トーマ
3時間後、ようやくトーマの仕事時間は終わったようだ。通用口で待っていると、トーマが出てきた。
「やっと終わったよ」
トーマは私たちに挨拶をする。
「改めて、初めまして。トーマ・ライン・ボーデン=ワール・レクです。トーマと呼んでください」
「よろしくね」
私は挨拶を交わす。ほか二人も、似たように言葉を交わすと、ここからが本題のようだ。私をここに連れてきた理由も、やっとわかった。
「ハッピーバースデー!」
「へ?」
本気で目が点になった。というより、何が起きたか理解できなかったと言うべきだろう。ポンッという音と一緒になって、周りの景色も一変する。それはまるで、万華鏡の中を覗き込んでいるかのような、花火の大群だった。
「ちなみに、トーマは2級魔術師試験に合格してるから、大丈夫だよ」
誰かの声が聞こえるが、それがだれかは分からない。はっきりいえるのは、ぐるぐると回り続ける歌声と、ぐるぐる回り続ける景色は、とても美しく、心揺さぶれるものだということだ。
数分でこの花火の演武は終わり、それから現実世界へと戻ってきた。しばらくは目の端で火花が見えてきそうだが、それもじきに収まるだろう。
「ありがとう、ね」
クラッとした頭を抑え、私はみんなに言った。
ちなみに、今日は誕生日ではない。明日だと言うことは伏せておいた。