1章 4話
「先輩、改めて卒業、おめでとうございます」
「ふふ、ありがとうございます」
式を終えた俺達は、生徒会の仕事もそこそこに、先輩との別れを惜しんでいた。
卒業証書の入った筒を後ろ手に、優雅に微笑む先輩。今更だけど、本当に綺麗だな、この人は。そんでやっぱり優雅だ。卒業式というイベント補正もあってか、常にもましてエレガントなのである。
「センパイ、卒業おめっとさん」
「相楽先輩、これまで本当にお世話になりました」
「また遊びにきてくださいね」
「皆さんも……本当にありがとう」
トラ、光輝、透の三人もそれぞれ挨拶を交わす。……なんだかんだ、楽しかったなぁ。こいつらと会長の下で働くの。わかってはいたけども、それでも、迎えてしまった今日この日を、少しだけ煩わしく思う。
「……それでは大倉くん、従妹のこと、お頼みしましたわよ」
「はい、任せて下さい」
・・・・・・・・
―――というわけで、春休み。俺は会長からの頼まれごとを遂行するため、校門の前で人を待っていた。そして、困ったことになっていた。
「……おせぇなぁ」
待ち人が、来ないのである。待ち合わせは9時のはずだが、現在時刻は既に11時を過ぎている。そしてたちの悪いことに、俺は相手の連絡先を知らない。
「……はぁ」
困ったなぁ。……よし、今の状況を整理しよう。俺は先日、先輩に頼まれ事をされた。会長には3つ年下の従妹がいて、去年までイギリスに留学していたらしいその子が、今年帰国子女としてウチの学校に編入?してくるらしい。それで俺に、入学前の春休みに、学校を案内して欲しい、とのことで。その為に俺は、今日学校に来ている。2時間くらい前から。そいてその子は何故か、未だに姿を現さない。なぜか。連絡を取ろうにも連絡先を知らないし(よく考えたらそもそも名前すら聞いていない)先輩に電話してみても出ない。うん。これはもうあれだ。帰ろう。2時間以上待ったんだし、仕方ないよな―――そう結論を下し、脳内会議を締めくくろうとした時だった。
「あのぅ……すみません……大倉さん……ですか……?」
「ぇ……あっはい……」
――目の前に、ウチの制服を着た、アニメキャラみたいな銀髪美少女が立っていた。