12月
そろそろ紹介を描こう。書いてあるけど。
12月1日 晴れ
アールヴァルとエルフィンは一日の内、長い間眠ってる。ファルタが言うには、必要な事なんだって。
ヴィンティルが生まれた時はすぐに飛び回ったよねぇってヴィンティルに言ったら、あの頃は幼かったんです、って言ってた。
そんなに生まれてから経ってないと思ってたんだけど……サンディーヴァの鳥の時間の感じ方は、僕と違うのかもしれない。
12月2日 晴れ
ヴィンティルの子守唄は聞いていて心地いい。エレインが教えたのかと思ってたんだけど、どうやらヴィンティルが創ったらしい。
でも、唄の意味は教えてくれなかった。僕達の言葉と違うから知りたかったんだけど、知らなくても良い唄だからいっか。
どうしてか、ファルタが照れてたけど、なんだったんだろう?
12月3日 晴れ
シュネクレーヴェの亀達が、ベルの周りまで曳いてきたゼーラーゴの水を辿ってやってきた。
ベルに水をあげてみたいんだって。このところ、かなり大きくなったベルの全体に水をあげるのは時間がかかるようになってたから、亀達にはベルの根本の方をお願いした。
シュネクレーヴェの亀達もでっかいんだけど、ベルはもっとでっかくなってるんだ。
12月4日 曇り
アールヴァルとエルフィンが喋った。らしい。僕は見てないんだよね。
ヴィンティルを見てママ、ヴァルフィンを見てパパって言ったらしい。ママがお母さんで、パパがお父さんって意味。
エレインとバティが隙を見ては何かを教えてたのはこれだったんだね。
12月5日 曇り
ヴィンティルとヴァルフィンを除くと、僕らの中ではファルタが一番アールヴァルとエルフィンに好かれてる。一番ちっちゃいからかな?
意外だけど、バティの変わった方の姿はファルタより大きいんだ。エレインはファイオラと同じくらいある。ヴィンティルとヴァルフィンもそれより少し小さいくらいかな。
僕とベルから見たらみんなちっちゃいけどね。
12月6日 曇り
昨日の日記をファルタが見たみたいで、いきなりファルタが光ったと思ったら身長が高くなったファルタが立ってた。すぐ戻ったけどね。
ちっちゃいから好かれてるんじゃないって言いたいらしい。ちっちゃいファルタもおっきくなったファルタもかわいいな。
アールヴァルとエルフィンは、僕にも懐いてくれる。おっきくてもちっちゃくても関係ないみたいね。
12月7日 晴れ
上から見た時に気づいたんだけど、お日様が真上に昇ったとき、ベルの色がキラキラ変わる。
いつもの白色に、混ざりあった色が流れるみたいに渦巻いててとってもきれいだった。
それに、凄く深いところから生えてるんだなぁ。
12月日8 雨
アールヴァルとエルフィンが、ファルタと僕の名前を呼んでくれた。かわいいな。
水の氷が小さくなってたから、新しいのをあげたよ。ヴィンティルが欲しそうにしてたから、こっそりヴィンティルにもあげておいた。
蛇の肉も、水の氷も、ヴィンティルが欲しがるとヴァルフィンが怒るんだ。優しくね。
12月9日 雨
久しぶりにに街に行ってみた。跡地だけどね。住んでた子達はどこに行っちゃったんだろう。
そんな跡地で、子供を見つけたんだ。とってもびっくりしたよ。
身長はヴィンティルくらいの女の子。僕を見てパタリと倒れちゃったから急いで連れ帰ってきたけど、大丈夫かな?
まだ眠ってる。
12月10日 晴れ
あの子が起きた。けど、困ったことに誰も言葉がわからなかったんだ。あの子もどうにかして言葉を理解しようとしてるみたい。
とりあえずご飯をあげた。何が食べられるかわからなかったから、サンディーヴァの樹から木の実をもらって、ファイオリアの花の蜜と一緒に出したら美味しそうに食べてくれた。
どっちも蛇のお肉と同じくらい美味しいからね。
12月11日 晴れ
アールヴァルとエルフィンが沢山話せるようになった。密かに練習してたらしい。隠れなくても良いのにね。
驚いたのは2つ。1つはアールヴァルとエルフィンが歩けるようになってたこと。
もう1つはあの子の言葉をアールヴァルとエルフィンが理解できたことだよ。その逆もね。
12月12日 彩虹粉
どういうことなのかファルタに聞いてみると、しっかり答えが返ってきた。
なんでもアールヴァルとエルフィンは声? っていうのを使って話しているらしい。サンディーヴァの鳥達とシャンブルの蝶達もこれに似たものを使って話しているんだって。
僕やファルタ達はそれを使ってないから通じなかったみたい。アールヴァルとエルフィンは声も使えるし、僕らの言葉も使えるんだ。
女の子の名前はハイトゥ。あの街の最後の生き残りなんだって。ちょっと親近感。
12月13日 晴れ
ハイトゥはすぐにみんなと仲良くなった。一番仲が良いのはアールヴァルとエルフィンだけどね。通訳してくれるから。
僕の家の辺りにすむ子としては珍しく、お肉が好きらしい。ヴィンティルの子だからか、アールヴァルとエルフィンも食べられるようだし、明日狩りに行ってこよう。
ハイトゥは水を少ししか出せないみたい。水やりは無理かな。
12月14日 晴れ
ハイトゥが蛇のお肉を食べられるようで良かった。アールヴァルとエルフィンも美味しそうに食べてたし。
ファルタが教えてくれたんだけど、蛇のお肉を食べると、出せる水の量が増えるらしい。食べ過ぎはダメだけどね。
あと、ハイトゥが首飾りをベルに溶かして欲しいって言って、渡してきた。気持ちはわかるから、こっそり水の氷で包んでベルに取り込んでもらったよ。
12月15日 曇り
アールヴァルとエルフィンが早く歩けるようになった。駆けるって言うらしい。ハイトゥが教えたんだ。駆けると疲れちゃうみたいだけどね。
アールヴァルの方が、エルフィンより少し早かった。ハイトゥは一番遅かったよ。
12月16日 曇り
ヴィンティルとヴァルフィンも自分の子に何か教えたくなったみたいで、翼での動かし方と泳ぎ方を教えてた。
アールヴァルとエルフィンは部分的にしか姿を変えれないから苦戦してたけど、お日様が沈む頃にはできてたよ。
ハイトゥには翼がないみたいだったけど、バティとエレインに泡の作り方を教わったみたい。
12月17日 曇り
ちょっと早いけど、また三日間アレを出すからアールヴァルとエルフィンとハイトゥに伝えておいてね
12月21日 雨
アールヴァルとエルフィンとハイトゥにもアレをあげた。アールヴァルとエルフィンは嬉しそうだったけど、ハイトゥは首を傾げてた。
ちょっと多目に出したアレと、ベルの欠片、水の氷。
見付からないようにしなきゃ。
12月22日 晴れ
僕の生まれた場所では、結婚の儀はなかった。代わりに、証をプレゼントするんだ。
だからねファルタ。ここから先は、何でも知ってる君の知らない文字で書くよ。
、 。
12月23日 晴れ
昨日はずっと部屋にいたから日記を書けなかった。
水は久しぶりに来たオルキディア達がやってくれたみたい。
12月24日 晴れ
本当は知っていたんだ。君が、僕と同じだってこと。
好きだよ、ファルタ。
12月25日 彩虹粉
ファルタと僕は結婚した。
証として贈った石をファルタは喜んでくれた。同じものは多分創れないけど、例え世界が壊れてもあの石は壊れないと思う。
ファルタが、ベルの名前の意味を聞いてきた。
ファルベルゴ。
ファルタとドラーゴの水晶。
僕達の子供だよって言ったら、赤くなってた。かわいい。
12月26日 晴れ
結婚したからって、ヴィンティルとヴァルフィンみたいに子供が作れるわけじゃない。
ベルは僕達が育ててきた子供だけど、喋れるわけじゃない。
でも子供が欲しい。
どうしたらいいかな?
12月27日 虹雨
悩んでた僕達に答えをくれたのは、ハイトゥの首飾りだった。
ベルの中を滑るみたいに出てきた首飾りは、虹色に光ってから姿を変えたんだ。
首飾りは、男の子のカタチになった。どこかハイトゥと似ている男の子。
ハイトゥの好きだった子と同じ顔らしい。
12月28日 虹雨
あの首飾りは、ハイトゥの好きだった子の形見だったんだって。ハイトゥのお兄ちゃんのカケラと、ベルの思いが混ざってカタチを取ったみたい。男の子が自分で説明してくれたんだ。ベルとしての記憶と、男の子としての記憶があるみたいね。
ハイトゥは泣きながら抱き着いてた。やり直すために形見を溶かしてしまいたい気持ちもわかるけど、やっぱり大事なものだよね。水の氷で包んでおいてよかった。
男の子の名前はエセレンシュだったみたいだから、そのまま呼ぶことにした。
ベルはこの白くてきれいな石の名前だからね。
12月29日 雨
ハイトゥとエセレンシュは結婚することにしたらしい。そもそも、エセレンシュが、ひいてはあの街が滅んでしまったのはハイトゥとエセレンシュの結婚の儀前日だったらしい。
ハイトゥは本当にうれしそうだった。
それで、子供に名前を付けてほしいって言われた。
……最近無かったからしっかり考えないとね!
12月30日 晴れ
ジュライト。
男の子でも、女の子でも、ジュライト。
意味は、誓いの子。
僕とファルタの子供はベルだけど、ベルの兄弟ともいえるエセレンシュの子だから。
エセレンシュとハイトゥの、誓いの子だよ。
12月31日 彩虹粉
ハイトゥの種族は結婚してすぐに子供が生まれるわけじゃないらしい。
結構長い時間がかかるんだって。
楽しみだね。
辞書登録機能が無ければ早々に死んでいた。