第8議論(2:2)
(2:2)声劇台本です
キャスト
男1
男2
女
同僚(女)
同僚
「各自、飲み物は揃いましたね?
では、乾杯!」
男1
「乾杯!……いや、この状況は一体何なんだ?」
男2
「俺に聞くなよ。
俺は招集かけられたから来ただけだぞ」
女
「あたしも分かんない。
ねぇ、どういう事?
このメンバーだから、アレ、だとは思うんだけど…」
男1
「ちょっと待て、招集かけたのはお前じゃないのか?」
女
「そっちに連絡したのはあたしだけど、あたしは彼女に言われた通りにしただけだもの」
同僚
「はい、今回は私がお願いして集まって貰いました」
男1
「ふむ、一体何をしようというんだ?
まさか、ただの呑み会じゃなかろうな」
男2
「俺は単なる呑み会の方がいいんだけど…
嫌な予感がするぞ」
女
「あたしも…
ねぇ、いい加減教えてよ」
同僚
「ふっふっふ……では、満を辞して、始めましょう!
カンガク!!」
男1
「おおっ、やっぱりカンガクか!
しかし、これはなかなか新鮮だな。
いつも議題を出す立場だったが、まさかこの立ち位置になるとは」
女
「っていうか、どういう風の吹きまわし!?」
男2
「あーあー、遂に毒されちまったか。
まるで伝染病みたいだな、カンガクって」
男1
「おいちょっと待て!
崇高なカンガクをあまつさえ、伝染病と揶揄するな!
カンガクはなぁ、侃侃諤諤という、素晴らしい四字熟語から由来して、参加者で議題について大いに、熱く議論するという素晴らしい活動なんだぞ!!」
男2
「分かった分かった。
唾を飛ばすな、きたねぇ」
女
「あーもう、暑苦しいのはあんたよ!
ちょっと黙ってなさいって!」
男1
「俺は、俺は……今猛烈に感動している!」
同僚
「ふふふ……しめしめ」
男2
「うん?
今何か言ったか?」
女
「うわぁ、何か企んでる顔……」
男1
「いやぁ、卒業してからは、毎回俺が議題を提供していたからな!
大学時代に戻った気分だ、はっはっは!」
男2
「水を得た魚みてぇにイキイキすんな!
あーもう、さっさと終わらすぞ!
議題は何だ!?」
女
「あら、やらないって言わない辺り、あんたも結構毒されてんじゃないのー?」
男2
「なっ…やめてくれ、俺は染まりたくねぇ!」
同僚
「えーと、で、議題なんですけど」
男1
「おう、どんと来い!」
同僚
「本日の議題は、腐れ縁は恋愛関係に発展するか否か、です!」
女
「………はい?」
男2
「あ…あー、はいはい、そういう事か」
同僚
「あ、分かりました?
流石、察しが早いですね」
男1
「ほう、なかなか面白い議題だな。
じゃあ早速議論していこうじゃないか!」
女
「え、ちょっとあんたーー…!」
同僚
「流石、こちらは全く察してない、と。
期待を裏切りませんねぇ」
女
「あーもう!」
男1
「何1人で興奮してるんだ?」
女
「興奮してるんじゃなくて、あんたに憤ってんのよ!」
男1
「何でだ???」
男2
「まぁまぁ、落ち着けって。
んーと、腐れ縁が恋愛関係に発展するかどうかって議題だったよな」
同僚
「そうです」
男2
「どうなんだろうなー。
漫画やなんかではよくあるベタな展開って感じだけど、現実だと実際有り得るのか?とは思うが」
女
「そ、そうよねっ!
リアルではナイナイ!!!」
同僚
「あら、ホントにナイの?」
女
「な、何よ…!?」
男1
「あー、1つ質問していいか?」
同僚
「はい、どうぞ」
男1
「腐れ縁ってのは、そもそもどういった関係なんだろうか?
よく耳にはするが、いまいち理解が及ばなくてな」
男2
「何言ってんだよお前、そんなの簡単じゃないか」
男1
「何っ、どういう事だ!?」
同僚
「あっ、まだーー…!」
男2
「つまり、俺とお前みたいなもんだよ。
高校から大学まで、ずーっと何だかんだ縁があっただろ?」
同僚
「良かった、分かってくれてた……」
男1
「なるほど……いや、それなら議題に対する俺の答えは一択だ!」
同僚
「ではお聞きしましょう、そのお答えは!?」
男1
「100パーセント有り得ない!!!」
同僚
「えっ…」
男2
「はぁっ!?」
女
「なっ…ちょっと、それどういう事よっ!
この間のは何だったの!?
単なる気まぐれ!?」
男1
「お、何だ急に、お前ら驚き過ぎだぞ?」
男2
「いや、だって…」
同僚
「そんな、まさか……有り得ないっ!」
男1
「あぁ、だから有り得ないっていうのが俺の意見だ」
女
「有り得ない…」
男2
「有り得ねー、何だこれ」
同僚
「えーっと……ちょっと待って、これじゃ話にならないじゃないの…
あー、ごめんなさい。
もう少し、詳しくお答え頂けますか?」
男1
「詳しくって……腐れ縁の間柄では恋愛なんか出来ないって話だろう。
これをどう詳しく説明したらいいんだ?」
女
「ちょっと、店員さん!
この店で一番強いお酒持ってきて!」
同僚
「ど、どうしたのいきなり!?」
女
「もー、こんなの呑まなきゃやってらんないわよっ!
意味分かんない!」
同僚
「意味分かんないって気持ちは私もだからよく分かるけど、取り敢えず早まらないで!」
男2
「っかしぃな、どう見ても……この間だってなぁ…」
女
「酒持ってこーい!」
同僚
「ああん、もう、こんな筈じゃなかったのに!
落ち着いてったら〜!」
男1
「何だ何だ、おかしな奴らだな」
男2
「……あ、ピーンと来た」
男1
「ん、どうしたんだ?
急に閃いた様な顔をして」
男2
「閃いた様な顔をしたんじゃなくて、閃いたんだよ!
なぁお前、さっき、腐れ縁は恋愛出来ないって言ったよな?」
男1
「あぁ、確かに、腐れ縁の間柄が恋愛関係に発展するのは100パーセント有り得ないと答えた」
女
「ぐっ…そう何回も言わないでよ!
分かったわよ!
店員さん、もう何でもいいからお酒持ってきて!」
同僚
「すみません、うるさくして…
すぐ黙らせますからっ!
はい、あーん」
女
「何すーー…むぐっ!」
同僚
「はーいよしよし、唐揚げ美味しいねぇ?
ちょーっと黙ってようねー?
騒いでまた出禁喰らいたくないでしょーう?」
女
「もぐもぐ……あ…唐揚げ美味しい…」
男1
「で、何をピーンと閃いたって?」
男2
「お前さ、腐れ縁って、同性間だけの通称じゃないからな?
そこ分かってなかったろ」
男1
「え……?」
同僚
「ふう、やれやれやっと落ち着いた…
あ、で、何の話してましたっけ?」
女
「ね、もう1個唐揚げ食べていいかなー。
いいよねー?
食べちゃおっと。
もぐもぐ……んー、軟骨もいいけど、たまにはモモ肉の唐揚げもいいわぁ…」
男2
「あぁ、だから腐れ縁について、こいつの認識がおかしかったんじゃないかって話をさ」
同僚
「どういう事です?」
男2
「あー、つまりだ、腐れ縁イコール、同性の認識だったんだな。
俺の説明が原因だったと思う、すまん。
そうだよなー、確かに同性なら恋愛関係なんて有り得ねぇわー、100パーねぇわー」
同僚
「…はぁ……!?
今、何て言いました…!?」
男2
「え?
いや、だから、同性の恋愛なんて100パー有り得ーー…」
同僚
「あぁん!?」
男2
「ひぃっ!」
男1
「同性じゃない腐れ縁…うーむ。
んん、何だ、空気が重いな」
女
「はっ、つい唐揚げトリップに浸っていた…
ん、どしたの?
うわっ、何この緊迫ムード!
何があったの!?」
男1
「分からんが、どこからともなく地鳴りが響いてくる様な、ただならぬ雰囲気だな」
男2
「あ、あー、その、俺なんか…悪い事、言った…か…?」
同僚
「自分のその愚かさを呪いなさい!」
男2
「なっ!?
は、えっ…どういう事だ!?」
女
「ちょっと、呪いだなんて尋常じゃないんだけど。
彼女に何言ったの?」
男2
「だーかーらー、同性の腐れ縁が恋愛関係になる事は有り得ねぇって事をだな」
同僚
「仏の顔も3度まで!!!
もう許しません!
貴様、表へ出ろ!」
男2
「意味分かんねぇっての!
何なんだよこれ!!」
女
「…あぁ、そういう事か!」
男1
「何か心当たりがあるのか!?」
女
「うん、彼女腐女子なのよ」
男1
「フジョシ?」
男2
「ふじょし……はっ、腐女子!?
そういう事か!」
同僚
「そうよ、貴方は私に対して宣戦布告とも取れる発言をしたのよ!
幼少期からの幼馴染み、お互い悪態ばかりの腐れ縁。
なのに、実は想い合っていた2人……うふふっ!
ベタな展開だぁ!?
王道大いに結構、寧ろ私達はそれをこそ、求めているのよっ!」
男1
「お、おい…全く理解不能だが、何なんだ?」
女
「あー、彼女、いつもは中立的な立場を取るんだけど…
この手の話になると止まらなくなるのよねぇ」
同僚
「という訳でそこの男ども」
男1男2
「は、はいっ!?」
同僚
「どちらかを選択しなさい。
私と対立し、申し入れた決闘を受諾するか、その愚かな思想を悔い改め、相互理解の道を取るか」
女
「あちゃー、目が据わってる…」
男1
「お、おいっ!
これ、どうしたらいいんだ!?」
女
「どちらか選べば?」
男2
「どっちも受け入れ難い場合は!?」
女
「そこまで知らないわよ〜」
同僚
「さあ、さあさあさあ!」
男2
「あー、分かった、分かったから!
うん、そうだよな、100パーセント有り得ないって言ったのが間違いだった!
なっ!」
男1
「え、あ、うむ」
男2
「悔い改めますので、何卒怒りをお鎮め下さいませ〜」
同僚
「……………分かればいいのよ〜、うふふふふ」
女
「うわぁ…彼女って怒るとこんなになるのね…
これから気を付けなくちゃ」
男2
「ふう…とんだとばっちりだったぜ」
男1
「よく分からんが、一件落着か?
じゃあそろそろカンガクは締めるとーー…」
同僚
「ちょっと待って!
まだ終わってないでしょ!?」
男1
「え、いや…腐れ縁が恋愛関係に発展する事は有り得るって事で結論が出たんじゃないのか?」
男2
「そうだな」
女
「そうね。
これ以上、議論する余地は無いと思うけど」
同僚
「いいえ。
私が今日、こうやって貴方達を集めた目的がまだ果たされていないわ!」
男1
「目的…だと…!?」
女
「な、何が目的なの!?」
男2
「…あ、その目的、俺は関係無いな」
同僚
「いいえ、貴方にもちゃんと役目があるわ。
立会人よ!」
男2
「はーん、納得した」
同僚
「ホント、察しが早くて助かるわ」
女
「立会人…
ま、まさかっ!?」
同僚
「ねぇ、先日の映画はどうでした?」
男1
「んなっ、な、ナンノコトダ!?」
同僚
「しらばっくれても無駄です。
先週の日曜日、2人で映画館へ入るのを捉えています。
これがその証拠です」
女
「はぁっ!?
え、何、盗撮じゃないのこれ!」
同僚
「大丈夫よそんなに慌てなくても、今突き付ける為だけに撮った物だから、すぐに削除するわ。
っと…ほら、削除完了!
これで安心したでしょ?」
女
「そういう問題じゃないでしょ?
プライバシーの侵害よ!」
同僚
「別にそれで訴えられても問題無いけど…
忘れてない?
今の状況」
男2
「うーむ、追い詰め方が何ともいやらしいな…」
男1
「んなっ!
何か卑猥な事言ってたか!?」
男2
「いやらしいって表現に引っかかって興奮すんなって。
言ってた、んじゃなくて、やり方の話だよ」
男1
「や、やり方……だと…!?」
同僚
「えー、ではここで、腐れ縁である貴方達2人に通達します!
もう、まどろっこしいからさっさとお付き合いしなさい!」
女
「はぁー!?」
男1
「お付き合い……ふむ」
男2
「おいおい、そこは流石に分かるだろ?
いいか、お付き合いして、晴れて恋人同士って事だぞ!」
男1
「お、おう…分かっていたとも!」
男2
「ぜってぇ分かってなかったな、こいつ…」
同僚
「事後承諾という形になりましたが、立会人、有難うございました。
これをもって、本日のカンガクはこれまで!
お疲れ様でした〜」
男2
「お疲れさん!」
男1
「こ、恋人同士……!」
女
「いくら何でも、こんな形で決まるなんて嫌ぁっ!!!」
-end-
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