞬時に移動するスキルのようだった。


「舐めないでください……!」


 剣の戦乙女(ヴァルキュリヤ)が立ち上がり、闘志をむき出しにしている。


 だが、ここで事態は一変する。


 突如ドカァっと音がした後、崩落した瓦礫の中から男が一人這い出てきたのだ。


「何ですかこれは……認められない……この私が、たかが従者に敗れるなど……あってはならない。えぇ、ならないんですよ!」


 既に瀕死に近い重症を負っているのか、全身から血が流れ出ている。男はフラフラと立ち上がり、セピアを視界に入れるとニタァっと不気味な笑みを浮かべた。


「神罰を与えなければ……」


 突如現れた男はセピアと一緒に崩落に巻き込まれた天教騎士モルセルウィーだった。


「あいつ……生きてたのか」

「血が……」


 男の剣が再度光輝く。執行権限“天魔裁断”とやらの効果はまだ切れていなかったらしい。だが、男はそれでは気が済まないのか、さらなる力を暴走させる。


「我、天教騎士第七席モルセルウィーが名の下に、執行権限“星光破砕”を発動する――」

「なっ! ここをどこだと!」

要石(クラネリア)守護者ゲイラが名の下に、守護者権限“天威――うっ!」

「あぁあ!」


 膨大に膨れ上がる力の集束。それを見てセピアではなく戦乙女(ヴァルキュリヤ)達が慌て、対抗手段を行使しようと動く。だが、その言葉が紡がり終わる前に周囲を闇が漂い、それに触れた2人が苦悶の声をあげる。そして――


「滅びを――」


 その場の全てを、完全無欠の無が呑み込んだ。


もう少しだけ続きます。すみません。

次回、01/20更新予定です。

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