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017 鉱山探索


 俺たちは創作世界(ラスティア)へ移動する前の村長宅らしき家の前に戻っていた。


 どうやら創作世界から戻る場所はその前に創作世界(ラスティア)へ転移した場所になるみたいだ。前回も同じ草原だったしな。


「相も変わらず人気はなしか」

「みたいですね。【気配察知】にもかかりません」

「その【気配察知】というのは【神力】の力なのか?」

「いえ、通常のスキルの一種ですよ? 冒険者なら一般的に取得されているものです」


 てっきり特殊な力かと思っていたら、この世界では一般的なものらしい。いや、冒険者がというからには普通の平民? は使えないということか。戦いに従事するものなら持っていて当たり前といったところだな。


 確かにどこに誰が潜んでいるのかわからないんだ。特に魔物との戦いなんかではその居場所を把握する力は重要になる。


「一般的に取得されているってことは取得自体はそんなに難しくないのか?」

「そうですね。当たりに気を配って魔物と戦ったり、ダンジョンへ潜ったりしていると1年程度で身に着くと思います」

「1年か……」

「まぁ、そうそうスキルというのは簡単に身に着くものではありませんから」


 当然といえば当然だ。そんな簡単に手に入るものなら誰も苦労しない。昨日今日で大量に、しかも強力なスキルを手に入れている俺が異常なのだろう。


「それにしてもこの村はあんまり収穫がないな。本当に誰もいないならこっそり畑のものを頂戴したい気分だ。変に生活感が残っているから手出しもできない」

「盗賊じみたことは極力やめた方がいいと思うんですけど……しかも神の目の前で」

「……そういえば、一応神様だったな」

「う……はい」


 俺の“一応”の言葉にダメージを受けるハクナ。あまり神らしきことができていないからか反論もできないようだ。


「仕方ない。鉱山だけみてそれでも収穫がないようなら森か次の村、いやできれば街を目指したいところだな」

「近くとなるとこのアルトフェリア王国の首都、アルストロメリアだと思います。あそこなら距離はだいたい1日程度かかりますけど、大きな街なので大抵のものは揃ってますよ」

「ほう、いいな。というか、そんな名前の国だったのか。気にもしていなかったな。できれば何か移動手段がほしいが、我儘は言ってられないか」


 無駄話が過ぎたので、俺たちはそのまま鉱山方面へと歩き出した。ここでは何も得られるものがなかったからだ。


 流石に腹が減ってきたので、道中に生えていた木になっている果物を拝借して食べた。ハクナは微妙な顔をしていたが、その果物を口に押し込み一口かじらせると観念したのか何も言わなくなった。


 お腹が減っていたのは同じだからな。これで共犯だ。味は桃に近い感じでジューシーでなかなかにうまかった。


 ちなみに食べて大丈夫なものかわからなかったので、一度創作世界(ラスティア)へ転移し、【知識書庫(アーカイブ)】で食べて大丈夫なものか検索している。流石に見知らぬ果実をそのまま食べる気にはなれない。


 いちいち確認しに創作世界(ラスティア)へ転移するのは面倒だが、持ち出せるのが1つのみで選び直しができないとあれば慎重に選びたい。


 まぁ、実のところこの制約については1つ解決案が思い付いているのだが、まだ試していない。


 そうこうしているうちに鉱山が見えてきた。


「どうだ?」


 もちろん、人の気配の確認だ。流石にここにも誰もいなかったらもうこの村は何なんだと言いたいところだ。期待の眼差しで目を瞑り気配を探っているハクナを見つめているとハクナが答える。


「3人くらいの気配を感じます」

「よかった。誰かはいるみたいだな。でも、やっぱり少ないな。村の規模と合わないのはおかしい」

「どうしますか?」

「せっかくだし探検してみるか。そういえば、炎神っていうのはハクナの同郷か?」

「炎を司る神ならいますけど、多分違うと思います。今はもう加護を与えられない状況ですし、与えるにしてもこんな村1つという小規模なことをする人じゃないですから」

「そうか」


 神ではないのに神として祭られているということか? 元の世界なら神なんて本当にいるかあいまいな世界だったので、勝手に作り出して祭っているところもあっただろう。


 でも、この世界では神の実在が確定していて、しかも実際に村を守る加護が与えられている。それだと、一体この村が祭っている炎神様とやらは一体何者なんだろうか?


「それに……」

「それに?」


 俺が炎神について色々考えていると、ハクナが鉱山を見つめ難しい顔をして呟く。


「なんだか嫌な感じがします。何がとまではわかりませんけど……」

「嫌な感じか……」


 何か危険があるなら探索はやめた方がいいだろうか? ここまで来て無駄足なのはいただけないが、特に強い目的があるわけでもないので危険を冒す理由にはならない。


 俺がそれをハクナに伝えようとしたところでハクナが口を開く。わずかにハクナのかざす手元が光っているように見える。


ご主人様(マスター)、中に女性がいます。感じる気配からかなり衰弱しているようです」

「女性? なんでそんなところに?」

「わかりません。これは推測ですけど、村で何かがあり鉱山に逃げ、そこに隠れていたものの衰弱して他の住民はみな倒れてしまったとか……?」

「いや、流石にそれは……」


 あまりにも推測が過ぎる。否定はできないが、現実味を帯びていない。それでも、知ってしまったなら助けないわけにはいかないか。


「大丈夫なのか? 嫌な感じがするという話だったが」

「わからないです。でも、はっきりとは感じないので薄れた後かもしれないですし、今はご主人様(マスター)のおかげで神力が回復しているので大抵のことはなんとかなると思います」

「その女性も救えると?」

「はい」

「なら、いくしかないか」


 そういって俺たちは鉱山の中へと入っていった。救える力があり、危ない状態の人がいることを知ってしまったのなら流石にほうっておくわけにはいかない。


 まだこの世界での行動指針を立てられていない中、あまり人の生き死にの場に立ち会いたくはなかったが仕方がないだろう。世の中、自分の思い通りには進んでくれないものだ。


 せめて救いが必要な女性が盗賊とかの悪党じゃないことを祈ろう。


 鉱山として運用されているからか、中には明かりが備え付けれていた。ただ、電気の照明ではもちろんなく、松明などの火を使ったものでもなかった。


 ポアッとほのかに光る結晶が一定間隔で壁に備え付けられていたのだ。明かりはギリ足元が見えるくらいでそんなに強くはないが、いかにもファンタジーっぽくて俺好みだった。


 しばらく歩くと目の前にひと際大きい蜘蛛が現れた。50cmはある。かなり気持ち悪いが、身体から薄黒い煙を噴き出している所を見ると魔物なのだろう。


ご主人様(マスター)は下がっていてください」

「あぁ」


 俺はまだ戦闘に参加できる力はない。【魔術適正:星】を手に入れはしたが、あれは持ち出しに登録していないので、創作世界(ラスティア)の外では使うことができない。


 それにもし使えたしても、こんなところで使えば鉱山ごと崩落するのは目に見えている。今はハクナに守られるのを許容するしかない。命に関わるのだ。情けないなどと言ってはいられない。


「我欲するは凍てつく氷槍、貫け【氷旋槍(アイニス)】!」


 ハクナが使ったのは最初に犬型の魔物を倒したのと同じ魔術だ。というより、まだこの魔術しか使っているのを見たことがない。


 どうやら(コア)を壊さずに倒したらしい。ハクナが蜘蛛の死骸の中から球体状のものを取り出してくる。形は綺麗だが、もう煙は出ていない。


「魔物からエネルギーが供給されなくなれば煙も出ないんです」

「それはいいが、どうするんだ? あんまり持ちたくはないな」

ご主人様(マスター)がお金がないって言っていたから、わざわざ壊さず剥ぎ取ったのに……」

「まぁ、それは悪いと思っている」


 ひどいといった感じでハクナが睨んでくる。まぁ、普通こういうことは女の子の方が苦手だろう。これに関しては異世界と現代日本での常識、文化の違いだと俺は思う。決して逃げではない。


 ハクナの言い分も確かにそうなのだが、どうしても気が引けてしまう。よくあるアイテムボックスやストレージといった次元収納系のスキルがあれば手を触れることなく集められるんだけどな。


 ……また今度創れるか試してみるか。


「じゃあ、一旦創作世界(ラスティア)にでも置いておきますか?」

「あぁ、その手が。いや、どうせなら……」


 ハクナは冗談で言ったつもりのようだったが、俺がいい案だとうなづいたものだから驚いていた。毎回そんな手間を持つのかということだろう。


 取りあえず俺は思い付いたことを実践する為に創作世界(ラスティア)へと転移する。


「え、本当に?」

「いや、毎回は面倒だからちょっと対応策をな」

「……?」


 今日はまだ1回も創作をしていないのでまだ3回分残っている。その2つ分を使って俺はある道具とスキルの創作を試みる。魔力も一気に投入して創作時間を短縮する。


 すると目の前に2つの光の球体が現れ、手をかざすと一つは俺の身体へと吸収されていく。もうひとつは指輪の形となって俺の手の中に収まった。


 今回俺が創作の際に出した条件は2つだ。一つは今回の手間を省く為のもの。条件は「創作世界(ラスティア)へ簡単にものを送れる何か」だ。


 多少あいまい化した方がスキルが勝手に決める分効率がよくなる。それによってできたのものがこれだ。


【宅配の指輪】

 ・Rank:B

 ・効果:創作世界(ラスティア)内へ一方的に物を送りつけることができる。サイズや量の限界はないが、生物を取り込むことはできない。また、創作世界(ラスティア)側で受け取る際には輸送物に見合った魔力が必要。分解、解体もできる。受取人の指定も可能。


 逆に創作世界(ラスティア)側から取り出す事はできないみたいだが、サイズや量に限界がないのはいいな。これで楽になったはずだ。


「確かに便利そうですけど、でも、これ持ち出しに登録するんですか? 貴重な一枠を使うにはもったいないと思うんですけど」


 そう、これだけなら意味がない。貴重な一枠を使って持ち出しに指定するほどのものではないだろう。


「それはわかってる。俺の本命はもう一つのスキルの方だ」


 そう言って俺はスキル欄を表示する。そこには先ほど創作した新しいスキルが増えていた。


 もうひとつの願いは「外でも制限付きでいいから創作世界(ラスティア)の力を使いたい」だ。


疑似拠点(ヴィーラム・ラヘル)

 ・Rank:EX

 ・効果:自身の周囲数十cmに疑似的に創作世界(ラスティア)と同じ空間を生成する。実際の創作世界(ラスティア)からは効果が低下する。また、創作によって生成した力の内、未登録のもので外部に影響を及ぼすものは極端にその効果が低下する。


「これは……!」

「これなら持ち出しに指定していないものでも効果は落ちるが一部は使うことができるだろ?」

「また、こんな抜け道みたいな……。ご主人様(マスター)は本当にとんでもないことを思い付きますね」

「確かにこれは狙ってやったが、他のはたまたまだろう。俺の代名詞みたいに言うのはやめてくれ」

「同じです」


 納得がいかない。しかし、これで大分安心できるようになったな。これによるメリットは何も【宅配の指輪】が使えることだけじゃない。


 前回創作した【知識書庫(アーカイブ)】による情報検索もわざわざ創作世界(ラスティア)に移動する必要がなくなったのだ。これは大きいだろう。


 もちろんそれだけではないが、他はおいおいだ。


「さて、女性の救出に戻るか」

「はっ、そうですよ。こんな寄り道してる場合じゃないじゃないですか」


 そうして俺たちは再び創作世界(ラスティア)から鉱山へと戻り、女性の元へ歩を進めていくのだった。


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