013 初めての創作
「まぁ、条件を満たせば数の制限はあるが持ち出すことはできるみたいなんだけどな」
「え! 本当ですか!?」
ハクナの顔が希望に満ちる。この感じだとやっぱり闇の神打倒については諦めた感じじゃあなさそうなんだよな。時間をかけて地道にというのがどういう方法を考えているのか一度問いただしてみたいところだ。
「でも、こっちに関しては魔力でどうにかなんてことはできないし、手早く済ませられるものでもない。むしろ俺にとっては一番苦手な分野といえる」
そう言って俺は先ほど見つけた条件の詳細に目を走らせる。この【我が内眠る創造の拠点】のスキルも他のスキル同様に名称部分をタッチすると詳細が表示されたのだ。そこにはこの世界のことについてやその効果などについて記載されていた。
ただ、できることが多いからか制約が多いからかやたら文章が長く、専門用語が出てきてまたそこから再度説明に移行したりとした為、解読がなかなか進まなかった。
それをさっき町を歩いている間に探索をハクナに任せていろいろ見ていたのだ。
本当なら馬車の中でやりたかったんだが、ハクナが無言モードに入ったおかげで俺が商人の話相手をしなくてはならず、思ったように進めることができなかった。まぁ、お陰で別の情報は手に入れることが出来たが……。
魔力の中に情報版を溶かしこんでいる状態だと、頭の中でも各種機能の閲覧などができる事がわかったのは行幸だった。
そうやって考え込んでいるとハクナが先を促すようにこちらを窺ってきた。
「その条件っていうのは何なんですか?」
「契約者、もしくはそれに類する者とこの世界の住民の数、及びその信頼度に応じて……だな」
「契約者と信頼度、ですか?」
「あぁ、基本的には契約者1人に付き1つで、信頼度に応じて増える。ちなみに俺と契約者は別枠で扱われる。つまり俺が持ち出せるものが1つと契約者自身が持ち出せるものが1つだな」
「それじゃあ、今は私と契約してるのでお互いに1つだけなら何か創って持ち出すことができるんですか?」
ハクナが期待の眼差しでこちらを見つめてくる。
「まぁ。そういうことだな。あぁ、だからといって闇の神を倒すことができそうな力なんてそうそう創れないからな」
「それはわかっていま……えっ、簡単じゃないけど創ることはできるんですか!?」
おっと失敗したな。確かにそう捉えられなくもない答え方だったな。流石に闇の神を討伐できる力や方法を渇望しているからか目ざとい。
「あくまで可能性の話だ。それに流石にそこまでのものになると対価が足りない。魔力では補えられるものとそうでないものがあるみたいだ。そういった規格外系統は希少素材をいくつも要求されるんだ」
「そう……ですか。でも、少し希望はあるんですね」
このままじゃあその素材集めに出掛けるなんて言い出しそうだな。少し釘をさしておくか……?
「言っておくが、創らないからな……? 闇の神討伐には協力しないっていっただろ?」
「うっ、わかってます。……ごめんなさい」
バツが悪そうに俯くハクナ。これじゃあ俺が悪者みたいじゃないか。これからお楽しみ創作お試しタイムになる予定だというのに、あまり気分を落とすことはしないでほしいものだ。
まぁ、持ち上げるようなことをいって落とした俺が悪いんだが、これなら最初からできないと断言した方がよかったか?
でも、嘘をつくのは嫌なんだよな。相手を思っての嘘ならまだしも自分にとって都合がいい嘘は嫌いだ。経験上、大体が誰かを傷つけ、将来の災いの種にしかならないからな。
仕方がない、ここはある程度俺が折れた方がいいかもしれない。取りあえずこの暗い雰囲気だけでもどうにかしたい。
「まぁ、その素材を主目的に集めるのではなく、運よく手に入ったくらいなら何も言わない」
「え……?」
「俺もそこまで鬼じゃない。極力闇の神討伐なんて自分に利がなく、危険で責任重大な案件を抱える気はないが、頑張る女の子を邪魔するようなことはしないさ。だからそう気を落とすな」
「はい……!」
そういってハクナは笑顔でこちらをみる。落とし所としてはこんなところだろう。その素材がそうそう手に入りそうにないほど希少なものそうだということは内緒だ。嘘をつくのは嫌いだが、言わない分には問題ない。
「それじゃあ、さっそく何か試しに創ってみるかな」
「何を創るんですか?」
「そうだな……」
仮にも記念すべき第一回目だ。適当に試すんじゃなく何か為になるような……自分が楽しめるものがいい。
「やっぱり魔術……か?」
「え? でも【神術】があるのでわざわざつくらなくてもご主人様は全ての魔術を使えますよ?」
「いや、使う権利があるのと実際に使えるのとは違うだろ? 聞いてる感じだと、万能だけど扱いが難しいイメージなんだが」
【神術】に関していろいろと聞きはしたが、正直よくわかっていない。取りあえず理解しているのは魔術適正がないどの属性の魔術も魔力を神力に変換して、それを再度対応する魔術の属性に変質させれば使えるという事だけだ。
こうして整理するだけでも複雑であることがわかる。何せ、通常なら一回の魔力変質で済むものをさらに変質させているからだ。
「そうですね。確かに何も知らない転生者のご主人様なら難しいかもです。ある程度の練習……というより特訓が必要ですね」
「だろう? いまだにどうすれば使えるのかイメージすらできないからな」
「でも、それだとどういうものを創るんですか? 簡単に魔術を使えるようにできる魔法道具とかを創り出す感じになるんですか?」
「う~ん、それはそれでもったいない気がするな。最初は役に立つと思うが、使えるようになったらお払い箱っていうのも……。なにせ記念すべき一回目だからな」
やっぱり世の中にないものか……? いやそもそもこの世界の事を知らない俺には何があって何がないのかもわからないしな……そういう知識を俺に与えるアイテムとか?
これはいいかもしれないが地味だな……。もっとこうパァっと派手なのに……よし
「決めた」
「えっ? 早いですね」
ハクナも何がふさわしいか考えてくれていたんだろう。顎に当てていた手を下ろし言葉を待っている。
「魔術適性だな」
「魔術適性……ですか? でもそれは……」
「ただの魔術適性じゃない。俺にふさわしい魔術適性だ。どうやらこのスキルは明確にこれと指定できるわけじゃなくある程度方向性を与えて、それをスキルが形にしてくれるみたいなんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ、だからあまり詳細な条件設定は基本できない。ある程度まで絞り込みを入れられるが、条件を厳しく、狭く指定すればするほど求められる対価や魔力が大きくなるみたいだ」
何事も甘くはないということだ。逆にそこまで決まっていなくても最低限の条件を与えればスキルが形にしてくれるということでもある。
……どんなものが出てくるか楽しみにならないか? 個人的にはこのある意味ガチャみたいなシステムには思うところがあるのだが、対価として必要なのがひとまず無限に湧き出る魔力で事足りそうなのが救いだ。
何気にこういうところも俺の本質が根っこにあるのかもしれない。
最初はアンケートにあった“魔王討伐はせず隠れて暮らす”というのからこの異世界らしき創作世界や“星屑の館”がきているのかとも思っていたが、ハクナの言うとおり俺の要望を反映しているのだろう。
星空については何とも言えないが、こういうギャンブル要素のあるお楽しみが好きというのは否定できない。
設計関係の仕事に就いていることからもわかるように物を作ったり考えたりするのは好きだ。ソシャゲのガチャにのめり込んでしまったことからもギャンブル好きは一目瞭然だろう。
それに、ハクナには言っていないが何気に1日3回までという制限まであるのも限定感があっていい。制限がなければ何回もやってすぐ飽きたりしてしまいそうだからな。むしろ多いくらいだろう。
「じゃ早速作ってみるか」
「なんかワクワクしますね」
「あぁ、俺が出す条件は“俺にふさわしい魔術適性”だ!」
そう言って手を前に出しスキルに指示を与える。すると手元が僅かに光ったと思ったらすぐに治まり消える。
「……できたんですか?」
特に何も起きないのでハクナが問いかけてくる。思っていたのよりしょぼかったのか、これで終わり? といった感じだ。
「いや、まだだな」
そう言って俺は視界右上に目を向ける。そこには創作中のスキルや道具のリストがあり、そこのスキルの方に項目が追加されていた。
○創作中のスキル
①レクトルの魔術:0%(完成まで0/1036800)
○創作中の道具
なし
ずっと眺めていると完成までの数字が1上がった。体感時間的に約1分だ。
「これは……」
「何かわかったんですか?」
「いや、創作中のリストに追加はされたんだが、どうにもすぐにできそうにないんだよ」
そういって俺は表示パネルを可視化してスキルと同様にハクナに見えるように前に出す。
「1/1036800っていうのはすごいですね。何で増えるんですか?」
「時間だな。さっき1増えたのは大体1分だ。この世界が俺の元いた世界と同じ時間、日にち配分での1年間なら約2年に相当する」
「この世界では60分で1時間、24時間で1日、30日で1ヵ月、12ヵ月で1年間……ですね」
「5日少ないのか。ということはこの世界でのちょうど2年か……流石に待ってられないな」
そんなことを話しているとピッと数字が1増えて2になった。
「どうするんですか? また違うもう少し早くできそうなのを試してみますか?」
「いや、確かに前のが製作中でも次のは創作に入れるがここは裏技……というほどではないが、それを試そうと思う」
「裏技ですか?」
なんかさっきからハクナの会話が疑問形ばかりだな。仮にも神様なのに……。まぁ、この固有スキルに関しては仕方がないか。それほど俺の力が異質なんだろう。
「あぁ、話にも出したかも知れないがある程度は魔力で代用できるんだ。それで時間を短縮しようと思う」
そう言って俺は魔力を注いでいく。するとすごい勢いで数字が増えていくのがわかる。
「わぁ! これなら!」
「くっ、またこの虚脱感か。一気に注ぎすぎたか?」
特に気兼ねなく注いだらハクナと契約を行った時に近い虚脱感に襲われる。しかし、その甲斐もあってか創作中のスキル欄にあるパーセンテージがついに100%に到達する。
僅かに光った後、創作中の欄から項目が消え、光の球が俺の前に現れる。
「これが……新しいスキル……ですか?」
「みたいだな」
取りあえずどうしようかと手を出すとその光は幾本の筋に分かれて俺に吸収されていった。
そして俺の情報版のスキル欄に新しいスキルが追加される。
○固有スキル
・【無限湧魔】
・【我が内眠る創造の拠点】
○契約スキル
・【神術】
・【水神子の加護】
○付与スキル
・-
○スキル
・【魔術適正:無】
・【魔術適正:星】NEW




