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109 夜天の星王

あはははは、もはや何も言うまい。

あ、ちゃんと次回で3章は完結します。

(長くなったので分割しただけなので。ダイジェストで流すつもりだったのになぁ)


「なぁ、やっぱり辞退はできないのか?」

「はい。ちゃんと功績を残した者に報酬を与えないと、国としての威厳が保てないので……」

「はぁ……威厳ねぇ……」

「……国から感謝されるのに、そこまで暗い顔をされるのはレクトル様くらいです」

「そうは言ってもな……」


 レクトルは今、アシュリアに案内されて王城の中を歩いていた。創作世界(ラスティア)に戻った後、ゆっくりと休もうとしていたところで眠っていたアシュリアの侍女リスティが目を覚ましたのだ。


 そして困惑するリスティに事情を説明していたところでアシュリアが星屑の館へとやってきた。


 その目的はリスティのことだけでなく、今回の事態の把握と感謝の意を伝える為にレクトル達を王城へと招く為のものだった。


 レクトルとしても、色々やらかしてしまったことを出来ればアシュリア王女に押し付ける形で口裏を合わせたかったこともあり、それを了承した。だが、王城という場所がレクトルの忌避感を引き上げる。


 今この場にいるのは案内をしているアシュリアとその侍女リスティ、そして当のレクトル以外にはサクラとレア、リアが一緒だった。


 ベルは寄るところがあると魔王を倒したところで別れてからまだ戻ってきていなかった。それにレクトルはどこか心細さを感じつつ、王城の外へと視線を移す。


 そこには仄かな光を宿す巨大な樹の幹が聳え立っていた。レクトルは既に【夜の帳(ナイトレイド)】を解除していた為、外はまだ明るい。それでもはっきりと光って見えるのは聖樹に込められた魔力がそれほど豊潤であることを表していた。


「はぁ……」


 誰もが目を奪われる光景でありながら、自分がやらかしてしまった象徴でもあるそれを見てレクトルは再度のため息を零した。


「レクトル様は聖樹が生えた原因をご存知なのですか?」

「え?」


 その様子を見ていたアシュリアがレクトルに問いかけた。だが、レクトルは何を言っているんだ? と首を傾ける。


「知っているも何も、あれを生やしたのはアシュリア王女、あなただろう?」

「え? それはどういう――」

「着きましたよ」


 レクトルの言葉にアシュリアがその意味を問おうとした瞬間、リスティが目的の場所に到着したことを告げた。


 前に控える兵士に恭しく礼をすると、重々しい扉が開かれる。そこは王が様々な者を出迎える為の場所、謁見の間だった。


 豪勢な赤い絨毯が王が座る玉座へと続いている。その道程の両隣りには貴族か、身分の高そうな服に身を包んだ者たちが並んでいた。


 予想していたよりも仰々しい出迎えにレクトルはたじろいでいたが、一度国王とは面識がある事もあってか、なんとか前を歩くアシュリアに続いて帰りたい気持ちを抑え謁見の間へと足を踏み入れる。


「なっ!?」


 だが、結果としてレクトルはこの行動を後悔することとなる。レクトルが謁見の間へ足を踏み入れた瞬間、周りにいた者たちが一斉に屈みだしたのだ。敬意を払うその姿勢はまさに王へと向けられるものと同等のもの。


 最初、レクトルはその敬意は前を歩くアシュリアに向けられたものだと思っていた。何せ、聖樹を生み出した張本人でこの国の第三王女なのだ。


 だがアシュリア自身にはその自覚はなさそうだった。そして、その違和感が確信へと至ったのはその後の国王の言葉だった。


「来たか。ご足労感謝する。この度は大義であった。いや、違うな。そうではなかったか。デミラス、間違いはないのだな?」

「あぁ、ばばぁにも神託があったんじゃろう? 相変わらず疑り深い奴じゃのう。嘘ついて何になるぅ言うんじゃ、全く」


 一国の王に対してあっけらかんと言い放つのはセカイの意思に選ばれた冠位(クラウン)、その第八位の座にある国宝級鍛冶師、デミラス・スミス・オルフェゴールだった。


 そのデミラスの言葉にさらに不安が募るレクトル。隣にいたサクラが王城探索を邪魔されたからかデミラスに対し不機嫌に「むー」と頬を膨らませていたが、それにも気付かない。


 デミラスの言葉にざわつく謁見の間。そのざわめきは国王の取った行動によりさらに大きなものとなる。


「この度は我が国を救っていただいたこと、深く感謝する。新たな冠位(クラウン)に選ばれし者よ」

「え?」


 王が頭を下げたのだ。多くの者が見守る前で、まだ見た目十代にしか見えない少年に対して。だが、ここにその事態を騒ぎ立てる者はいない。ここにいる者は貴族や城に勤める者、騎士団に所属する者の中でも国王に深く忠義を示している者に限られていたからだ。


 だが、異常な行為であることに変わりはない。事前に聞かされてはいたが、あのような少年が? と信じられないと思う気持ちは相応にあり、様々な感情や思惑が駆け巡っていた。それがざわめきとなってこの場を満たす。


 そしてレクトルはその行動だけでなく、国王が発したその言葉の意味を遅れて理解し、思考停止に陥った。


 きっと聞き間違いだ。もしくは国王の勘違いだと自身に【魔力解析(アナライズ)】を実行する。そして知ることとなる。この場に招かれた本当の意味を。しでかしてしまった事の重大さを。


(なっ……!)


 表示された内容に、レクトルは国王の前だということも忘れて頭を抱えた。国王に言葉を返すこともなく、ただただ自身の能力値(ステータス)を何度も凝視する。


 そこには次のように表示されていた。


○名前:レクトル・ステラマーレ 人族 16歳 ♂

○称号:“異世界の旅人”、“セカイに選ばれし者”、“水神子の契約者”、“魔王の主”、“天使の契約者”、“魔王を超える者”、“冠位第一位”、“星王”、“夜の支配者”

○Rank:U(1)

○状態:正常

○ステータス:

 ・体力:156/156

 ・魔力:999,999,999-(33%)/999,999,999

 ・筋力:22

 ・守力:19

 ・理力:1,871

 ・護力:53

 ・速力:714


 相変わらず能力値(ステータス)の一部がおかしい事になっている事や微妙に状態など、表示されている項目が増えている事などはレクトルにはどうでもよかった。それらに関しては今さらだったが、問題となるのはいつの間にか増えていたいくつかの称号だった。


「冠位……第一位!? 星王!?」

「その様子だと、お主は把握しておらんかったようだな。しかし、まさか第一位とは……」


 立ち上がった国王はレクトルが呟いた言葉に驚きを露わにする。同じ冠位(クラウン)の座にあるデミラスやアルトフェリアの数々の未来を占ってきたお抱えの占術師、老エルフのカセンカトラに事前に話を聞かされていたとしても信じられなかったのだ。


 確かに魔王や天使を仲間にするという異常な側面を持っているとはいえ、レクトルがまさかまだ世界に3人しか確認されていない冠位(クラウン)であるとは思えなかった。


 それは見た目が大きく影響を与えていたと言ってもいいだろう。何せ、現在確認されている冠位(クラウン)に選ばれた者はここにいる存在感なら右に出る者はいないであろう国宝級鍛冶師“壊臣”デミラスに帝国の現皇帝“閃帝”シャルディア、そしてエルフの森に住まう深緑の巫女“緑主”ルティアルンなのだ。


 誰もが各種族の中でも身分が高く、有名な者が選ばれていた。閃帝(シャルディア)緑主(ルティアルン)も若いとはいえ20代は超えて成人もしている。誰もが認める実績を誇り、疑う者などいない。


 だが、今国王の目の前にいるレクトルは今まで表舞台に出てきたことはなかった。つい数日までは聞いた事も無かった名前。当然、実績も何もない。


 少し見た目に反して大人びてはいるが、それだけ。人族であることに変わりはなかった。その事はアシュリアにも確認し、真実だと判明していた。


 それがデミラスや、かのシャルディア皇帝すら上回る冠位の第一位。今回の魔王の件で選ばれたというのであれば、既に魔王を倒したことのある勇者リサが選ばれていない説明ができない。


「ふむ。混乱しているな。お主にはいくつか聞きたいこともあったのだが、場を改めた方がよさそうだな」

「そう……ですね。できれば、人は少ない方がいいです」

「そうか。すまぬな。流石に今回のこととなると隠し通すことはできなんだ。目撃者も多い。ここにいる者たちなら信頼できるが、かといって話だけでは納得させられぬのでな」

「事情はわかります。ですが……できれば秘密にしていただきたい……です」

「やはりそうか」


 レクトルは事態がまだ飲み込めたわけではなかったが、なんとか言葉を絞り出す。このままいけば新たな冠位(クラウン)として祭り上げられる可能性が高かったからだ。


 当初の目的も果たせていない。それどころか、魔王討伐や街を救った英雄という扱いどころではない、さらなる副産物までこのままでは押し付けられてしまいそうだった。


 そうなる前にと、少しでも抵抗を試みる。


「はい……。魔王に関しては彼女たち……勇者の仲間の方々が倒しました。この王城を覆う聖樹に関してはアシュリア王女の力です。私ではありません。街の住民を癒した光もその聖樹によるものです」

「なっ、待つのだ、それは……!」

「え? 私ですか!?」


 レクトルの言葉に、今度は国王が驚きレクトルの言葉を制しようと口をはさむが、時既に遅かった。「アシュリア王女殿下が?」「これもあの力の一つなのか?」とさらにざわめきは大きくなる。


 その言葉に、国王やアシュリアだけでなく、レクトルの後ろに控えていたレアやリアも困惑していたが、主に口をはさむことはなかった。


 被害はかなりのものになっていたが、最後に街中を覆った虹色に揺らめく光が齎す奇跡に既に死んでいる者以外は全て怪我は完治していた。それは何も今回の魔王襲撃で負った怪我だけにとどまらなかった。


 過去に身体の一部を失っていた者も、持病を抱え寝たきりだった者も、生まれた時から障害を抱えていた者も、その全てがすべからく完全に治っていた。まさに奇跡の所業。


 今なお被害からそう時間が経っていないにも関わらずこうして彼らが集まっていられるのも、後は建物などの損壊や住処を失った者に対してのこれからの生活の保障、街の障壁についてなど、事後処理に関するものがほとんどだからだった。


 今はとにかく情報を集め、今後の方針を定める。この場は情報収集という意味ではこれ以上ないものだった。


 だが、国王はレクトルの事に関してはある程度公にしなければこの事態を収拾できないと思っていたが、アシュリアの新たな力に関しては公開するつもりはなかった。


 なんとかレクトル側に聖樹の扱いに関しては委ねられないかと考えていたのだ。その為に冠位に選ばれた者であることをこの場にいる者には事前に説明した。後の事をスムーズに進める為に。だが、レクトルに先手を打たれたことでそれが破綻した。


 とはいえ、先にレクトルのことを明かしてしまっている為、国王には文句を言うこともできない。


 当のアシュリアは自分の力でありながら一切自覚していなかった為に、急に話を振られ困惑気味だった。


「ふぅ、仕方ない。詳細については後日追って通達する。この忙しい時に集まってもらえたこと感謝する。既に脅威は去った。各自被害の把握と問題の解決にあたってくれ。こちらも出来る限りの援助はするつもりだ」


 国王が告げると、周囲にいた貴族の者たちは一様に頷きを返した。だが、ただ一人、手を挙げる者がいた。


「少し、いいだろうか」

「ソルシュタリア公爵……」


 発言の許可を求める者を見て、国王の隣にいたルフェウスがその名を呟いた。それを見て国王に視線を移す。


 赤いちぢれ毛を後ろ手に纏めている発言者、リディーク・アル・ソルシュタリアはこの国の軍部を主に任されている公爵だった。感情の変動が少なく、時には冷酷に情勢を見極め無情ともいえる決断を下す。


 いつも不機嫌そうな表情をしているが、それは国を思って常に頭を働かせているためだと彼を知る者はみな理解していた。そこには無論国王も含まれている。故に、咎めることはしない。


「かまわぬ」

「ありがとうございます、国王陛下。では……」


 王の許可を得たソルシュタリアはその鋭い視線をレクトルへと向けた。その圧にレクトルはビクリとその身体を震わせる。


「私が聞きたいのは一つだけだ、少年。この国は好きか?」

「へ?」


 思いがけない質問の内容に、レクトルは間抜けな声を発してしまう。質問の意図がわからず、ソルシュタリアの顔をじっと見つめる。


「好きかと問うている。難しい質問ではないだろう」

「は、はぁ。まだこの街に来て数日なので好きかどうかはわかりませんが……その、悪くないと、思います」

「ふむ」


 実際、レクトルがこの国、街でしたことと言えばちょっとした買い物と王城の見学程度だった。それだけでは好きかどうかの判断もできない。だが、始めて来た異世界での大きな街。またゆっくりと見て回りたいとも思っていた。


 その言葉を受けたソルシュタリアはちらっと、アシュリアに視線を移す。その意図を察したアシュリアはレクトルの言葉に偽りはないということを示す為にコクリと頷きを返した。


「そうか。ならば、ぜひともゆっくりしていってくれたまえ。今は魔王の襲撃に遭い、復興作業に追われている事だろうが、君のお眼鏡に叶う場所もきっとあるだろう」

「は、はぁ」

「名は何と言う」

「え?」


 そこでレクトルはまだ名乗っていないことに気付いた。普段であれば最初に名乗りを上げるべきものなのだろうが、レクトルは異世界の常識はまだ身につけている最中だった。それに、今回は国王より突如告げられた爆弾でそれどころではなかったのだ。


「あ、申し遅れました。わたくしはレクトル・ステラマーレと申します」

「レクトル……ふむ、やはり知らぬ名だな。恩寵もなしとは。隣の君は?」

「え? サクラだよ?」

「お、おいっ」


 敬語もなくレクトルたちと接する時と同じように貴族相手に名乗るサクラにレクトルは慌てるが、国王同様にソルシュタリアには気にした様子はない。


 視線はすぐに後ろにいたレアたちに向かっていた。それを受けて一瞬迷い視線を彷徨わせたレアだったが、ここで無視するわけにもいかず覚悟を決め、名を告げた。


「レア・ファレル・シルミアです」

「リア・ファレル・シルミア……」


 ペコリと頭を下げるレアとリア。その名を聞いた瞬間、謁見の間をかつてないざわめきが襲った。事前に知らされてすらいない内容だったのだ。国王も彼女たちがついてくるとは思っていなかった。


 「あのシルミア王国の!?」「生きていたのか!」と飛び交う驚きの言葉は鎮まる気配がない。


 レアたちに向けられる視線には様々な思惑が込められていた。レクトルも自身のことでいっぱいでそこまで気が回っていなかった。しまったと思う頃にはもう遅かった。


「はぁ、悪いが彼女たちの事はそっとしておいてもらいたい」

「やはり、国王陛下は知っておられたのですか」

「無論だ」


 名のりを聞いても表情を変えなかったソルシュタリアが国王に問いかける。その様子にこちらが本題だったかと国王はため息をついた。


「よろしいのですか?」

「それを彼女たちが望んでいる。アシュリアもな。それに、今となっては冠位(クラウン)の庇護下にあるのだ。これ以上の安全はあるまいて」

「アシュリア王女殿下が……そういうことであれば、私もその意を汲みましょう」

「ここでの事は内密に頼む。他の者も同じだ。彼はアシュリアの命の恩人であり、この国の救世主なのだ。彼はあまり目立つことを嫌うようなのでな」


 国王が周囲を見渡すと、戸惑いながらもみな頷きを返す。それを見て国王も一息つき、レクトル達に視線を移す。


「うむ。では、お主たちにはもう少し時間をいただきたい。構わないか?」

「はい」

「では、リスティ。彼らを……そうだな、鳳凰の間へ案内を」

「かしこまりました」


 国王が示した場所は前回レクトルが初めて国王と会談した場所と同じ部屋だった。


 レクトルはその道中の間に今後の方針を定めるべく頭を動かしていた。だが、まだ飲み込めない事態に頭がついていかず……


(あの時、ベルが目を丸くしていたのはこの事に気付いたからか。まさか俺が冠位になったから離れたとか、そういうわけじゃないよな?)


 などと考えに集中できず、心配は別方向へと流れていっていた。


次回2/24更新予定


そういえば、先日バレンタインがありましたね。

親戚の子が友達にあげるチョコづくりにいくつか失敗して

その解決策が「友達を減らしたらいい」という言葉に久々に大笑いしましたw


その程度で友達でなくなる友達……それって友達なのでしょうか?

まぁ、今後の付き合いをなくすわけではなくあくまであげるかどうかだけみたいですが、

誰の分を減らすかを考えているところを見ていると……なんとも言えない気持ちになりました。

そもそも材料や作る時間がギリギリなのが原因なんですけどね。

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