キッカケ
「 ミ ツ ケ タ 。」
宇宙の片隅、全てを飲み込んできたサルガッソーの中心で、ひとりの男が耳にした声。
その声がした瞬間、同じタイミングで、ある銀河の惑星の、ある場所である変化が起きていた。
「いっ・・・つ・・・。」
「先生!熊田が・・・!。」
昼下がりのとある校庭、体操服に身を包んだ学生が校舎を含めた外周を走っていた。
「どうした?熊田?なに?あの牛乳か?」
勘違いなのかボケなのか?友人らしき一番近くにいる生徒が倒れた少年を叩きながら言う。
ぞろぞろ集まってくる生徒、校庭の右隅あたりでのできごと。
「ああ、いいからいいから、みんなはそのまま走れ。おい、熊田、熊田ぁ。」
先生らしき大柄な男が集まった生徒を散らしながら少年に近づく。数回よんで揺すって何かに気づいた。
「おい、気を失ってるぞ?なんかしたか?」
「え?知りませんよ!一緒に走ってたら急に倒れて・・・ビックリしたんですよ。」
「だよな・・・俺はまたふざけてんのかと思って見てたし。保健委員、保健室から担架もってこい。」
散らした生徒以外ちらほら集まっている、熊田の友人、先生、幾人かの野次馬生徒の中にいた保健委員。
その保健委員が2人、保健室へ向けてその集まりから出て行った。ほかの生徒、
友人は心配そうにしながらもマラソンの続きに戻っていった。
そんな出来事があった惑星から数字にすると気の遠くなるくらい
桁を並べるほどの距離にあるサルガッソーの探査活動の最中である旗艦シナーナの中では・・・。
「モブリー、お前は本当にモブリーなのか?第八は今どうなっているんだ?」
通信士は焦りながら返信に返信している。
「ダイン、交信は私がやろう。管理とともに情報の分析を頼む。」
「・・・了解。」
通信士ダインは交信のホストを船長に切り替えて別作業に移った。
気持ちの切り替えはそうそうできないという表情で・・・。
「モブリー。私だ。お前は生きているんだな?」
「・・・あなたは誰だ?」
この返信に一同が一斉に緊張した表情で船長を見る。
「・・・各探査艇に撤収命令、その直後カノン砲の準備・・・」
「あああっと!船長!待ってください!!待った待った待った!!」
さっきまでとは全く違うトーンで焦った口調で返信が返ってきた。
「船長今、最大主砲の準備しようとしましたよね?やめてくださいよ!
まだ記録送ってないんだから!!」
その返信の口調は明らかに船内、各探査艇の乗員が知るそのモブリーという男の声色だった。
”モブリーは生きていた”
誰もがその事実に安堵した。その犠牲となった他の隊員、その隊員と友人関係であった
乗員達には割り切れない部分もあろうが、生存者がいた事そのものは嬉しい。
それがその時の全員の気持ちだった。
「モブリー、やはり生きていたのか。第八が全壊したのは知っている。」
「はい、我々はサルガッソー最奥部付近まで到達し、その先にある発光体を確認。
その発光体の詳しい情報のため隊員同士でのさらなる調査を敢行。
探査艇を放棄しビームシステムを外し、スーツそのものにエナジーブーストをつけて
超重力場の中を突き進みました。他の隊員はその時に・・・。」
「なんでおまえらはそう勝手に判断するのかね・・・。」
「すいません。探検家ですからね。俺も、あいつらも。
で、ですが、私一人になった段階でサルガッソーの中心核に到達しました。」
船内がどよめき立つ。
「サッルガッソーの中心核だと?そこがそうなのか?」
船長の声も興奮してきた。
「ダイン、第八のシステムがある距離は?」
「旗艦から40000000トルです。こちらのケーブル出力最大距離ですね。すごいな、あいつ。」
「受信側のほうも記録や交信以外の部分でオーバーチャージできるようにしてましたし、
遮蔽されなかったのも大きかったと思われます。」
「そもそも、規格以外の手のつけ方(改造)ってマズかったんじゃないか?」
「しょうがないんだよ。とかく俺らみたいな無茶するしかない事が多いと改造しなきゃ・・・」
ゲフンゲフン!!
ダインの報告でさらにどよめいた周りからちらほらと会話がしだした。それを咳払いで船長が鎮める。
「ともかく最奥部に到達するという偉業は素晴らしいことだ。この偉業のために命をかけてくれた
第八探査艇の乗員たちに多大な感謝と追悼を送る。モブリー、君もよかったら黙祷して欲しい。」
「あー・・・それなんですがね?実は・・・俺死んでるんですよ。」
「ん???」
あたりがまた別の雰囲気でどよめき出す。
「何を言ってるんだ?」
「最初に交信始めたときに違和感ありましたよね?
その時感じた最悪の事態を思って主砲撃とうとしましたよね?」
一同がはっと気づく。最初に来た交信のトーンは今とは比べられないほど低かった。
決定的だったのは船長を誰だ?と聞き返した事だ。
「理解できないとは思いますがとりあえず報告します。自分は中心核と接触時、
正体不明の圧力を受けてその時死にました。」
「攻撃か?」
「いえ・・・そうですね。端的に言うと「事故」かな?」
「事故・・・。」
「我々にはよくあることですよね。探査先で死ぬことって。我々の仲間同様、私もそういうことです。」
第八探査艇の全壊報告がきた時点で乗員の絶望視は逃れられない事態なのは
そこにいる全員が知っていた。
しかし、それでも彼らの星、ひいてはその探究心の先への情熱を命以上に優先し、そこで得た情報を
後に活かすことがシナニクト探査船団の誇りであった。
「それで、ですが私の命そのものはその時受けた圧力で肉体から消されたんですが、
肉体にある意識は今のところ、肉体に留まっている。というのが現状です。」
「肉体はある?というのは?」
モブリーの肉体の今ある場所・・・そこはあの発光体ではなく、
サルガッソーの暗黒空間の只中にあった。
暗黒空間であれ、モブリーの肉体の輪郭はハッキリとそこにあるとわかる。
それは、モブリー自体が発光していたからにほかならなかった。
発光したモブリーは今、ビームシステムを抱えながら通信機能を使って交信していたのだ。
「発光していた中心核に手で触れた際にその圧力を受け肉体を乗っ取られた。
しかしまだ自分の意識がまだしがみついている。説明するとこうですかね。」
「そのサルガッソーの中心核に、か?」
「はい、当の中心核は自らを「ダークマター」と称しています。」
「ダークマターだと?」
ダークマター、暗黒物質呼ばれるそれは、「質量なき質量」と呼ばれており
その正体は誰も知ることも理解することもできず、
またその真偽そのものを証明すらできないものと言われている。
サルガッソーの中心に到達できるほどの技術を持ったこの船団を有する天体星系の者たちですら
解明することのできないもの。それがモブリーの肉体を奪ったというのだ。
が、その荒唐無稽を誰も疑いすらできない事態が、今なのであった。
「話を戻しますね?そのダークマターがさっきまで自分の肉体を制御していて、
私のやろうとしたことをかわりにやってくれようとしたのがさっきのやりとりです。」
「ちょっと待て、今お前はどうなってるんだ?」
「肉体があるうちは自分の意識は残ってるそうで
その間にダークマターは私の意識から我々の知識を学習したのです。」
「寄生・侵食型、なのか?」
「分類はそうですね。しかし、意識内で肉体の主導権を交換できるというのが
ダークマターの特徴かもしれません。ただ、私の意識もそう長くありません。」
「・・・。」
「私の生命はすでにありません。その上肉体機能は全て失っています。
ダークマターの強いなにかしらのエネルギーで動いているようです。
それがなにかは私では説明できません。」
「そうか、モブリー、今までありがとぅ・・・。」
船長は言葉のあと立ち上がりモブリー、ひいては第八探査艇の勇敢なる乗員全てに
惜しみなく拍手をした。ほかの乗員たち、各探査艇の乗員たちも含めて。
「あ、いや、死んでしまってるのを自覚してるとそういうのってテレますね。」
音声で聞こえてきた感謝の言葉と外野からの拍手の音に照れるモブリー。
「しかし、サルガッソーの発光した中心に向かって見つけたのがダークマターか。
ダークマターなのに光っている。というのはよくわからんものだな。」
「あ、そういえばそうですね!あははははは。」
そのダークマターに実質殺されたというのにそのあっけらかんとした笑い声に一同が呆れた。
「ではどうする?記録は確かに受け取った。交信記録も残した。
モブリー、意識が消えるまでそこにいるのか?」
「それなんですが、ちょっとお願いがありまして、実はこのダークマターはある理由があって
この場所にサルガッソーとして留まっていたそうです。」
「ほう、面白そうだな。」
宇宙の神秘は計り知れない。どこまで技術が進歩しても、荒唐無稽な事態にでくわすと
それを受け入れるか拒絶するかでその先の命運は大きく変わる。
そんなことを繰り返してきた探査団には自分たちの置かれた状況以上にその奇妙な話は
とても魅力的に聞こえているのである。
モブリーの意識内でダークマターより聞かされたのは
自分はある生命と触れ合うことで覚醒するとされていたこと。
そして覚醒したらある宇宙のどこかにある惑星にあろう
ある生命体を見つけてその一個体に接触すること。
そしてその一個体の命が終わるまでその個体とあり続けること。
それが自分の存在理由だ。と聞かされたことを伝えた。
「ダークマターの覚醒条件が生命との接触で、
そのダークマターに覚醒後の存在理由がある。か・・・。
面白そうだ、が、我々としては現段階でのこれ以上の探査は計画外だな。」
「情熱が勝るにしても情報を残せるための余力は現状微々たるものです。」
「ああ、船団で無理はしないでくださいね。アウトプレーはそれぞれの判断でやるもんですよ!」
「私の判断を優先してくれ!と強く言っておく。」
「ははは、そうでした。」
「で?そのダークマターはこのあとその惑星に向かうということか?」
「そうです。が、それが問題なんですが、現在、私の肉体がダークマターなんですが
宇宙空間で一個人の質量の自分が無重力の中でどうやってすすめると思います?」
「我々も本星からワープを繰り返しこの宙域に来たからな。生身じゃなにもできんだろ。」
「それなんですよ。で、なんですが、これから作戦を説明します。その通りにお願いしたいのですが
できるかどうかの検討をお願いします。?」
・・・・・・。
説明を受けて少しの時間、検討がなされてその結論を出した船長が席に戻った。
「まだいるか?モブリー?」
「はい、船長、どうでしょうか?」
「ガス帯は本当に消えるんだな?暗黒空間内のお前の座標は全くつかめない。
ガス帯がなくなれば照準を向けることは可能だ。」
「よかった。ん?でもそうだとしたら最初、違和感あって主砲撃とうとしたのって
あれどういうことですか?」
「あれは全探査艇を撤収させケーブルビームの設置跡から算出して方向を決めるつもりだった。
明確な照準ではないがお前たちへの弔いと期待効果的にな。」
「ヤマカンってことですか・・・」
「まぁ事ここに及んだのだ、過ぎたことより作戦を進めよう。」
「ですね、ではこれから第七で私の持っているビームシステムを回収させます。
その慣性で私は旗艦方向に進みます。重力場もガス帯とともに消します。
第七でのシステムの回収が確認次第、全探査艇撤収をしてください。
その後旗艦の最大主砲のチャージをお願いします。」
「そしてお前が最適有効射程距離に来たらお前に、いやダークマターに砲撃。
その威力で我々とダークマターの直線の延長線上にある目的の惑星に向かう。
こういうことでいいんだな?」
「はい、お願いします。」
「宇宙の神秘にしろ、なんか肩の力が抜けるな、サルガッソーの英雄よ。」
「そういうもんですよ。そろそろあいつらのところに向かう時間のようです。
あとのこと、よろしくお願いします。それでは、船長、お世話になりました。」
向こうからの通信は切れた。総員が第八探査艇の方向に敬礼をする。
「第七よりケーブルの回収作業報告。」
「全探査艇へ、それぞれ作業距離への接近の確認でビームから離脱、旗艦へ帰投せよ。
カノン砲、エネルギーの充填開始。」
その時、
「前方の空間に異変!重力定数が下がっていきます!」
「なに?探査艇は!」
「ん・・・?じゅ、順調に作業を進めています!でも、第六、第七はまだ影響圏内のはずです!」
「・・・うろたえるな。きっとモブリーだろう。」
旗艦シナーナの前方に広がる暗黒空間、サルガッソー全域は
旗艦の周囲にある惑星以上の大きさ、広大さであった。
そのガス帯がまるで掃除機で床に落ちた醤油を吸い込むようにゆっくりと、
だが確実にその広大さを小さくしていっていた。
しかも、旗艦から未だ伸びるケーブルビームの直線上にいるであろう探査艇は
現状、第一、第二まで帰投を完了し、第三はもうすぐ、
第四、第五は旗艦から見える位置まできているが、
第六、第七は最も遠くだったことからまだガス帯の中にいる。
しかし、ガス帯の収縮は止まっておらず、探査艇が何事もなくビームを辿り
帰投作業が出来ていることは考えられない事であった。
よく見ると、ビームを中心に異質な円筒状の空間が探査艇の道のように伸びていた。
「間違いありません。円筒状の空間の先には高エネルギー反応があります!」
「モブリー・・・。」
その高エネルギー体にガス帯や、その空間のあらゆる物体は吸い込まれていっていた。
「・・・あれが、ダークマター・・・サルガッソーの正体・・・。」
「モブリーに向かって重力定数はマイナスで数値変動中!止まりません。」
「すべてを飲み込むブラックホールか、あの規模のガス帯がみるみる・・・うわあ!」
一人、いや、複数の乗員がモニターに映る収縮するガス帯の画面を見て叫んだ。
質量の違いからか、ガス、デブリなどの宇宙ゴミ、微笑物質が吸い込まれていき
通常の宇宙空間を取り戻しつつあるそこにガス帯のカーテンを剥かれて
旗艦シナーナの数十倍はあろう岩石がその姿を現す。
「な・・・こんなのが隠れていたのか。超重力場外でガス帯の中、
レーダーも効かない中で出くわしていたら・・・」
一同がその岩石に戦慄している中でその岩石もダークマターに引っ張られ始めた。
「まさかアレも・・・?」
「不思議なことでもない、ブラックホールの引力の中心、超重力だ。
我々は、そう言う意味でも運が良かったんだな。」
岩石は崩壊しながら破片もろともモブリーに吸い込まれていった。
「全探査艇が帰投完了しました。エネルギーの充填率は200%。」
「圧縮をかけろ。再充填開始!せっかくだ、華々しく我々の全力で送ってやろう。」
「大丈夫ですかね?モブリー・・・。」
「あいつはもう死んでる。その上でのこの作戦だろう。主砲の最大威力でと言っていたからな。
我々としてできるサルガッソーの最奥部のたどり着いた勇敢なる勇者への最後の花向けだ。」
「発光体確認!エネルギー値、下限上限測定不能!危険なので測定不可にします。」
「モニターに写せ。もう人体としての形もないかもしれん。せめてその光を見届けてやろう。」
発光モブリーの慣性は以外に速く、広大な宇宙ではゆっくりに見えるが旗艦のモニターが
まだ姿かたちあるモブリーを確認した瞬間、事は起こった。
「距離50000トル!有効射程です!」
「待て!再充填しろ!」
「危険ですが試みます!再充填率56%!」
「第二圧縮外圧安定!念のためサブ以降の供給を止めます!」
「照準固定!目標!あの光るバカ!!」
「速く殺せええ!!」
「モニター切ってくれ!見たくねえ!!」
「我慢しろ!もうすぐだ!もうすぐ消し飛ばしてやる!!
「あんのバカ・・・」
「二段階充填率臨界です!エネルギー固定!」
「ぃよおおおおおし!!行ってこいこのバカモブリーいいいい!!!!」
船長の咆哮にも似た号令で発射されるエネルギー。
ギュドォッ!ギュギュドッ!!ゴバォォォー!!!
旗艦の前方、妙なポーズをして慣性によって近づいてくる光るモブリーに向けられた砲口が
周辺大気の熱量を歪ませた瞬間、砲口からその直径の数倍はあろうエネルギーの柱が
モブリーに向かって伸びていった。
その柱は二度、太く変色しながらモブリーのいた位置の確認もできない速さで
かつてサルガッソーの中心核のあった場所もあっという間に通り過ぎ、
砲口からエネルギーの光が消えた頃・・・。
「ふ、ふふふ、ふはははは、あのバカ、最後に最期にあれときたか・・・。」
「どうしようもないやつでしたね。そういや元々モブリーはああでしたね。」
「あいつらしいっちゃあいつらしかったな。」
「俺も死ぬとしたらあれしよう!はっははは!」
「その時にゃ俺が撃ってやるよ!ははは」
船団一同の表情は笑いで溢れていた。
「淋しいとか沈んだ雰囲気が嫌いな奴だったな・・・。
だがまさか見える位置に来てあのポーズか。完全に我々の星を侮辱して消えたな。」
「サルガッソーの最奥部に唯一たどり着き中心と接触した勇敢なる・・・愚か者。
といったところですね。」
「第八探査艇の命をかけてくれた乗員の名誉のために、記録と功績はそのままに。
モニターで記録されたあのシーンだけは我々だけで封印する。異論は?」
「「ありません!」」
司令室にいる一同、大きな声で答えた。通信していた各部署の返信にも異論はなかった。
「それではこれでサルガッソーの探査は終了!これより本星へ帰還する!」
「「オオオオーー!!!」」
この後、シナニクト星を中心に、他にあるサルガッソーの探査、ブラックホールの解明に
今回の記録が多大な成果を産み、イイモデッド星系の宇宙では飛躍的な宇宙革新がおこる。
が、それは割愛させてもらう。
・・・。
尾を引いて一直線に彗星が宇宙空間を切るように進んでいる。
モブリーはもういない。主砲の衝撃エネルギーの接触の瞬間で消し飛んでしまっていた。
そこは光の意識の中、
「いやはや、すごい威力だったな!それにシナーナから何か皆の、なんていうんだ?
恐ろしいくらいの憤怒が伝わってきたな。」
「あれは命の色、私の見る命の色をまだ意識としてあるあなたも感じていた。」
「なるほど。そういうことか、あんなに怒るもんなんだな!あっはははは!」
「何をしたの?あの形に何の意味が?」
「ああ、昔、俺の星を滅亡させられかけた敵ってのがいてな。
その敵の基本的なポーズがアレだったんだ。
それは忘れてはならない記録として残っててな、星のすべての民族共通の
敵、またタブーとして記録されてるんだ。そのポーズをしようもんなら
重罪扱いってほどのな。」
「あなたの意識からそれは見た。でもあれほどとは・・・。」
「ああ、俺自体はそんなにあのポーズが悪いもんだって意識なかったからな。
・・・あの船にはお世話になったがいい思い出ばかりじゃなかった。
ああいう形で別れるんなら俺の嫌いな奴に見せてやろうと思ってたんだ!スっとしたよ!」
「そう。」
「さて、俺の体はもうない。もうじき消えるんだな。」
「うん。」
「ありがとうな。こういう楽しい最期にしてくれて。あいつらにいい土産ができたよ。」
「・・・。」
「お前は・・・あの存在理由のためだけにあの場所でずぅっと待ってたんだな・・・。」
「・・・。」
「俺とも会えなんだらさらにずうっと待つことになってたのか・・・。」
「・・・よかった。」
「え?」
「起こしてくれたのがモブリーでよかった。」
「・・・そうか・・・じゃ、さよならだ。」
「・・・泣かなくてごめんね・・・。」
「早く会えるといいな。そいつと・・・神様に。あばよ!」
「・・・。」
彗星は進み続ける。その先、それほど遠くない時間の先、
巨大な熱の星、太陽を中心に回る銀河の中の一つの惑星、生命体あふれる星「地球」に
たどり着くまで、また一人となったダークマターは浅い眠りについた・・・。
宇宙の中で起きた一つの物語であった。
とりあえずプロローグはこれでおしまいです。
この先からやっと本編!でもこのプロローグを思いついてから
その先はあんま考えられてません!どうしようかな。
できるだけ週刊で書いていくつもりです。
よろしくお願いします。