122 仲直りと晩御飯
思った用に時間がとれず延期の上短め……申し訳ない
「えっ……てあんた……嘘でしょ? 冗談よね? それでも神……ご主人様の最初の従者なの?」
「なっ……! う、その……セ、セピアだって知らなかったですよね?」
ベルの突っ込みにハクナはたじろぎ、一緒に行動していたセピアに助けを求めた。
だが、当のセピアは「えっ」と驚きの声を上げ、オロオロと視線を彷徨わせるばかりでハクナの問いかけには答えない。その反応にハクナはすぐに察する。失敗したと思う前に、同様に気づいたベルがセピアに声をかけた。
「正直に言えばいいのよ? 誰も怒らないから」
「……気づいてたの。お兄ちゃんから流れる力に込められる、この世界の力がすごく強まってたの」
おずおずと答えるセピアにハクナは何も言えず、たじろぎながらもビシッとベルを指差した。
「で、でも! ベルフェゴール、あなたが大きく存在進化したことには気づいてるんですから!」
「何に?」
「え?」
このままでは神子の威厳がなくなってしまうと、ハクナはベルの変化には気づいていると自慢するように告げる。だが、当のベルは隠しているつもりも一切なかったため、何に進化したのか言ってみなさいと詰め寄った。
「そ、それは……」
だが、ハクナにはそこまではわからなかった。ハクナは神子ではあるものの、生まれてまだ人と同程度の時しか生きておらず、神界から離れたことで力も低下している。
鑑定系の力も有してはいなかった。
ただ、それを言い訳にすることはできなかった。なぜなら自分よりも若く、格も低いはずのセピアが主の変化を把握していたからだ。
互いに神界の生まれで、同じ主との契約者。さらに言えばハクナの方が年上で、先に契約しており、その契約も従属のセピアに対し、親愛のハクナは繋がりも強いはずだった。
負けられない。だからハクナはわからないとは言わずにじっとベルを見つめ、憶測で答えを出した。
「ま、魔神とかですか?」
「なんでよ。魔族の進化は基本望む形に引っ張られるのよ? あんた、私を何だと思ってるの?」
「じゃ、じゃあ何なんですか!?」
「……人魔よ」
「え? それって……」
その返答が意外だったのか、ハクナの視線は好奇に満ちていた。
「ご主人様が人族だか――あいたっ!?」
「バカ言ってるとぶんなぐるわよ?」
「もう叩いてるじゃないですか!」
ハクナの頭上には魔力で生成された漆黒の拳が浮遊していた。おっかなびっくりとエリスはそれを見つめている。
「はぁ、もういい加減にしろ。レアが困ってるじゃないか。せっかくの料理が冷めてしまう」
「え?」
レクトルがそういうと、レアとリアが扉を開けて入ってきた。手には料理を載せたワゴンがあった
「ご主人様、気が付いていたんですね」
「まぁな」
実を言うと、レアはもっと早くに料理を完成させていたが、エリスの感情が盛大に吐露された告白を聞いて居間に入るのを躊躇っていた。
だが、出来たての料理から漂う匂いは扉を隔ててなおレクトルのお腹を刺激していた。
「なにそれおいしそー!」
「あ! 駄目だよ! いただきますしないと!」
料理を見て真っ先に食べようとしたシャオルーをサクラがムンズと掴んだ。
「ちょっと! 何すんのよ!」
「みんなで一緒に食べるの!」
「そうだな」
「わかったわよ!」
レクトルにも咎められ観念したのか、そう言ってシャオルーはサクラの横の机の上にちょこんと座る。
「わ、私もいただいていいの?」
「はい。別に私へのうかがいは不要です。私はご主人様の奴隷ですから」
「奴隷……」
その言葉にユキとのことが再び頭を過るが、すぐに首を振る。
「ありがとう」
「いえ……私もさきほどは言いすぎました」
「別にいいわ。それに冠位だなんて……まだ信じられないけど、無礼だったのは確かだから。ごめんなさい」
エリスは頭を下げた。冠位に仕える元王族の奴隷と貴族の家出少女。どちらが身分が上なのかはいまいちよくわからないレクトルだったが、ギスギスした感じにならずほっとしていた。
「ほら、レアとリアも席について」
「は、はい」
「うん」
料理を並べ終えたレアとリアも席に着く。今日はいつもと比べ客人が2人も訪れており、一段とにぎやかだった。
「それじゃあ」
「「「「いただきます!」」」
「い、いただきます?」
エリスがなんなのこれ? と首をかしげながらも真似をして手を合わす。
「お、おいしい……」
「何これ! すごいじゃない! あんた才能あるよ!」
エリスとシャオルーは料理を口にして素直な感想をこぼす。
今日のメニューはハンバーグだった。2つに割った中からはとろりと肉汁とともに溶けだしたチーズが垂れてくる絶品のひと品だ。
「あぁ、うまい。流石だな」
「おいしいよ!」
「お口に合って良かったです」
レクトルやサクラの称賛を聞いて、レアもやっと一口くちに運ぶ。自然と笑顔が浮かんでいた。
「でも、こうなるとやっぱり米が恋しくなるな」
「米ですか?」
「あぁ。一緒に食べると一段とうまくなるんだ」
「そうなんですね。探すのにもっと力入れますね」
「頼む」
以前からレクトルはレアに米については頼んでいた。こうして日本の料理ばかり食べていると、どうしても恋しくなってしまうのは避けられなかった。
「そう言えば、そっちの用事はどうだったんだ?」
「え?」
レクトルがふと気になってハクナとセピアに声をかける。さっきのベルとの会話から気になっていた。
だが、状況はさっきと変わらない。ハクナは言葉を濁すしかなかった。
「えーっと、何かはあったんですけど、細かい話はまた後でします」
「あぁ……」
その言葉に何か面倒事の予感を感じ取ったレクトルは気になりつつも、少しの抵抗を試みる。
「そうだな。エルフの森の一件が終わった後くらいでいいか」
「流石にそこまでは……」
とはいっても、エリスはまだしも、妖精のシャオルーは森に行くまでずっとここに居座りそうだという思いがレクトルにはぬぐい切れなかった。
じっと視線を送るレクトルに対し、当のシャオルーは自身の身体に対してかなり大きいフォークを器用に操り、ハンバーグを口に運んではだらしない幸せそうな顔を浮かべていた。
一口でお腹いっぱいになりそうなサイズなのに、それを幾度と口に運ぶシャオルーに一体どうなっているんだと疑問を浮かべている合間も止まることはない。
結局最後まで残すことはなく、シャオルーは皿にあったすべてを見事に完食していた。
「「「ごちそうさまでした」」」
その後少し話をした後、この場はお開きとなった。
エリスのことはここに連れてきたベルが責任を持つということで見送りに出た。最初は「なんで私が」とベルは面倒がり、当のエリスも魔王に送ってもらうなんてと遠慮していたが、転移してきたこの場所からはいつになっても帰れないぞという言葉にしぶしぶ従った。
ベルもサクラが付き添いを申し出たことでいやいやながらも了承した。
正確にはサクラが送ること自体を申し出ていたのだが、心配だからとベルがそれに付き添う形となった。
なんだかんだでベルも相当、サクラには甘かった。
「さて、と」
シャオルーもお腹がいっぱいになったのか机の上でむにゃむにゃと幸せそうに眠っていた。
レアとリアは片づけをしているので、この場に残っているのはレクトル以外にはハクナとセピアがいるだけだった。
「ご主人様、あの」
「後でも大丈夫か? ちょっと確認したいことがあってな」
「え?」
レクトルとしては、確かに魔王襲撃の最中にハクナ達が何をしていたのか気にはなっていたが、それ以上に確かめなければいけないことが存在していた。
その視線の先にあるのは、創作世界へと戻ってきた時に気づいたお知らせなるメッセージだった。
次回6/15更新予定
余裕があれば金曜にも……最近のことを考えると辞めた方がいいかな




