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002 異世界召喚

 

「ぐぁっ!」


 突如浮遊感が消え、重力も復活したのか盛大に尻もちを打つ。


 視界が明けると、そこには草原が広がっていた。後ろを振り返ると、自分がいる場所は石で出来た祭壇になっているようで、2mくらいの石の柱が6本、石の台を囲むように並んでいる。俺はその祭壇の前に座っているかたちだ。


 田舎の風景に感じるが、ところどころ違和感を感じる。どこかファンタジーを思わせる雰囲気があるのだが、特に太陽や月が2つあったり、空をドラゴンが飛んでいたりといったことはない。


「いってて、どこだよここは。海外とかじゃないだろうな? 周りには誰もいないのに、今の落下……まさか自宅からこんなどこかもわからない場所に転移でもさせられたのか? ……夢じゃない……よな?」


 盛大に打ちつけた尻を撫でながらそう言いつつも、先程までの出来事と肌に感じる感触や辺りの雰囲気が現実だと物語っているのがわかる。着ているものも変わっているし、身体にも色々と違和感がある。


 何かローブのようなものをまとっており、視点がいつもより低いのだ。


「魔法陣で異世界召喚とかラノベみたいな展開は勘弁してくれよ……。あんな風にいきなり見知らぬところに放り出されて順応できるほど俺は人間できてないぞ。でも、ARやVRみたいな感じではないよな。現代の技術でここまでできるとは到底思えないし」


 再度あたりを見回してみるが誰もいない。魔物みたいなものもいないのは幸いだが、これがあの設問にあった世界だと仮定するとモンスターがいるはずなのだ。自分には戦う力なんてないので気が気でない。


 さっきドラゴンが飛んでいたりしないと言ったが、予想が当たっている場合だと今この場にはいなくてもドラゴン自体はこの世界に存在することになる。


 ……何故かって? 大量にあるスキルの選択肢の中に【竜特攻】というものがあったからだ。その他にも特攻には悪魔や神を対象にするものまであった。


 ……いや、神様って戦う相手じゃないだろう。


 取りあえず状況をもっと確認するために立ち上がろうとすると手に固いものが当たった。


「何だ?」


 手元を見てみると、この世界に来ることになった元凶ともいうべきタブレットが転がっていた。見た目は拾った時と同じで特に変わりは見受けられない。


 着ている服が変わっている以上、これだけがこの世界に持ってくることができた唯一のものになる。いや、これ自体も元の世界のものとは断言できないのがあれなんだが……。


「こいつのせいで……。やっぱり拾ったものはすぐに交番に届けるべきだったな……」


 拾い上げて恨めしげに見つめる。最近はその場の欲求や好奇心に流されて後で後悔することばかりだ。


「誰もいないなら頼りになるのはこのタブレットだけか。ここがどこかはわからないが、元の世界に戻る手立てか、HELP機能みたいなのがあると助かるんだが……」


 一縷の望みをかけてタブレットの画面に触れる。するとそこには新たなメッセージが表示されていた。


 『所有者が登録されました。所有者:レクトル・ステラマーレ』


「適性診断から何の説明もなく自動登録とか相変わらずのクソ仕様だな。……ちょっと待て、まさかこの恥ずかしい名前をここでは名乗らないといけないのか!?」


 ……最悪だ。もう何をしても悪い方向に進んでいるとしか思えない。


 せめてよくあるチートなスキルがあって無双できるくらいになっていなければやってられないような状況だ。投げやりにそう考えていると最後に選択したスキルとやらを思い出す。


「そういえば、無限の魔力が得られるスキルを選んだところでこっちに飛ばされたんだったな。ということはここでは魔法が使えるのか!? それならこの世界に飛ばされたことも悪くないんだが」


 魔法が使えるかもしれないと思うと少しテンションが上がってくる。しかし、いざ試そうと思っても肝心の魔法の使い方がわからなかった。


 もし詠唱がいるようなものであるなら流石にこの歳ではちょっと恥ずかしいものがある。ここが異世界なら知り合いなんていないのだろうが、それでも30歳にもなった大人が呪文の詠唱をするのは誰も聞いていないとわかっていてもこっぱずかしいのだ。


 まぁ、日本人なんて周りが普通にやってて、誰もそれを不思議に思っていなければそういうものかと慣れてくるのかもしれないが……。赤信号、みんなで渡れば怖くないってね。


 ……これは違うか。


 そう思いながらタブレットをタッチすると、前回は薄く表示され選べなかったマイメニューが所有者になったせいか色が変わって選択できるようになっていた。


「これもどうやって認識してるんだろうな。本当に魔法があるなら全部不思議なことは魔法で片づけられてしまいそうだ」


 項目をタッチしメニューを開くと適性診断時に入力した名前と年齢のほかに種族、各種ステータス、スキル欄が追加で記載されていた。


 ○名前:レクトル・ステラマーレ 人族 16歳 ♂

 ○称号:“異世界の旅人”“セカイに選ばれし者”

 ○Rank:U(1)

 ○ステータス:

  ・体力:17/17

  ・魔力:23/23

  ・筋力:4

  ・守力:3

  ・理力:8

  ・護力:6

  ・速力:10


「名前はレクトル・ステラマーレのまま、種族は人族か。それに“異世界の旅人”……これは確定かな。本当に異世界か、ゲームの中かはよくわからないが」


 よく空中に描かれるようなステータス表示ではないので、まだ現実でもできそうな範囲なのだがいつまでも現実逃避していては後々後悔することになりそうだ。


「それにしてもステータスはどれも低いな。いや基準がわからないから何とも言えないが、魔力もあのスキルを選んだ割には∞ではなく23とかHPの17と大して変わらない値だし、他のパラメータなんてほぼ1桁じゃないか。速力とやらだけがギリ2桁にのっているくらいか。これもあの適性診断の回答の結果なんだろうな。……なんか、ステータスの書き方が適正診断の時と違うのが気になるな」


 表示されている値はどうみても初期ステータスだった。最大が10って事は流石にないだろうし、せめて2桁や3桁なら最大が100とか、256とかの可能性もあるがそれもないだろう。


 しかもRankがUってどんだけランク分けされてるんだか知らないが雑魚ステ確定だろう。横にある数字もよくわからない。


「これで戦闘面でのチートはほぼなさそうだな。しかし、レベル表記がないが成長するんだろうな、これ……。ゲームみたいに始まりの町とかで都合よく弱いモンスターしか周りにいないとかならともかく、いきなり強いモンスターが出てくるなら一撃でお陀仏だぞ」


 残念に思いつつさらにスキル欄の全体が見えるようにスクロールしていく。


 ○固有スキル

 ・【無限湧魔(ノーリミット)

 ○契約スキル

 ・-

 ○付与スキル

 ・-

 ○スキル

 ・【魔術適正:無】


「えらく種類が分けられているがあるのは2つだけか。スキルは通常のスキル欄に【魔術適正:無】……ってこれ、まさか適性がないって事か? 確かにスキル選ぶときに魔術適性の項目もあったが、あれを選ばないと魔術が使えないなら無限の魔力があったとしても宝の持ち腐れでしかないじゃないか!」


 いやそれどころではない。魔法の使えない無限の魔力を持つ者。ここがどんな世界か知らないが、そんなキャラがもしいたとしたら考えられる未来なんてだいたい相場が決まっている。


 何かのエネルギー源にされるか、最悪、魔道兵器みたいなものに埋め込まれて精神を殺され身体だけ維持できるような形で電池(バッテリー)同然の扱いを受けるかもしれない。


 ……そうなったら人生詰みだな。漫画などでよくある展開を想像してしまいブルっと身体がふるえる。


「はぁ……。実質使えるスキルは1つだけか?」


 ついため息が漏れてしまう。


「この不運の連鎖はいつになったら終わるんだ……。それで固有スキル欄にある【無限湧魔(ノーリミット)】っていうスキルがもしかしたらあれか? MPも∞じゃないし、無限の魔力じゃなかったのか」


 なんとなくそのスキルをタップしてみるとさらに詳細情報が表示された。


無限湧魔(ノーリミット)

 ・Rank:EX

 ・効果:消費された魔力を際限なく補充する常時発動型(パッシブ)スキル。補充速度:EX


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