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「キャサリン、あれ、誰?」

「あの声はボビーね。ずっとあたしにつきまとってるのよ。きっと手下か何かが見てたのね。やばい奴だから気をつけたほうがいいわ。逃げましょう。」

そうこう言っている間にもドアは激しく叩かれている。ドアノブをバールか何かで叩いているようだ。こいつ、本当にドアを破って入ってくる気だ。信じられない。

「さあ、向こうの窓から!急いで!」

「ちょっと待って。ズボンをはくから。」

「ズボンなんてどうでもいいわ。」

よくない。パンツで表を走るわけにはいかないだろう。それじゃ変態だ。

やっとズボンに両足を入れた時、とうとうドアを破られた。

「この野郎!キャサリンに手を出しやがって!」

ボビーと呼ばれるその男は、言うなり殴りかかってきた。

なるほどこいつはやばそうだ。顔もゴツイが体もゴツイ。こんな奴に殴られたら一瞬であの世行きだ。

「ひゃーっ!」

俺は変な声を出しながらとりあえず立ち上がって避けてみた。が、しまった!ズボンを半分しかはいてないから、ちゃんと立ち上がれない。

転んだ俺は、自然とボビーの足元に倒れこんだ。

「うわっ!」

足元を払われた形になったボビーは前のめりになり、テレビの方に倒れた。

鈍い音がした。テレビ台に思い切りぶつかったらしい。やばいよ、これで発狂しなければいいけど。

あれ?こいつ、動かないぞ。

「今のうちよ。早く逃げましょう。」

「ちょっと待って。こいつ、動かないよ。それに血が出てる。頭でもぶつけたんじゃないか。」

「大丈夫。ほっといて逃げましょう。」

「でも、死んじゃうかも。」

「こいつはこのくらいじゃ死なないわ。さあ早く。意識が戻らないうちに逃げるのよ。」

キャサリンに手を引かれて、モーテルから逃げ出した。


「でもあなた、すごいのね。あのボビーを一発でのしちゃうなんて。」

「いやいや、あれはたまたま俺が足元に転がって、あいつが勝手につまづいて転んで頭をぶつけただけだ。そうでなかったら、今頃俺は八つ裂きにされてるよ。」

「ふうん。日本人はやっぱり奥ゆかしいのね。」

キャサリンは俺が意識的にやったと思っているらしい。冗談じゃない、あんなゴツイ奴、武器を使ったって勝てるもんか。

「でもどうしてキャサリンはボビーに追われてるんだ?」

「追われてるわけじゃないのよ。あいつ、あたしのことが気に入ってるみたいで、俺の女になれってしつこいのよ。あたしが他の男と居ると、いつも邪魔をしに来る。今日だって、別にあいつの女でも何でもないのにドアまで壊して入って来たでしょ?まったく迷惑だったらありゃしない。」

「あれは邪魔というより、殺されるところだったよ。」

「ああ、何人かはあたしの知らないところで殺されてると思うわよ。あいつってそういう奴だもの。」

「ちょっと待って。じゃ、俺、今度見つかったら殺されない?」

「大丈夫よ、あなたはあれだけ強いんだもの。でも、銃には気をつけたほうがいいわね。いくらトオルでも銃にはかなわないわ。」

「俺、どうしよう・・・。」

「とりあえずあたしのところに来るといいわ。服も買ってあげる。好きなだけ居ていいわよ。」

いや、そういうことじゃないんだけどな。

泊まる所の心配をしてるんじゃなくて、命の心配をしてるんだ。

キャサリンは妙にニコニコして俺の腕にぶらさがっているけど、こりゃあ早く日本に帰っちゃった方がいいかな。

あ!パスポート!

パスポートを部屋に置いたまま逃げて来ちゃった!



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