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異世界にとばされてなお、彼の者は我が道を貫く。《夜天の星王編》  作者: stella212
第二章 災いを呼ぶ少女編
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027 サクラの服


 翌朝、目が覚めた俺は天井を見て今の自分の状況を思い出す。


「異世界で目覚めるのはこれで2度目か。やっぱり実は夢でしたということもなさそうだ。本格的にこっちでの安定した生活のために頑張らないといけないな」


 そう思いながら身体を起こし、準備をするために立ち上がろうと手を置いたときに何か違和感を感じて手元を見る。


「髪の毛……?」


 布団の中から桃色の髪がはみ出ていた。嫌な予感がして恐る恐る布団を持ち上げ、その中をのぞく。


「サ、サクラ!?」


 そこにいたのは昨日隣のベッドで寝たはずのサクラだった。寝ぼけてこちらに来てしまったのか、やっぱり寂しくて入り込んできたのかは分からないがその現実に焦る。


 なぜなら、彼女は服を何一つ着ていなかったからだ。裸で俺の布団の中に潜り込んで気持ちよくスースーと寝息を立てて眠っていた。


 昨日色々話をした後眠ってから今までは何も覚えていない。変なことをした記憶はないが、サクラが何故こんな格好で布団に潜り込んでいるのかわからず動揺してしまう。


「ど、どうしたらいいんだ?」


 あまりの状況に対応がまとまらない。前の世界での経験のなさが悔やまれる。起こして悲鳴でも上げられたら、ベルやハクナがこの部屋に入って来てしまうかもしれない。そうなれば絶対にいらぬ誤解を与えるだろう。ハクナにはエッチなご主人様(マスター)と言われ、ベルにはからかわれる未来しか見えない。


 そんなことを考えて固まっているとサクラが目を覚ました。


「レクトル……? おはよー」


 目を擦りながらぽけーとサクラが呑気に挨拶をしてきた。


「お、おはよう。サ、サクラ、なんでこっちの布団の中にいるんだ? そして、何故、何も着ていない?」


 俺は意を決してサクラに問い詰める。もはやどうにかできる状況じゃなかったので、サクラが自覚していることを祈るのみだった。


「ん? きゃっ」


 サクラは自分の身体をみて布団で身体を隠し、顔を赤らめてはいるが大きな叫び声を上げることはなかった。


「あ、あの、これはその」

「別に怒ってはいないから覚えているなら理由を教えてくれ」


 俺は状況を理解しているようなその態度に少し安堵し、何故こんなことをしたのか問いかけた。布団に入るだけならまだしも服も着ていないのはまたベルなんかに何かを吹き込まれたのかと思ったからだ。


 もしそうならベルに文句を言ってやろうと思っていたが、その答えは俺の予想とは異なるものだった。


「昨日、お話した後眠ってたらいきなり服が水になっちゃったんだよ?」

「へ?」


 俺は予想外の答えに思わず変な声を上げてしまう。


 サクラが昨日着ていた服はハクナが作ったものだ。この屋敷にはタオルなんかの備品は揃っていたが、衣服に関しては何もなかった。


 流石に風呂に入った後またあのボロ布を着させるのは可哀そうだということで、ハクナが自分のローブを作った時のように水から簡易的なワンピース状の服を作って着させていた。


 それが睡眠中に水に戻ったというのだ。


「それで、布団もビショビショになっちゃったんだ。寒かったし……レクトルの布団の中、あったかそうだったからそれでつい……ごめんなさい」


 サクラが頭を下げて謝ってきた。恐らく、主の布団に無断で潜り込んだから怒られるとか思っているのかもしれない。


 俺はその頭に手を乗せる。ビクッとサクラの身体が少しはねるが、その頭を撫でながら務めて優しく言う。


「それが本当ならサクラは何も悪くないさ。むしろ気づいてやれなくてすまん」


 言ってしまえば寝ている間に全身に水をぶっかけられたようなものだ。俺なら変な悲鳴を上げてしまうかもしれない。流石にそんな悲鳴が上がれば目を覚ますだろう。


 もしかしたらサクラは無意識に俺の眠りの邪魔にならないように声を押し殺したのかもしれない。その後も俺を起こすこともできず、誰かに頼ることもできなかったのだろう。


 今回の元凶はまたもやハクナだ。あいつは俺からの評価を一体どこまで下げたたら気が済むのだろうか? 最初の頃の感動を返してほしいくらいだ。


「でも流石にその恰好のままではいられないな。あいつらに何言われるかわかったもんじゃない」


 このままサクラを部屋の外に出したら、結局誤解を与えることに変わりはないだろう。でも、この屋敷には服がない。


 こっそり出て服を買ってくる? 見知らぬ土地でどこにあるかもわからない街を目指して、ハクナやベルに見つかる前に? 無理に決まっている。


 そんなことを考えていると、一つ解決策が思い浮かぶ。


「そうだよ、それがあるじゃないか。幸い1日経ってるんだ、制限も解除されている」

「?」


 サクラは俺が何を言いたいのかわかっていないのか首を傾げていたが、俺はそれを無視して行動を開始する。


「サクラに似合ってて、長く使えて、安全にいられる服でいいか」


 それだけ呟くと、俺はこの世界、創作世界(ラスティア)で行使できる力を発動させる。


 今俺たちが住む星屑の館がある世界、創作世界(ラスティア)は俺が転生した異世界ではない。異世界で手に入れた固有スキル【我が内眠る創造の拠点(ラスティア・ラヘル)】によって生み出されたさらに別の世界だ。


 この世界内で俺は1日に3回まで、スキルや道具をある制限の元自由に作り出すことができる。


 その力を使ってサクラの服を作ろうということだ。


 細かいデザインや能力を決められるわけではない。でも、俺にそんな絵心もセンスもないのでざっくりとした要望からある程度希望に沿った物を作り出してくれるこの力には感謝している。


 ハクナと契約して芽生えたこの力は、今となっては数少ないハクナの評価を上げているスキルだろう。


 力を発動させると問題なく創作リストの中に追加された。


○創作中のスキル

 なし

○創作中の道具

 ①サクラの服:0%(完成まで0/5,184000)


 その創作時間を見て俺は驚く。


「5,184000って……10年!?」

「ふぇ!?」


 そのあまりにもな時間に驚き声を荒げると、それを聞いたサクラもびっくりして変な声を上げた。


「す、すまん」

「え、いや、うん。……どうしたの?」


 俺がいきなり変な声をあげるものだから心配になったのかサクラが恐る恐る聞いてきた。


「いや、サクラの服を作ろうと思ったんだが……」

「えっ!」

「できるまで10年かかるものができそうなんでちょっとな……」

「え……」


 サクラが俺が服を作ってくれるということにパアァっと喜びを露にし、続く言葉に落胆していった。その表情の変化に苦笑いしつつも、誤解を解くことにする。


「あぁ、時間は別に問題じゃないんだ。一体何を作る気なんだと不安になっただけだからな」

「……?」


 そう言って俺は魔力を流し、創作時間を縮めていく。サクラからしたらなんのこっちゃという感じだろうが、説明すると長くなるのでその気はなかった。


 この創作時間は俺の中ではソシャゲのガチャの時にたまに発生する虹色や花吹雪が舞う、キャラが現れるなどの過剰なレア確定演出に近い。時間がかかるほどレアリティが高いものができる可能性が高くなるからだ。


 ただの服に10年、【知識書庫(アーカイブ)】の5年を上回っていることからランクはS以上である可能性が高い。いいものができそうだというのはわかるが、そんなに時間がかかるものが想像できなかった。


 これに俺は、スキルがサクラには全身鎧が似合っていると判定し、ものすごいゴツゴツしたものが出てきたらどうしようかと不安になってきていた。


 誰がその辺の判定をしているのかはわからないが、もしそんなものが出てきた際には俺はどんな顔をしてサクラに言い訳すればいいのだろうと今から頭を悩ませていた。


 なにせ裸なのだ。そんな少女に与える服がSレア級の全身鎧。もう意味不明だ。どんないかれた趣味を持っているんだと問い詰めたくなる。


 すると、やっとのことで魔力による時間短縮が終わり、光に包まれて俺の前に服が出現した。俺の心配をよそに、出てきたのは普通のワンピースっぽい衣装だけだった。若干拍子抜けしてしまったほどだ。


 パサッと布団の上に落ちた服をサクラが不思議そうに拾い上げ自分の前に持ち上げて広げる。布団を抱きかかえていた手でそのワンピースを拾ったため、サクラの胸元から布団がずり落ち胸が見えていたがサクラは気が付いていないようだった。


 俺も必死にその魅力的な胸からなんとかワンピースへと視線を移す。


「かわいい……」


 サクラが小声で呟く。そのワンピースは白を基調として所々桃色で飾り付けれていた。スカート部分の端は桜の花びらを並べたような形状で切り揃えられ、その少し上には巫女の服のような破線でリボンが結ばれていた。胸元にも赤く細い紐でリボンがあしらわれている。


「確かにこれならサクラに似合いそうだな。桃色なのはサクラの髪からだろうし、所々巫女っぽいのは”緋焔の巫女”の称号からか?」

「もらっていいの?」

「あぁ、その為につくったんだからな。だけど、ちょっと待ってくれ」


 俺はこの服に何故あれだけの創作時間がかかったのかが気にかかり、服の詳細を確認した。変な呪いとかがあっても困るからな。


「【魔力解析(アナライズ)】」


 ○【恋煩い巫女の御忍び服】

 ・Rank:S 

 ・付与スキル:【物理保護】【魔力保護】

 ・保持スキル:【清浄】【修復】【復元】【調整】【同調】【成長】

 ・装備条件:〔女性〕〔巫女称号〕〔恋愛中〕

 ・備考:神に身を捧げながらも一般人に恋をした巫女の少女が、御忍びで出かけられるようにその恋を応援した神より送られたワンピース。着ているものを守り、清き姿を保つ力を持つ。思いの強さに同調し、持ち主とともに成長する。


「なんか思ってたのと随分違うな……若干ネタ装備よりか? それにスキルがいっぱいついてるな。創作時間が延びたのはこれのせいか?」

「スキル?」


 特に変なスキルはなさそうだ。ただ装備条件というのが気になる。まぁ、サクラに似合う服として創作したんだから今のサクラが着れないはずはないと思うんだが……これはあれか? いきなり着れなくなったりしたら、それはサクラが俺に対して恋しなくなったとかいうことになるのか?


「……………………」


 この服をサクラに着させていいものか迷いが生じていた。でも、今この状況で取り上げることなんてできそうにない。


「もう、着てもいい?」

「あ、あぁ」


 サクラのもう待てないといった感じの言葉に負けて了承してしまう。着れなくなるようなことになったらその時考えるしかないだろう。悲しいが受け入れるしかない。


 そんなまだ起きもしていないことに思いを馳せていると、サクラが目の前で着替えだした。


「ちょ、せめて向こうで」

「上から着るだけだからすぐだよ」


 そのままワンピースを頭から被り、んぐんぐと頭を出してその後髪もバサッと服の中から出して整える。


「どう? 似合う?」


 サクラはその場でクルっと回りながら俺に感想を求めてきた。


「あぁ、よく似合ってる」

「えへへ」


 俺の答えに嬉しそうにサクラが笑う。その服はお世辞でもなく、本当にサクラに似合っていた。


 ヒラヒラとスカートをなびかせながら小躍りしているサクラをよそに俺はスキルを確認していた。よくよく考えればここまで細かい確認をしたのは初めてかもしれない。


 付与スキルは装備しているものに付与されるスキル、保持スキルは装備自身が持っているスキルみたいだった。保持スキルは装備を持っていないと効果がないが、付与スキルは装備者として登録されている間は直接装備していなくても効果が発生するらしい。


 付与スキルの【物理保護】、【魔力保護】は文字通り物理攻撃、魔力攻撃に対して耐性を与える常時発動(パッシブ)スキルだった。ある一定の威力までは装備が受けもち、その値を超えた時に装備者がダメージを負うことになるようだ。


 保持スキルにあるのはどれも戦闘用ではなく、俺が長く使えるように願った影響によるものだろうスキルが多かった。【清浄】は魔力を込めると服や身体の汚れが取れるスキル、【修復】や【復元】は同じく魔力を込めることで破損や欠損を元に戻すスキル、【調整】は装備者の身体に合わせてサイズを変えるスキルだった。しかも驚きなのが【調整】を除き、これらのスキルは【同調】の効果により装備者が触れているものにも効果を及ぼすことだ。それには自身も含まれる。


 つまりはこの服に魔力を注げば、服だけでなくサクラの身体や服以外の装備の汚れも消え、他に装備しているものも壊れているところを直すことができる。誰かに触れていれば、その誰かにすら1人までは同様に効果が及ぶ破格の性能だ。実質壊れたものを直す道具としても使える。10年という創作時間にも納得できるものだった。


 最後の【成長】だけは若干戦闘にも関わるものだ。装備者の恋するその思いの強さや能力値(ステータス)の強さによって付与スキルの効果が上昇するというものだった。


 長く、安全に着られて、かつサクラに似合っている。まさに俺の要望全てを満たしていた。


 サクラも気に入ってくれているようでよかった。


「いこっ! みんなに見せるの!」

「おい、ちょっと待ってくれ」


 ハクナやベルに自慢したいのか、俺はサクラに引っ張られて部屋を出て行く。今日も慌ただしい一日になりそうだが、こういうのも悪くないなとサクラの後ろについていった。


次回更新は7/21予定です。

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