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三日後、情報屋と呼ばれる男が手がかりを持ってきた。
「トオルを襲ったのは、どうもバーバンクの奴ららしい。奴ら、前からちょこちょことハリウッドに出てきてドラッグをさばいていたんだが、トオルが頭になって以来ドラッグが売りさばけなくなったもんだから、トオルを消そうとしたようだ。あわよくば、そのままハリウッドに入り込む気だぞ。」
「その情報は確かか?」
「ああ、奴ら、最近何だかきな臭い動きをしていたし、あちこちに飛ばした俺の“目”が確かめてきた。」
「よし、何人か人をやって、間違いなかったら犯人を特定してさらって来い。」
「もう行ってる。」
しばらくして、問題の車を発見したと電話が入った。
「この車に間違いない。色も車種も年式も合ってるし、ナンバーの半分も一致する。乗ってる奴もバーバンクのメンバーだ。」
「気づかれるな。そいつが一人の時を狙って、こっそりと連れて来い。ただし、絶対に殺すな。出来れば無傷で連れて来い。」
夜まで待って、ようやく「そいつ」が連れてこられた。何発か殴られているようだが、それ以外は無傷のようだ。
「そいつ」は俺の前に手錠をかけられ、縄でグルグル巻きにされた姿で連れてこられた。ふて腐れたような表情をしていて、もう抵抗もしない。
「お前、名前は?」
「ヘンリーだ。」
あの時の声と重なり合った。こいつで間違いない。
「お前、組織に命令されて俺を狙ったんだな。」
「いや、俺一人でやったことだ。あんたを殺れば俺の名が上がると思った。」
「見え透いた嘘をつくな。お前みたいなチンピラがそんな事を出来るわけがない。」
「うるさい!いいから早く殺せ!」
チンピラの典型的な切れ方だ。強がっているが、内心ビビッているに違いない。俺はニヤリと笑った。
「簡単に死ねると思うな。お前は俺の命を狙ったんだ。お前にはこれから死ぬより辛い目にあってもらう。おい、こいつをしばらく監禁しとけ!」
男が連れ去られた後、こいつを出来るだけ傷つけないように、メシも食わせろと指示した。
ボビーやロミオからはすぐに始末しようと不満の声が上がったが無視した。
その間に、バーバンクの奴らを叩き潰す準備は着々と進んでいた。
俺は、今回は作戦云々ではなく、正面から叩き潰すと宣言していた。
そのためか、いつもより多くの銃が集まり、どこから手に入れたのかマシンガンまであった。
前回のロミオとの抗争以来始めての戦いとあって、皆気合が入っているようだ。
ヘンリーを捕まえたと言う噂を流しておいたから、バーバンクの奴らも同じように準備をしているに違いない。今回は力と力のぶつかり合いになる。
今回の抗争で、俺にはもう一つ目的があった。
奴らがこれ以上ドラッグを扱えないようにするつもりなのだ。せっかくハリウッドからドラッグを追放したのに、他の地域の奴らに持ち込まれたのでは意味がない。
もちろんバーバンクを潰したところですべてのドラッグを駆逐できるわけではないのは知っている。しかし、一つ一つでも潰していけば、そしてそれを外に示せば、ハリウッドには段々ドラッグが入って来なくなるだろう。少なくとも一般市民には。
そのために情報屋に金を使わせた。
自分の“目”の他にも、他の地域の情報屋に金を渡して情報を買い集めさせたのだ。
その結果、面白いことが分かった。
奴らはドラッグの工場と倉庫を持っているのだが、それらはそれぞれ街の端と端にあるのだ。
工場で精製して倉庫に保管する。運んでいる途中に見つかる可能性もあると思うのだが、どちらか一方が見つかった時でももう片方が生き残るという目論見なのだろう。
よし決まった。今回はこの両方を二度と使えなくする。
近隣の有効団体からも協力の申し出があった。
バーバンクの奴らのやり方が気に食わないのだろう、結構な数が集まってくる。
同様に向こうも他の団体を集めているかもしれない。
と言うことは、今回の抗争は、ロサンゼルスの北側のギャングを真っ二つに分けての戦いになると言っていい。
これだけ話が大きくなると、どこからか情報も漏れていくだろう。準備にあまり時間をかけるわけにはいかない。