第三話 緊急 フラグの折り方教えてください! ①
最初にその異変に気付いたのはとある国の宇宙開発局だった。
「衛星の信号がおかしい?」
「はい、途絶してる間隔があるんです。
月付近の周回軌道上を回っていたはずのケース11なんですが」
「我々の反対側・・・じゃないのか?」
「それはこれからです。あとその衛星と一部の衛星に情報共有に妙な時間差が・・・」
「時間差?どういうことだ?」
「わかりません。先ほど話したケース11、それに次ぐ高高度の衛星13、それらに
記録されている時間と基地との時間差が大幅に空いてしまっているんです」
「3000キロ以上離れていれば時間差はしょうがないもんだろう?
多少の遅れは許容範囲としているじゃないか」
「その遅れはこちら側なんです。衛星から記録されている時間が進んでいるんです!」
「・・・え・・・?」
一部の人工衛星と地上の基地局と時間的なラグの発生により一時的な混乱が
世界各地の宇宙開発関連の基地でおこっていた。
一部の人工衛星は本来の高度より若干離れてしまって、
気流による影響を考慮しても不自然なほどの距離を移動していた。
幸いどの衛星も地上に合わせる形での修正ができて事なきを得た。
(衛星の距離の問題も問題なく其の位置から修正記録し直すという結論)が、
このような報告が各国の宇宙開発関係の部署で数多く報告されたが
それぞれにその後の適切な対処が行われ内々に終わった・・・。
ただ、ある国のそういう施設のある一室で・・・
「、ということです。観察を続行しますか?」
「・・・わかった、続行はしよう。ただ機会を待って接触も考えておいてくれ」
「了解。」
暗がりの部屋。あかりは椅子に腰掛けて座る顔が照らされてない男の机にある机上灯のみ。
机上灯が照らしているのは数枚の書類。傍らにUSBメモリーの刺さったノートパソコンが
起動している。画面が見えているのは座っている男のみ。
了解、と応えた男性はそのまま後ろに向き奥の扉に手をかける。
多少重いのだろうグッと力を入れてゴムのずれる音がした部分から外の光が漏れる。
暗い部屋からすれば強めの光が大きくなったあたりで男性は手を離し扉の向こうに消えていく。
部屋にそびえる光の柱がゆっくりと細くなり糸になりゴム連れの音と共に消える。すると
プルルルップルルルッ
「うわあ!」
突然のコールにびっくりして声を上げる男。溜息とともに気持ちを落ち着け机の電話に手を伸ばす。
受話器を取らずにオンフックにしてしゃべる。
「はい」
「室長、宇宙局理事補佐の親戚の友人という方が、」
「ああ、来たのか・・・第2会議室に待たせてくれ。すぐに行く」
「かしこま。です」
「おい!」
「はい?」
相手が切ろうとしたその言葉の何かに引っかかり男が呼び止める。
「です。とかつけるくらいならその言葉はやめろ!」
「かしこま」プッ ツー ッツー ッツー・・・
「・・・」
さいしょの「かしこま」より少しテンションの高い「かしこま」という声と共に
通話は切れた。机上灯を消しそのそばのスイッチをつけながら椅子から立ち上がる男。
椅子を下げながら机から離れ側にかけてあったスーツを持ち袖を通す。
暗かった部屋はスーっとフェードインするように明るくなってゆく。
部屋は部屋としては手頃に広く机は重厚な調度品のようなつくりをしている。
書棚や棚のような家具も品がよく、一見部屋を見ると調度品の展示場のような感じを受ける。
しかしテーブルのようなものはなく椅子も机も男の座っていた場所だけ。
そこに妙な違和感はあるにしろその部屋は男の部署としての仕事場であった。
唯一の扉の側に姿見があり男はその前でスーツを整える。
「はーっ・・・馴れ合いすぎたかな?気は利くが変に自分の趣味でしゃべりたがるのがな・・・」
さっきの女性とのやりとりだろう、思い出しながらの独り言。
スーツの襟を伸ばし、姿勢を伸ばしたあたりでハっと気づいて机に戻る。
机の上のノートパソコンからUSBメモリを雑に引き抜く。
そしてメモリを指先で持ちながら別の指で机の上の数枚の書類をこれまた雑にめくりながら
ある紙を見つけその一枚だけを手に取ると、すばやく一回、二回と折り曲げて
手頃なサイズにしてはメモリとともにスーツのちポケットにしまいこんだ。
『忘れるところだった・・・』
声には出ない言葉を頭の中でつぶやくと
再びスーツの襟を整え扉を開けて出て行った。
机の上の書類、乱雑にその数枚がばら撒かれたかのようになっている。
一番上の紙・・・ある景色の画像のプリントのようだ。
日本の、とある川の河川敷・・・あの時の景色が、とある角度から撮影されたものだった。
なんとか地球を復元することができましたが、その後遺症的な
事案がちらほらおこってます。無駄に壮大になりそうですが、まだまだ続きます。
更新頻度や文字数は減りましたがまだ書いていきます。次は来週予定。