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新訳お岩さん

太郎左衛門は、一人、手入れだけはしてある

銀色に鈍くひかる刀を、握りしめている

じりじりと

柄から刃が見える様子を、妻のお石は、何をしているのかと

思案するように、睨むでもなく見つめていた


近所でも、尻にひかれる様な夫婦と言うものが

二人の様子だと周りからは認識されていたが

実質的に仕事をしているのは

妻のお石であったことから

それも仕方がないのかもしれないとさして気にする者もいなかった

では、夫は何をしているのかと言えば、毎日何をするわけでもなく

近くの竹やぶに行っては

八つ当たりのように

木刀によって、竹を殴りつけるような一日を送り

とても、威圧的な妻を責める者はいなかった

それどころかせっせと働くお石を評価するものも多く

武家の娘であったらしいが

こんな落ちぶれた男を文句言わず支えていることに褒める者までいる

ただ、当の太郎左衛門は、何かと指図してくるお石をよく思っていないように見えたが

そんなある日、男は、いつものように、竹やぶで孟宗竹を、殴っていると

目に痛いような派手な色の着物を着た娘が

緑の竹の中を、すごい速さで、こけながら走ってくるのを目に知る

そのあとを、柄の悪い男が三人

手に刃物を握りしめ

ぎらついた表情で女を追っていた

どうやら、娘に用があるらしい

金に関することなのか

それとも一時的な欲情なのかは判断しかねていたが

頭に来ていた太郎左衛門は

妻の威圧を、消し飛ばすように

毎日通い詰めた竹やぶを

風のような速さでかけると

あっという間に

いちばんまえをはしってきた

眼帯の男の手に、強烈な小手を打つと

手首が、中ほどまで切れる感覚があり

そのまま腹に、木刀を突き刺すと

豆腐のように、穴が開く

その突然の乱入者に

二人は、恐れるでもなく

無意味にとびかかると

それを、蠅でも払うように

左右にふると

二人の顔面が

三センチほどめり込み

血が噴き出す

目の前が見えず

逃げ出すとする背後から

太郎左衛門は、先ほどの男と同じように

腹を突き刺すと、くぐもったうめき声とともに

震えながら二人は、倒れ、近くで娘が竹によっかかりながら

水音を、地面に流している様子を

つまらなそうに、一瞥すると

途中にもかかわらず

黙とうを腰に差した男は

女の肩を首にかけて

歩き出すのであった


「誠にありがとうございます」

男は、一人、部屋で酒を飲んでいると

あの時から数日後

糸のように細い

着物だけは立派な商人風の男が

男の部屋の戸先に、立っていた

「誰だ」

心当たりのない男は

その金持ちそうな男に自分の今の生活のあてつけのように

叫ぶと

体とは割に合わないような

ずっしりと大きな声で

「実は、先日助けていただいた娘の親でございます」

何でも大魂屋と言う餅屋をやっている大商人らしく

助けたお礼にやって来たらしい

「実は、それでなんですが、どうでしょう、私の娘と、その結婚を、してはいただけませんでしょうか

いえいえ、ただ結婚していただくわけでは無くてですね

その、手前どもで少々調べさせていただいたのですが

なんでも、武士におなりになりたいとか

いや実は、少々、その方面につてもございまして

娘と一緒になっていただけますなら」

商人は、そう言うと、扉を閉めると出て行ってしまった

色々と言いたいこともあるが

しかし、太朗は、その時にはもう

戸棚と壁の間にしまってある

唯一の刀を取り出していた


「いやー、しかし」

妻が、婚姻の時に持ってきた唯一の刀

あの当時は、好き合ってもいたが

今となっては、妻の武家と言うものを求めていたのかもしれにあと

思わなくもないが

おとり潰しにあっては

それもただの過去であり

意味などない

ふと顔を思い出してみても

きりりと引き締まった美しい顔

そして贅肉などないからだ

何一つとして

文句などあるはずもないのに

いつの間にかたまった鬱憤は

それを泥色に塗り固め

何時までも用心棒のような

ろくでもない毎日に

あの細い老人が最後に言った

殺してみては

といって置いて行った薬に、目を光らすも

どうにも、男は、剣をたしなむものとして

それは、人の道を外れた行為にしても

納得のいかない事のようで

最後は、と刀を出しているのだと一人納得していた

もう辺りは寝静まった頃

お石は提灯の明かりを消して家の中に入ってきた

そこには、刀の手入れをしている

太郎左衛門がおり

その目の鋭さは

彼にあった頃のような

そんな目に似てはいたが

何かが違うような気がしたが

ここ最近の荒れ具合からしたら

ましな気がしてならない

「あんた、どうしたんだい」

すっかり庶民的な言葉づかいになれたお石が

そう言うと

「酒でも飲まないかい」

といつも一人で飲んでしまう

酒を進めてきた

あまり酒は飲まないが

家の血筋か、酒に関しては、ザルのようにいくらでも飲めてしまう

お石は、どうしたものかと思う反面

何時も口やかましくしてしまった自分を少しとどめるべきだったと

反省しながらうれしながら

お茶碗を持った

一杯飲み終わった頃

お石は

目の前に

刀を構えた

夫の姿を目にした


右手が、床に落ち

逃げようと出した左足が付け根から飛ぶ

血しぶきがあまり上がらないのは

男の腕なのか

妻が良くて入れをした刀のおかげか

それとも引き締まった身体の問題か

男は、憎しみがあるのか

それとも別の思惑か

一思いに殺さず

つにには足二本腕二本切り落とした

そのまま妻の着物を切り裂くと

ひも状にした

それを、口に

そして、傷口の上に

止血するように

強くしばった

男は、妻を切る瞬間

逃げる妻の腕を、切ってしまった

その時、わざわざ殺す必要はあるのかと思案していた

それは、どう言う根拠があるのかは、分かりかねたが

つには、止血を終えていた

「うううう」

妻は、痛みよりも混乱により天井を

そして、どうしてこうなったのか

そう思い男を見ると

なぜか太郎左衛門の顔は、最近自分を見ていた

どこか冷めた

邪魔者扱いするような顔ではなく

そう、始めて会った道場の時の目に見えていた


「おい」

口が、縛られている

しゃべろうにもしゃべれない

今二人がいるのは

商人の離れの一角である

旦那には、精神統一のための一環として

そこに引き込むっていると言う事にしてお願いしてある

もちろんお石の事はヒミツにしてあった

「ううう」

しゃべろうにもさるぐつわのせいでしゃべれはしない

男は、傷口に、水をかけ、そのあとに、濃度の高い酒をかけ

薬草を、刷り込んでいた

その痛みに脂汗を掻くお石であったが

根っからの性格か

うめき声を、猿轡をかみつくことで耐えていたが

目は見引きらき肌は、白く赤く青くめまぐるしく変わる

ようやく拭き終わった頃には

白い肌は汗で、着物が張り付き

水をかぶったようだった

「脱がすぞ」

男は、体をあまり動かさないように

着物を引きはがしていった


もともと出血も少なく

驚くべきことに

膿むこともなく

一か月後には

切断後に皮膚が張り

手足をもがれた

人形のようになっていた

男は、それを確認するように

切断後をなでると

女は、その違和感に

激痛が走る

まるで、本来ある腕の中に

指をひねりこまれたような

男は、血が出ない事を確認すると

女の首筋に

舌をなめつけた

それは、簡単にずれる

鎖骨まで行くと

今度は、上にのろのろと上がる

激痛の中

お石は、久方ぶりの夫の欲情に

何か気色悪いものを感じずにはいられなかった



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