表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

再会


「確かにありましたね、その認可申請」


広い食堂のような部屋、というより空間というべきか。


並ぶ食事用のテーブルの一つ、その食堂の中央付近のテーブルに


ディオン、ハンカーにビアン。あの処刑(?)にいたメンバーにその時に駆けつけた


艶っぽい容姿の短髪の女性クイーン。その時にはいなかった金髪のアフロヘアーの男性、


長髪の男性、坊主頭の男性、そして彼らと違う服を着ているグラン。


その隣にまた違う服、というより法衣と呼ぶのが合っていそうな服をまとった男性が


食事をしている。そしてその周りにディオンたちとほぼ同じ服を着た連中が、


明らかに他と漂うオーラの違うそのテーブルを見ながら談笑しながら食事をしている。


言葉はその法衣の男性。その言葉を受けてグランが問う。


「不認可の理由は?」


「グエルコには申請の前後で調査には伺っていたんです。魔法文化を異常に色濃く


現存させている星でしたし、ただ実際グエルコにある文化は「儀式的、形骸的なもの」という


認識でした。が、その時期にある男性の、その、魔法を使ったという報告がありまして」


「ああ、ドリオンってやつだな」


ドリオンだった男の言葉にテーブルで飲み物を吹いたり苦笑いする者、周りも笑っている。


「ええ、その、前シナーナ艦隊司令が休暇中?にですねグエルコのアンダード地区で


外部装置なしで飛行しているという報告から調査に踏み切りまして、」


「ちゃんと箒に乗ってたぞ?」


ビアンは箒に乗ったドリオンが魔法少女のような服を着ているイメージをしている。


その想像をみんながしている様にみんなが大笑いしている。


「ま、まぁその箒で空を飛ぶ証言から調査には向かったんですが、その、


魔法に関しての成分分析は我々ではできず、その成分を生成できるのも先生の友人の・・・」


「ヒレサンドな」


「その方だけでしてその方の証言や説明も我々で検証すら出来ないので、


事実としては保留案件。として置いておくという事にしたんです」


周りではヒレサンドの注文が食堂に響いていた。ちなみにこの世界のヒレサンドは


ヒレザメという魚の身のサンドイッチである。


「妥当なところだな。ヒレサンドに「何もなかった」と連絡が来た時にそんな気がしてたが


シナニクトのデータバンクなら何かしら繋がりがあるのか?と思ってたが空振りだったのか」


「何かしら要因があろうものならグエルコは今頃監視惑星ですからね」


「それにしても、船長、じゃない本当に元船長なんですよね?」


呆れながらグラン「もう知らん!」


呆れながらハンカー「ホントしつこいなビアン」


ビアンを撫でながらジャミン「なんかすいません・・・」



・・・数時間前。


とてつもない広さの建造倉庫のような場所。柵の前に数人の人。ディオン達だ。


柵の外側にその広いスペースに似つかわしくない救命艇というにふさわしい小型の宇宙船。


そのハッチが開く。我先にとその数人が押し入る。


人数を吸い込んだ宇宙船はゆっくりハッチが閉じていく。


「もう!まだ閉じないの!?これだから旧式は!」


「おい!俺の私物なんだぞ!」


閉じるハッチから漏れた大声。ハッチが閉じきるや後方のブースターが噴射。


前方の柵に突っ込む勢いで進み、その柵の枠内を滑るように曲がると


その180度回転した先に見える宇宙空間に突っ込んだ。


宇宙船はまるで水をつけた指をシャボン玉の中に入れる感じでシャボンの中に


膜を作って入り込むように宇宙空間に抜けて飛んでいった。みんながいた場所は


その星の宇宙港。外枠を特殊な膜で覆い、中の空気を逃さないように出来ている。


宇宙空間に抜けた小型宇宙船はまっすぐその先の巨大な円盤状の母艦「シナーナ」に向かう。


シナーナに到着し発艦経路を通過し係留する小型船。ハッチが開くと今度は開ききらない部分から


我先にと出てくる。最初はなぜか巨体のハンカーだった。


「うわああ!船長おおおおおお!!」


にじり口に押し入る感じで出たハンカーが見上げた先に見た人影に思わず叫んだ。


ハッチを力任せに押し上げようとする他のメンバー。ハンカーの顔を踏んでいる。


ハッチは別に力で開くわけではないよ。という感じでゆっくり開きながら残りのメンバーを通した。


「船長おおおお!」


出てきたメンバーは口々に船長と呼び、待っていた人物に抱きつく。が、


「え?あれ?・・・船長?」


誰が見てもその姿は自分たちの知っている船長ドリオンの姿ではなかった。


抱きついたビアン自体抱きついてしばらく後になって違和感に気づいたくらいだ。


ハンカーも目をパチクリさせて「あれ?」という顔をしている。


「とりあえず落ち着いてくれたか?まぁ・・・その、なんだ・・・。


俺はもうドリオンじゃなくなった。というわけだ!」


ドリオンと間違われたのはグエルコで命の移し替えに成功した元ドリオン、グランだった。


「とにかく十日程度しか離れてないがその十日の中で積もった話もある。


客もいるから食堂でメシ食いながら話そう」


そういうとグランはそのまま振り返りそのまま歩き出した。


「え・・・え・・・?」


きょとんとしているハンカー達は数分動けなかった。



・・・時間は戻り、今のテーブルにつき、自分がどういういきさつでこの姿になったのか?


その姿の横にいる人物の紹介、にどよめきと叫び声が乱舞する姿はワンパターンに近いので割愛した。


「まさか命を別の肉体に移し替えるとは・・・考えられません」


「一番驚いてんのはやった本人なんだけどな(笑)まさかそのまま死ぬとは・・・まぁ思ってたが


こういう形でうまくいくとは思わなかったからな~」


「今のこの星系での技術でも意識の移し替えは可能ですがそれはあくまで


意識のコピーのようなものです。結局のところそのコピー元の意識はそこにあるままで


コピー元はなんら変わりませんよね」


「でも船長のは


ビアンが割って入った言葉にグランがツッコミを入れる


「グランだっつの!」


「・・・船長のはあの時の超高熱の衝撃圧力と水蒸気爆発の圧力でぐじゃぐじゃだったんですよ」


ちょっとムっとしたビアンは言葉を変えずあの当時のあの場での状態を説明した。


「ああ、写真は見た。すごかったな~真っ黒焦げの何かがその形のままぐしゃぐしゃだった。


ああなるんだな。あれすると」


「あの、魔法陣でしたっけ?が描かれてたのはランクー材でしたよね?」


その時を知らないジャミンが聞いてきた。


「おお。ちょっと手を加えてたけどな。もともと重い素材だから軽くするために混ぜ物を入れたんだ。


そのせいかな、ちょっと弱くなったのは」


「で船長の隠れた側にも魔法陣が描かれてて隠れながらその魔法陣を使った」


「ああ、時間かかったから間に合わないかな~と焦ったよ(笑)


死ぬ覚悟あってもさすがに直面すると焦っちゃうよね~!」


「魔法ってのもいろいろなんですね」


「まぁシナニクトからグエルコまでつなぐわけだからな。第一惑星から第八惑星、


それを2日でってことなら相当早いほうだよな」


「そこが一番考えられないんですよ!グエルコまでシナニクトなら光速航宙機を使っても


10日はかかるんです!ジャンプ航行を十時間に一度挟んでも!


ワープはあの辺りの宙域ではできませんし、


その距離を中継機なしでつなげるビームケーブルなんてあるわけもない!」


「そういえば船長がグエルコから超長距離交信してきたのが十日前でしたね」


「ああそうだな。あの日が一番めんどくさかったな~」


「衛星を非常スクランブル体制にしての超長距離交信でも時差は一時間くらいあったもんな」


「短い方ですよ。でもあの日は忘れられませんね。まさか二日前に死んだ船長から


しかもグエルコから交信が来たってんだから」


ディオンが思い出しながらしゃべり、ジョッキの飲み物を飲み干した。


「長距離交信だから画像が荒かったからそのままそこにいるのかと思ってたしね。


まさかそんなに若々しくなっちゃって・・・」


「んん?ゴホンッエナ、その目やめろ。おい、エナに水、ジョッキで頼む」


いつの間にか三つ離れた席にいたクイーンがグランの隣に来ていた。


エナというのがクイーンの本名である。ちなみにグランとエナは夫婦である。


クイーンの手には中身の入ったワイングラス。


それを揺らしながら艶っぽい目でグランを眺めている。


席を譲らされた長髪の男性と坊主の男性、ハンカーはよそよそしく遠ざかって食事をしていた。


ちなみにその食堂ではその時間、酒の提供はしない事になっている。


ディオンやほかの連中の飲んでいるジョッキの中身は水、ないしジュースである。


もちろんクイーンの持つワイングラスの中身もジュースである。


このタイミングで言うのもなんだが、この食堂はシナーナの艦内食堂である。


クイーンは別に酔っているわけではない。が入り込む性格なだけだった。


ただ、一度入り込むと周りが見えなくなりすぎてしまうのが欠点だった。


この時間、クイーンはほとんど若い身体になったグランしか見てないのだった。


グランはこういう入り込んだ時のエナは冷やせばいい。というのを知っている。


ジョッキで持ってきた水は顔に当てる用である。ぶっかけるような真似はしない。


「話を戻しますが、グランさん、あなたは今後どうされるのですか?私を呼んだという事は


軍属の復帰・・・とは思えませんが、見た感じ・・・」


話を戻した法衣をまとった男性の目線を察してディオンが


「シナーナの復職、ですか?」


と、つないだとたん場が盛り上がった。


「一兵卒からやり直したいとか!?い、いや、待て、速攻で抜かれそうな気がする」


「あ、俺らも・・・こき使おうとしてこき使われる未来しか想像できねぇ!」


「・・・」


周りはワイワイとグランがシナーナに復職したら、あんなことこんなこと、を想像しながら


一喜一憂している。しかしその全てに悲壮感は全くない。


しかし、あの時、処刑に立ち会ったメンバーとクイーンは少し淋しい表情をしていた。


「まぁ、ここにおま、ゲフンッあなたをお呼びしたのはグエルコのヒレサンドの処遇とかの話と


もう一つ。ドクベーとの随行許可申請の取り付け。ということです。ザウベラー大司教様」


ピタ・・・と周りが止まる。


大司教の名で場が静まったのではない事はこの食事中の様子で皆がわかっている。


ザウベラー大司教、彼はもともとシナーナの乗組員だった。シナニクトの星の最高権力者であり


ドリオンの処刑の決定を下したのも彼であった。


そんな彼と共に食事し肩書きにとらわれない懐の深さを持つシナーナの乗組員が押し黙ったのは、


ドリオン、いやグランの向かおうとする道の過酷さを一瞬で察したからだった。


そしてその頃、ドクベーはグエルコに到着した。

遅くなりました。

何気に彼らの活躍の方が書いてて面白くなってきてます。

これからどうしようかな?

次回は来月のはじめくらいを予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ