第三話 緊急 フラグの折り方教えてください! ④
およそ2時間前、俺の体がここに運び込まれた。
薄暗い窓のない個室。でかい病院とは知っていたがこんな場所があるとは。
プーチンとか名乗ったあの黒いスーツのどっかのガンマンみたいなおっさんは
俺の身内と言い張りながらあの時心配してくれていた武井達をいいくるめて突き放し
ここまでやってきた。こんな外人のおっさん俺は知らない。
病室についたとたん周りをくまなく触りながら何か調べてたおっさんは
直後、入ってきたあの女の子(と言っても年上なんだろう)を追い返そうとして
伸ばした手をその背後にいたスミスって人につかまれて
「あなたが熊田君を連れてきてくれたそうですね。彼女はこの子の姉です。」
そういいながら押し入って、
「という設定なんだけどな」と
体を振り回すように体を入れ替えてプーチンを振り投げながら部屋に入ってきた。
すかさずさっきのボブって人がスミスの背後から銃を構えプーチンに向ける。
スミスって人もいつの間にか小さめの拳銃(あ、デリンジャーとかいうやつだ)を
プーチンに向けてた。先に下したのはプーチン。でスミスもしまった。すげえかっけえ。
アクション映画みたいだったな。(※高校生の感想です)
でその女の子はというと、あ、なんか調子よく入ってきてる。
ん?なんか・・・こっち見た?・・・あかわいい・・・って、だからどうすりゃいいんだ!俺!
この2時間ほど気づいたら幽体離脱してて神様?の声も聞こえないしあいつ(ダークマターとかいうの)
の声もないし、浮いたり動いたりはできるようになったけど自分の体周りしか動けんし、
そのくせ自分の体には透けることもなく触れるのに入れもしない!
おい、神様、おいったら!いい加減こたえてくれ!!
『ん?おお、どうした?戻れたか?』
あ、聞こえた。いや、だからどうやったら戻れんだよ!!
それに今のこの状況がわかんねーんだって!
『その状況時間内にいるお前がわからんことを俺がわかると思うのか?』
神様ならわかるんじゃないのか?
『お前にそう呼ばせちゃいるが別にお前のイメージみたいな全知全能とかじゃないから。
一番下の次元の一つの、惑星の一つの、国の一つの町の一悶着なんか把握できないよ』
そんなこと言うなよ。原因の一端はあんただぞ!
『まあだからこうやって様子見に爪先ほどの意識を残してやってんだろ。進展あったら
呼べって言ってんだからそれまでお前が何とかしろよ。その体でも動けるようになってんだろ?』
気づいてから今までほとんどそれしかしてねーよ!こんな強制的な幽体離脱するとかわかってたら
あんな光に触ろうとか思わねーよ!地球がどうとかもわかんねーし、あーもう!!
『・・・。』
ーーーー・ー
『『2時間半ほど前、こいつらの時間概念で正確には2時間34分34秒、35秒、
36秒・・・もういいか。
こいつのいる次元のこいつの宇宙のこいつの星はこいつに吸い込まれた。
どういう次元であれ惑星の規模の空間ごと物体が一瞬にして一点に集約されたということは、
強力な力場の収束からブラックホールが生まれる。んだけどそこは俺がその次元そのものを止めて
阻止しておいた。あいつに宇宙空間で会話したのはその時の話。
んで、なんとか復元させたと思ったら、今度は意識体のダークマターだったほうが
なんかテンションあがったようで、完全に復元させた段階でこいつの魂?を体の外に弾き出しちゃった。
おそらくこいつと一体化したと一方的に感じたダークマターが嬉しさのあまりその嬉しさを体全体に
めぐらそうとしたんだろう。入り込んではいてもまだ融合が完全でなかったんだな、
別ものと判断されたこいつの魂?を体から追い出す結果になっちゃった。というのが今の状態。
で、なんかわけわからん連中がこいつの体に群がってきて今に至る・・・どうしようかね?これ?』』
「・・・あの~~・・・」
うわああ!!聞きなれない背後の声(?)に幽体の俺が驚いた。振り向こうとするっと
「きゃあ、こっち見ないで!なんか着てください!」
え?あ、ごめん、ってなんか着ろっつっても幽体なんだけど・・・って、ん?
あんた、も幽霊か?もしかして・・・?
「神様にとられちゃいまして・・・」
ん?神様?あいつか?それとも別の神様?
『気づかんもんかね?この声の方向くらいわからんのか?』
え?そういや下から聞こえてきてるような。
ーーー
熊田少年の幽体は病室の中空、その背後にもう一人の幽体、病室全体にはいまだバルサンのような
バルサンではない煙が充満しているようになっている。
その中で立っている人影が二つ。一つはベッドの左側、もう一つはその反対側、若干足元より。
煙でよく見えないが一人はごそごそやっている。
「(マスク越しのごもごもした声で)く、くそ!離せ!このマスクじゃこの量は、!」
『んーー。少しだけこいつの事がわかった。こいつはお前を解剖しようとここにきたんだな』
解剖ぅ!?
『嘘』
嘘かよ!!
「でもこの人の体が目的なのは確かなんですね?」
『まぁそうだな。連れ帰る気だったようだ。どうする?お前?』
え?ど、どこだ?俺どうなるんだ?
『さあ?なんでこいつがお前をさらうのかはわからんけど、あんまりいいイメージないぞ?
こいつの記憶からはな、』
幽体の体に冷や汗がつたうのを感じる。
熊田は幽体の体を自分の寝ている実態に近づいて触れながら聞こえない声で叫んだ。
おい!おい!いい加減戻れよ!俺の体だぞ!中に入れろよ!!
「あ、入れなかったんですか?で、そのままの・・・」
そうだよ!
と、思わずイラっときた熊田は声のした中空に顔を向けた。そこにはいまだバルサンっぽかったが
若干光ってるように見えながら一人のあの時倒れた巫女服姿の女の子(?)の姿そのままが
胡坐の姿勢で熊田のほうを見ていた。
あんた・・・え?なんで服着てるの?
「そこ!?普通なんでここにいるの?とかですよね?」
いや、後ろで声聞こえてきたのと、神様の声の方向わかってから想像ついてたから。
でも服着てんのはわからんかった。
「幽体は本来のたましいの姿。ですが魂に意識宿っている状態でもあります。
意識がある状態ならその意識のイメージで自分の衣服を想像できるのです。実体ではないですが」
へー(ということは・・・想像、想像・・・)
まっぱだった体に学生服のようななにか(?)が現れ始めた。
おおすげえ!
『そんなことしてていいのか?』
ん?やっぱ神様がこれか。
熊田のとなりにちょうどいま崩れ落ちるようにベッドに沈んだマスクをつけたプーチン。
その向かい側、未だに沈んだプーチンの手首を離さない巫女服姿の女性。
神様の声は彼女から聞こえる。熊田に手を伸ばしたプーチンの手を阻止するために
倒れた巫女に強制的に入り込んだ。という事だったようだ。同じように弾かれた巫女ではあるが
うろたえてる様子も心配している様子も見受けられない。戻れることを確信しているのだろう。
で、とうの熊田は・・・。
どうすりゃいいんだよ!なんでこいつ俺を拒絶してんだ。融合したんなら同化してるもんだろ!
「融合・・・?」
『あの段階じゃ融合しかけてた。だけだったんだな。地球を復元した際お前と意識統合できた
瞬間ダークマターのほうがテンション上げてその勢いでお前追い出しちゃったんだよ。』
子供か!
『子供だよ。』
え?
『子供だったんだな。どれだけの時間、次元や宇宙をさまよったか知らないが、意識を目覚めさせて、
いや、目覚めさせられて、こないだまで誰か、と何かするということはなかったんだ。
俺の半身という事もこいつはわからんだろう。ただ、お前に会う事、いや合う事。それだけが
意識の中心にあったことだったんだ。んでお前に会ってお前と融合できたことで嬉しくて・・・』
だからこうなった、か?で?俺はどうなるんだ?こいつが嬉しかったのはわかったよ!
だからって追い出すことないだろう!?
『追い出したんじゃないんだよ。お前がはじき出されただけなんだ。』
同じことじゃねーか!!!
「!、あ、そうか」
おいこら!ダークマター!いい加減にしろよ!(「あの、ちょっと」
俺の体だぞ!てめえ!早くしねぇと(「や、だから、あのね?
うるせえ!黙ってろ!こっちの問題だ!しゃしゃんじゃねぇアマぁ!(プチン!
「吠えんなクソガキぃぃぃ!!!」
病室が一瞬震えた?と思わんばかりの声でない声の叫びが熊田の幽体の芯から寒からしめた。
「要するにあんたのこの体に別の幽体が入ってるってことだな。
でもその幽体にあんたは弾かれた。で、あんたは入れない。こういうことだな?」
熊田は高校では普通よりちょいワルくらい。運動好きでスポーツより格闘技派。
空手と柔道をやれと父から言われそれぞれ小学校4年から続けておりそれに加え
我流の武術をたしなむ父と組手をしてほどほどの実践経験を積んでいる。
にもかかわらず熊田はあの一喝以降、巫女の言葉にうなづいているだけ。
「どうやら中の幽体もどうすればいいかわからないんだろうな・・・」
あ、そういうことか。
ここでようやく声を出した。(少し震えてる?)
「子供が勝手に車に乗り込んで楽しくいじってたら知らず知らずカギをかけちゃった。
って感じか。神様はなんとかできないの?」
一喝でヘタレた子供と会話してるようなのが自分の実体に入り込んでいる。
その辺に目をつぶっているかのような完全に舐めた口調で自分の実体に入り込んでいる
今になってようやくプーチンの手首を離した神様(?)に問う。
『俺はおまえらの神様じゃないからなにかできるってわけじゃないぞ。
今はこの次元のこの針穴みたいな環境にこいつの保護者的な感じで意識を残してやってるだけだ。
お前(この場合は巫女)に入ってこの男の手をつかんだのは
やな感じがしたのと情報収集だった。
で、こいつに入り込んでるのは俺の半身の半身ではあるがそれを俺が動かそうなら
もうちょい力がいる、でもそれをしたらこの天体はまず終わるぞ。それでもいいなら(
「お手上げか~・・・」
さえぎられてちょっと切ない神様。
そういやおれの実体はあんたの半身、そしてこいつの意識がもう半身ってことは・・・?
「いや、今のお前、幽体とその実体でのワンセットとしてのお前で俺の半身だ。残念だけどな』
残念ってなんだよ!!
「その話はよくわからないけど要はあなたとそのあなたの実体に入っている何かは
あなたと関係あるのね?」
え、あ、はい。
口調は元の女の子に戻って怒気も収まっている。
「だったらなんとかなるかも。ここから先の予知はできてないけど・・・
はぁ~まさか、こんなのがねぇ」
落胆気味に何かしらのアイデアを思い浮かべる巫女の女性。だが
それ以上に落胆しているのは熊田だった。
(熊田、心の中で)怖いお姉さん・・・
そのため息の数百倍のため息を俺は今心の中でしてますよ・・・。
どうにかなったらなったで、いや、なってもらわなきゃ困るんだけど、その先考えると
地球以上の重さを感じちゃってる・・・まぁ重さ知らんけど・・・。
誰か代わってもらえんもんかな・・・?ん?そういやこの人「予知はできてない・・・・」
って言った・・・?
いやはや、ぶっちゃけ風呂敷を広げすぎました・・・。
もうしわけないですがもう数回でこれは終えます。
いろいろできそうでしたが更新頻度もままならず・・・。
よかったらお読みください。