船長ドリオン 超越者ドクベー ①
かつてその星の人類は絶滅の危機にあった。
正体不明の植物の群体が地表から生まれだしそれまで築き上げた文明を生命ごと飲み込んでいった。
その星にあった10の都市国家、110億ほどいた人類も1都市の中に1億人を割る人口にまで減らされ
その星はその植物の色一色に染まりかけた。
イイモデッド星系の銀河はほぼ人類のいる星星同士で航行する技術を持っていたが
その技術の有する文明の強さをもってしてもその星に侵略してきた植物に対抗できなかった。
イイモデッド星系、第4惑星シナニクトは移住の星であった。
その星の移住した人類の歴史1000年を間近に迎える直前の出来事。
その絶滅の危機を回避した奇跡はその星の人類にとって記念すべき一歩となった。
「それが今から500年前だったか?」
超越者ドクベーはドリオンに背を向け辺りを眺めながら言う。
「思い出したが・・・ここだったか?お前に助けられたのは・・・?」
「いや、ここはお前の海だった。あれはナーセルの荒野だ。全然違う」
「そうか」
頭を掻きながら向き直る。男同士の距離は2mほど。
「よりによったもんだな。お前に助けられた俺がお前を殺すことになるとは・・・」
「そういうもんだろ。人の一生なんてな」
ドリオンはコートの中の何かを一通り確認し終えたのか、襟を正し姿勢を伸ばし
ドクベーとまっすぐ対峙する。
「これより!死刑囚ドリオンの死刑を執行する!!」
離れた船員たちに聞こえるように大声でドクベーが宣誓する。
船員たちのみならずさらに外の外野の追跡者だった者たちは望遠カメラや集音装置で映像や
音声を余すことなく記録しようと待ち構えていた。
船員たちは涙目。その対照的、とは言えない固く緊張した表情で見守る追跡者たち。
彼らはただ船長ドリオンが、どう抵抗しようとも
超越者ドクベーの攻撃に処断されるだけ。そう考えていた。
超越者ドクベー。彼のこの星での記録は500年前から存在した。
出身や生い立ちはほとんど不明ながら、能力やは公表済み。
長寿の生命体ながら一番特徴的なのは・・・次元を超えることを許された者だということ。
このイイモデッド星系は自分たちの銀河を超えて活動してはならない事を宇宙法で定められていた。
そもそもその銀河自体も広大で星星の生命体の管理だけでも精一杯なので
それ以上の記録はたとえデータとして保管しようともそれを纏めようとする者がいないのである。
それでもせめて自分の銀河内の事はいろいろ調べようという試みが探査旅団だったり、
そのほかの存在である。しかし、ごく少数例だが、規格外の強さ、生命体としての超寿命、
意思の疎通ができて、冷静な人格を持つことができる存在が現れる時がある。
恐るべき強さを単独で有しながらその強さを無造作に振るうことのない人格を持つ
その存在をある意味、有効に利用し、共存しようと、お互いの納得のもと
その星系での行動を許されるもの。それが超越者である。
彼らはその銀河系を超えることを許されている理由の一つの強さの中に
ある条件が整った時、次元の壁を超えて別の次元に行くことができる。というのがある。
超越者が次元を超えた証拠の中に、目撃証拠はない。が、超越者の持ってきたものや
付着していたものは時としてその星系の文明では理解できないものや、存在しないものだったりする。
本人からの報告書も、とても模倣や試行できるような行動ではないため。
彼の存在そのものを特例として法で定めたのだ。
その強さや功績から、かたや英雄視されるが、時にやりすぎてしまい、生命未確認の星を
破壊してしまったり、記録も残せない状況を生んだりと破壊神だの、
疫病神的な思われ方もされているが、共通しているのは規格外の強さを持っている事だ。
そんな生命体と向き合うことは逃げられぬ死を現しているようなもの。
目の前の死刑囚一人殺すことなど子供にデコピンをするようなものだ。と誰もが感じていた。
ドクベーの拳が持ち上がる。
『やる気だ』
誰もが映像を、その光景を見て思った。
「船ちょ・・・」
ッゴアァン!!
巨大な鉄の塊が平面同士で正面衝突したような音が響き渡る。
集音装置からの増幅音を一番近くで聞いていた者は耳を塞ぐまもなく失神した。
それは多くが追跡者だった。船員たちは集音装置を切っていた。
音がする直前のドクベーの叫び声で、おおよその音が聞こえると判断したためだった。
船員たちはカメラ越しでなくそれぞれの目で船長の最後を見届けようと
敬礼をしながら見守っていた。その時気持ちに耐え切れずディオンが叫びかけた時、それは起こった。
持ち上がったドクベーの拳に同じようにドリオンは拳を持ち上げて合わせた。ただそれだけだった。
その音に合っているほどの衝撃を二人が受け双方の反対側にそれぞれを弾き飛ばした。
「お前らぁ!もっと離れてろぉ!!」
コートを開き内側からとてもそのコートに入らないだろうサイズの
バズーカのような武器を取り出すドリオンが船員に叫ぶ。
ディオンがいち早く状況を理解した。
「ハンカー!壁になってくれ!バリアを展開しながら撤収準備。
集音器はいらないがモニターはしておけ!みんな早く乗れ!」
大柄な男ハンカーがトラックの前に立ちふさがる形になる。直後男の前にガラスのように
透明に光る何かが広がる。直後に
バアァァン!!
「うぐ」
強化アクリルの防護盾に巨大な岩石が落ちてきたような感覚を覚えたハンカー。
10数メートル離れていた当事者二人は、片やバズーを発射し、片やバズーカから発射された
その物体には見えない光の帯のようなエネルギーを異常に伸びた拳で受け止める。
その衝撃波が80mほど離れたハンカーのバリアに届いたのである。
「船長・・・マジか・・・」
信じられない光景と言わんばかりにトラックに乗る動作を止めて見つめる者たち。
それでもふと気づきトラックに乗り込み始める所は船員たちの矜持だ。
「あれ・・・本当だったのか・・・」
運転席についていたディオンはハンドルに突っ伏しながらつぶやく。
聞こえた者はいない。ディオンは知っていた。が、聞いたことがあるという感覚だった。
船長ドリオンの年齢は公表されている範囲では300歳過ぎ。
その星では高齢ながら現役で重労働出来る年齢だ。
その星の平均寿命は約500歳。この長寿もまた、彼らの生死感の薄い要因の一つでもある。
その星の環境に適応するための進化、適応しなおかつ快適に活動するための肉体改造の半義務化。
改造といっても極端な変異でなく、その個体の人格に合った肉体改善程度の薬物なり
器具装置の着装なりである。
その肉体改造をドリオンは最高レベルで施されているということを。ディオンは聞いていた。
それは組織運営する上で結びついた管理組織からの連絡からだった。
それがそのつぶやいた言葉の引き金、あのバズーカを取り出したコートだった。
船長のいま着用しているコートは特殊空間を内蔵しており、コートの内側にコートの
ポケット枠のサイズに入るものならどんな物質も入れておくことができる。
簡単に言うと大きめの4次元内ポケット付きコートである。
しかし物体を収納するには、コートの機能を常時稼動させておく必要が有り、
そのコートにはその能力上、高密度の有害な電磁波が常に発生する稼働部が有り、
その星の種族であろうと、10分も着用してはいられない代物だ。
さらにそのコートは外見は普通のコートながら機能を稼働させた上での着用者の体感重量は
数10トンだという。そのコートを着た人物の体重は何も変わらないが、
来ている人間にかかる負荷は中に収納する物体の重量関係なく、数10トンクラスの負荷がかかる。
どれほどの肉体改造を施せばあのコートを着ることができるのか?その疑問にディオンの思考が
差し掛かった時、ふいに以前あった酒飲み話を思い出した。
ディオンはある調査終了後の打ち上げで、幹部連での輪の中でこんな話を聞いた。
そこにはモブリーもいた。
「船長に腕相撲で勝てなかった奴っているか?」
切り出したのがモブリーだった。
「いないだろ?ビアンの後輩の・・・あれ?なんだっけ?」
「ヘイロだ。俺のに乗ってる。あの子も勝ったっていてったな」
第3探査艇のキャプテンが言う。
「・・・でさ、惑星ガスロンのアステロイドの岩塊壊せるやつっているか?」
「俺の探査艇ならランク5位のならいける」
「うちもだな。シナーナの出力次第ならもうちょっとデカくてもいけそうかな?」
「・・・話の流れからすると・・・船長か?」
「俺の田舎がガスロンなんだけどな?昔星を取り巻いてるアステロイドに
引力変動があって一時期、岩塊郡が地表に降ったことがあったんだってよ」
「ガスロンのダチにウワサは聞いたことある!あのケッキン湖あたりだろ?」
「こないだ里帰りした時にな。おふくろが言ってたんだ。「勇者様は元気か?って」」
「勇者?それ船長のことか?」
「意味わかんなかったから聞き返したよ。勇者って誰のこと?って。そしたら
「自分の上司のことも知らないのかお前!あの人がいなきゃ今頃この星は
なかったかもしれないんだよ!」ってな。俺の上司は基本パシーさんだろ?
パシーさんが勇者?って返したら「呆れた・・・グランさんのこと本当に知らないんだね」
ってよ。確かグランって名前って船長から聞いた事あるんだよな」
「うちの組織にはグランという名前はいないよな。あ、次何飲む?」
「コーダを人数分頼んでくれ。つまみも適当にな。そういやさっきの腕相撲、
お前が毎回切り出したよな?」
「まぁお前に手首壊されたけどな俺・・・」
「要するにそのグランが船長ではないか?その証拠に腕相撲の強さを?か?
俺の知ってるのでは船長はドリアン以前にも名前はあったらしい事かな?」
「それがグランなんじゃね?」
「あああ~?なんださっきから人の名前を口々に~?捨てた名前なんだからほっといてくれよ~!」
モブリーとハンカーにドリオンが酒の臭いの塊になったような臭気をまとっておぶさってきた。
「おわあ!」
「あーあーあー、船長、飲みすぎてるな・・・っていうか本当だったのか?」
「せ、船長、昔ガスロンでアステロイド防いでくれたんですか?」
「はあ?ガスロン?ああ、あのプールいいアイデアだろ~?
陸の星だから水貯めるのにちょうどよかったな~」
「はは、あの湖プール感覚だったのか・・・。じゃ、やっぱさっきの腕相撲手ぇ抜いてたんですか?」
「船長お!それはないですよ!やっぱ強いんじゃないですか!もっかい本気でやってくださいよ~」
「ハァンカー!お前は十分強い!砲射手のジャミン、防盾のハンカー、
この二枚看板があれば俺ぁじゅうぶんだ!冒険家にはこれ以上の強さはいらないよわははは」
「船長~・・・寝たか・・・はあ」
「船長?呼びましたか?」
気持ちよく二人の上で転がって仰向けになったところでで寝息を立て始めたドリオン。
モブリーは這い出るように横に手を伸ばして届いたゴーあのジョッキを掴んだ。
実際這い出るつもりはないようだ。
ハンカーはモブリーとの体格からの高低差をなくすように船長を起こさないように体勢を変えながら
モブリーのように届いたゴーアのジョッキからちびりちびりため息混じりに飲んでいた。
その背後からビアンにしがみつかれながら冷静なジャミン。彼もそこそこ飲んでいるが
この星のアルコールに似た成分が効かない体質なのである。
「ジャミンか、ちょうどよかった。ハンカーと一緒に船長を部屋に運んでくれないか?」
ディオンがテーブルの空いた皿やグラスをまとめながらジャミンに頼む。
「あ、はい。ビアン、ちょっと離してくれ」
「いーや!今私はジャミンの一部なの!この力馬鹿が痛めつけてくれたおかげで
私はジャミンになれたの~!」
ハンカーの背中を足でぐりぐりするビアン。
「おーこわ!俺がこんなのやったら半殺しだ!」
「あれ?今思い出したけどそういやモブリーの所にグランっていなかったっけ?」
「あいつはグレンだ。ああ!あいつならお前といい勝負できたのかもな!」
「同じ種族っぽいしな。今度勝負してみるか。でも違うのか・・・。
じゃぁとりあえず船長運んでくるわ」
そう言いながらジョッキに入っていた8割ほどのゴーアを4回喉を鳴らして飲み干し
船長の手を肩に回しながら立ち上がる。酔いにふらついたがモブリーが両手で支える。
「お、すまないな。じゃいってくる。もしかしたらそのまま帰るから。お疲れ様って言っておくな」
「ああ、お疲れ様!また仕事でな」
ハンカーとジャミンが船長の両脇を支え、調子に乗っていたビアンも
いつの間にかジャミンと離れてハンカーの前の邪魔なものをどかすような事をやっている。
ビアンの気配りをハンカーは知っている。
「船長おかえりでーす!」
「「「お疲れ様ー!」」」
どこぞのサークルの飲み会のような光景。ディオン回想はここで終わった。
「ディオン乗ったぞ!出してくれ!」
回想にふけっていたディオンだったがちゃんと周りは警戒していた。ハンカーの声とほぼ同時に
トラックは二人から離れてゆく。
その間もドリオンのバズーカは連射を繰り返す。
それぞれのエネルギーの塊にムラがあるのか極端に小さいものはないが
不揃いな大きさの光弾がドクベーめがけて一直線に並ぶようにぶつかってゆく。
ドクベーはその一つ一つを丁寧に見えるほど全て砕き散らしながら
その発射元の方向にゆっくりと進んでゆく。
超越者の規格外の強靭な肉体だが、実際その光弾の直撃をうけているその拳は
徐々にひび割れながら皮の一枚一枚が剥ぎ取られていっている。
そこに見える皮膚は・・・植物のように見えた。
バトル物って文章にすると難しいですね。
そもそもが文章力のない文なので読みづらいと思います。
すいません。
内容(設定)も深く考えると引っ掛かりに迷います。