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第1話

他所で投稿していた物ですが、終わりが近付いて改めて見直しを兼ねて此方に投稿しました。

多少の修正はしていますが本筋は変えません。

見直しが終わり次第のペースで投稿する予定です。


「戻ってこれたのかな」

俺は周りの景色を眺めながら呟く。

満月の下、最愛の彼女と別れた大地に。

精一杯悲しみをこらえ、彼女に別れを告げた、あの大地に。

涙が自然とあふれてくる。

焦がれて、焦がれて、毎夜夢見た皆のいるこの大地に。

「3年ぶりか」



そう、北郷一刀は、天の御遣いは再び外史に降り立ったのだ。



・・

・・・

「北郷様、治水に関しての御報告が」

「北郷様、財政に関しての御報告が」

「北郷様、治安に関しての御報告が」

「北郷様、訓練に関しての御報告が」

「北郷様、徴兵に関しての御報告が・・・・・・・・・・・・」

と、矢継ぎ早に報告が届き、俺は涙目になりながら対応をしていた。

その執務室内で蜂蜜水を飲み、ホットケーキに蜂蜜をたっぷりとかけて食している美羽は、

「うまいのじゃ~、やっぱりこのおやつは最高なのじゃ~」

と、大変幸せそうにしており、その隣では、

「あ~ん、同じ室内で死にそうになりながら働いてる人がいるのに、ぬけぬけとそんな言葉が出てくるお嬢様、最高です~」

と、ヨイショしている七乃。

キレていい?キレていいよな?

怒りに打ち震えている俺の姿に、周りにいる文官、武官、侍女達は涙をこらえている。

更に追い討ちがかかる。

「七乃、何を言っておるのじゃ、一刀は妾の為に働いておるのじゃぞ。見よ、感動で涙を流しておるではないか」

ブチッ、

「あ~ん、この状況をそんな風にとれるお嬢様、素敵です~」

プッツン、

無表情で立ち上がった俺を見て、周りの者達は速やかに全員退出していく。

俺は二人に対して、


「仕事しろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


と、最早日課となった怒鳴り声をあげた。



「真・恋姫無双  君の隣に」 第1話



俺、北郷一刀が戻ってきた時間は、以前に華琳と出会った時と同じ時期だった。

そして場所は陳留付近ではなくて、美羽の統治下である寿春だった。

戻ってきた場所で感動に浸っていた時に、軍勢と共にやってきたのは美羽と七乃だったのだ。

最初に袁の旗が見えた時に嫌な予感はしたんだが、軍が相手では流石に逃げようがない。

おとなしく捕縛されて、美羽と七乃に尋問されて状況が理解できた。

不可解な事ばかりだが、そもそも俺はこの世界に関して無知だ。

元の世界に戻って調べてはみたけど、何一つ分からなかったんだから。

ただ漠然と数日前から戻れる予感がして、身辺整理と家族への手紙を残しておいた。

そして以前と同じで管輅の予言が広まっていて、天の御遣いと決定してしまった。

「うはは~、やはり妾は皇帝となるものだったのじゃ~」

と、御機嫌な美羽。

「こんな得体の知れない男を見つけただけで調子に乗りまくってるお嬢様、流石です~」

と、全く信じてない七乃。

「うはは~、もっと褒めてたもれ」

この状況では逃げ出す事も出来ないし、何よりこの時期では華琳たちは俺のことを知らない。

出会えたとしても彼女たちに覚えていない顔をされ、いや、知らない人として見られると思うと考えるだけでも辛かった。

ひとまず考える時間が欲しいと思い、美羽たちに世話になる事にした。

かなり恩着せがましく真名を授けられ、俺も以前の真名でのトラブルには懲りていたので、姓は北、名を郷、字は無し、真名を一刀とした。

待遇は悪くなかったが当然監視付き、美羽が色々と天の国の話を聞いて来るのはかまわないが、疑いの視線かつ笑顔で毒舌を吐く七乃には正直まいった。

数日が経ち城に閉じこもりの日々だったので、街に出たいとお願いして護衛兼監視の人達と一緒に出向いたが、一言でいえばひどかった。

華琳と美羽を比べれば当たり前かもしれない。

だがかつて華琳の下、治安活動の警備隊を率いていた俺からすれば納得いくわけがなかった。

その日から連日、街を見回り、商人や住人に話を聞きまわり、警邏隊の実情、実力等、七乃に頼んで資料をもらい、治安活動の改善案を美羽に提出した。

美羽は何でそんな事をしなればならないんじゃ、といった様子だったが、こっちもそんな反応は予想済みだ。

この子は子供なんだ。

政に興味が無いのはある意味当たり前、だったら子供は飴で釣る。

俺は用意しておいた蜂蜜をたっぷりかけたホットケーキを交換条件に権利を得た。

これでいいのかと思わなくもないけど、まあ本人は目茶苦茶喜んでたし、七乃も損にはならないと踏んで予算も出してくれた。

後は実行のみ。

沙和に教えた海兵式訓練による隊員の教育、交番の設置、割れ窓理論など以前の経験と、元の世界にもどった時に学んだことも組み合わせて、治安の良さは明確に変わってきた。

そう、俺はこちらの世界に戻ってきた時に備えて、帰った時からずっと自分を鍛えてたんだ。

皆の後ろで護られていた自分じゃなくて、皆の隣に立って俺も皆を護りたいと、必死に学んで鍛え続けてたんだ。

政治、経済、歴史、農業、料理、その他諸々、ただあくまでこの時代で使えそうなものに合わせてたから、オーバーテクノロジーに等しいものは除外した。

真桜の螺旋槍は深く考えない方向で。

美羽に出したホットケーキは幸い市場で材料を揃えられた。

本当は流琉と季衣に一番にだしてあげたかったんだけどな。

そして政とは軍事だろうが治安だろうが、役割は違えどそれぞれが絡み合って織り成すものだという事も華琳たちから学び教わった。

だから美羽や七乃に気がついた事や、もっと良くなる方法を話していたら、俺は袁術軍宰相に任命されてしまった。

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