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船長ドリオン 超越者ドクベー ②

出会い。人が人と、人が物と、人が場所と。


それは時に運命づけられたような物かもしれない。


その人に出会わなければその道に進むことはなく、その場所に行かなければ


そういう結末を迎えなかったかもしれない。そう感じる事は大大にしてあるもの。


その星の技術はそういった出会いの果てにもたらされた物。


その文明のある学者が予想だにしなかった物質と、エネルギーの結びつきを発見し


その星を越えて生命の移動を可能にした技術。それが「圧縮」だった。


その星の技術自体、特殊なものが多く、鉄以上の硬度、耐久性を持ち加工もしやすい鉱物。


硬いのになめらかであらゆる状況に耐える物質。様々なエネルギー開発。


その集大成のように確立できた技術が「圧縮」だった。


特殊な加工を施した物質でその対象に圧縮をかけると、その対象をそのままの状態で


サイズそのものだけを小さくすることができる。


完成までには幾度となく失敗はあった。圧縮による圧壊。


圧縮する物体の強度に負けてのエネルギーの逆流。それらの失敗を経て完成させた圧縮技術。


物体の形状、重量、密度、をそのままにその物体そのものの時間に圧縮をかけるように。


もちろん圧縮できる際限はある。その限度を超えるとやはり事故が起きる。が、


その圧縮するものが手に取れぬエネルギーにまで及ぶにはさして時間がかからなかった。


エネルギーを圧縮、維持固定させることで重量のない


ケーブル状のエネルギーケーブルの開発によって


さらなる文明の進歩を果たしたその星の名は「イイモデッド」


母星イイモデッドよりその銀河は宇宙開発の一歩は始まった。


バチィン!バチィン!バチィン!バチィン!・・・。


絶え間なく襲ってくるエネルギーの光弾を拳で弾き続けるドクベー。


『おそらく無制限だな。あのコートに相当多くエネルギーパックが入ってるだろう。


あいつならあのコートを着たままであの重量系バズーカを片手で


撃ちながらパックの交換ができるだろう』


迫る光弾を弾く衝撃で目の前は光が眩しくて見えない。が、絶え間なく撃ってくる以上、


ドリオンは目の前にいると確信している。


弾かれた光弾は高いところから地面に落とした水のように無軌道にドクベーの前方側に飛んでいく。


その流れ弾がたまに船員たちのいる場所まで飛んでくる。


「あのバズーカ、あんなに連射できるもんじゃないのに・・・。


というかそもそも砲座ありきの代物だぞ」


「船長の戦闘を見たことあるのって?ディオンあるか?」


「いや、俺が補佐についてからはもう司令職一本だった。その前も覚えはない」


「あんなに強かったのか・・・おっと!ここもやばそうだな。もう少し下がったほうがよくないか?」


「そうしよう、もう100mさがれば範囲外だろう」


エンジンがかかりっぱなしのトラックがそのまま100mほど下がる船員の場所からは


戦っている二人がかろうじて見える距離ほど距離になった。


『やっとさがったか・・・まだちょっと不安だがまあいいだろう』


ドリオンは新しいパックを取り出しバズーカに装填しなおす。前のパックはそのまま下に落としている。


足元にはパックの山が出来ていた。


『?・・・少し角度が動いたか?動く気だな? そうか、あいつらに距離を取らせたからか・・・


他人の心配とは、気に入らん死刑囚だな』


ドクベーは連射してくる光弾が少し右にずれはじめてきていることに気づく。タイミングを見計らい


躱して離脱し接近してやろう。そう決めて腰を少し固める。その直後。


ドドドドドドドド!


襲う光弾の量が増えた。


『うぐ!これは』


ドクベーは躱そうと決めた矢先、右に角度のずれた光弾に集中してしまった事で見事に虚をつかれた。


弾く衝撃でドクベーの目の前は相変わらず光一色。右にずれた角度はほんのわずかだった。


しかしその角度を見抜いてすぐ相手の策を見抜こうとする事をドリオンは読んでいた。


ドリオンは重量系のバズーカとは違う少し小型サイズながら、それでも大きな光弾発射型の銃を


取り出していた。それも台座ごと。


角度がずれたのはそれを取り出し設置するためだったのだ。


作業しながらも打ち続けるその安定感は見ている人間の気持ちを唖然とさせた。


「キャリーガンセッティングしながら・・・いやあのバズーカ撃ちながら


なんでセッティングできるんだあの人?」


「ひょっとして、戦車とか出てきません。。。よね?」


「ありうるな・・・このままだと・・・」


船員の会話に呆れが混ざってきた。目の前の光景はとても死刑囚の死刑執行ではない。


ただの人外同士の喧嘩にしか見えない。


この星にも軍はある。この場合、星自体には統一国家が敷かれているので存在するのは


各自治国の防衛や他の星や、反抗勢力組織からの防衛が主な役割である。


あのバズーカであれキャリーガンと呼ばれたものであれ、


その軍の小隊が数人で扱う兵器である。その一式を一人で扱っているドリオン。


その攻撃を生身(?)の拳で弾き飛ばし続けているドクベー。


表現するなら、広すぎる空き地で少し離れすぎてる二人が


バッティングの練習をしているような光景だ。


ただ、ピッチャーは無限に投げ続け、バッターは打ち漏らしはないが


打ち返している弾に方向性はない。そんな中、ドリオンはバズーカの手を止める。


キャリーガンの連射は絶え間なく続いているが。


「ん?」


手が空いた時間、光弾の雨は激しさをなくす。キャリーガンの連射だけは続いている。


ドクベーの目の前はバズーカの大きな光弾の弾いた衝撃による光の破裂はなくなりはしたが


キャリーガンからの光弾の連射を弾く衝撃の光だけになり若干前方を視認できるようになった。


動こうとしたドクベーだったが踏み出した一歩にキャリーガンからの光弾もついてきた。


「くそ!照準固定されてるか」


バズーカの弾の連射は片手ながら一発一発を確かに弾かなければならなかった。が、


キャリーガンからの光弾はバズーカほどの威力はなく片手で受け続けることができる。


一気に距離を詰めようとしたが自動連射な上、自分を常に狙ってくる。これでは動けない。


一発の威力は、無理をすれば距離を詰められようが、それでもその連射量はあなどれない。


『あいつ・・・やはり生きる気か・・・』


ドクベーの心にふと不安でありながら寂しさもある。そんな気持ちを抱かせた。


この星の死刑は死刑囚に死刑を宣した瞬間から、誰にでもその死刑囚を殺していい権利が発生する。


が、特定の人間が、死刑執行の宣言をした場合、その執行者以外の者は


もう手を出すことはできなくなってしまう。しかし、誰でも宣言すればいいわけではなく、


死刑囚本人に、面と向かい、約1時間誰にも近寄らせず後、宣言できた者に限られる。


そして、その執行者が、執行中に万が一、「事故」で執行できなくなった場合、死刑囚は放免される。


船員の考えは、そこにいきついていた。それにドクベーも気づいたのだ。


そしてドクベーはその気づきを、次の光景を目の当たりにして確信に変えた。


ドスン


「っふ~。これでよし」


それはかつて第八探査艇からモブリー達が離脱しようとしたさい、探査艇の内部から取り外した


大きな箱上の物体に似ていた。そしてその物体から数本ケーブルが伸びており、


一本の先にはキャリーガン。もう一本は肩に担いだバズーカに。


「あいつ・・・あんなものまで・・・くそ!」


ドクベーの不安が汗となって頬を伝った途端再び大きな光弾の雨が襲ってきた。


「あの人・・・いや本当に人か?地上だぞ!あんなの持てる人類がいるわけねえ!!」


「肉体強化の限界に、補強パーツつけてもコートは着れるらしいがあれを一人で持てるわけがない」


「聞いただけだがコートから出ただけでその部分重量が発生すると言われてる・・・。


あの人今、普通に取り出しきったよな・・・?」


「船長すごい!勝つ気なんだ!すごい!すごい!!」


再び激しさを増した襲い来る光弾の嵐。ドクベーの目の前はまた光一色。


荷物を取り出しセッティングし終えたドリオンは再びバズーカを向け直しドクベーに撃ちまくる。


もうパックの交換はしていない。それでもバズーカのエネルギーはきれない。


セッティングした荷物はエネルギージェネレータ。第八探査艇に取り付けてあった探査艇の心臓。


それと同じ物である。


一宇宙探査艇のエネルギーを賄えるものを武器のエネルギーに使う。


この発想も出会えたものだからこそできる作戦。


彼は死ぬためにこの場所に趣いたのではなかった。


ドクベーはその光弾の嵐の前にこの日初めて膝を折った。

単調な戦闘ですが「必要だな」と思ったものができちゃうと

書かなきゃ!と思ってしまいます。難しい。

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