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第二話 夢の中にて ②

宇宙空間。極微小に大気成分が有り、また埃のようなものも確認されている。


真空の環境。確認されている宇宙の環境状態は生物は活動困難とされており、


存在はおろか到達すらできない場所である。


そんな場所のある一点に・・・学生服を着たままの熊田洋介がいる。


呼吸、なし。体温、あり。死んでいるわけではない。ただそこにある。


活動できるはずのない宇宙空間のある一点に人間、熊田洋介の肉体はある。


その熊田洋介の心の中・・・。


肉体のある宇宙空間と変わらない空間で宇宙空間にあるのと同じ体格をしたスケスケな学生が


表情だけで絶望しきっているようなのがわかる顔で中空を見つめている。


『おーい、おおーい!かえってこーい!』


どこからともなく聞こえる声。しかしその声にも反応しない熊田。


『・・・ちょっと荒くいくか』


 !!


 うぁ!な、なんだ?かはっ


すけすけの熊田は急に苦しみだした。しかしスケスケの体は逆に肌に色が、体の周りに


着ている服のような形が現れてくる。


『お前の首を絞めたようなもんだ。気がついたか?ん?』


響く声と同時に体が楽になったのか、熊田はぜぇはぁと息を整え出す。その頃には体は


肉体と呼べるほど服を着た状態で実体化できていた。


『やっぱヒトだな。苦しくなると生きようとする。流石だ』


 ・・・。


熊田は呼吸を整え落ち着いてきたのを自覚するとじっと実体化した自分の手を見る。


『落ち着いたな。わかる範囲で全部説明してやる。時間ないからよく聞けよ』


 ・・・いいよしなくて。


『え?』


 俺も殺してくれ。なんにもないんだろ?地球も、日本も、俺んちも!みんなも!!!


『・・・』


 何したんだよ!なんでそんなことになったんだ!?あんた神様が俺に何したらこうなんだよ!


 俺が何したってい・・・いうん・・・!!


『落ち着けって、気持ちはわかるけど、ん?』


再び声の主はまくし立ててきた熊田の息を止めようとしたが違和感が主に走る。


バチンッ!!


その音は空間全てに響いた。大きくて長いゴム紐が切れたような音。


 俺たちが・・・何したって言うんだあああああああ!!!!


ピキピキ・・・


『やっべ』


熊田の叫び。精神世界の宇宙空間に亀裂の走る音がしだした。


ガスッ!!


熊田の頭部に強い衝撃。拳骨で殴られたような痛みを感じる熊田。


 な・・・


『たいしたやつだよお前。なんでお前を選んだのか少しわかった気がするよ』


 誰が俺を選んだんだ!こんな、こんな・・・!


あまりの事態の重すぎさとその自体を理解できてない事に言葉が出てこない熊田。


『まぁ落ち着け。いよいよ時間ないから元に戻す方法だけ教えるぞ』


 え?


『お前の中にある俺の能力は「有り」と「なし」だ。半分に分けたのはあくまで


目覚めさせるキッカケだったようだよ。ダークマターのやつはお前と会って融合できた


喜びのショックで一気に力を使ったんだ。「なし」の方向でな』


 ・・・。


『俺はお前とダークマターが融合した瞬間気づいてお前らの次元を確認したら、


その次元のお前らの世界が・・・』


 なくなってたのか?


『正解』


 ・・・。


『俺は慌ててお前の中の精神を閉じ込めることにした。そしてそれ以降の吸収を止めたんだ』


 吸収?


『ああ、「あり」は開放。「なし」は吸収なんだ』


 つまり・・・?


『ダークマターは自分を封じられる際、周りに何もされないように周りの物質を吸収する特性


のみを発現されたまま封印されたんだそうな』


 そうな?っていうのは?


『俺を分けてお前とそれに分けたのは別にいるってことだ。分けられたんだよ。俺たちは』


 神様の神様・・・界王様ってやつか?


『ああまぁ好きにいえ。でだ。吸収を止めてお前とダークマターの精神を分離して、


そんで今ってことだ。でもお前の叫びでダークマターの精神も呼応し始めてる。


これ以上ここを保てそうにない』


 元に戻せるっていうのは?全部吸収したってことはもう・・・。


『ああ、すべてを吸収したんだ。時間さえもな』


 時間?


『よほど嬉しかったんだろう、俺が気づいたのとほぼ同時の発現だったようで


一瞬にしてお前の中に消えてったよ。見てたもん』


 ・・・。


『今、お前の中に地球を含むすべての質量があの時のそのままで入っている。


自覚できないだろうが理解しろ。今からお前の肉体を起こす。


この精神世界もなくなる。そうなればお前はそのまま窒息死だ』


 ・・・。


『続けるぞ。ダークマターの精神がすぐにお前に入ってくるだろう。そうなれば


お前には生命体としての能力以上の力がつく。だがダークマターの精神が


融合しきってしまえばお前はその状態でいられなくなる。


お前らで言う単位の2~3分ってところだ。


ピキピキピキ・・・精神世界の宇宙空間にヒビが露骨に走ってくる。


『お前はそのあいだに「あり」の開放の力で一気に吸い込んだ分を吐き出す。


探った限りダークマターがお前に会うまでに何かを吸収してきた形跡はない。


全っ部出しきれ!やりかただが、


目覚めたら一瞬苦しむがすぐに何かが入ってくる感覚を受ける。


そしたらすぐに気持ちの中で自分の中に自分の知らない何かを探せ。


何かがわかったらそれを掴んでお前の中からすべて放り出せ!』


 うう、全然わかんねぇ・・・それに出すってどうすれば・・・?


『できなきゃそれこそ死ぬだけだ。それでいいならその時そうなれ!


とにかくやれ!いいな!・・・みんな待ってるぞ!!じゃあな!!』


ガシャアアアーン!


壁のような割れ方で宇宙空間が完全に砕かれた。


崩壊する宇宙、自分の体も消えてゆく一瞬、


 みんなが待ってる・・・。


熊田の口元はつぶやくように動いた。




ドクン! ドクンドクン・・・


さっきと同じような景色の現実の宇宙空間。体温しかなかった熊田の肉体に鼓動がなる。


開いていた手が拳を握る。薄く開いた口元に呼吸しようと息を吸い込む。大気のない空間。


一瞬にして息ができない感覚に襲われ体がわっと暴れだした瞬間。


どこからともなく現れた光が暴れる熊田にぶつかる。すると暴れだしかけた体はしずまり、


落ち着いたように熊田は大気のない宇宙空間で深呼吸して目をつぶる。


どこが上でどこが下で、前後左右もわからない中空の中。熊田の体は自然体の体勢をとっていた。


「見つけた!」


宇宙空間、声に出たつぶやきのような叫び。


熊田の姿勢は両手を前方に構え、利き腕である右手を前に左手は後ろ。


綱引き?というより消防の放水の姿勢をとっていた。


子供の頃地元の防災訓練で体験した消火作業のポーズ。


熊田の中で「何かを出す」というイメージを姿勢にするとこれが一番に浮かんだ。


「うおおおおお!みんな出ろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


渾身の叫び。宇宙空間にどう響いたのかはわからない。しかし熊田の唇と呼吸は


その叫び通りに動いた!そして


ブファアア!!!


その熊田の右手の先端から溢れ出した光は一点の一生命体からとは


思えないほどの大きさと量の光を一瞬にして解き放った。


―――。

超新星爆発にも似た巨大な光を目の当たりにしたのは、太陽系の中にある数知れない


生命体たち。だけではなかった。


土星。その付近に鉄鋼類なのか?金属のような物質で、


さも空母のような大きさの宇宙艦(?)が数隻佇んでいた。その一隻の中の様子。


「消えては、また復元した。ということか?」


 「惑星規模の質量を一個の生命体がか?」


  「そもそもあの惑星、というかこの銀河系は宇宙技術は原始レベルだろう?」


「隠していた技術、とかか?」


 「それが今回暴発して慌てて復元・・・まさかな」


「いつぞやのあの惑星からの資料を確認し直しますか?」


 「戦力として取るに足らんなら放置するのが温情。としてはいるが


  力がついてきているとすれば無視はできないものな」


「しばらくは様子を見つつ検討を進めよう。場合によっては潜入も視野に」


 「この銀河系はとくに危険視するつもりはないが用心に越したことはないでしょうしね」


 「では地球の監視は継続。では次の作戦について・・・」


―――。


眩い光の中、熊田は感情が振り切ったのか、また力を出し尽くしたのか意識を失った。


目を覚ましたとき熊田の目に映ったものは・・・。


お久しぶりです。

毎週とはいきませんがちょくちょく書きますね。

気が向いたら感想もよろしく。

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