046 ギルドマスター
またちょっと視点変更。
最近、俯瞰視点にせず主人公視点にしたことを少し後悔気味です
「ふぅ」
アルトフェリア王国の首都アルストロメリアにある冒険者ギルド、その最奥にある最高責任者に与えられた執務室のイスに腰掛け、机の上に積み上げられた紙の束を見て溜息をつく。
その中身は住民から寄せられた依頼の山だ。その中には貴族や王族からのものまで含まれる。そういった依頼に関しては受注できる者自体が限られてくるので厄介極まりない。今一番頭を悩ませるものの一つと言える。
「全く……仕事が減らな過ぎて嫌になるね」
だが、今日この作業をするのも後もう少しの辛抱だ。前にいる女性にその内面を悟られないように、手にしていた資料に目を通す。
「だったら口だけじゃなくて、ちゃんと手を動かしてください。はい、これ追加です」
「ちょっ、ルーミエ君それはないでしょ」
机の上にドサッと置かれた紙の束を見て思わず愚痴が零れる。時に無慈悲な仕打ちを行う彼女はこのアルトフェリア支部を支える貴重な戦力で、かつサブマスターだ。
彼女無しではもはやこの支部は立ち行かないだろう。私は早くこのマスター稼業を引退し彼女に引き継がせられないかと、その機会を虎視眈々と狙っている。……いつもさらっとあしらわれてしまっているが。
「これでも私のほうで片付けられるものは処理してるんですよ?」
「そうは言うがね。こうも積み上げられる書類を見ると愚痴が零れるのも致し方ないと思わないかね?」
「そうですけど……まだ、応援の申請は通らないんですか?」
彼女も現状を把握しているのだろう。疲れた表情をしながらも愚痴を言うことはなく、先日から申請している他支部への支援要請に対して聞いてきた。
「まぁ……ね。どこも人手不足なのは同じみたいでね。これしきのことじゃあ動いてくれないよ。一昨日入った新人の子たちはどんな感じだい?」
「彼女たちですか? そうですね……頑張ってはいますが、Fランクですしまだまだこれからといったところでしょうか」
「そうかね。早くこのギルドの中核を担うくらいに成長してくれることを祈っているよ。そういえば、昨日の彼はどうなったのかね?」
ここぞとばかりに話題を振る。時間稼ぎに近いが、彼女も気にしているのか口に手を当て考え込む。
「そういえば、まだエリスからの報告がないですね。昨日は会えなかったんでしょうか?」
「そうかもしれないね」
最近はなにかと問題が続く。朗報があったのは街の外にたむろしていた盗賊を一斉捕縛できたいう事くらいだろう。西の森の異変は一向に収まらないばかりか、A+ランクの異名持ち冒険者が十代半ばの少女に返り討ちにされたという事件もあった。
だが、件のA+ランク冒険者である“誘惑”のレイルはその素行の悪さから頭を抱えていた対象の一つでもあった。実力ばかりが先行し、マナーや協調性に欠けるのは冒険者にありがちだが、レイルは常軌を逸していたのだ。
彼が持つ固有スキルが難点で対応が後手に回っていたのだが、それが解決したのは喜ばしいと言えるかもしれない。だが今度は、ではそれを倒した少女というのは一体何者なのかという問題が浮上する。
彼の固有スキルの誘惑に耐え、かつ実力すら上回る。例え女性といえど彼が歯向かう者にどういった対応をとるかはこれまでの経緯からわかりきっている。A+ランクの冒険者の全力を凌げる力だ。どこかの組織がこの街に潜入でもしているのか? もしそうなら、それはまた新たなる問題の火種となる。
はぁ、これ以上の厄介事は勘弁願いたいね。
「ランクのことはわかったんですか?」
「Uランクのことかね? ……調べてはみたが、やはり歴史上存在しないね。一体何者なんだろうね、彼は」
「それは――」
その時だ。この部屋の扉を乱暴に叩く音とともに怒声が響く。その声に安堵とともに手にしていた資料を机の上に置き迎える。
「ギルマス! いるか!? 大変だ!」
「あぁ、いるよ。酒場でもめ事かね?」
「それはないでしょう。目は潰しておいたので」
「え?」
やっと来たかという安心感が消し飛ぶルーミエ君の衝撃の発言を余所に扉が勢いよく開くと、大柄の男が息を荒げつつも中へと入ってくる。つるっぱげの頭を輝かせ、筋肉の巨体を持つ彼、ラックはこのギルドに席を置くBランクの冒険者だ。
「あぁ、ルーミエさんもいたのかちょうどいい」
「何があったんだね?」
仕事をさぼる為の仕込みが既に彼女にバレていたという事実を呑み込み、なんとか平静を装いながら答える。
「西の森がなんかヤバい」
「西の森が……? それになんだねその抽象的すぎる表現は。報告は簡潔かつ正確に行いたまえ」
「いや、それが、なんだ……あぁ、もう見てもらった方が早い! 俺には何が何だかわからねぇんだ!」
「…………?」
私とルーミエ君は顔を見合わせ互いに首を傾げつつも、また面倒ごとかと深いため息を吐き執務室を出て禿げ頭の後を追う。
「これは……!」
「…………っ!」
彼の先導に従い進んだ先は外だった。ギルドの戸を開けて目に飛び込んで来たのは、西の森上空に渦巻く漆黒の闇。それは渦巻くように森を覆っていく。わずかだが、なおも拡大しているようだ。
「まさか、例の悪魔が動き出したのか!?」
「悪魔だって!?」
「あ、いや……」
その闇の侵食を見て思わず声が漏れる。完全に失言だ。だが、事態は急を要し、待ってはくれない。
「ギルドマスター! エリスやあの少年たちは!?」
「エリスティアか。彼女なら森の奥にまでは入らないと思うが……いや、そうか」
今は私たちギルドマスターとサブマスターからの特殊依頼の最中だ。昨日報告があがらなかったということは、彼を見つけられなかったのだろう。そこで西の森にまで捜索範囲を広げた可能性は高い。
そこまでは想定範囲だ。元々エリスティアに依頼したのもその索敵力や逃げ足の速さを買ってのことでもある。
だが、責任感の強い彼女の事だ。浅いところで見つけられなければ、そのまま奥深くへと入ってしまうことは十分に考えられた。
とはいえ、そこで悪魔と出会い行動を起こしたのか? 目的は悪魔の少女ではない。少年に会えずに出くわしたのなら彼女だったら引き返すはずだ。仮に逃げられなかったとしても、あのような状況になる理由がわからない。恐らくだが、この状況を引き起こしたのは彼女ではない。
とすれば、だ。
「大丈夫でしょうか……」
「恐らく、あの少年が何かしたのかもしれない」
謎のUランク。この異常事態を引き起こした要因として、一番怪しいのは彼だ。ルーミエ君の話ではFランクの更に下ではなく、その逆。未知数を示す"U"ともなれば何をしでかしたとしても不思議ではない。
どんな力を持っていれば、もしくは偉業を成し遂げれば、そんな評価がセカイの意思から下されるのか見当もつかない。
それに、彼からすれば私が人違いをしているのは気づいていただろう。それでも依頼を受けた。私の態度に怒っているようだったが、依頼自体をこなす自信がなければ受けはしないはずだ。
だが、これは私が引き起こしてしまったミスでもある。無視はできない……かね
その時、馬に乗り駆けてくる兵士の姿が目に入る。その兵士は私たちに気付くと、ギルドの前で馬から降りて敬礼の姿勢をとる。
「失礼します。ギルドマスター、ロイエン様。リディーク・アル・ソルシュタリア公爵からロイエン様へ言伝を預かっております!」
「ソルシュタリア公爵からとな?」
「はい!」
リディーク・アル・ソルシュタリア公爵は国王であるアルトハイデン・クラエル・アルトフェリアよりこの国の軍部を任されている貴族だ。本人もかなりの実力を持っており、王に仕えていた時にも散々ネチネチと嫌味を言われたものだ。嫌な予感しかしない。
「して、なんと?」
「“西の森で大規模の魔物が発生し、ついに森からあふれ出したことが確認された。これは街周辺の安全を担当する君が西の森の異常を放置した為に起きた、君の怠慢が招いた結果だ。さぼらず迅速に対応したまえ”とのことです!」
「……国はこの状況に対する対応をギルドに一任すると?」
「いえ、我々国家所属騎士は街の防衛にあたります。冒険者の方々には森からあふれ出した魔物、および森の鎮静化をお願いしたく」
「そうか、わかった。ソルシュタリア公爵にも了承の旨を伝えたまえ」
「はっ!」
それだけ答えると、兵士は再度馬に跨り来た方向へと踵を返し走り去っていく。
それを最後まで見送ることなくギルドに戻ると、今後の方針を決めるべく酒場で目的の人物を探し、すぐに見付ける。
「ライアン君、少しいいかね?」
「ギルマス? バタバタしてるようだが、何かあったのか?」
キリリとした目つきをしつつも、どこかだらけた雰囲気が感じられる彼はとある方面においてこのギルドで屈指の実力を持つ。
「そうだね、緊急事態だ。後ほど冒険者全員に対し強制依頼を発令することになるだろう。その前に状況を知る必要がある。付いてきてくれたまえ」
「あぁ、わかった」
「その間、ルーミエ君には強制依頼の準備をお願いする。内容は森からあふれた魔物、および西の森の浅いところでの魔物討伐だ。報酬は任せる。遂行中の依頼をキャンセルしてでも冒険者を集められるだけ集めてくれ。キャンセルによる被害はギルドが受けもつ」
「はい、すぐに」
そのままライアン君を引き連れ到着したのは、ギルド3階にある簡素な一室だ。普段は疲れた者を休ませたりするための部屋だが、今回は部屋自体に用はない。
窓を開けると先ほどより闇の領域が少し広がった西の森が目に入る。
「なっ! なんだあれは!?」
「それを知りたいんだ。何かわかるかね?」
「ちょっと待ってくれ」
彼はまだBランクの冒険者だが、高い【鑑定】、【分析】のスキルを持っており、さらにスキル【望遠】の効果も併せて長距離の調べものをさせると我がギルドでは右に出る者はいない。
少しでも情報を得たくて頼んだことだったが、どこか様子がおかしい。西の森に目を向けるその顔がどんどんと青ざめていく。
「ライアン君?」
「ギルマス、あれは無理だ。撤退を推奨する」
「それができないから困ってるんだ。一体何なんだね? あれは」
「あの空にある闇については不明だ。そもそもまるで空間が繋がっていないかの如く、対象として捉える事すらできない」
「何だって!?」
その言葉に私は事態の認識が甘かったことを理解する。仮に何かわからなかったとしても、鑑定ができないということはない。例え妨害されても表示される項目内容に“?”が並んで表示されようが、それがどの区分に属するものかはわかる。
人や魔物、武器や魔術、その各々において鑑定結果の表示項目が異なるからだ。鑑定が出来さえすれば、あの闇の渦がどういうものかは分からなくとも、魔術なのか、スキルなのか、魔術道具や世創道具なのか、はたまた魔物の一種なのかが判別できた。だが、認識すらできなければ【鑑定】は発動しない。
【鑑定】にかからないものなど聞いたことがない。空間に干渉する魔術やスキルだったとしても、必ず表面はその力に覆われているからだ妨害の魔術などがかけられていれば、それ自体が鑑定に引っかかる。
「それよりも森だ。昨日くらいまではまだ瘴気が通常より濃い程度だった。だが、あれは異常だ。そもそも瘴気ですらない」
「瘴気ではない……?」
「あぁ、あれは瘴気が変質した別の何かだ。それが魔物を巻き込みさらに変質している。ここから感じるだけでもランクB~S級の魔物がうじゃうじゃいるのがわかる」
「なんだって……!?」
普段の西の森に生息する魔物はいってもB級そこそこだ。間違ってもS級が住まう場所ではない。
「どうするんだ? ギルマス。とても俺たちだけでどうにかなるとは思えない」
「どうするもなにもないよ。他にも何かわかったことがあれば教えてくれるかね。ひとまずフロアに戻るよ」
引き続き現状の森の異変について、わかったことを聞きながら酒場まで戻ると、なにやらざわついているのが伝わってくる。
「ギルマス! 何かわかったのか!?」
「あの空、不吉すぎるぜ!」
「まるでこの世の終焉を現してるようだったな」
「強制依頼とは穏やかじゃない」
どうやらルーミエ君が迅速に対応してくれたようだ。ただ、これだけの冒険者をまとめ切れていない。まぁ、急なことだったから仕方がないだろう。
「ギルドマスター! 取り敢えず、処理は完了しました。それで、何かわかりましたか? 今いる人員をどう割り振るかも決めないと……」
「わからないことが分かっただけだ。だが、それ以上に魔物が異常化してるみたいでね」
私は集まった冒険者の方へ向き直る。
「集まってくれて感謝する。忙しいところ申し訳ないが、これから強制依頼に入ってもらうことになる。今しがたライアン君にも協力を依頼し、簡単にだが状況を調べてきた。現在、西の森はランクB~S級の魔物があふれている。ソルシュタリア公爵の話ではすでに森から出てきている魔物もいるそうだ。森の中の魔物は弱い者では相手にならないB級以上ばかりだ。中級から上級のみ森へ派遣、初級の冒険者は街での避難などの手伝いに当たってもらう。森への討伐組はチームを組んで集団で挑み、お互いをサポートする形をとる。相手はB級からS級までの魔物までの多義にわたる魔物だ。倒すまではいかなくても、森から出さない、もしくは奥へ帰るように誘導するなどして対処し、被害を極力抑えて欲しい」
私のその言葉にざわめきが大きくなる。当然だろう。今まで相手にしたことがないような強大な魔物と戦えということだ。被害を抑えろと言ってはいるが、実質死地に飛び込めと言っているに等しい言葉だ。
それでも、逃げるわけにはいかない。戦わなければ、その魔物が向かう先はこの街になるからだ。
「戦うのは俺たちだけか?」
「街の防衛には国の直属騎士があたる。まずは森からあふれ出た魔物の討伐だ。幸い浅いところにはまだC級以下の魔物のみしかいない。まずはそこから頼みたい」
「A級以上の魔物はここにいるやつらじゃ厳しいぜ?」
その意見はごもっともだ。このギルドは常に人手不足、しかも足りないのは上級、特にA級以上の冒険者がほとんどいない。
「分かっている。そこは私が出る」
「ギルマスが!?」
「ルーミエ君、【千変万化】を」
「本気ですか!? 私は……」
私の言葉に彼女は驚き、目を丸くする。その言葉に、なら自分も参加すると言いたげだ。だが、それを受けるわけにはいかない。
「君はここに残りたまえ。マスターとサブマスターが不在になればギルドが立ち行かない。これから集まってくる者もいれば、助けを乞う者もあらわれるだろう。その対応を頼む」
「わかりました」
それだけ答えると、倉庫へと駆けていく。私の武器【千変万化】を取りに行ったのだろう。
「大丈夫なのか?」
普段の私しか知らない冒険者が心配するように聞いてきた。
「誰の心配をしているのかね。私はこう見えても50人といないS級の冒険者なんだよ」
「そうだぜ。ギルマスは普段はあれだが、つぇえんだ。お前は自分の心配してろ」
「あ、あぁ」
私の強さを知っている先輩冒険者が彼の頭を叩き窘める。その言葉に引っかかるものがあるが、今は状況が切迫している。これ以上無駄に時間は消費できない。
「ギルドマスター」
するとルーミエ君が倉庫から戻ってきて、私に布に包まれた長いロッドを差し出す。私はそれを受け取り、布のカバーを取り外していく。そこに現れたのは直径25mm程の透明の筒だった。だが、その中心からは光の粒子が煌いている。
「あれが“氷原の英雄”、“ウェポンマスター”であるギルマスが持つ世創道具か……」
「オリハルコンの武器なんて初めて見たぜ」
「俺もいつかはあんな武器を……」
騒めきだしたギルド内の床を手にした【千変万化】でカツンと激しく打ち付ける。その音で場に静寂が戻る。
「君達は落ち着きが足りないね。だけど、今は状況が切迫している。中にはこの街出身の者じゃない者もいるだろうが、今はどうか力を貸してくれたまえ。無論、報酬は奮発するつもりだ。そして可能な限り生きて帰ってきてくれ」
私が頭を下げると、一旦の静寂の後「おぉー!」「やってやるぜ!」と怒声があがる。どうやら気力は満ちているようだ。
「では、ルーミエ君。後は頼む」
「えぇ。ギルドマスターもお気をつけて」
さっき調べてもらった限りでは既に近いところにA級の魔物が潜んでいたりした。私は後の事を彼女に任せるとギルドを後にする。
【身体能力強化】を発動し、【空間掌握:領域】にて空中にある空気を圧縮、そこに飛び乗ると、さらにそれを足場に跳躍し空を駆けていく。場所は西の森だ。今から南北の門に向かっていたのでは時間を無駄に消費する。
だが、西側には通常の門はない。今回は緊急事態ということもあり、裏門の使用を決意しそこに向かって全力で移動する。10分くらいで着いた場所にあるのは貧民街に建つ寂れた一軒の家だった。そこの扉を2回、少し間を空けてさらに2回ノックする。
「何用だ」
「トイレを貸してくれないか?」
「他を当たれ」
「ここしかないと言われたんだ」
その言葉を合図に扉が開く。
「入れ」
「ありがとう」
少しやせた感じのする男に促されるまま家の中に入る。ちなみに今のは一種の符丁だ。1つ目の答えが行先や理由、2つ目が誰の用事かを示している。
「全く、たかが裏道利用に面倒なことだね」
「そう言わないでください。街の入り口が他にあるとなれば、悪用されるのはギルドマスターであるあなたならわかるでしょう?」
「ふん。急いでいるというに」
「あの森の異変ですね。私もこの場所に住んでいますからね。気が気じゃありませんでしたよ。お願いしますね」
男はさっさと解決しろと言わんばかりに先へと促す。
「誰もいないようですね。ではいきますよ」
「あぁ」
その瞬間、壁の一部が崩れ道ができる。そこはそのまま街の外壁外へとつながっていた。それを彼ともう一人の魔術とスキルにより隠蔽、塞がれていたのだ。
「どうぞ」
「すまないね」
空いた穴を通り抜けるとすぐに塞がっていき、すぐにそこには本当に穴が開いていたのかわからなくなるほど閉じ切ってしまう。
「さて、ここからが本番だね」
森の入り口、そこで上空を見上げればまだ闇の渦が広がっている。陽の光は完全に遮断され、まるで夜がやってきたようだった。よくよく見れば、闇の中には星のようにいくつも光の輝きが見える。
その時だ。ガサガサと森の方から何かがやってくる音が聞こえてきた。
【気配察知】にも反応があり、【千変万化】を剣の形状へと変化させる。この【千変万化】は特殊なスキルが備わっており、装備者が持つイメージに合わせてその形状を変化させる特性を持つ。
変えられるのは形状のみで属性やスキルは変わらず、体積も一定なため小さくしたり極端に大きな武器にはできない。でかくするには中身のない張りぼてにするしかない。
それでも、私にとっては最良の武器となる。全ての武器を万全に扱える私にとって、状況に応じて臨機応変に戦い方を武器レベルで変えられるからだ。
だが、警戒していた森から現れたのは魔物ではなかった。
「エリスティア……か? どうやら無事だったようだね」
「ギルマス!?」
少し心配していたが、どうやら大きな怪我もなく無事なようだった。なら、あの少年も? 少し期待を込めて状況を確認する。
「あの少年には会えたのか?」
「え、えぇ、会えたわ。でも、依頼は続けるって……」
「何だって……?」
では、やはりこの状況は悪魔の怒りでも買った結果か?
「それより、大変なのよ! この森の瘴気、魔物を取り込んでさらに強力な魔獣を生み出すの!」
「あぁ、そのようだね。理由は不明だが、事態は少しだが把握している。他に何か知っているかね?」
その時だ。森から咆哮が聞こえたかと思うと、複雑怪奇な魔獣が姿を現す。しかも、その数は一つや二つではない。
「全く。一体この森で何が起きているのかね」
「ギルマス!」
「下がっていたまえ。この状況、君の守りにまでは手を回せないよ」
私は【千変万化】を大剣へと形を変えると、魔獣の殲滅を開始した――
次回12/01更新予定です。




