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キッカケのキッカケ

第八探査艇が圧壊する少し前。探査艇内でのできごと。


通路の壁にあるパネルを引きちぎり稼働中の部品を取り出す隊員。


そこには探査艇の乗組員総勢5名が集まっていた。


「どうだジエン?」


「問題なさそうだ。前に改造しておいてよかったな。」


「やっぱ少しでかいな。グレフじゃないと持てないんじゃないか?」


「なに、外は無重力だろ。慣性さえつければ運べるはずだ。怖いのはスーツの耐久くらいだな。」


「なぁ、本当にやるんだよな?逃げたりしないんだよな?」


「逃げたきゃ逃げていいって言ってんだろ?それでもみんなここに残ってんだよな?」


「第7に避難して即時撤収すればまぁ死ぬことはないだろうな。


でもみんな知りたいだろ?この暗黒空間、宇宙の墓場サルガッソーの中心にあるあの光の正体。」


その大きな体の隊員の半分もあろうその部品を床に置き立ち上がる男


「もう手遅れだけどな。もうケーブルビームの受信しかできないよ。


ここからは向こうのビームを延長させながら切れないようにするだけが精一杯だ。


受け取れるエネルギーは俺らのスーツのシールド強化と通信システム接続くらいだな。」


「お前ら怖くないのか?もう誰も助からないんだぞ?」


「お前も含めてな。まぁ一緒に死んでくれる仲間がいるんなら寂しくねぇよ。」

「私は残すことになった子供や旦那がちょっと心配だけどね。毎回死別の誓をして


出てくるんだけどまさか本当になっちゃうなんてね。」


「これから船が圧壊を始める。今からスーツは外装にしとけ。船体が壊れたら


そのままキャノンで船外に出る。ビームシステムは忘れてくれるなよ!」


「はい。、まだ相当な重力場だ。スーツに船体のエネルギーを各スーツに分担した過剰シールドでも


数分もてばいいほうだ。その先は死んでから考えろ!悪かった、みんな、ここまで付き合わせて」


「今更ですそれ。でもあの発光体は全宇宙でも俺らだけが発見できたんです!


俺らは宇宙一すごいんですよ!」


より近くへたどり着ければ我々の功績はあの発光体のように輝き続けるでしょう!」


「あの世で自慢しまくりですよ!」


グキャバキャ!ッビー―!ッビー―!


船体に響くきしんでいた音にひときわ大きな音が起き以上を伝えるアラームが鳴り響く。


「この探査艇ともお別れだな。ありがとうな・・・。いくぞ!グレフ、ジエン、ガツ、ジェンダ!」


愛おしむように船内を一望して頭を下げる一同、そして傍らに置いてあったキャノン砲を構え


それぞれの隊員の名を呼ぶ隊長。


船内通路の突き当たり、一番大きな体をしたグレフが最後尾壁に背中をつけている。


ビームシステム装置を大事そうに抱えるように膝で押さえながら両手で前の二人を支えている。


インテリっぽい眼鏡のようなものをかけた色白の男性ジエン、短髪で気品ある顔立ちだが


体格は磨かれた筋肉で包まれたしなやかなジェンダが装置を持つように


支え合いながら隙間を埋めるように入っている。


隊長の補佐であったガツがその前に身を置き彼らの反動防御の前で


隊長をがキャノンを船外へ向けて構える。


撃った反動が収まった直後に壁を蹴ろ!合図はないからな!」


「了解!」


キュイーン・・・ギュドッ!!!!


高音質の音波が発生した少しの間を置いてキャノン砲砲口から


ケーブルビームとは全く違う色のレーザーが


一直線に船体を貫通してレーザーの先端を確認することもできない速さで


レーザーのエネルギーは霧散した。


熱線武器ながら高圧力の放射するために起こる反動は凄まじいよう


で五人の反動により直前の壁が四隅の縁から剥がれかけていた。「行きます!」


反動が消えた感化雨を取り戻したグレフが叫ぶ。


声を聞いた全員が前傾しお互いの体をビームシステムを中心に支え合う。


キャノン砲の開いた船の前方は響き渡るアラーム音すら飲み込もうとするような勢いで


あらゆるものを船外に吸い込んでいった。


ダンッ!


五人の体の塊は蹴った反動と前方の吸引力で恐ろしい速さで射出されたかのように前進した。


そこは何もない、ように見える暗黒空間。唯一視界に潰れてゆく第8探査艇を見ることができたのは


後方を向ける位置の隊長だけだった。


「グ、ぐあ・・・」一番外側のグレンが声を漏らす。


船にかけていたシールドエネルギーを体積の少ない一個人にオーバーチャージしたとしても


直接、超重力場をうけている。重力の方向は前方の発光体方向ではあれ、


その距離は天体と天体の距離のようなもの。


慣性が、速度が上がっていっても耐えられるものではない。


『このまま進んでも見えてるな・・・』


「ジエン、ジェンダ・・・あとは任せる。先に行くぞ」


顔を向けない二人、「ああ、またあとで」「痛くしないでよ!あとでぶつからね!」


大きいが涙が交じるような声で答える二人。


ビームシステムを二人の間に守るように寄せる。グレンはそれを見届けると


「うおおおあああ!」


二人の背中を渾身の力で押した。加速する四人の塊。


グレフのスーツは供給のなくなった事で超重力に押し込まれていった。


「グレフ・・・」


後方を向いている隊長だったが離れた瞬間にグレフの体は消えるようになくなった。


この探査団に入っていろいろな形での別れを経験してきた彼だからこそ動揺も死への恐怖もない。


別れは船内で済んでいる。隊長は心の中で感謝の言葉を送っていた。


グレフと離れて少ししか経っていないがその場所はひとつの惑星くらい離れた位置まで進んでいる。


しかしまだ発光体に近づけもしない。


「うう・・・私たちもそろそろです」「じゃあ俺が残る」


「お願いね、グレフより中心に近づいてることは自慢してあげてね」


「ああ、でも悪いな、押す力は多分ない、」


「ええ、蹴らせてもらうわね。向こうで謝るから」


「いやいや、ご褒美だよ!じゃあね」 「バカ、」


ジェンダから手を離すジエン、エネルギー供給が低下すると途端に襲う超重力。


ジエンの体が消える前にジェンダは蹴る部分を見つけそこを足場に加速できた。


「じゃあ次は私で、ガツ、頼むわね」


「ああ、今のうちに言っておきたいんだけど」 「何?」


「死んで向こうでより生きてるうちに言いたかったんだ。


二回前の探査の時、宝石くすねたのってさ・・・」


「え?それ今言うの?隊長なんでしょ?」


「え?知ってたの?」 「え?あれ?」


死ぬ直前になって唐突に起こった話題に一同が面食らった。


「あれは事故だったんだって!くすねようとしたわけじゃ、」


「隊長ケモナーだからてっきりあの巨獣にプレゼントしたのかと、」


「俺はそれを目撃しただけなんだけど、ジェンダってそうとう追求してたよな?


「てっきりジェンダと隊長がデキてて浮気を・・・」


「「んなわけあるか!!」」 「私は旦那一筋!」 「俺は獣一筋だ!」


「・・・はいはい」


「ふふっ、ちょっと力湧いてきました。相当きついけど耐えてみます!それでは、さよなら」


「すぐにいくよ、続きはあの世でやろう。」


システムから体を離すジェンダ、直後縮まろうとする体をガツは蹴りとんだ。


加速はもう光のような筋を帯びるほどになっている。


「隊長、加速が強すぎる気がしませんか?」


「ああ、重力がかかってないような感じだがケーブルビームはまだつながっているな?」


「はい、出力不可が小さいので我々分でもまだ伸ばせます。が、スーツの耐久はもう・・・。」


一人減るごとにつながったケーブルビームから供給されるエネルギーはその割合を増していた。


が加速の圧力、超重力へのシールドそれらを抑えるに足る強度が低かった。


「ケーブルによる情報の更新は行えているはずだ。次に生かせれればそれでいい。」


「目に見えて明るくなってるな。あいつらにも見せてやりたかった。」


ビームシステムを支え合うように二人共前方を向いている。


「どうやら自分のスーツも限界です。」


「な、おい!ここまで来たら二人分のエネルギーだぞ。まだ進めるだろう!?」


「いいえ、自分は体調に7割り向けています。ほかの連中もそうでした。」


「なんだと!?当分割しろといっただろう!」


「みんなの総意です。ふふふ、もう手遅れですよ」


「あの馬鹿ども・・・」


「だからこそです。隊長に是非、最奥部を覗いて欲しいんです!」


「ああ、わかった・・・俺も向こうに言ったらまず全員説教だからな!」


「楽しみに待ってますね・・・では。」


「ガツ、今までありがとう。」


ビームシステムから離した手を隊長に向け、隊長はその手を力強く握る。


圧力がガツの全体を襲い始めた。ガツは隊長の手をほどき、うなづく様に合図をした。


隊長は容赦なくガツを足場に更に加速した。ケーブルビームはより細くなりそれは彗星にも見えた。


少しの時間、すでに時間の感覚もなくなっている。


隊長モブリーの周りの環境はかつての暗黒空間とは考えられないほど光に包まれていた。


ビームからの供給がどれほど一人分に割けばいいといっても


ビームを維持する割合もありモブリーのスーツにも限界が来ていた。


「ここが限界か、あいつらのおかげではあれ、まだ先に進みたかったな・・・。」


モブリーは前を向いた姿勢から姿勢をかえシステムをいじりだした。


「我々はサルガッソー最奥部に接近、第七探査艇より距離4545450トル。


発光体確認はその540000トルあたり。


現在の距離より前進中、しかし天体は確認できず・・・ん?!!!」


最後の通信を入力中、ありえないことが起こった。


前進中、後方を向きシステムを操作していたから気づかなかったのか?


いや、前方に何も物体らしきものを視認する限りの距離に確認できなかったから後方を向いていた。


そこの何かあるはずなどない。が・・・


モブリーの慣性はそこで止まっていた。あの恐るべき速度であの、人体はおろか


船すら圧壊させる超重力の中を貫くほどの速度、何かに接触していたならそれは接触ではなく衝突。


モブリー一人の肉体などシステム装置ごと破壊されていたはずである。


モブリーのこの時の接触感は、背中と誰かの背中が押されあった。感覚に似ていた。


『なんだ?なんだなんだ?何があるんだ?後ろに・・・?加速度は完全に計測不能、


そんな速さであの空間を何にもぶつからず進んできた。何かにぶつかっていればまず死んでいる。


・・・え?俺もう死んでるの?うっそ!?なんの痛みもなかった!え?


宇宙で死ぬってそういうことなの?』


混乱するモブリーの思考、が、


動作中のケーブルシステムが正常動作してる事に落ち着きを戻し始める。


背中にはまだ感触がある。モブリーの手が震え始める。


「ここが、サルガッソーの中心・・・?」


背中の感触は離れない。ということはその接触しているものに引っ張られているということになる。


スーツの重力数値を見て驚いたモブリー。


「重力が安定基準値を上回っている!?どのへんからだ?」


背中の接触からその接触面に脚を向け立ってみる。重力が小さいので


立ち上がるアクションだけでその接触面から浮いてしまう。


接触面から浮かび上がりその明るい地面を広く見ようとしたその時、


グググ、頭側の方に強烈な変化の兆し、やな予感を感じたモブリーは


腕側にあるスーツに内蔵した小型噴射機で慣性を変え地面(?)に戻った。


「どうやらあの位置から超重力っぽいな。


システムごと持っていってたら急激な変化で壊れていたかもしれない・・・。」


あたりを見渡すモブリー。地面が光り重力がある。残念ながら大気はないようだ。


命あることに安堵したモブリー、腰を下ろす。


「まさか、生きてサルガッソーの中心に来れるとはな、


まさかその中心がこういう事になっているとは・・・。」


もちろん生きて帰れるとはモブリーも思ってはいない。


四人がかりの加速でようやくここまで来れたのだ。


帰るとなれば元の位置以上の距離を進まなければならない。


「この地面の物質をシステムに記録させればOKかな。


人心地ついたら俺も死ぬか。あ、そういえば記録の途中だったな。」


立ち上がろうとモブリーは足を伸ばしながら手をついた。


ブァアア!!


地面がいきなり今まで以上な光を放ち始めた。


「しまった!爆発か!?」


モブリーはせめて記録のかきかけ、物質の記録の転送だけでも、とシステムに手をかける。


しかし光が強すぎて何も見えないモブリー。

「くっそ!影もできないのか!何も見えない!!こんな事で・・・!」


手探りで装置の操作部分を探る。


装置はタッチパネル部分もあればスイッチ操作もある。


スイッチ操作を探る際、装置の向きを変えようと装置を動かそうとしたが、


勢いが足りずモブリーがバランスを崩す。


腕がひねられ思わず手を離し壮大にコケた。


光の中でもう何も見えなくなったモブリー。


「ダメだ。せっかくここまで来たのに!せっかくみんなのおかげで中心まで来たのに!!


せめて中心の位置の記録を残さなければ・・・。」


ある程度時間がたてば母船が諦めて探査艇を回収、

ケーブルシステム装置も残骸として回収されるかもしれない。


だがあの超重力場では記録の通信を転送する前に回収しようとすれば装置ごと圧壊するだろう。


そうなればモブリーたちの努力は水の泡である。


『それは絶対に御免だ!』モブリーの気持ちに再び闘志が宿る。


起き上がり自分の位置からそう離れていないだろう、


倒れた向きから予想して手探りで装置を探し始める。

すると少しずつ光が弱まりはじめる。光に慣れはすれ、周りが見えない状態だったが、


目をつぶり上を見ると宇宙の暗黒が戻ってきたのが見えた。


「しめた!爆発しないのか!よかった!」


と安堵したモブリー。


「ミ ツ ケ タ 」


誰もいない宇宙の墓場、サルガッソーの中心、唯一たどり着いたモブリーの耳に


聞いたこともない声が届いた・・・。あたりを見渡すモブリー・・・。


誰もいるわけがない、しかしはっきり聞こえたその声に死以外の恐怖を初めて感じた。


『あいつらが天国で呼んでるのかな?は、はは、どうせすぐ行くさ!慌てず待っててくれよ!


とととりあえず記録は急がなきゃな!あ、あった!』


心を落ち着かせようとしながら混乱するモブリーだったが


視界にいまだビームが伸びている装置を発見し装置に近づく。


「・・・うぁ」


後一歩で装置に手をかける寸前でモブリーは、死んでしまった・・・。


前のめりに倒れるモブリー、倒れながらスーツは体を覆う余裕がある隙間を


埋めるように密着しながら縮んでいった。


足の裏の部分がいつの間にか溶けていたのである。そこから空気が漏れてしまっていた。


しかしモブリーは窒息で苦しむ感じではなく、意識を失うように事切れたのだった。


なぜかは誰にもわからない。そして倒れたモブリーの形に地面は光り、


その光とは違う色でモブリー以外の部分が先ほどの光以上の強さで発光した・・・。


どれだけ光っていたのかはわからない。だが・・・強い光が収まり、光がまた安定した頃、


モブリーは未だ稼働しているケーブル装置を使い、通信を始めていた。


「こちら第八探査艇モブリー、サルガッソーの中心核へ到達・・・こちら第八探査艇モブリー・・・」


無茶な展開が多くてごめんなさい。

でもまぁ、彼らは異星人なのでこういう無茶もできる。

という感じで読んでいただければ幸いです。

今年もよろしくお願いします。

※ちなみに主人公はまで出てきてません。

長い導入でこれまたごめんなさい。もうちょい導入部続きます。

(次は中旬頃を予定)

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