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再会 もう一方

そこはグエルコの宇宙港のロビーのような場所。広い、といえば広いがイイモデッド星系の星星の


宇宙港の中で一番小さくロビーもその一階にある部分だけである。


飲食店があるエリアの座席にドクベーとヒレサンドが座っている。ドクベーは超越者と呼ばれるほどの


特別な存在ながら、その扱いに、その例には入らないと言わんばかりに周りは


いつもどおりの空気が漂っている。


ドクベーは自分で宇宙船を所有しているが、その使用にはよほど遠くに行く場合や滞在目的が


重要な場合、それこそ特別な場合に使用する。それ以外はむしろ民間の公共施設を使うことが多い。


その理由は手続きするための面倒にある。自己所有の宇宙船の使用にはその所有者は


公共の宇宙船のルートは通れない。そのうえで時間帯にも制限がある。その星の公共圏内の通過の際、


その圏内ではどこを移動するのか?いつ移動するのか?ある程度の注意と検証が必要なのだ。


広大な宇宙ならどこをどうとでも通れそうだがその規模が艦隊同士だったりしたらそれこそ


面倒なことになる。そのための申請でその申請にもお金がかかったりする。


宇宙船を所有するだけでなく、所有したあとからも費用がかかるため宇宙船を持つ者たちも


おいそれと宇宙船で移動することは少ない。


ドクベーにしても、多くは公共施設を利用するが、その利用している乗り物においてはその間、


ガードマン、というより番犬的な扱いをする事がある。


超越者という肩書きはどういう形であれ、やはり挑戦しようとするものがよってくる事がある。


ドクベーも受けはすれ、民間に被害を出すようなことはしようとしない。


そのへんも、各星の憲法のようなもので定められており、ドクベーもそれを了承している。


しかし、中にはテロのように民間被害を度外視して襲ってくる輩も少なからずいる。


その場合ドクベーは出発前にその機体周辺まで危険感知能力を使い危険物を発見し処理する事ができる。


不審者も乗り込んだ段階で見つけてつまみ出すのでドクベーが乗る旅客機はその時は事故に


よる注意を重視し、ほかは安心して目的地を目指すことができるので福の神のように歓迎されている。


その福の神はそのロビーのベンチで隣でまるでいつ食べ終わるのか、終わりなき食欲で空港の売店で


山のように買い込んだハンバーガーに似た食べ物をがっついている。ノリとしては学生が悪ふざけで


恐ろしい量のハンバーガーを買ってそれを食べているような有様だ。違うのは悪ふざけでなく


みるみるその数が減っていっている事。そして


「すまん、ワカメ!足りそうにない!」


追加しようとしている事だ。


「おい・・・」


ワカメと呼ばれたドクベーはため息混じりにそばに控えていた大柄ながら、


気をつけをしている男に手を上げて売店お方向に振り目で合図をした。


「お、オス!」


そういうと男は売店に走っていった。


「相変わらずの食欲だな。よく太らんもんだ。」


「いつもはそんなに食わないんだ。空港ここに来るのなんて何年ぶりかだからな。


こういう食物は珍しいんだ。ゴフゲフッ」


「しかし妙な話だな。ここまで食い違うとはな」


「俺とお前では時間質量が違うようだ。あの男とあったのはお前と別れた後だが、


あの男はお前がまだこの世界にいるという段階の物言いだった。


そしてその時のお前は私は知らない」


「そして俺がお前の世界に向かっていったとき、お前は勇者、だったか?


そいつらの集まりの中で俺を拾ってくれた。そして3年ほど一緒に旅をしてあいつの所に行って・・・


俺はこっちに戻ってきた。その時に既にドリオンはお前と会っていた。


つまり俺が向こうでお前と旅をしている間に、お前はこっちの世界に来ていたことになる。」


「次元を超えるというのは人によっては時間まで歪んでしまうということなのかもな。お!」


「ドクベーさん、もう品切れみたいです・・・」


売店から戻ってきた男は両手に大きめのビニール袋3袋ずつさげて戻ってきた。


「食材が尽きたのか?コイツもよく食ったがそんなにすぐなくなるほどじゃ・・・」


よく見ると周りでハンバーガー片手に動いている連中が多い。よほどうまそうに食べていたのか


それを見ていた周りがこぞってハンバーガーだけを買っていたようだ。


超越者がくる。それだけでグエルコは一種の盛り上がりを見せていた。


もっともこの宇宙港のある地区が主でありほかの地域では、あまり宇宙外に関心がなく


超越者がどうだのに反応はないが、それでも面白そうなことは好きらしくグエルコの中央地区は


一種のお祭り騒ぎになっていた。また、脇のヒレサンドもその盛り上がりの一因だった。


超越者と共にいる。というのもあるが、数年前にヒレサンドが住んでいる山の地域で


ある男性が遭難していた。その男性を助けたのがヒレサンドだった。


その男性とは宇宙から宇宙港を使わず不時着という形でグエルコにきたドリオンだった。


別に密入国をしようとしていたわけではなく、完全な突発的トラブルで落ちてきたのだという。


本人の照合と活動目的の開示により事なきを得たドリオンはヒレサンドとウマが合い


色々な話を聞いた後、魔法という部分に妙な食付きをした。


ドリオンもこのグエルコで魔法文化というものがあることは知っている。が、その儀式的で形骸的な


まじない的ともとれるのみ、の残り方からあまりグエルコそのものに関心を持つことはなかった。


そもそもその事故がなければ素通り予定だったのだ。



ここでヒレサンドという男の話、


ヒレサンドは自分が人付き合いがうまくないので離れて暮らしていた。グエルコのその地域自体が


あまりそういう人付き合いがうまくない連中が多くなかったことも幸いし、


急に居着いていたヒレサンドに興味も不審もいだかずなんとかやってこれていたそうだ。


もちろん行政は怪しんだが、「いつの間にか住んでた」で決着がついて行政もそれで良しとした。


その裏にはヒレサンドが「自分をどうでもいい存在」と認知するための魔法を使ったというのは


本人が墓まで持っていくと決めている秘密だ。


もちろんその秘密はドリオンやドクベーにも話していない。が、ドリオンとウマが合いドリオンに


魔法のことを喋ってしまいドリオンはそこになぜか食いついたのだった。


その時までヒレサンドはこの世界でも魔法は使えるという確信を持っていた。


事実、周りの自分の存在認識を変化させる魔法はうまくいっている。


大気の魔法成分を感知できないでいるのは一時的なものと、この時までは考えていた。


この段階ではヒレサンドはこっちの世界に来てそんなに日が経っていないのもある。


で、その意気投合したドリオンに魔法を見せようとしたとき・・・使えないことに気づいたのだった。


墓まで持っていく秘密だった周りの人間の自分への認識を変える魔法も結局使えてなく、


本当に行政もろとも「この人はそこにいつの間にか住んでた」で納得されただけだと気づいた。


落胆するヒレサンドにドリオンが元気づけ一緒に研究を始めるのもその時からだった。


ただのファンタジーだったらドリオンもそこまで食いつきもしないし協力しようとも思わなかったろう。


が、ドリオンの聞いたヒレサンドの魔法に関する知識はグエルコの中に残る歴史や風土の中の


魔法文化、その原型や根本といったとても深い何かを感じていた。


なぜこの星が、これだけこの宇宙技術のある中で魔法をかたくなに信じ形式的でありながらも


残し続けるのか?ドリオンも疑問に思っていた時期がある。


がどう探しても本当に魔法がどうのというのは全く発見できなかった。


探し方が悪かった?探した時期が?探査船団の総司令にまで上り詰めながら、イイモデッド星系の


可能な限りのあらゆる知識を得ることができても、何も発見できなかった。


そしていつしか魔法への興味も消えていった。そして今この瞬間に耳にしたヒレサンドの言葉が


再びドリオンの魔法の好奇心に火をつけた。


まずヒレサンドがこの世界に来たのは別にその世界に来るつもりはなかったという。


自分の元いた世界は一時期ある大魔王に破壊されかけたが、白い勇者と緑の戦士、


そして青い魔道士の自分で大魔王を倒し世界を平和にしたあと、


ある魔法の実験で失敗してこの世界に来たのだという。


完全にアニメの世界の話だったが話の中の緑の戦士の内容に、ある知人の面影を感じた。


が、その戦士は大魔王との戦いの最中、魔王の使った石の魔力で次元に飛ばされてしまったという。


ドリオンはその時に何かしらの引っ掛かりを覚えた。が、これ以上の脱線を控えるため話を続ける。


平和になった世界で、攻撃に使う魔法をいかにして、平和の世界に利用するか?の研究のさなかの事故。


気づいたその世界では始め、自分は完全に孤独だった。が、勇者に会う前には常に孤独だったので


自分の生活はすぐに慣れて戻るための研究をしようとした矢先の今だった。


魔法が使えないことをその時に気づけて孤独のまま絶望しなくてよかったと


ドリオンに話したときのことをドリオンは協力しようと決めた。


とその話をするときにいつも口にしている。


ヒレサンドのもつ魔法は大気にある魔法の成分を自分の持っているエネルギーと


融合させて形にする方法で大気に魔法の成分がないこの世界ではまったくできないことがわかった。


が、ドリオンは大気としての成分ならその成分を構成するあらゆるものを調べようと空気中の成分から


地質の成分までくまなく研究しようとした。ドリオンの休暇はこの時のことだ。


地質分析のさなか、ヒレサンドがある地層でその魔法の成分、のようなものを発見する。


ドリオンには、まったく分からなかった。分析用の機材にもなにも反応はなく


その地層に特徴らしきものも見受けられなかった。しかし、ヒレサンドはその見つけた成分で


なんの装置も使わず、遠くにあった紙を浮かせながら折り曲げて折り紙をしたあと、燃やしてみせた。


これにはドリオンは圧巻。本物の魔法を目にして子供のようにはしゃいだ。


が、その地層の成分はそれだけでその付近の地層を調べてもなかなか見つからなかった。


見つけられるのがヒレサンドだけ、しかもその量は少ない。二人の心に諦めの言葉がよぎった。


そんな中の発見に次ぐ発見だった。どことは言えない何の変哲もなさそうなグエルコのある地層に


ヒレサンドは魔力成分の溜まりを見つけた。大いに喜んだヒレサンドだが、より喜んだのは


その成分を見ることもできないのにヒレサンドの喜びを見れて喜んでいるドリオンだった。


その地層の成分の溜まりは多かったうえ、少しでも残せばそこにまたとても時間はかかるが


溜まっていくのもわかった。が、保存が効くようなものでなく、


溜めに溜めた量を維持できるのはとても短いということだった。


それではとても次元を超えるような魔法はできない。


魔法が使えるようになること=ヒレサンドが元の世界に帰る。


と考えていたドリオンは前の喜びの反動のように落ち込んだ。が、ヒレサンドは


ドリオンの喜んでくれたことに感動し、かつて勇者たちといた時のように共に協力して


何かを成し遂げた喜びの分かち合いを一緒にしてくれたドリオンに感謝し、元の世界とも決別する。


と言ってくれた。が、ドリオンは、ではせめて完全に断念する訳でなく、


なにかしら手がかりや保存方法などを発見、開発ができるまで


一緒にやろうと言った。しかし魔力成分の研究のさなか、


ひっきりなしにドリオンの復帰の催促が来ていたことを知っているヒレサンドは


丁重にそれを断る。かわりにドリオンの望む魔法の道具を作って友情の印。


と照れながら似合わぬセリフで再会を誓った。


という昔話の中で、ドリオンが余暇の中、村の中で箒に乗って空を飛ぶ実験をした事が有り、


それを見ていた村の連中が本物の魔法を目の当たりにした喜びでヒレサンドがその地区で


大魔道士と呼ばれたことで、その星のマスコミに担ぎ上げられた。という経緯がある。


盛り上がりの原因の一つがそれだった。


まぁそもそも人付き合いが苦手なヒレサンド。よほど気に入った人間でなければ表にも出ないので、


大魔道士の話はこれまた丁重に断っている。今はまわりが騒いでいるだけだ。


大魔道士が必死の形相で宇宙港のある売店のハンバーガーを食べまくっている。超越者と一緒に(?)


ハンバーガーがなくなる理由。以上。その後しばらくその売店の作り置きを重ねただけの


ハンバーガーは宇宙港の名物になる。


「わかった。それ置いたらもういいぞ。もう無駄にかかってくるなよ」


「へ、へい!失礼しました!!」


ビニール袋を丁寧にテーブルに置きヘコヘコしながら下がる男。


「ひほへはいほは?」


「どこのアニメの食いしん坊だ。食い終えてしゃべれ!ああいうのは慣れてる。


下手に仕留めて恨みを買うより思い知らせて心折る方が楽なんだ。平和だしな」


「・・・そうだな。バク」


「で、なんで解ったんだ?私が来ることを?」


「ああ、魔法陣の目で見たからさ。アムアム」


「・・・ドリオンのあの魔法陣か」


「ああ、うまく使ってたな。口頭で説明しただけなのに。まっすぐだったよ」


「まさか恒星のカケラを封じ込めてたとはな。相打ち狙いであそこまですか?」


「ああいうのは相手にせんほうがいいんだな。お前でもそう思うんだから」


「で、ドリオンの命はつながったのか。大した奴だな」


「本当にすごいやつだ。まぁまた貯めてた魔力パァだけどな。


あいつ、俺のために魔力貯めようって言うくせに今までの魔力


あいつのタメにほとんど使ってんだよな~」


「だから「ああいうの」なんだろう」


「確かにな、ははは」


「で、魔王はもういないのか・・・本当に」


「ああ、思い出したがあの直後だった。すぐ降参してな。魔物に連れてかれて消えてった。


やっぱあのダークマターってのが元凶だったんだろうな」


「ダークマター・・・ドリオンはどこまで知っているんだ・・・?」


「俺と居た間にはダークマターの話題はなかったな。あ、でも暗黒物質のダークマターの調査に


サルガッソーを探査するとか言ってたっけ。今からだと30年くらい前だな」


「あいつがサルガッソーの探査をしたのはこないだだぞ?ん?別のやつなのか?」


「どうだろうな?まぁ本人は生きてる(?)んだ。会って聞いてみればいい。


・・・ふう。ごっそさん!」


今まで食べ終えたハンバーガーの包み紙や飲み終えたジュースのコップを


ビニール袋一つにまとめてゴミ箱に捨てる。


「そうするか。まぁ久しぶりに会ったんだ。しばらくヒマでな。


今度は俺が魔力の貯蔵に付き合ってやろう」


「ん?まさか今度はお前が魔法陣作れってのか?」


「ん~~~。まぁそれはその時考えよう!さぁいくぞ!」


「ふふはは。やっとお前らしくなったな!緑のワカメ!」


「ドクベーっていえ!青いギョニクが!」


「ギアンだっつーの!それかどうせならお前もヒレサンドって言えよ!


うーんやっぱここで白いあいつも欲しいな~。やっぱ帰る方法考えるか!」


「どうせならこっち呼んでもいいかもな~!」


「あ!それいいな!俺も呼ぶほうが得意だし!よし!そうしよう!」


ロビーから出て行く二人を遠巻きに見守りながらギャラリーは


ゆっくりといつもの時間に戻っていった。


ドクベー(ワカメ)とヒレサンド(ギョニク)はグエルコの中央都市の中へ消えていった。

遅くなりました。情けないですがこうしんがまた滞りそうです。

よかったらお付き合いください。

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