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「・・・話を聞こう。」

このまま放っておいたらこの男は殺される。いくら何でも目の前でそれを見たらさすがに寝覚めが悪い。

「あんたみたいな滅茶苦茶な男は初めて見たよ。今回はあんた一人にやられたようなもんだ。でもあんたは俺を助けてくれた。あのままだったら焼け死んでいたところを、敵だった俺の命を救ってくれた。あんたにはしびれた。かなわないと思ったよ。で、どうだ。あんたに救われた命だ、あんたのために使わせてくれないか。」

「俺のためにとは?」

「俺はあんたの下につくよ。あんたのために働く。こう見えても俺もハリウッドの半分を仕切っていた男だ。役に立つぜ。」

「ちょっと待てよ。順番が違うんじゃないのか。」

ボビーが口を挟んだ。

「俺とトオルは五分の兄弟だ。ロミオ、お前がトオルの下につくという事は、俺の下につくということでもあるんだぞ。」

「勘違いするな、ボビー。俺はお前の下にはつかないよ。俺とお前の力はいい勝負だ。今回だってトオルがいなかったらどうなっていたか分からない。だけど、お前にだって分かっているはずだ。トオルは、俺たちとは器が違うのさ。」


ボビーは黙り込み、しばらくたってやっと口を開いた。

「わかった。俺もトオルとの杯を直して、トオルの下につくことにする。そしてロミオ、お前とは五分の兄弟になる。それでハリウッドはトオルの下に統一される。俺とお前もいつまでもいがみ合っているわけには行かない。このままじゃ共倒れだ。そうなったら他の地域の奴らが一気にハリウッドに入り込んでくる。それだけは避けたい。」


ナイフが持ってこられ、それぞれが腕に軽く傷をつけて血を出す。傷口を付け合って血を合わせて儀式は終了した。

「トオル、これであんたがハリウッドのトップだ。」

「よろしくな、トオル。」

いつの間にか話が進んでいた。俺が?ハリウッドのトップ?なんでそういう話に。俺なんか居なくたって、お前達二人でやって行けるだろう。だいたい、俺なんかが、お前達みたいな凶悪な奴らの上に立てるわけがないじゃないか。

言いたいことは山ほどあったが、思った通りにしゃべれるほど英語がうまくはない。何も言えないまま既成事実として成立してしまった。俺、どうなっちゃうんだろう。奴らの話から想像すると、他の地域のギャングとかに狙われたりしないんだろうか。とりあえず、ボディガードを増やしてもらわなきゃ。


「無事に帰ってきたわね。安心したわ。」

俺の顔を見るとキャサリンはほっとした顔をした。

「で、どうだったの?」

「うん、倉庫に車を置いてきたままだからよろしくってボビーが言ってた。」

「何、それ?」

「キャサリンに一言言うと大丈夫らしいよ。」

「あなた、話を端折り過ぎ。ちゃんと順を追って話してよ。」

俺はゆっくりと順を追って話した。ロミオを連れてきてからのくだりで、キャサリンは目を丸くした。

「あなた、すごいじゃない!今まで誰も出来なかったハリウッド統一をやってのけたのよ。これであなたはハリウッドの帝王ってことよ。さすが、私が見込んだ男ね。わかったわ、車の事と倉庫の火事の事は何とかするわ。あなたは何も心配しなくていい。」

「何とかするって、どうするんだ?」

「車は無かったことにするし、倉庫の火事もホームレスの火の不始末か何かって事にするわ。」

「そんなことが出来るのか?いったいどうやって?」

「ハリウッドの警察のお偉いさんに知り合いがいるのよ。ちょっと頼めば何とかなるわ。」

いくらアメリカがいい加減な国だと言っても、そんなことが通用するものだろうか。

倉庫が火事になって、銃弾の跡があって、潰れた車が放置されているんだ。その車だって、もしかしたら盗難車かも知れない。あの騒ぎを誰かが見ているかも知れない。

それを揉み消すなんて無茶だ。どんな知り合いか知らないが、簡単ではないだろう。

ひょっとして賄賂を積むのかな。それにしても結構な額が要るだろう。

それをこんなに簡単に言ってのける・・・キャサリンは一体何者なんだ?


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