プロローグ
白い世界。
北城新九郎が目を開けると、そこには白い世界が広がっていた。
仄かな、ぼんやりとした白さがすいっ、と視界のあちら側まで広がっている。
「しんくろー、さん?おーい、起きてますかー!? しんくろー、さんですよねー?」
その白い模糊たる世界で、北城新九郎の前に佇むのは荘厳かつ儚げで、物憂げかつ明瞭、幼げかつ大人びている少女。
「んんー、どうやら間違いなくしんくろー、さんのようですねえ……良かったぁ、流石の私でも他所の世界からお借りした生命体を転送時のノイズでズタボロにしてしまうのは気が引けてしまいますから……それはそうと」
そこまで言うと少女は新九郎に向けて前かがみの姿勢で人差し指を立てた右手を突き出した。
「わたしはこちらの世界を創りしもの、つまりは創生神ということになるのですが、このたび新九郎さんには私の世界で建国をしてもらうことになりました」
そして自らを創生の神と名乗る少女が満面の笑顔で迫る。
「さてさて、新九郎さん。貴方は一体どのようにして、そしてどのような国を創るのでしょうか楽しみですね! 楽しみですねえ!」
新九郎の顔の目前まで寄った少女がコクリ、と小さく頷いた後に元の位置にまで離れる。そして両腕を突き出し、目を閉じる。その突き出した両腕には眩い光が覆うようにして灯る。
「しんくろー、さん。それではわたしの世界へレッツゴー!! クオリティの高い異世界ライフを期待していますよ!!」
少女がその言葉を言い終わるか、終わらないかの直前には、眩い光に導かれた新九郎の体は、白い世界に無かった。